腎・泌尿器

腎盂腎炎

発熱・腰背部痛に加え、意識・呼吸・循環・尿量を追う。尿路が詰まった感染では、抗菌薬の反応を待つだけでなく、排出路を確保する評価が必要になる。

主な症状
発熱 悪寒 側腹部痛 尿の変化
代表的な薬
抗菌薬
検査値UP
CRP WBC
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

上行性感染:腎盂・腎実質へ

上行性感染:腎盂・腎実質へ:尿路内の感染部位と侵入経路腎臓・腎盂尿管膀胱尿道矢印:細菌の侵入・上行腎盂・腎臓へ感染 → 発熱・腰背部痛
  1. 下部尿路から細菌が上行
  2. 腎盂・腎実質に炎症
  3. 発熱・悪寒・腰背部痛、全身状態の変化

観察へ:膀胱炎の症状が先行しない場合もある。高熱や背部痛がないことだけでは否定しない。

閉塞を伴う感染:排出路の確保が重要

感染した腎盂の尿が閉塞で排出されず、感染と腎障害が悪化しうる感染・炎症腎盂に尿がたまる結石などで閉塞閉塞の手前で停滞排出路を評価抗菌薬に加え、尿を逃がす処置を検討
  1. 結石などが尿の排出を妨げる
  2. 感染した尿が腎盂側にたまる
  3. 感染の持続・腎機能悪化・敗血症のリスク

観察へ:片側の閉塞では全体の尿量が保たれる場合がある。尿が出ていることだけで閉塞を除外しない。画像と症状を合わせる。

上行性感染と、閉塞を伴う場合の違いを示す模式図。閉塞の有無だけで重症度は決まらず、閉塞がなくても敗血症になりうる。画像診断の再現ではない。

症状から観察・再確認へ

発熱悪寒

見る・聞く
体温、悪寒戦慄、呼吸数、血圧・脈拍、末梢冷感、意識を同時に確認。抗菌薬・解熱薬の投与時刻を記録。
何を反映するか
局所感染に対する全身反応を捉える。発熱の高さだけで重症度を決めない。
普段と比較
初回評価からの変化速度、投薬前後、普段の会話・活動と比較。
悪化を疑う変化
呼吸促迫、反応低下、血圧低下・冷感、尿量低下が加わる。
再確認
解熱後も循環と覚醒が改善しているか。悪化時は培養結果や次の採血を待たず共有する。

腰背部痛側腹部痛

見る・聞く
左右、広がり、持続・波、体位との関係、悪寒・嘔吐、鎮痛薬への反応を聞く。強い叩打を繰り返さない。
何を反映するか
腎周囲の炎症や結石・閉塞を考える。疼痛の部位だけでは確定できない。
普段と比較
治療開始前、鎮痛後、排尿・処置後の痛みと比較する。
悪化を疑う変化
強い痛みが持続、循環変化を伴う、いったん改善して再増悪する。
再確認
痛みが軽くなっても発熱・尿量・循環を追い、閉塞や膿瘍の評価が必要か相談。

嘔吐摂取低下

見る・聞く
嘔吐回数、飲水・食事・薬を保持できるか、口渇、体位変換時のふらつき、尿量を確認。
何を反映するか
脱水と内服治療不成立の手がかり。尿路の痛みや全身炎症が関わる。
普段と比較
普段の摂取と直近の出納、点滴開始前後を比較。
悪化を疑う変化
飲めない・薬を吐く、尿量低下、循環不良、眠気が強く誤嚥しそうな状態。
再確認
制吐・補液後に安全に飲めるか、内服を続けられるか。補液による息切れ・浮腫にも注意。

尿量低下

見る・聞く
時間あたり・一定期間の尿量、排尿回数、下腹部膨満、カテーテル・腎瘻の流れ、Crと血圧を確認。
何を反映するか
脱水、感染に伴う腎障害、閉塞や器具の問題を区別する。
普段と比較
普段の腎機能、左右のドレーン別排液、補液・処置前後で比較。
悪化を疑う変化
突然排出が止まる、痛み・発熱が再燃、冷感・意識変化が重なる。
再確認
管の屈曲などを確認後も改善しなければ共有。閉塞解除後は多尿と体液・電解質の変化も追う。

看護判断:変化の緊急度

継続観察

診療計画があり、呼吸・循環・意識が安定し、痛み・摂取・排尿が改善している。

次の行動:処方と再評価計画に沿う。退院後も悪化時の連絡方法と服薬継続を確認。

早めに共有

嘔吐で内服できない、痛みや発熱が持続・再燃する、排液が減る、閉塞・結石の疑いがある。

次の行動:投与経路、培養結果、画像による閉塞・膿瘍評価の要否を相談する。

直ちに応援要請

意識低下、呼吸促迫、血圧低下・冷感、乏尿など急な全身悪化。感染に閉塞が重なり悪化している。

次の行動:急変対応を起動し、呼吸循環の評価・緊急抗菌薬・排出路確保の準備を進める。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

まず全身状態を評価

意識・呼吸・循環を確認し、悪化時は応援要請。痛みで移動しづらい場合の転倒や、嘔吐時の誤嚥を防ぐ。

培養と投薬条件をそろえる

尿培養、必要な血液培養・採血を指示に沿って準備。可能なら抗菌薬前に採取するが、不安定な患者の治療を採取のために遅らせない。

閉塞の情報を集める

結石・尿路手術・ステントの有無、尿量と画像所見を共有。緊急処置の説明・同意、移送、物品、絶食などの指示を確認する。

水分と苦痛を調整

出納と循環に応じた補液指示を確認。飲水や安静を一律に指定せず、痛み・嘔吐・循環に合わせ介助する。

介入後の変化を追う

抗菌薬後の有害反応と全身状態、ドレナージ後の排液・出血・疼痛を確認。排出開始だけで感染が制御されたと判断しない。

治療前・中・後の看護

抗菌薬(感受性・重症度に応じて)

目的
腎盂・腎実質の細菌感染を治療する。
前に確認
尿・血液培養の採取状況、耐性菌歴、直近の抗菌薬、アレルギー、腎肝機能、内服の可否を確認。
中に観察
発疹・喘鳴・血圧低下、下痢、点滴部位、痛み・悪寒・循環の推移を追う。
反応・再評価
症状と臓器機能の改善、培養・感受性結果を共有し、薬の変更や内服への移行を確認。
適応・注意
静注セフェム系の一例としてセフトリアキソンへ接続。耐性菌や重症度により別薬が必要。カルシウム含有液との配合・同時投与を避ける手順を確認。
セフトリアキソンナトリウム水和物の詳細を開く

尿管ステント・腎瘻によるドレナージ

目的
閉塞の上流にたまる尿を逃がし、感染源の制御を助ける。
前に確認
処置側、閉塞部位、凝固・抗血栓薬、アレルギー、循環状態、麻酔・鎮静と絶食の指示を確認。
中に観察
処置後の血圧・意識・発熱、排液量・血尿、疼痛、腎瘻刺入部と固定を観察。
反応・再評価
排液と痛みだけでなく循環・腎機能の回復を見る。急な排液減少、漏れ、血塊や再発熱は共有する。
適応・注意
ステントは体内、腎瘻は体外へ排出する器具。方式は病変と全身状態で選択。自己判断で抜去・洗浄・クランプしない。

補液・症状緩和

目的
摂取低下や循環血液量不足を補い、痛み・嘔吐を軽減する。
前に確認
出納、血圧・末梢循環、心不全・腎機能、体重、嘔吐と内服の可否を確認。
中に観察
投与速度・量、尿量、呼吸音・息切れ・浮腫、鎮痛・制吐薬の効果と眠気を追う。
反応・再評価
循環・摂取が回復したかを評価。尿量だけを目標に輸液を増やさず、改善不良を報告。
適応・注意
重症感染では個別の循環管理が必要。水分制限のある人に大量飲水を促さない。

検査の意味と読み方

尿検査尿培養

尿中の炎症所見、菌と感受性を評価する。

組み合わせ・推移:採尿条件、抗菌薬前後、症状と合わせる。培養陽性だけで病型や重症度は決まらず、投薬後の陰性だけで感染を否定しない。

血液培養

血液中の病原体を調べ、治療選択に役立てる。

組み合わせ・推移:必要性を確認して採取。陰性でも敗血症は否定できない。陽性時は菌種、汚染の可能性、全身状態を合わせて共有。

CRP

炎症反応の推移をみる。

組み合わせ・推移:尿路に特異的ではなく、症状より遅れて変化しうる。解熱・痛み・循環と併せて反応を判断。

CRPの検査詳細

WBC

感染への全身反応の手がかり。

組み合わせ・推移:増加だけでなく減少も臨床状態と合わせる。正常値でも重症化を否定せず推移を追う。

WBCの検査詳細

Cr

腎機能と治療時の薬剤条件を評価。

組み合わせ・推移:上昇は閉塞・脱水・全身感染など複数の原因がある。尿量・血圧・画像と比較し、回復後も元の値へ戻ったか確認。

Crの検査詳細

超音波CT

水腎症、結石、膿瘍など治療に関わる病変を調べる。

組み合わせ・推移:全例に同一の検査は行わない。閉塞疑い、重症化、改善不良などを共有し検査を相談。造影の有無と腎機能・アレルギーを確認。

報告:SBARで情報をそろえる

S:変化の速さ

  • 発熱・悪寒・腰背部痛の経過と現在の意識、呼吸、血圧、末梢循環、尿量。

B:閉塞と抗菌薬

  • 結石、ステント・腎瘻、手術歴、妊娠の可能性、腎機能、耐性菌歴。
  • 投薬・培養採取時刻、酸素と補液の条件。

A:介入と反応

  • 処置前後の排液・痛み、補液と尿量、検査推移、内服の保持、抗菌薬後の反応。

R:緊急に必要な評価

  • 敗血症対応、尿路閉塞・膿瘍の画像評価、ドレナージ、抗菌薬・投与経路の変更と再評価時点。

患者・家族への説明

改善途中の悪化を伝える

熱が戻る、背中の痛みが強くなる、飲めない、尿が少ないときは早めに相談。意識や呼吸が変わるときは直ちに助けを求める。

内服を続ける条件を確認

処方された期間を確認し、症状が消えても自己中断しない。嘔吐で飲めないときや有害反応は相談する。

器具の管理と次回受診

尿の通り道を保つステントや、背中から腎臓へ入れた管(腎瘻)がある場合は、交換・抜去予定と連絡先を確認。排液停止・漏れ・抜けかけを自己修正せず連絡する。

参考文献

  1. 日本泌尿器科学会:排尿症状を伴う発熱

    腎盂腎炎の症状と全身状態による治療の違い。

  2. 京都大学泌尿器科:尿路感染症

    水腎症を伴う感染とステント・腎瘻による排出。

  3. NIDDK:腎盂腎炎の治療

    抗菌薬、重症例、閉塞への治療。

  4. NIDDK:腎盂腎炎の診断

    尿・血液・画像検査の役割。

  5. PMDA:セフトリアキソン電子添文

    代表薬の国内適応・有害反応・配合上の注意。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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