検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
上行性感染:腎盂・腎実質へ
- 下部尿路から細菌が上行
- 腎盂・腎実質に炎症
- 発熱・悪寒・腰背部痛、全身状態の変化
観察へ:膀胱炎の症状が先行しない場合もある。高熱や背部痛がないことだけでは否定しない。
閉塞を伴う感染:排出路の確保が重要
- 結石などが尿の排出を妨げる
- 感染した尿が腎盂側にたまる
- 感染の持続・腎機能悪化・敗血症のリスク
観察へ:片側の閉塞では全体の尿量が保たれる場合がある。尿が出ていることだけで閉塞を除外しない。画像と症状を合わせる。
上行性感染と、閉塞を伴う場合の違いを示す模式図。閉塞の有無だけで重症度は決まらず、閉塞がなくても敗血症になりうる。画像診断の再現ではない。
症状から観察・再確認へ
発熱・悪寒
- 見る・聞く
- 体温、悪寒戦慄、呼吸数、血圧・脈拍、末梢冷感、意識を同時に確認。抗菌薬・解熱薬の投与時刻を記録。
- 何を反映するか
- 局所感染に対する全身反応を捉える。発熱の高さだけで重症度を決めない。
- 普段と比較
- 初回評価からの変化速度、投薬前後、普段の会話・活動と比較。
- 悪化を疑う変化
- 呼吸促迫、反応低下、血圧低下・冷感、尿量低下が加わる。
- 再確認
- 解熱後も循環と覚醒が改善しているか。悪化時は培養結果や次の採血を待たず共有する。
腰背部痛・側腹部痛
- 見る・聞く
- 左右、広がり、持続・波、体位との関係、悪寒・嘔吐、鎮痛薬への反応を聞く。強い叩打を繰り返さない。
- 何を反映するか
- 腎周囲の炎症や結石・閉塞を考える。疼痛の部位だけでは確定できない。
- 普段と比較
- 治療開始前、鎮痛後、排尿・処置後の痛みと比較する。
- 悪化を疑う変化
- 強い痛みが持続、循環変化を伴う、いったん改善して再増悪する。
- 再確認
- 痛みが軽くなっても発熱・尿量・循環を追い、閉塞や膿瘍の評価が必要か相談。
嘔吐・摂取低下
- 見る・聞く
- 嘔吐回数、飲水・食事・薬を保持できるか、口渇、体位変換時のふらつき、尿量を確認。
- 何を反映するか
- 脱水と内服治療不成立の手がかり。尿路の痛みや全身炎症が関わる。
- 普段と比較
- 普段の摂取と直近の出納、点滴開始前後を比較。
- 悪化を疑う変化
- 飲めない・薬を吐く、尿量低下、循環不良、眠気が強く誤嚥しそうな状態。
- 再確認
- 制吐・補液後に安全に飲めるか、内服を続けられるか。補液による息切れ・浮腫にも注意。
尿量低下
- 見る・聞く
- 時間あたり・一定期間の尿量、排尿回数、下腹部膨満、カテーテル・腎瘻の流れ、Crと血圧を確認。
- 何を反映するか
- 脱水、感染に伴う腎障害、閉塞や器具の問題を区別する。
- 普段と比較
- 普段の腎機能、左右のドレーン別排液、補液・処置前後で比較。
- 悪化を疑う変化
- 突然排出が止まる、痛み・発熱が再燃、冷感・意識変化が重なる。
- 再確認
- 管の屈曲などを確認後も改善しなければ共有。閉塞解除後は多尿と体液・電解質の変化も追う。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
診療計画があり、呼吸・循環・意識が安定し、痛み・摂取・排尿が改善している。
次の行動:処方と再評価計画に沿う。退院後も悪化時の連絡方法と服薬継続を確認。
早めに共有
嘔吐で内服できない、痛みや発熱が持続・再燃する、排液が減る、閉塞・結石の疑いがある。
次の行動:投与経路、培養結果、画像による閉塞・膿瘍評価の要否を相談する。
直ちに応援要請
意識低下、呼吸促迫、血圧低下・冷感、乏尿など急な全身悪化。感染に閉塞が重なり悪化している。
次の行動:急変対応を起動し、呼吸循環の評価・緊急抗菌薬・排出路確保の準備を進める。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
まず全身状態を評価
意識・呼吸・循環を確認し、悪化時は応援要請。痛みで移動しづらい場合の転倒や、嘔吐時の誤嚥を防ぐ。
培養と投薬条件をそろえる
尿培養、必要な血液培養・採血を指示に沿って準備。可能なら抗菌薬前に採取するが、不安定な患者の治療を採取のために遅らせない。
閉塞の情報を集める
結石・尿路手術・ステントの有無、尿量と画像所見を共有。緊急処置の説明・同意、移送、物品、絶食などの指示を確認する。
水分と苦痛を調整
出納と循環に応じた補液指示を確認。飲水や安静を一律に指定せず、痛み・嘔吐・循環に合わせ介助する。
介入後の変化を追う
抗菌薬後の有害反応と全身状態、ドレナージ後の排液・出血・疼痛を確認。排出開始だけで感染が制御されたと判断しない。
治療前・中・後の看護
抗菌薬(感受性・重症度に応じて)
- 目的
- 腎盂・腎実質の細菌感染を治療する。
- 前に確認
- 尿・血液培養の採取状況、耐性菌歴、直近の抗菌薬、アレルギー、腎肝機能、内服の可否を確認。
- 中に観察
- 発疹・喘鳴・血圧低下、下痢、点滴部位、痛み・悪寒・循環の推移を追う。
- 反応・再評価
- 症状と臓器機能の改善、培養・感受性結果を共有し、薬の変更や内服への移行を確認。
- 適応・注意
- 静注セフェム系の一例としてセフトリアキソンへ接続。耐性菌や重症度により別薬が必要。カルシウム含有液との配合・同時投与を避ける手順を確認。
セフトリアキソンナトリウム水和物の詳細を開く尿管ステント・腎瘻によるドレナージ
- 目的
- 閉塞の上流にたまる尿を逃がし、感染源の制御を助ける。
- 前に確認
- 処置側、閉塞部位、凝固・抗血栓薬、アレルギー、循環状態、麻酔・鎮静と絶食の指示を確認。
- 中に観察
- 処置後の血圧・意識・発熱、排液量・血尿、疼痛、腎瘻刺入部と固定を観察。
- 反応・再評価
- 排液と痛みだけでなく循環・腎機能の回復を見る。急な排液減少、漏れ、血塊や再発熱は共有する。
- 適応・注意
- ステントは体内、腎瘻は体外へ排出する器具。方式は病変と全身状態で選択。自己判断で抜去・洗浄・クランプしない。
補液・症状緩和
- 目的
- 摂取低下や循環血液量不足を補い、痛み・嘔吐を軽減する。
- 前に確認
- 出納、血圧・末梢循環、心不全・腎機能、体重、嘔吐と内服の可否を確認。
- 中に観察
- 投与速度・量、尿量、呼吸音・息切れ・浮腫、鎮痛・制吐薬の効果と眠気を追う。
- 反応・再評価
- 循環・摂取が回復したかを評価。尿量だけを目標に輸液を増やさず、改善不良を報告。
- 適応・注意
- 重症感染では個別の循環管理が必要。水分制限のある人に大量飲水を促さない。
検査の意味と読み方
尿検査・尿培養
尿中の炎症所見、菌と感受性を評価する。
組み合わせ・推移:採尿条件、抗菌薬前後、症状と合わせる。培養陽性だけで病型や重症度は決まらず、投薬後の陰性だけで感染を否定しない。
血液培養
血液中の病原体を調べ、治療選択に役立てる。
組み合わせ・推移:必要性を確認して採取。陰性でも敗血症は否定できない。陽性時は菌種、汚染の可能性、全身状態を合わせて共有。
CRP
炎症反応の推移をみる。
組み合わせ・推移:尿路に特異的ではなく、症状より遅れて変化しうる。解熱・痛み・循環と併せて反応を判断。
CRPの検査詳細
WBC
感染への全身反応の手がかり。
組み合わせ・推移:増加だけでなく減少も臨床状態と合わせる。正常値でも重症化を否定せず推移を追う。
WBCの検査詳細
Cr
腎機能と治療時の薬剤条件を評価。
組み合わせ・推移:上昇は閉塞・脱水・全身感染など複数の原因がある。尿量・血圧・画像と比較し、回復後も元の値へ戻ったか確認。
Crの検査詳細
超音波・CT
水腎症、結石、膿瘍など治療に関わる病変を調べる。
組み合わせ・推移:全例に同一の検査は行わない。閉塞疑い、重症化、改善不良などを共有し検査を相談。造影の有無と腎機能・アレルギーを確認。
報告:SBARで情報をそろえる
S:変化の速さ
- 発熱・悪寒・腰背部痛の経過と現在の意識、呼吸、血圧、末梢循環、尿量。
B:閉塞と抗菌薬
- 結石、ステント・腎瘻、手術歴、妊娠の可能性、腎機能、耐性菌歴。
- 投薬・培養採取時刻、酸素と補液の条件。
A:介入と反応
- 処置前後の排液・痛み、補液と尿量、検査推移、内服の保持、抗菌薬後の反応。
R:緊急に必要な評価
- 敗血症対応、尿路閉塞・膿瘍の画像評価、ドレナージ、抗菌薬・投与経路の変更と再評価時点。
患者・家族への説明
改善途中の悪化を伝える
熱が戻る、背中の痛みが強くなる、飲めない、尿が少ないときは早めに相談。意識や呼吸が変わるときは直ちに助けを求める。
内服を続ける条件を確認
処方された期間を確認し、症状が消えても自己中断しない。嘔吐で飲めないときや有害反応は相談する。
器具の管理と次回受診
尿の通り道を保つステントや、背中から腎臓へ入れた管(腎瘻)がある場合は、交換・抜去予定と連絡先を確認。排液停止・漏れ・抜けかけを自己修正せず連絡する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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