呼吸・循環を整える技術更新・文献確認:2026年8月27日

NPPV
非侵襲的陽圧換気療法

気管挿管をせず、密着するマスクから陽圧を送る。圧の意味、リーク、同調、皮膚、治療失敗をつなげて考える学習ノート。

学習用。NPPVは人工呼吸管理。患者の状態、医師の指示、採用機器・回路・マスクの電子添文と表示、院内手順を優先する。

注意事項

このページの範囲
  • 成人急性期のマスク式NPPV
  • 設定の読み方、導入、観察、日常ケア
  • 小児・新生児、在宅、慢性期の導入は対象外
  • 開始・増減・離脱は医師の指示と院内手順へ

NPPVとは

マスクを通して肺を支える

人工呼吸器 → 呼吸回路 → マスク → 気道。

自発呼吸に合わせて陽圧を送り、酸素化や換気、呼吸仕事量を支える。

「非侵襲的」は気管チューブを入れないという意味。人工呼吸であることは変わらない。

使う場面と使えない場面

有効性が確立している代表例
  • COPD増悪に伴う急性または急性増悪の呼吸性アシドーシス
  • 急性心原性肺水腫
  • 選択された患者の抜管後・術後の呼吸補助
開始前に気道と全身を確認
  • 気道を守れない、嘔吐・誤嚥リスクが高い
  • 大量の分泌物を自力で出せない
  • 顔面外傷、熱傷、術後創などでマスクを装着できない
  • 呼吸停止、重い意識障害、重い循環不安定
  • 緊急挿管が必要

禁忌や慎重適用は機器・マスク、病態、救命方針で異なる。NPPVを行える監視・人員と、すぐ挿管できる体制も確認する。

圧の違いを読む

CPAPは一つ、二段階圧は二つ

CPAP:吸気も呼気も同じ持続陽圧。

二段階圧:吸気時IPAPと呼気時EPAPを使う。

PS=IPAP−EPAP:吸気を押す圧の差。

  • IPAP:吸気時の圧。主に換気と呼吸仕事量に関わる
  • EPAP:呼気時にも残す圧。肺胞虚脱を防ぎ、酸素化に関わる
  • FiO2:目標SpO2へ調整する酸素濃度
  • バックアップ呼吸回数:自発呼吸が不足したときの最低回数
  • 立ち上がり・トリガ・サイクル:患者との同調に関わる

名称、設定可能項目、リーク補正は機種とモードで異なる。数字だけでなく、実測値・波形・患者の反応を合わせて読む。

マスクと呼気の出口

締めすぎず、必要な密着をつくる

サイズを合わせ、左右均等に固定する。

鼻根、頬、口角、顎の圧迫とリークを同時に見る。

何を助けるのか

換気を助ける圧の差で一回換気量を支え、CO2排出と呼吸仕事量の軽減につなげる。
酸素化を助ける呼気時にも圧を残し、肺胞がつぶれにくい状態を支える。
呼吸筋を休ませる患者の吸気努力に合えば、速く浅い呼吸と強い努力呼吸を減らせる。

必要物品

  • NPPV対応人工呼吸器
  • 指定された呼吸回路
  • 患者に合うサイズ・形式のマスク
  • 指定された呼気ポートまたは排気システム
  • ヘッドギア
  • 酸素供給源と指定接続部品
  • 警報機能付きパルスオキシメータ
  • 心電図・血圧モニター
  • 必要時、加温加湿器と指定チャンバー・水
  • 必要時、皮膚保護材
  • 吸引物品
  • バッグバルブマスクなど代替換気手段
  • 気管挿管・救急物品

回路、マスク、呼気ポート、加湿器は互換性を確認する。排気方式が合わない組み合わせは、CO2再呼吸や換気不良につながる。

導入手順

  1. 本人・目的・指示を照合

    モード、各圧、FiO2、目標SpO2、再評価時刻、挿管条件を確認。

  2. 回路と排気方式を組む

    回路、フィルタ、加湿、呼気ポート、酸素、電源を採用機器の手順で接続。

  3. 説明してマスクを当てる

    可能なら手で当てて呼吸を合わせてから固定。苦痛と不安を確認する。

  4. 指示された設定へ

    設定値と実測値を照合。リーク、胸郭運動、一回換気量、同調を確認。

  5. 密着と除圧を両立

    大きなリークを減らす。締め上げず、鼻根・頬・口角の圧迫を除く。

  6. 早期に反応を再評価

    呼吸、意識、循環、SpO2、血液ガス、必要FiO2の変化を時系列で見る。

観察項目

呼吸と全身状態呼吸数、努力呼吸、胸郭運動、会話、意識、循環、疲労、分泌物。
酸素化と換気SpO2、FiO2、血液ガス、pH、PaCO2、PaO2の推移。
機器との同調患者の吸気努力と送気が合うか。空打ち、二段吸気、呼気への送気がないか。
マスクと皮膚リーク、鼻根・頬・口角の発赤や痛み、眼への風、乾燥、腹部膨満。

開始前と開始後を比べる。呼吸数、努力呼吸、意識、pHやPaCO2が改善する方向かを見る。

リーク・同調・アラーム

リークが多い
  • マスク位置、サイズ、口の開き、回路外れを確認
  • 目への吹き上げと皮膚圧迫を確認
  • 締め上げる前に位置と形を直す
苦しい・呼吸が合わない
  • 患者の呼吸、気道、分泌物、病態悪化を先に確認
  • トリガ、立ち上がり、サイクル、圧、リークを確認
  • 設定変更は医師の指示と機器の手順へ
アラームが鳴る
  • 消音する前に患者を見る
  • 電源、酸素、回路、呼気ポート、マスク、加湿、水滴を確認
  • 換気が保てなければ代替換気と応援要請へ

治療失敗を疑う変化

改善しない、または悪化する

呼吸数・努力呼吸・必要FiO2が増え、意識・循環・pH・酸素化が悪化。

マスク調整だけで時間を使わず、早く報告して治療強化へつなぐ。

日常ケア

  • 鼻根、頬、口角、顎、耳の皮膚を観察
  • 除圧とマスク位置の調整
  • 口腔内・鼻腔の乾燥、痰、口渇を確認
  • 口腔ケアと排痰を援助
  • 必要時、加温加湿と結露を確認
  • 体位変換後に回路、マスク、設定を再確認
  • 休止中も呼吸状態と治療計画を確認

飲水・食事・内服のために外す場合も、自己判断で中断しない。呼吸状態、誤嚥リスク、休止方法を医師・多職種・院内手順で確認する。

出典