検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
Ⅰ型:酸素化の障害が中心
- 肺炎・肺水腫などで交換が障害
- 血液へ取り込む酸素が不足
- PaO₂低下:呼吸負担や臓器への影響
観察へ:PaCO₂は正常または低下。酸素投与条件の増加と、会話・体位・努力呼吸の変化を同時に追う。
Ⅱ型:二酸化炭素の排出も不足
- 気道閉塞・呼吸筋や中枢の障害
- 肺胞に出入りする有効な空気量が不足
- 低酸素にPaCO₂上昇が加わる
観察へ:呼吸数だけでなく深さ、眠気、pHの推移を確認。酸素投与でSpO₂が改善しても換気不全が残ることがある。
Ⅰ型・Ⅱ型は血液ガスによる分類。図は酸素化と換気の障害を単純化しており、診断画像ではない。急性・慢性という時間経過の分類とは別で、慢性呼吸不全でも急に悪化することがある。
症状から観察・再確認へ
息切れ
- 見る・聞く
- 発症経過、呼吸数と深さ、胸郭運動・左右差、努力呼吸、会話、体位、呼吸音を確認。
- 何を反映するか
- 酸素化の障害、気道抵抗、呼吸筋への負荷などを反映する。数が減っても疲労による低下がありうる。
- 普段と比較
- 安静と動作、普段の活動、酸素・呼吸補助の設定をそろえて比較。
- 悪化を疑う変化
- 会話できない、胸郭の動きが弱い、呼吸が不規則になる、努力の強い呼吸から反応低下へ移る。
- 再確認
- 体位・排痰・呼吸補助後の仕事量、会話と意識を再確認し、数値と合わない苦痛も共有。
酸素化低下
- 見る・聞く
- SpO₂、脈波、センサーの装着と末梢冷感、酸素器具・流量・回路接続を確認。
- 何を反映するか
- 酸素不足の手がかりだが、体動・低灌流で測定に影響が出る。SpO₂はCO₂量を測っていない。
- 普段と比較
- 個別目標と普段の値、現在に至る酸素条件の変化を比較。
- 悪化を疑う変化
- 必要な酸素が増え続ける、目標に届かず呼吸苦・意識変化・循環不良を伴う。
- 再確認
- 器具・装着を修正しても患者の状態を再評価。異常値を測定誤差だけとして片づけない。
傾眠・意識の変化
- 見る・聞く
- 呼びかけへの反応、見当識、頭痛、呼吸の深さ、気道を守れるかを確認。直近の鎮静薬・オピオイドも確認。
- 何を反映するか
- 低酸素や高CO₂、薬剤、循環障害などが関与しうる。眠気だけでCO₂貯留と断定しない。
- 普段と比較
- 普段の覚醒、処置や投薬前、血液ガスのPaCO₂・pHと比較。
- 悪化を疑う変化
- 新しい反応低下、呼吸が弱い・止まる、嘔吐物や痰を処理できない。
- 再確認
- 直ちに応援を求め気道・換気の評価へ。酸素飽和度が保たれていても観察を緩めない。
痰の排出困難
- 見る・聞く
- 咳の力、分泌物量、呼吸音、人工気道の状態、呼吸器のアラームと患者の動きを確認。
- 何を反映するか
- 分泌物による気道狭窄や、筋力・意識低下による排出不足を考える。
- 普段と比較
- 前回の痰と呼吸状態、吸引の回数・効果、気道内圧などを比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な換気困難、呼吸音の変化、酸素化低下、排痰できず意識も低下する。
- 再確認
- 手順に沿った排痰・吸引後の呼吸、SpO₂、呼吸器波形やアラームの変化を共有。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
評価済みの慢性安定期または改善過程で、個別目標内の酸素化、呼吸仕事量・意識・循環が維持されている。
次の行動:同じ条件で推移を記録。新規の急性呼吸不全を経過観察だけで済ませない。
早めに共有
動作時の負担増、酸素条件の増加、新しい朝の頭痛、痰が出しにくい、マスク不耐や漏れが続く。
次の行動:現在の条件と前回との差を伝え、血液ガス・原因・呼吸補助の再評価を相談。
直ちに応援要請
反応低下、呼吸停止・著しい低換気、強い呼吸困難、急な循環不良、呼吸補助中も進む悪化。
次の行動:急変対応を起動し、気道・呼吸・循環を確認。換気補助・挿管などの準備を施設手順に沿って進める。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1 患者を先に見る
アラームや数値と同時に応答・気道・胸郭運動・循環を確認。重い変化は応援要請し、移動や食事を止めて安全を確保。
2 体位と酸素経路を確認
呼吸が楽な体位に調整し、酸素源から患者までの接続・器具を確認。CO₂貯留を心配して必要な酸素を自己判断で中断しない。
3 換気の評価と処置を準備
SpO₂改善後も眠気や浅い呼吸があれば報告。指示された血液ガス、吸引、呼吸補助の準備。設定変更は指示・手順に従う。
4 原因と治療条件を集める
感染症状、胸痛、気道閉塞、体液過剰、鎮静薬などの経過を整理。検体採取時の酸素・呼吸器条件を記録する。
5 介入ごとに再評価
呼吸負担・意識・循環・ガスを前後で比較。口腔・皮膚・栄養・睡眠を支え、離床は安静度と呼吸の余力に合わせる。
治療前・中・後の看護
酸素療法
- 目的
- 血液に取り込める酸素を補う。換気不足そのものを補えるとは限らない。
- 前に確認
- 個別目標、慢性呼吸不全・CO₂貯留歴、酸素器具・流量、呼吸と意識。
- 中に観察
- SpO₂と呼吸仕事量・意識。皮膚圧迫・乾燥、回路の外れ、火気を確認。
- 反応・再評価
- 酸素化と苦痛の変化を確認し、必要に応じ血液ガスでCO₂・pHも再評価。
- 適応・注意
- 目標と増減は個別指示・手順に従う。高CO₂リスクと低酸素の両方に対応する。
NPPV:マスクによる陽圧換気
- 目的
- 気道へ圧を加え、病態に応じて酸素化や換気・呼吸筋負担を改善する。
- 前に確認
- 意識・気道保護、嘔吐、排痰力、循環、適応と治療目標。マスクの種類と設定を照合。
- 中に観察
- 患者との同調、漏れ、呼吸数・深さ、意識、血圧、皮膚圧迫、腹部膨満・嘔吐。
- 反応・再評価
- 開始後の呼吸負担、血液ガスと意識を短い間隔で再評価。反応不十分なら挿管を含む再検討を依頼。
- 適応・注意
- 気道保護が困難・急速な悪化などではNPPV継続が適切とは限らない。マスク調整だけで緊急評価を遅らせない。
気管挿管・人工呼吸
- 目的
- 気道を確保し、必要な酸素化と換気を機械で支える。
- 前に確認
- 救急物品・吸引・モニターを準備し、呼吸循環の基準と処置の役割を共有。
- 中に観察
- 胸郭運動、呼気CO₂・SpO₂、血圧、チューブ位置と固定、分泌物、同調・アラーム。
- 反応・再評価
- 血液ガス・循環・呼吸器の反応を確認。鎮痛鎮静と離脱評価、口腔・体位管理をチームで進める。
- 適応・注意
- 気胸、人工呼吸器関連感染、圧迫損傷などに注意。アラームは患者・気道・回路の順に原因を探す。
検査の意味と読み方
PaO₂
動脈血の酸素化を評価する。低下は酸素の取り込み不足などを示す。
組み合わせ・推移:FiO₂(吸う酸素の割合)・デバイスと併記。酸素条件の違う前後値だけでは肺の回復を判断できない。
PaO₂の検査詳細
PaCO₂
二酸化炭素排出の手がかり。上昇では肺胞換気不足、低下では過換気などを考える。
組み合わせ・推移:pH・呼吸の深さ・意識と前回値を合わせる。慢性の高値と急な上昇を分け、SpO₂では代用しない。
PaCO₂の検査詳細
pH
血液が酸性・アルカリ性のどちらへ傾くかを見る。
組み合わせ・推移:PaCO₂上昇にpH低下を伴う時は呼吸性の酸性化を考える。代謝性の変化も重なりうるためHCO₃⁻・循環・腎機能を確認。
pHの検査詳細
HCO₃⁻
酸塩基平衡の代謝側の成分。慢性のCO₂貯留への代償で上がる場合がある。
組み合わせ・推移:高値だけで慢性と決めず、pH・PaCO₂・薬剤・嘔吐・腎機能と経過を合わせる。
HCO₃⁻の検査詳細
胸部画像
肺炎・肺水腫・気胸などの原因、人工気道や合併症の評価に使う。
組み合わせ・推移:画像だけで呼吸の余力は分からない。直前からの症状・左右の呼吸音・治療条件を添えて再評価を依頼。
報告:SBARで情報をそろえる
S:どの呼吸が変わったか
- 開始と変化速度、会話・呼吸数と深さ、SpO₂、現在の意識・血圧。
- 換気できていない疑いは先に伝える。
B:普段の呼吸と現在の支援
- 基礎疾患、普段のガス・在宅酸素、現行の酸素器具・流量または呼吸器設定、鎮静薬・直近の処置。
A:前後の差
- 血液ガスと採血時の条件、胸郭・呼吸音・分泌物、循環。
- 体位・接続修正・吸引・指示治療への反応。
R:支援の変更と再評価
- 直ちに診察・換気補助が必要か、再採血と呼吸器設定の指示、次の再評価時点。
- 緊急処置の準備状況。
患者・家族への説明
数字と体の感じを伝える
酸素の数値だけでなく、息のしにくさ、眠気、頭痛、痰が出ないことを伝える。急な意識・呼吸の変化はすぐに助けを求める。
器具を安全に使う
酸素やマスクは指示された条件で使用する。苦痛や漏れを我慢せず相談。酸素使用中は火気・喫煙を避ける。
回復後の生活を整える
活動・休息と栄養を個別に調整。慢性例では悪化時の連絡先、受診目安、機器トラブル時の対応を家族と確認。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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