呼吸器

肺炎

熱だけで軽快を判断しない。呼吸の負担、痰を出す力、普段の活動・食事・意識の変化を追い、治療と生活の回復を結びつける。

主な症状
発熱 倦怠感 息切れ
代表的な薬
抗菌薬
検査値UP
CRP WBC
検査値DOWN
PaO₂

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

市中肺炎:生活の場で発症

病原体が気道から侵入・増殖から肺胞の炎症、酸素の取り込み低下へ病原体が気道から侵入・増殖肺胞炎症・滲出液血液への酸素の取り込みが低下
  1. 肺胞に炎症が起こる
  2. 滲出液でガス交換が妨げられる
  3. 咳・発熱・呼吸負担が増える

観察へ:発熱の有無だけでなく、普段の歩行・食事・会話からの変化を聞く。病原体によって治療は異なる。

院内・医療介護関連:背景を確認

防御力低下・医療環境での感染から肺胞の炎症、酸素の取り込み低下へ防御力低下・医療環境での感染肺胞炎症・滲出液血液への酸素の取り込みが低下
  1. 基礎疾患・治療・デバイスが関係
  2. 肺の感染と元の疾患が重なる
  3. 呼吸条件・意識・循環が悪化しうる

観察へ:最近の抗菌薬、培養歴、入院経過、人工気道の有無を共有。病院での発症だけで耐性菌感染と決めない。

誤嚥が関わる肺炎:再発要因を見る

口腔内分泌物などが気道へ流入から肺胞の炎症、酸素の取り込み低下へ口腔内分泌物などが気道へ流入肺胞炎症・滲出液血液への酸素の取り込みが低下
  1. 嚥下・咳で排出する力が低下
  2. 気道に入った微生物が感染を起こす
  3. 肺炎の反復・食事量の低下

観察へ:覚醒、食事中・後の咳、湿った声、口腔内、姿勢を確認。むせがないことだけで安全とせず、嚥下評価へつなぐ。

肺胞(酸素と二酸化炭素を交換する小さな袋)の炎症を表す模式図。画像診断の再現ではない。市中・院内は発症環境の分類、誤嚥は発症機序であり、互いに重なる。

症状から観察・再確認へ

息切れ

見る・聞く
呼吸数・深さ、努力呼吸、会話、楽な体位、呼吸音、SpO₂を確認。酸素の器具・流量と開始時刻を併記。
何を反映するか
肺胞でのガス交換障害や呼吸仕事量の増加を反映する。SpO₂だけでは疲労や換気を判断できない。
普段と比較
同じ酸素条件で前回と比較。安静時だけでなく普段の移動・清潔動作での負担を聞く。
悪化を疑う変化
会話困難、酸素条件の増加、呼吸が弱くなる、意識の変化。
再確認
活動中止・体位調整や指示された酸素投与後、呼吸の負担と意識・循環を再評価。

見る・聞く
痰の量・粘り・血液混入、咳の強さ、自力で出せるか、呼吸音と疲労を確認。
何を反映するか
分泌物と排出能力を評価する。痰の色だけでは病原体や抗菌薬の必要性を決められない。
普段と比較
痰の増減と出しやすさを比較。咳が減っても、排出できず弱っていないかを見る。
悪化を疑う変化
痰が絡むのに出せない、窒息を疑う変化、血痰増加に呼吸悪化が重なる。
再確認
排痰支援後の呼吸音・呼吸苦・SpO₂と疲労。吸引の反復で改善しなければ原因を再評価。

発熱倦怠感

見る・聞く
体温推移、悪寒、脈拍・血圧、末梢冷感、飲食量・尿量、解熱薬の時刻を確認。
何を反映するか
感染反応と体液不足の手がかり。発熱が目立たなくても重症感染は否定できない。
普段と比較
平熱、活動性、抗菌薬開始前後を比較。解熱薬で下がった体温だけを改善としない。
悪化を疑う変化
尿量が減る、血圧低下・冷感、強い倦怠感に意識変化が加わる。
再確認
呼吸・循環・摂取が回復したか。補液中は呼吸悪化や浮腫も追う。

意識の変化

見る・聞く
呼びかけへの反応、見当識、落ち着かなさ、眠気と、呼吸・血圧を同時に確認。
何を反映するか
低酸素、感染に伴う全身障害、脱水や薬剤などを考える。認知症のためと即断しない。
普段と比較
普段の会話・覚醒、直前の鎮静作用のある薬、睡眠状態と比較。
悪化を疑う変化
急な傾眠、反応低下、気道を守れない状態。
再確認
安全確保と原因評価後も意識と呼吸を追い、変化と介入への反応を共有。

食事量低下むせ

見る・聞く
覚醒、座位保持、食事前後の呼吸、咳・湿性嗄声、口腔内残留、食事量を確認。
何を反映するか
呼吸苦・疲労や嚥下機能低下で摂取が妨げられる。低栄養と反復する誤嚥のリスクにつながる。
普段と比較
普段の食形態・介助方法・食事時間と比較。経管栄養でも逆流などの変化を確認。
悪化を疑う変化
食事中の呼吸悪化、繰り返すむせ、覚醒低下。
再確認
安全な姿勢で摂取をいったん止め、呼吸を確認。再開条件と嚥下評価を相談する。

看護判断:変化の緊急度

継続観察

評価・治療計画があり、呼吸条件が安定し、意識・摂取・循環が維持または改善している。

次の行動:体温だけでなく呼吸、排痰、活動を同じ条件で追い、予定された再評価を続ける。

早めに共有

食事・尿量の減少、痰を出す力の低下、新しい混乱、治療後も改善傾向が乏しい。

次の行動:治療開始からの経過と酸素条件・観察値をまとめ、原因再評価や検査の要否を相談。

直ちに応援要請

強い呼吸困難、反応低下、気道閉塞を疑う変化、冷感・循環不良を伴う急速な悪化。

次の行動:急変対応を起動。気道・呼吸・循環を評価し、酸素・吸引・救急物品を手順に沿って準備。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1 呼吸を妨げる活動を止める

患者のそばで気道・呼吸・循環を確認。意識と血圧を見ながら呼吸しやすい体位に調整し、重い変化は直ちに応援要請。

2 分泌物を出せるか確かめる

咳の力と疲労を評価し、可能なら自力排痰を支援。吸引は適応と手順を確認し、実施前後の呼吸・循環を比較する。

3 検体と治療の時刻をつなぐ

指示された喀痰・血液培養を適切に採取。抗菌薬開始前の採取を調整するが、重症時に採取困難だけで治療を遅らせず報告する。

4 食事と水分の安全を確認する

覚醒・嚥下・呼吸から食事の安全を確認。摂取と尿量を記録し、補液・食形態・経路の変更はチームで決める。

5 回復と二次障害を追う

解熱後も酸素条件、動作時の息切れ、食事、歩行を評価。安静度に沿って離床を進め、転倒・廃用を防ぐ。原因に合う感染対策を継続。

治療前・中・後の看護

抗菌薬(セフェム系など)

目的
細菌性肺炎で原因菌を抑える。原因・重症度・耐性リスクに応じて選択する。
前に確認
アレルギー歴、最近の抗菌薬・培養、腎肝機能、採取時刻、投与経路と配合条件。
中に観察
投与直後の発疹・喘鳴・血圧低下、点滴部位、下痢・腹痛、尿量など。
反応・再評価
熱だけでなく呼吸・酸素条件・意識・摂取の推移を確認。培養結果と効果を共有し薬の見直しにつなぐ。
適応・注意
下記は代表例で一律の第一選択ではない。セフトリアキソンはカルシウム含有注射剤・輸液との同時投与・配合を避ける。
セフトリアキソンナトリウム水和物の詳細を開く

酸素療法・呼吸補助

目的
酸素不足を補い、必要時には呼吸を支える。肺の感染治療も並行する。
前に確認
指示された目標、普段の酸素条件、CO₂貯留リスク、デバイスと回路。
中に観察
SpO₂と呼吸数・努力・会話・意識、器具のずれ、皮膚圧迫。
反応・再評価
目標への到達と呼吸負担を再評価。酸素が増えても改善しない場合は呼吸補助の再検討を依頼。
適応・注意
流量や呼吸補助の変更は指示・施設手順に沿う。全員に同じ酸素目標を当てはめない。

排痰・口腔・嚥下への支援

目的
分泌物の貯留と再誤嚥を減らし、安全な栄養摂取へつなぐ。
前に確認
咳の力、呼吸の余力、意識、嚥下評価、口腔内と食事条件。
中に観察
姿勢や介助による苦痛、むせ、湿った声、呼吸変化。口腔ケア時も水分の流入に注意。
反応・再評価
痰を出せるか、安全に摂取できるかを再評価し、看護・リハビリ・栄養職で支援を合わせる。
適応・注意
肺炎だけで全員を絶食にしない。摂取中の危険は中止して共有し、再開は個別評価に基づく。

検査の意味と読み方

胸部画像

肺の陰影・広がりや胸水などを評価する。

組み合わせ・推移:陰影だけで原因菌は決まらない。症状・酸素条件・前回画像を合わせ、改善が乏しければ別の原因や合併症を検討。

CRP

炎症の程度と経過の手がかり。感染以外でも上昇する。

組み合わせ・推移:変化には時間差がある。低下しても呼吸が悪化していれば軽快とせず、臨床所見と比較。

CRPの検査詳細

WBC

感染時に増えることがあるが、免疫低下などでは増えない場合もある。

組み合わせ・推移:低値も含め白血球分画・薬剤・基礎疾患を確認。正常域だけで肺炎や重症感染を否定しない。

WBCの検査詳細

PaO₂

動脈血の酸素化をみる。低下はガス交換障害などを示唆する。

組み合わせ・推移:採血時の酸素条件を併記し、SpO₂・呼吸状態と比較。酸素条件が異なる数値をそのまま改善と扱わない。

PaO₂の検査詳細

喀痰血液培養

原因菌と薬剤感受性を調べ、治療選択を助ける。

組み合わせ・推移:喀痰は唾液混入・定着菌、血液は汚染の可能性も評価。陰性でも投薬後などでは感染を除外できず、採取条件と経過を共有。

報告:SBARで情報をそろえる

S:悪化の始まり

  • 息苦しさ、痰の排出困難、意識変化がいつからどう進んだか。
  • 現在の気道・呼吸・循環。

B:発症環境と治療

  • 市中・入院中の発症、誤嚥リスク、基礎疾患。
  • 酸素器具・流量、抗菌薬と開始時刻、点滴条件。

A:比較と反応

  • 呼吸数・SpO₂・血圧・意識、摂取・尿量の前回と現在。
  • 体位調整・排痰支援への反応、採取済み検体。

R:必要な再評価

  • 直ちに診察が必要か、呼吸補助・採血・画像、食事と輸液の指示、次の観察時点。
  • 緊急対応を報告準備で遅らせない。

患者・家族への説明

熱以外の変化も伝える

息苦しさ、ぼんやりする、痰が出せない、飲食が難しい変化を知らせる。急な強い息苦しさはすぐに助けを求める。

薬と回復を確かめる

抗菌薬は指示どおり使用し、自己中断や残薬の再利用はしない。発疹・強い下痢などを伝え、咳や疲れが残る時の受診目安を確認。

再発の要因を減らす

口腔ケア、禁煙、栄養と活動の回復を支える。食事姿勢・食形態は飲み込みの評価に合わせ、予防接種は対象と時期を医療者に確認。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会:市中で起こる肺炎

    病態・典型症状と非典型的な変化、予防。

  2. 日本呼吸器学会:病院・介護施設などで起こる肺炎

    発症環境、基礎疾患、耐性菌リスクの考え方。

  3. 日本呼吸器学会:成人肺炎診療ガイドライン2024

    SCOPE 4の誤嚥リスクと発症環境分類との関係を確認。

  4. NICE NG250:Pneumonia — recommendations

    抗菌薬開始後の効果・培養結果に基づく見直し。薬剤選択は国内の指針と個別条件を優先。

  5. PMDA:セフトリアキソンナトリウム静注用 電子添文

    代表薬の過敏反応・消化器症状・配合上の注意。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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