救急

敗血症

敗血症は、感染に対する体の反応が乱れ、生命を脅かす臓器障害を生じる状態。感染の場所と、新しく悪化した意識・呼吸・循環・腎機能を一緒に捉える。血液培養が陽性になることや高熱が出ることを待たず、疑った変化を共有する。

主な症状
意識変化 呼吸 循環の悪化 腎機能低下
代表的な薬
抗菌薬 ノルアドレナリン
検査値UP
乳酸 CRP
検査値DOWN
血小板 WBC

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

感染への反応の乱れから臓器障害へ

感染への反応の乱れから臓器障害へ感染 → 全身の反応 → 臓器障害肺・尿路・腹部皮膚などの感染脳:意識肺:酸素化腎:尿量・Cr免疫・血管・凝固の調節が乱れる感染源と新しい臓器の変化を共有
  1. 肺・尿路・腹部・皮膚などに感染
  2. 免疫・血管・凝固などの調節が乱れる
  3. 肺・腎・脳などの機能が急に悪化する

観察へ:感染症状だけでなく、普段と違う反応、呼吸数、酸素需要、尿量を確認。菌血症と敗血症は同じ意味ではない。

敗血症性ショック:循環・代謝の障害

敗血症性ショック:循環・代謝の障害感染への反応 → 循環・代謝の障害拡張した血管血管外へ体液が移動組織灌流が不足血圧・皮膚・尿量・乳酸を合わせる
  1. 血管拡張・漏出や心機能低下が重なる
  2. 血管内の有効な循環と微小循環が障害される
  3. 臓器灌流が保てず、昇圧薬などの集中管理が必要になる

観察へ:血圧の回復だけで改善としない。意識・皮膚・尿量・乳酸と、輸液後の呼吸悪化を合わせて追う。

成人を中心とする模式図。局所感染から臓器障害への関係と、循環障害が強い敗血症性ショックを分けて示す。必ず順番どおりに進む病期図ではない。

症状から観察・再確認へ

発熱悪寒感染部位の症状

見る・聞く
体温の推移、咳・痰、排尿症状、腹痛、創部、留置デバイスを確認。
何を反映するか
感染源を探す手がかり。発熱の程度と臓器障害の重さは一致しない。
普段と比較
普段の体温、解熱薬・免疫抑制薬、最近の処置。
悪化を疑う変化
感染症状に意識・呼吸・循環の変化が重なる。
再確認
感染源候補と採取検体、抗菌薬開始の条件を共有。低体温や発熱なしでも見逃さない。

意識変化普段と違う反応

見る・聞く
会話、見当識、眠気、落ち着かなさ、血糖・酸素条件を確認。
何を反映するか
急な脳機能の変化。低灌流以外に低酸素・低血糖・薬剤等も考える。
普段と比較
普段の認知・反応と直前の状態。
悪化を疑う変化
反応低下、気道を保てない、けいれんや新しい局在症状。
再確認
応援要請とABC・血糖確認。治療後も同じ方法で反応を追う。

頻呼吸酸素需要の増加

見る・聞く
呼吸数・努力、会話、SpO₂とデバイス・流量、肺音を確認。
何を反映するか
肺の感染・臓器障害、代謝性アシドーシス、輸液過剰など。
普段と比較
酸素条件と補液前後、普段の呼吸。
悪化を疑う変化
疲弊、意識低下、酸素を増やしても改善しない、補液中の呼吸悪化。
再確認
気道・換気の準備、血液ガスや肺評価を相談。SpO₂だけで改善を決めない。

低血圧皮膚灌流の変化

見る・聞く
血圧・脈、毛細血管再充満、皮膚温・斑状変化、意識を確認。
何を反映するか
循環障害の手がかり。温かい皮膚でも低灌流はありうる。
普段と比較
普段の血圧、輸液・昇圧薬の前後、測定条件。
悪化を疑う変化
灌流不良が続く、昇圧薬の必要量増加、乳酸上昇と臓器機能悪化。
再確認
反応と過負荷を共有し、追加輸液や治療調整を相談。

尿量低下

見る・聞く
時間尿量、出納、カテーテル屈曲・閉塞と膀胱内貯留を確認。
何を反映するか
腎灌流・腎機能の悪化の可能性。尿路閉塞も原因となりうる。
普段と比較
普段のCr、直前の尿量、補液・利尿薬。
悪化を疑う変化
無尿、低灌流所見との併存、K上昇。
再確認
測定系と腎機能を確認し、原因検索・輸液方針を相談。尿量だけで補液を追加しない。

出血皮膚色の悪化

見る・聞く
穿刺部、粘膜、皮下出血、ドレーン排液と血小板・凝固の推移を確認。
何を反映するか
凝固障害や治療関連の出血の可能性。
普段と比較
前回血算、抗血栓薬、処置・輸血の時点。
悪化を疑う変化
出血増加、末梢虚血、循環悪化。
再確認
出血部位・量と検査を共有し、DIC等の評価と処置準備につなぐ。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察できる状態

治療開始後に臓器機能・灌流が改善し、抗菌薬・感染源への対応と監視計画が明確。

次の行動:症状・検査・投与条件を同じ時系列で追う。解熱だけで監視を緩めない。

早めの共有・報告

感染治療中の改善が乏しい、尿量や酸素需要が変化、薬剤副作用や感染源残存が疑われる。

次の行動:直近との比較、投与実績、培養・感受性と処置状況を共有。新しい臓器障害は緊急評価へ。

直ちに応援・緊急対応

感染が疑われ、新しい意識・呼吸・循環の悪化や急速な尿量低下がある。ショック・けいれん・重い呼吸不全。

次の行動:応援要請、ABC・血糖、酸素・モニターと治療物品を準備。スコアや検査結果がそろうまで待たない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|悪化を短く共有

感染源候補と新しい臓器機能の変化を伝える。qSOFAが低いことだけで除外しない。SOFAは臓器障害を整理する評価法で、採血がそろうまで対応を待たず、施設の急変手順につなぐ。

2|気道と循環を守る

意識・呼吸・灌流を確認し、転倒・誤嚥を予防。循環不良で歩かせず、呼吸と循環に合う体位を選びモニターを準備。

3|培養と抗菌薬を並行準備

指示で血液培養2セット以上と感染部位の検体を、可能なら抗菌薬前に採取。採取困難を直ちに共有し治療開始を遅らせない。採取・投与時点を記録。

4|投与条件を照合

アレルギーの具体的な反応、腎機能、最終投与、薬剤・溶解液・速度・配合を確認。指示どおり実際に投与されたかまで確認する。

5|感染源への処置を準備

膿瘍・閉塞・感染デバイスなどの評価に必要な情報を集める。ドレナージ・手術・デバイス対応の指示を確認し、移送と処置後監視を準備。

6|蘇生の反応を追う

輸液量、昇圧薬の濃度・速度、意識・皮膚・尿量・乳酸を並べる。肺うっ血など過負荷を確認し、追加輸液の必要性を再評価。

7|回復期の障害を予防

安定度に合わせた栄養・活動、せん妄・睡眠・皮膚のケアを組み合わせる。デバイスの必要性と退院後の生活支援をチームで見直す。

治療前・中・後の看護

抗菌薬:感染源と耐性リスクに合わせる

目的
原因菌を治療する。
前に確認
培養、感染部位、アレルギー反応、腎肝機能、既往の耐性菌・最近の抗菌薬を確認。
中に観察
初回投与時の呼吸・皮膚・循環、便性状、腎肝機能、投与漏れを確認。
反応・再評価
臓器機能と感染所見、培養・感受性から薬剤・期間の見直しにつなぐ。
適応・注意
代表例へのリンクであり全例の推奨薬ではない。真菌・ウイルス等では別の治療が必要。診断後できるだけ早く開始し、結果後は適正化する。
タゾピペ配合静注用の詳細を開く

感染源コントロール

目的
感染が続く原因を取り除く。
前に確認
膿瘍・尿路や胆道閉塞、感染デバイス、処置可能性と循環を評価。
中に観察
ドレナージ・手術等の準備、検体、出血と呼吸循環を確認。
反応・再評価
排液や局所所見だけでなく臓器機能・灌流の改善を追う。
適応・注意
抗菌薬だけで解決しない原因がある。処置の種類と時期は専門チームで判断。

補液

目的
血管内容量不足を補い灌流を改善する。
前に確認
心腎機能、体液喪失、肺所見と初期反応。
中に観察
血圧・意識・皮膚・尿量、呼吸と投与量を追う。
反応・再評価
臓器灌流が改善し、過剰な体液貯留がないか。
適応・注意
平衡晶質液が選択肢。全員に一律量を続けず、反応性と過負荷を再評価する。
ソルアセトF輸液の詳細を開く

血管収縮薬

目的
循環を支える灌流圧を保つ。
前に確認
容量評価、心機能、製剤・濃度・経路、目標と併用薬を確認。
中に観察
血圧・リズム、末梢虚血、刺入部漏出、尿量と意識を監視。
反応・再評価
昇圧だけでなく臓器灌流が改善するか。
適応・注意
低血圧を伴う場合は初期輸液と並行した早期使用を検討。増減は個別指示・施設手順に従う。
ノルアドリナリン注1mgの詳細を開く

臓器支持と合併症への対応

目的
呼吸・腎・凝固などの障害を支える。
前に確認
呼吸仕事量、血液ガス、K・尿量、出血、治療目標を確認。
中に観察
人工呼吸・腎代替療法等の条件、循環変化とデバイス合併症を監視。
反応・再評価
支持治療への依存度と臓器機能の回復を確認。
適応・注意
敗血症だから全員に同じ支持療法を行うわけではない。治療抵抗性ショックの追加薬も専門評価で決める。

検査の意味と読み方

乳酸

低灌流と治療反応の補助指標。

組み合わせ・推移:肝での処理低下や薬剤等でも上昇する。正常値だけで除外せず、意識・皮膚・尿量と推移を合わせる。

乳酸の検査詳細

血液培養感染部位の培養

原因微生物と感受性を調べる。

組み合わせ・推移:陰性でも否定できず、陽性でも汚染の可能性がある。採取部位・セット・抗菌薬前後と臨床像を照合。

血小板

凝固障害などの手がかり。

組み合わせ・推移:低下には複数の原因がある。出血・凝固検査と経時変化を評価。

血小板の検査詳細

クレアチニン

腎機能の変化を評価。

組み合わせ・推移:普段の値・時間尿量を併用。投薬や循環の前後を比較。

クレアチニンの検査詳細

CRP

炎症反応の経過を評価。

組み合わせ・推移:感染を単独で確定できず、変化に時間差もある。臓器機能・感染源と経過を合わせる。

CRPの検査詳細

白血球

免疫反応や血球減少を評価。

組み合わせ・推移:増加しない例や低下する例もある。分画・免疫抑制・投薬、臓器障害を合わせて判断。

白血球の検査詳細

血液ガス

呼吸と酸塩基の状態を評価。

組み合わせ・推移:酸素・換気条件と採血時点を記録し、呼吸数・努力呼吸・意識の変化と照合する。単一の値だけで改善とせず、治療前後の推移を見る。

pHの検査詳細

PaO2の検査詳細

PaCO2の検査詳細

総ビリルビン

肝の臓器障害を評価する指標の一つ。

組み合わせ・推移:元の肝障害と前回値を確認し、新たな変化かを共有する。単独で敗血症を判断せず、感染とほかの臓器機能の変化を合わせる。

T-Bilの検査詳細

PT-INRAPTT

凝固異常を評価する検査。

組み合わせ・推移:出血部位・量、血小板と検査の推移、抗血栓薬の投与条件を照合する。検査異常だけでDICと決めず、原因の評価につなぐ。

PT-INRの検査詳細

APTTの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|感染と新しい変化

  • 感染が疑われる理由、変化の開始、現在の意識・呼吸・循環。

B|背景と治療

  • 感染源候補、デバイス、免疫抑制、抗菌薬・アレルギー、酸素・輸液・昇圧薬条件。

A|比較と反応

  • 尿量・皮膚灌流・乳酸等の前後、培養採取と実投与の時点、処置・介入への反応。

R|急いで確認すること

  • 抗菌薬・感染源処置、蘇生の調整、再検査と集中管理の必要性。

患者・家族への説明

今起きていること

感染に伴い体の働きが悪くなっている可能性があり、感染の治療と臓器を支える治療を同時に行うと短く伝える。

回復は段階的に進める

退院後も疲労・眠れなさ・集中しにくさ等が残る場合がある。無理に元の活動へ戻さず、困り事を相談して支援につなぐ。

再受診の変化を共有

感染症状が悪化し、息苦しさ・意識の変化・強い脱力が出たら速やかに助けを求める。創の管理、手指衛生、薬と受診予定を確認する。

参考文献

  1. 日本版敗血症診療ガイドライン2024:英語公開版

    CQ1の定義・培養、CQ2の抗菌薬開始・選択、CQ3の蘇生に関する推奨を確認。各治療の詳細条件は個別評価・施設手順で確認。

  2. 日本版敗血症診療ガイドライン2024:日本語本文

    CQ1-2・1-3:臓器障害の推移とスクリーニングの限界。CQ5-1・5-2:凝固異常とDIC類似病態の鑑別。個別の検査値だけで診断を断定しない。

  3. CDC:敗血症の概要

    2026年8月更新。感染部位と症状、緊急性。

  4. CDC:敗血症からの回復

    2025年9月更新。退院後の身体・心理面の困り事、段階的な活動と相談。

  5. PMDA:タゾピペ配合静注用「明治」

    既存の製剤詳細リンクの添文で、禁忌・適応を確認。表示版は2023年9月改訂。全症例への一律投与や一律期間を示すものではない。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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