検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
市中肺炎:生活の場で発症
- 肺胞に炎症が起こる
- 滲出液でガス交換が妨げられる
- 咳・発熱・呼吸負担が増える
観察へ:発熱の有無だけでなく、普段の歩行・食事・会話からの変化を聞く。病原体によって治療は異なる。
院内・医療介護関連:背景を確認
- 基礎疾患・治療・デバイスが関係
- 肺の感染と元の疾患が重なる
- 呼吸条件・意識・循環が悪化しうる
観察へ:最近の抗菌薬、培養歴、入院経過、人工気道の有無を共有。病院での発症だけで耐性菌感染と決めない。
誤嚥が関わる肺炎:再発要因を見る
- 嚥下・咳で排出する力が低下
- 気道に入った微生物が感染を起こす
- 肺炎の反復・食事量の低下
観察へ:覚醒、食事中・後の咳、湿った声、口腔内、姿勢を確認。むせがないことだけで安全とせず、嚥下評価へつなぐ。
肺胞(酸素と二酸化炭素を交換する小さな袋)の炎症を表す模式図。画像診断の再現ではない。市中・院内は発症環境の分類、誤嚥は発症機序であり、互いに重なる。
症状から観察・再確認へ
息切れ
- 見る・聞く
- 呼吸数・深さ、努力呼吸、会話、楽な体位、呼吸音、SpO₂を確認。酸素の器具・流量と開始時刻を併記。
- 何を反映するか
- 肺胞でのガス交換障害や呼吸仕事量の増加を反映する。SpO₂だけでは疲労や換気を判断できない。
- 普段と比較
- 同じ酸素条件で前回と比較。安静時だけでなく普段の移動・清潔動作での負担を聞く。
- 悪化を疑う変化
- 会話困難、酸素条件の増加、呼吸が弱くなる、意識の変化。
- 再確認
- 活動中止・体位調整や指示された酸素投与後、呼吸の負担と意識・循環を再評価。
咳・痰
- 見る・聞く
- 痰の量・粘り・血液混入、咳の強さ、自力で出せるか、呼吸音と疲労を確認。
- 何を反映するか
- 分泌物と排出能力を評価する。痰の色だけでは病原体や抗菌薬の必要性を決められない。
- 普段と比較
- 痰の増減と出しやすさを比較。咳が減っても、排出できず弱っていないかを見る。
- 悪化を疑う変化
- 痰が絡むのに出せない、窒息を疑う変化、血痰増加に呼吸悪化が重なる。
- 再確認
- 排痰支援後の呼吸音・呼吸苦・SpO₂と疲労。吸引の反復で改善しなければ原因を再評価。
発熱・倦怠感
- 見る・聞く
- 体温推移、悪寒、脈拍・血圧、末梢冷感、飲食量・尿量、解熱薬の時刻を確認。
- 何を反映するか
- 感染反応と体液不足の手がかり。発熱が目立たなくても重症感染は否定できない。
- 普段と比較
- 平熱、活動性、抗菌薬開始前後を比較。解熱薬で下がった体温だけを改善としない。
- 悪化を疑う変化
- 尿量が減る、血圧低下・冷感、強い倦怠感に意識変化が加わる。
- 再確認
- 呼吸・循環・摂取が回復したか。補液中は呼吸悪化や浮腫も追う。
意識の変化
- 見る・聞く
- 呼びかけへの反応、見当識、落ち着かなさ、眠気と、呼吸・血圧を同時に確認。
- 何を反映するか
- 低酸素、感染に伴う全身障害、脱水や薬剤などを考える。認知症のためと即断しない。
- 普段と比較
- 普段の会話・覚醒、直前の鎮静作用のある薬、睡眠状態と比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な傾眠、反応低下、気道を守れない状態。
- 再確認
- 安全確保と原因評価後も意識と呼吸を追い、変化と介入への反応を共有。
食事量低下・むせ
- 見る・聞く
- 覚醒、座位保持、食事前後の呼吸、咳・湿性嗄声、口腔内残留、食事量を確認。
- 何を反映するか
- 呼吸苦・疲労や嚥下機能低下で摂取が妨げられる。低栄養と反復する誤嚥のリスクにつながる。
- 普段と比較
- 普段の食形態・介助方法・食事時間と比較。経管栄養でも逆流などの変化を確認。
- 悪化を疑う変化
- 食事中の呼吸悪化、繰り返すむせ、覚醒低下。
- 再確認
- 安全な姿勢で摂取をいったん止め、呼吸を確認。再開条件と嚥下評価を相談する。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
評価・治療計画があり、呼吸条件が安定し、意識・摂取・循環が維持または改善している。
次の行動:体温だけでなく呼吸、排痰、活動を同じ条件で追い、予定された再評価を続ける。
早めに共有
食事・尿量の減少、痰を出す力の低下、新しい混乱、治療後も改善傾向が乏しい。
次の行動:治療開始からの経過と酸素条件・観察値をまとめ、原因再評価や検査の要否を相談。
直ちに応援要請
強い呼吸困難、反応低下、気道閉塞を疑う変化、冷感・循環不良を伴う急速な悪化。
次の行動:急変対応を起動。気道・呼吸・循環を評価し、酸素・吸引・救急物品を手順に沿って準備。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1 呼吸を妨げる活動を止める
患者のそばで気道・呼吸・循環を確認。意識と血圧を見ながら呼吸しやすい体位に調整し、重い変化は直ちに応援要請。
2 分泌物を出せるか確かめる
咳の力と疲労を評価し、可能なら自力排痰を支援。吸引は適応と手順を確認し、実施前後の呼吸・循環を比較する。
3 検体と治療の時刻をつなぐ
指示された喀痰・血液培養を適切に採取。抗菌薬開始前の採取を調整するが、重症時に採取困難だけで治療を遅らせず報告する。
4 食事と水分の安全を確認する
覚醒・嚥下・呼吸から食事の安全を確認。摂取と尿量を記録し、補液・食形態・経路の変更はチームで決める。
5 回復と二次障害を追う
解熱後も酸素条件、動作時の息切れ、食事、歩行を評価。安静度に沿って離床を進め、転倒・廃用を防ぐ。原因に合う感染対策を継続。
治療前・中・後の看護
抗菌薬(セフェム系など)
- 目的
- 細菌性肺炎で原因菌を抑える。原因・重症度・耐性リスクに応じて選択する。
- 前に確認
- アレルギー歴、最近の抗菌薬・培養、腎肝機能、採取時刻、投与経路と配合条件。
- 中に観察
- 投与直後の発疹・喘鳴・血圧低下、点滴部位、下痢・腹痛、尿量など。
- 反応・再評価
- 熱だけでなく呼吸・酸素条件・意識・摂取の推移を確認。培養結果と効果を共有し薬の見直しにつなぐ。
- 適応・注意
- 下記は代表例で一律の第一選択ではない。セフトリアキソンはカルシウム含有注射剤・輸液との同時投与・配合を避ける。
セフトリアキソンナトリウム水和物の詳細を開く酸素療法・呼吸補助
- 目的
- 酸素不足を補い、必要時には呼吸を支える。肺の感染治療も並行する。
- 前に確認
- 指示された目標、普段の酸素条件、CO₂貯留リスク、デバイスと回路。
- 中に観察
- SpO₂と呼吸数・努力・会話・意識、器具のずれ、皮膚圧迫。
- 反応・再評価
- 目標への到達と呼吸負担を再評価。酸素が増えても改善しない場合は呼吸補助の再検討を依頼。
- 適応・注意
- 流量や呼吸補助の変更は指示・施設手順に沿う。全員に同じ酸素目標を当てはめない。
排痰・口腔・嚥下への支援
- 目的
- 分泌物の貯留と再誤嚥を減らし、安全な栄養摂取へつなぐ。
- 前に確認
- 咳の力、呼吸の余力、意識、嚥下評価、口腔内と食事条件。
- 中に観察
- 姿勢や介助による苦痛、むせ、湿った声、呼吸変化。口腔ケア時も水分の流入に注意。
- 反応・再評価
- 痰を出せるか、安全に摂取できるかを再評価し、看護・リハビリ・栄養職で支援を合わせる。
- 適応・注意
- 肺炎だけで全員を絶食にしない。摂取中の危険は中止して共有し、再開は個別評価に基づく。
検査の意味と読み方
胸部画像
肺の陰影・広がりや胸水などを評価する。
組み合わせ・推移:陰影だけで原因菌は決まらない。症状・酸素条件・前回画像を合わせ、改善が乏しければ別の原因や合併症を検討。
CRP
炎症の程度と経過の手がかり。感染以外でも上昇する。
組み合わせ・推移:変化には時間差がある。低下しても呼吸が悪化していれば軽快とせず、臨床所見と比較。
CRPの検査詳細
WBC
感染時に増えることがあるが、免疫低下などでは増えない場合もある。
組み合わせ・推移:低値も含め白血球分画・薬剤・基礎疾患を確認。正常域だけで肺炎や重症感染を否定しない。
WBCの検査詳細
PaO₂
動脈血の酸素化をみる。低下はガス交換障害などを示唆する。
組み合わせ・推移:採血時の酸素条件を併記し、SpO₂・呼吸状態と比較。酸素条件が異なる数値をそのまま改善と扱わない。
PaO₂の検査詳細
喀痰・血液培養
原因菌と薬剤感受性を調べ、治療選択を助ける。
組み合わせ・推移:喀痰は唾液混入・定着菌、血液は汚染の可能性も評価。陰性でも投薬後などでは感染を除外できず、採取条件と経過を共有。
報告:SBARで情報をそろえる
S:悪化の始まり
- 息苦しさ、痰の排出困難、意識変化がいつからどう進んだか。
- 現在の気道・呼吸・循環。
B:発症環境と治療
- 市中・入院中の発症、誤嚥リスク、基礎疾患。
- 酸素器具・流量、抗菌薬と開始時刻、点滴条件。
A:比較と反応
- 呼吸数・SpO₂・血圧・意識、摂取・尿量の前回と現在。
- 体位調整・排痰支援への反応、採取済み検体。
R:必要な再評価
- 直ちに診察が必要か、呼吸補助・採血・画像、食事と輸液の指示、次の観察時点。
- 緊急対応を報告準備で遅らせない。
患者・家族への説明
熱以外の変化も伝える
息苦しさ、ぼんやりする、痰が出せない、飲食が難しい変化を知らせる。急な強い息苦しさはすぐに助けを求める。
薬と回復を確かめる
抗菌薬は指示どおり使用し、自己中断や残薬の再利用はしない。発疹・強い下痢などを伝え、咳や疲れが残る時の受診目安を確認。
再発の要因を減らす
口腔ケア、禁煙、栄養と活動の回復を支える。食事姿勢・食形態は飲み込みの評価に合わせ、予防接種は対象と時期を医療者に確認。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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