症状・生体機能管理技術内容・リンク確認:2026年8月29日

検体検査

喀痰培養、輸血前検査、バンコマイシンTDM、便培養・便潜血を中心に、正しい採取と提出をつなぐ学習ノート。

学習用。検査によって容器、採取量、採取時刻、保存温度、搬送期限は異なる。検査部門の採取基準、院内手順、指示を優先する。

最初に押さえる注意事項

結果は「採る前」から変わる
  • 氏名だけでなく、患者IDや生年月日など複数の識別情報で本人を確認する。
  • 検査項目、検体の種類、採取部位、容器、必要量、採取条件を指示と照合する。
  • 食事、薬剤、抗菌薬、点滴、安静、月経、排泄時刻など、結果へ影響する条件を確認する。
  • 検体はすべて感染性があり得るものとして扱い、曝露リスクに合う個人防護具を選ぶ。
採った後も検査の一部
  • 患者のそばで容器と本人を再照合し、必要事項を表示する。
  • 漏れないよう密閉。検体袋へ入れ、依頼書は検体に直接触れない区画へ分ける。
  • 必要な温度・遮光・時間を確認し、速やかに提出する。
  • 不一致、容器違い、汚染、漏れ、量不足があれば、隠さず検査部門へ相談する。

検体検査とは

血液、尿、便、喀痰、体液、組織など、体から採取・排出されたものを調べる検査。診断、治療方針、経過観察、感染症の原因検索などに用いる。

患者、検査、検体、容器、搬送を一本の鎖として示す図

正しい結果へつなぐ5つ

  • 患者:誰の検体か
  • 検査:何を調べるか
  • 検体:どこから、いつ採るか
  • 容器:何に、どれだけ入れるか
  • 搬送:何℃で、いつまでに届けるか

分析装置が正確でも、採取から搬送までの過程が不適切なら、患者の状態を正しく反映しない結果になり得る。

必要物品

  • 検査に合う採取容器・保存容器
  • 患者ラベル、検査依頼情報、筆記用具
  • 手袋、手指衛生用品
  • 必要時:マスク、眼の防護具、ガウン・エプロン
  • 清潔な採尿・採便補助容器、ぬぐい用スワブ
  • 密閉できる検体袋、搬送容器
  • 必要時:冷却材、遮光袋、タイマー

「滅菌容器」か「清潔容器」か、保存液・輸送培地が必要かを検査ごとに確認する。キャップの色だけで決めない。

喀痰培養

深い咳で下気道から出す喀痰と、口腔内の唾液を比較した図

必要なのは唾液ではなく喀痰

  • 可能なら採取前に水で含嗽する。マウスウォッシュは避ける
  • 深呼吸後、胸の奥から強く咳をする
  • 出た喀痰を直接、広口の滅菌容器へ入れる
  • 色、粘稠度、血液混入、量を観察する
  • 唾液だけ、食物残渣が多い場合は提出前に相談する
採取方法容器・器具確認ポイント
自己喀出検査室指定の広口・滅菌・漏れ防止容器唾液ではなく、深い咳で出た下気道由来の喀痰を直接入れる。
気管吸引指定の滅菌吸引採取器・喀痰トラップ吸引カテーテルと採取器の接続、無菌操作、採取部位を確認する。

咳による飛沫・体液曝露を見込んで防護具を選ぶ。結核など空気感染が疑われる場合や誘発喀痰では、採取場所・換気・呼吸用防護具を含む専用手順に従う。

輸血前血液検査

患者確認からABO・RhD血液型、不規則抗体検査、交差適合試験へ進む図

何を確かめる検査か

  • ABO・RhD血液型:患者の血液型を確認する
  • 不規則抗体検査:ABO以外の臨床的に重要な赤血球抗体を調べる
  • 交差適合試験:患者血液と赤血球製剤の適合性を確認する
  • 採血前に患者、検査指示、必要な採血管、本数を照合する。
  • 輸血歴、妊娠歴、既往抗体、過去の副反応を確認し、必要情報を共有する。
  • 採血後、患者のそばで容器と本人を再照合し、採取日時を表示する。
  • 血液型確認を別時点の検体で行う運用や、検体の有効期間は院内手順に従う。
  • 緊急輸血では通常と異なる手順がある。採血のために救命処置を遅らせない。

バンコマイシン血中濃度測定

バンコマイシン投与終了後1から2時間の採血と次回投与直前の採血を示す時間軸

濃度だけでなく時刻を測る

  • TDM:血中濃度と患者情報から、有効で安全な投与を検討する
  • ピーク側:2点採血では、投与終了1~2時間後が推奨例
  • トラフ:次回投与の直前に採る
  • AUC:投与後24時間の曝露量を推定して評価する
採血前にそろえる情報
  • 投与量、投与開始・終了時刻、投与間隔
  • 採血した正確な日時と、採血が投与の何回目か
  • 直近の血清クレアチニン、腎機能・尿量の変化
  • 透析・持続的腎代替療法、体重、重症度など投与設計へ影響する情報
  • 採血時刻がずれた場合は、予定時刻へ書き換えず実際の時刻を報告する。
  • バンコマイシンを投与しているラインからの採血は、薬剤混入で高値になるおそれがある。別ルートを基本とし、困難な場合は院内手順へ従う。
  • AUC評価は1点でも行える場合があるが、精度を高めるため2点採血が推奨される。採血点は医師・薬剤師・検査部門の指示で決める。
  • AUC/MIC 400~600は、MIC 1 mg/Lを仮定した代表的な目標。数値だけで自己判断して投与量を変更しない。

便培養

便を清潔で乾いた容器に受け、尿・便器の水・洗浄剤との混入を避ける図

便器の水へ落とす前に受ける

  1. できれば先に排尿する
  2. 清潔で乾いた容器や採便シートで便を受ける
  3. 尿、便器の水、洗浄剤を混ぜない
  4. 指示量を採取。血液、粘液、水様部分があれば目的に応じて含める
  5. 蓋を確実に閉め、外側の汚染を確認する
  • 可能なら抗菌薬開始前に採取する。すでに使用中なら薬剤名と開始時期を共有する。
  • 検査室指定の清潔または滅菌された漏れ防止容器へ入れる。
  • 便のどの部分をどれだけ採るか、輸送培地が必要かを採取基準で確認する。
  • 採取後は速やかに提出。保存温度と搬送期限は対象微生物・検査法で異なる。

便潜血

便の表面を専用スティックで複数箇所こすり、採便容器へ戻す図

専用スティックで便の表面を採る

  1. 便を便器の水へ落とす前に受ける
  2. 専用スティックで便表面の複数箇所をこする
  3. スティックを専用容器へ戻し、確実に閉める
  4. 採取日を記録し、キット指定の温度・期限を守る
  • 大腸がん検診では、免疫便潜血検査2日法が用いられる。2日分は別の日に採る。
  • 採取量、初回から2回目までの日数、保存方法はキットの説明に従う。
  • 採取後は冷蔵保存が望ましく、2回目採取後の速やかな回収が原則とされる。
  • 陽性は「がん確定」ではないが、陰性にするための再検査で済ませず、指示された精密検査へつなぐ。

追加して押さえる:尿検体

初めの尿を捨て、中間尿を容器へ採り、残りを捨てる流れ

中間尿は最初と最後を入れない

  1. 手指衛生。清潔を保てるよう説明する
  2. 排尿の初めは便器へ流す
  3. 途中の尿を容器へ採る
  4. 残りは便器へ流す
  5. 容器の内側や蓋の内側に触れず密閉する
随時尿
採取時刻を問わず採る。採取時刻、食事、薬剤などの条件を記録する。
早朝尿
起床後の尿。濃縮されやすいが、目的と指示を確認する。
中間尿
尿培養などで外陰部・尿道周囲からの混入を減らす採り方。
蓄尿
開始時の尿は捨てて時刻を記録。その後の尿を集め、終了時刻の尿まで入れる。取りこぼしたら自己判断で続けず報告する。

ぬぐい液・その他の検体

  • 咽頭・鼻腔ぬぐい:検査に指定された部位、深さ、回数、スワブ、輸送培地を確認する。目的部位以外へ触れた場合は相談する。
  • 創部・膿:表面の汚染を避け、どの部位・深さから採取したかを明記する。嫌気性菌検査などは専用容器が必要。
  • 髄液・胸水・腹水など:採取介助、容器の順番、緊急搬送が必要な場合がある。外観・量・採取時刻を確認する。
  • 病理組織・細胞診:固定液の種類と量、未固定で出す検体、乾燥を避ける検体を混同しない。

採取から提出までの基本手順

  1. 指示と採取条件を確認

    検査項目、検体、部位、時刻、容器、量、保存・搬送条件を確認。

  2. 患者を確認し説明

    複数の識別情報で本人確認。目的、採り方、苦痛、協力してほしいことを説明。

  3. 物品と環境を準備

    プライバシーと安全を確保。曝露リスクに合う防護具を選ぶ。

  4. 正しい方法で採取

    検査部位を汚染させず、必要量を採る。患者の苦痛と状態を観察。

  5. 密閉し、患者のそばで照合

    容器を閉め、患者・検体・ラベル・依頼情報を一患者ずつ確認。

  6. 袋へ収め、外側を確認

    漏れや外面汚染がないか確認。依頼書を検体と分けて収納。

  7. 条件を守って提出・記録

    温度、遮光、向き、期限を守って搬送。採取時刻、部位、性状、問題を記録・報告。

密閉した検体容器、患者ラベル、分離した依頼書、搬送容器を示す図

提出前の最終確認

  • 患者情報と依頼情報が一致
  • 検体名・採取部位・採取日時が明確
  • 容器が密閉され、外側が汚れていない
  • 必要量があり、保存条件を守っている
  • 検体数と依頼数が一致

再採取になりやすい原因

患者情報不一致、容器違い、量不足、汚染、漏れ、搬送遅延を示す図

検査へ進めない6つの例

  • 患者情報の欠落・不一致
  • 検体や容器の種類が違う
  • 必要量に足りない
  • 他の分泌物、水、消毒薬などが混入
  • 容器の破損・漏れ・外面汚染
  • 温度・遮光・搬送時間が不適切

受け入れ可否は検査項目と施設基準で決まる。貴重で再採取が困難な検体もあるため、自己判断で廃棄・移し替えをせず、検査部門へ連絡する。

観察・報告・記録

  • 採取日時、採取者、検体の種類、採取部位・方法
  • 検体の量、色、混濁、臭い、粘稠度、血液・粘液などの性状
  • 食事、薬剤、抗菌薬、月経、蓄尿の開始・終了などの検査条件
  • 採取時の患者状態、疼痛、出血、咳込み、気分不良など
  • 取りこぼし、汚染、量不足、搬送遅延など、結果解釈へ影響する出来事
  • 提出時刻、提出先、連絡した内容と対応

出典