呼吸・循環を整える技術更新・文献確認:2026年8月28日

IN-OUTバランス

入った量と出た量を引くだけで終わらない。測れた数字を、体重・呼吸・循環・尿量・治療目標とつなげて読む学習ノート。

学習用。水分・電解質の目標、輸液、飲水制限、利尿薬、透析・除水は、患者の病態、指示、製品表示、院内手順を優先する。

注意事項

数字だけで補液・制限を決めない
  • IN−OUTがプラスでも、循環血液量が足りないことがある
  • IN−OUTがマイナスでも、体液過剰が残ることがある
  • 尿量だけで腎機能や腎血流を断定しない
  • 心不全、腎不全、肝不全、敗血症、術後、熱傷では水分の分布が変わる
  • 急な呼吸困難、意識変化、ショック、無尿、急速な出血は集計より患者評価を優先する

IN-OUTバランスとは

体へ入る水分INから体外へ出る水分OUTを引いて測定期間の水分出納を求め、体重や症状と合わせて評価する図
水分出納は「測定した期間の差」。体内の水分量そのものを直接測った値ではない。
基本式
  • 水分出納 = INの合計 − OUTの合計
  • プラス:記録上、入った量が出た量より多い
  • マイナス:記録上、出た量が入った量より多い
  • 評価単位はmL。開始・終了時刻を必ずそろえる

「プラス=体液過剰」「マイナス=脱水」と直結させない。測定漏れ、不感蒸泄、体液の血管外移動、治療目標を考える。

何をIN・OUTに含めるか

INに飲水、食事・経管栄養、輸液・薬剤、血液製剤を、OUTに尿、便・嘔吐、排液・吸引、出血を整理した図
少量のフラッシュや薬剤希釈液も積み重なる。何を集計するかを勤務帯・部署でそろえる。
IN
  • 飲水、氷、ゼリーなど経口から入った水分
  • 食事に含まれる水分を集計する場合の食事水
  • 経管栄養剤、投与前後のフラッシュ
  • 末梢・中心静脈からの輸液、薬剤希釈液、持続注入
  • 血液製剤、透析・補助循環などで体内へ入った量
OUT
  • 自然排尿、尿道カテーテル、腎瘻などからの尿
  • 液状便、ストーマ排液、嘔吐
  • ドレーン、胃管吸引、胸腔・腹腔からの排液
  • 測定できた出血、透析・限外濾過などで除去した量
  • 創部や瘻孔からの排液など、施設で集計対象とするもの

測定の手順

  1. 水分出納を集計する開始時刻と終了時刻を決める図
    集計する期間と目標を確認

    勤務帯、24時間、術中など、開始・終了時刻を統一。目標バランス、尿量測定間隔、報告基準を確認する。

  2. 飲水、食事、経管栄養、輸液、薬剤をINとして記録する図
    INを投与した時点で記録

    口から入った量と、輸液・薬剤・栄養・フラッシュを確認。同じ量を二重に計上しない。

  3. 尿、便、嘔吐、ドレーン、出血をOUTとして測定する図
    OUTを同じ単位で測る

    排液容器の目盛り、重量換算、装置表示など、測定方法を明記。廃棄する前に量と性状を記録する。

  4. 水分出納記録の重複、漏れ、時刻、単位を確認する図
    重複・漏れ・境界時刻を確認

    前勤務帯との引き継ぎ、バッグ交換、ボトル残量、装置積算値、mLとLの単位を照合する。

  5. 計算結果を体重、呼吸、循環、浮腫、尿量、検査値と照合する図
    計算して患者の変化と照合

    合計値だけで終えず、体重、呼吸、血圧、浮腫、尿量、腎機能、Naを前回と比べる。

計算例

飲水1200、食事水1000、代謝水250をIN、尿1000、不感蒸泄750、便100をOUTとして差600mLを求める学習用計算例
体重50kg、不感蒸泄15mL/kg/日、代謝水5mL/kg/日という条件が指定された学習問題の例。
  1. IN:1,200+1,000+250=2,450mL
  2. OUT:1,000+750+100=1,850mL
  3. 水分出納:2,450−1,850=+600mL/日

「必要水分量」の読み方

体重に一律の数値を掛けず、維持、欠乏、継続喪失、再分布、治療目標を分ける図

維持量と総必要量を分ける

  • 安定した成人の静脈内維持輸液では、水分25~30mL/kg/日が初期目安の一つ
  • 高齢・フレイル、腎機能低下、心不全などでは20~25mL/kg/日など少ない量を検討する
  • 既存の不足・過剰、発熱、下痢、嘔吐、ドレーン排液、出血は別に加減する
  • 経口・経管・薬剤・栄養から入る水分も総量へ含める

25~30mL/kg/日は、すべての人の飲水目標でも、輸液指示でもない。妊娠、重い腎・肝疾患、熱傷などは別の評価が必要。

収支を4方向から読む

IN-OUTを体重、呼吸、循環・末梢、腎・検査の4方向から評価する図
単日の差より、同じ条件で測った推移と患者の反応を重視する。
  • 体重:同じ体重計、時間、衣服、排泄条件で前回と比較
  • 呼吸:呼吸数、SpO₂、呼吸困難、起座呼吸、肺音
  • 循環・末梢:血圧、脈拍、起立時症状、頸静脈、浮腫、末梢冷感、毛細血管再充満
  • 腎・検査:尿量と性状、Cr・BUN、Na・K、Hb・Ht、必要時の画像や超音波

急な体重変化は体液変化の手がかりだが、測定条件、便、食事、衣服、装置、筋肉量の変化でもずれる。

体液過剰・不足を疑う変化

体液過剰を疑う体重増加、浮腫、頸静脈怒張、呼吸困難、肺音、血圧変化の図

体液過剰を疑う

  • 短期間の体重増加、末梢・仙骨部浮腫
  • 呼吸困難、起座呼吸、SpO₂低下、湿性ラ音
  • 頸静脈怒張、血圧上昇または病態に伴う低下
  • 尿量低下、利尿反応低下
  • 胸部画像、超音波、BNPなどの変化
体液不足を疑う体重減少、口腔乾燥、頻脈、血圧低下、末梢冷感、尿量低下の図

体液不足を疑う

  • 短期間の体重減少、口渇、口腔粘膜の乾燥
  • 頻脈、血圧低下、起立時のめまい・ふらつき
  • 末梢冷感、毛細血管再充満遅延、意識変化
  • 尿量低下、濃縮尿
  • 嘔吐、下痢、発熱、発汗、出血、摂取不足

尿量の読み方

尿量低下時に患者、カテーテル、循環、腎機能、薬剤を順に確認する図

少ないときは原因を分ける

  • 測定漏れ、排尿容器、尿道カテーテルの屈曲・閉塞
  • 摂取不足、発熱、消化管喪失、出血
  • 低血圧、心拍出量低下、敗血症
  • 腎実質障害、尿路閉塞
  • 利尿薬、造影剤、腎毒性薬剤などの影響
0.5mL/kg/時をどう使うか
  • KDIGOでは、6時間以上0.5mL/kg/時未満がAKI診断基準の一部
  • 単回の1時間尿量だけでAKIと診断しない
  • 尿量が保たれていてもAKIは否定できない
  • 尿量を増やすこと自体を治療目標にしない

尿量測定だけを目的に膀胱留置カテーテルを漫然と続けない。厳密な時間尿量が治療判断に必要か、感染リスクと合わせて毎日確認する。

計算を補正して考える場面

  • 発熱・多呼吸・発汗:測れない喪失が増える可能性。環境、体温、呼吸数を記録
  • 下痢・嘔吐・瘻孔・ドレーン:量だけでなく色、性状、回数、電解質喪失を確認
  • 出血:排液量に見えない出血もある。循環、Hb、創部、画像を合わせる
  • 利尿薬・透析:尿量や除水量と、血圧、体重、腎機能、電解質、症状をつなぐ
  • 心不全・腎不全・肝硬変:全身に水分が多くても、有効循環血液量が不足することがある
  • 術後・敗血症・低アルブミン:血管外への移動や浮腫があり、単純な収支と循環が一致しないことがある
  • 高血糖・高Na血症:浸透圧利尿や自由水不足を含め、電解質と血糖を確認

報告・記録

記録すること

  • 集計期間、目標バランス、測定間隔
  • IN・OUTの内訳、合計、差
  • 測定方法、推定値、測定できなかった量
  • 体重と測定条件、血圧、脈拍、呼吸、SpO₂
  • 尿量・性状、浮腫、口渇、肺音、意識、末梢循環
  • Cr・BUN、Na・Kなどの検査値と推移
  • 輸液、利尿薬、透析、飲水制限などの治療と反応
報告は「差+変化+背景」
  • 「24時間で+1,200mL」
  • 「前日より体重1.0kg増加、下腿浮腫が増えた」
  • 「呼吸数増加、SpO₂低下、湿性ラ音がある」
  • 「尿量は直近6時間で低下し、カテーテル屈曲はない」

出典