症状・生体機能管理技術更新・文献確認:2026年8月29日

胃管

「鼻から入っている管」でまとめない。どこに先端があり、何のための管で、何を注入・吸引できる製品かを分けて見る学習ノート。

学習用。挿入可否、チューブ選択、挿入長、位置確認、吸引、注入、洗浄、交換・抜去は、患者ごとの指示、製品の電子添文、院内手順を優先する。

注意事項

確認できるまで何も入れない
  • 誤って気管・肺へ入ると、栄養剤や薬剤の注入で重篤な障害を起こす
  • 初回挿入後は、指示された適切な方法で先端位置を確認する
  • 気泡音だけで胃内留置と判断しない
  • 抜け・ずれ・嘔吐・激しい咳・呼吸状態悪化があれば使用を止める
  • 確認結果が不明なまま、栄養剤・薬剤・水・空気を注入しない
挿入前に医師へ確認する状態
  • 頭蓋底骨折や重い顔面・鼻腔外傷を疑う
  • 食道狭窄・損傷、腐食性物質の誤飲、最近の上部消化管手術
  • 食道静脈瘤、出血傾向、鼻出血を繰り返す
  • 意識・咳嗽・嚥下・呼吸が不安定
  • 過去に挿入困難や誤挿入があった

胃管の目的

胃管の目的を栄養・水分・薬剤投与、胃内容の採取、減圧・排液、洗浄・術後管理に分けた図
同じ管で全部できるとは限らない。目的に合う内径、先端、側孔、ルーメン、コネクタを選ぶ。
  • 経腸栄養:栄養剤、水分、指示された薬剤を消化管へ投与する
  • 減圧・排液:胃内の液体やガスを外へ出し、膨満・嘔吐を軽減する
  • 観察・検査:胃内容の量・色・性状を確認し、必要時に検体を採取する
  • 洗浄・処置:適応と専用製品を選び、医師の指示下で行う

誤嚥を完全に防ぐ器具ではない。胃内容、逆流、意識、咳嗽、体位、投与方法を合わせて管理する。

NGチューブとEDチューブの違い

NGチューブは鼻から胃という経路と先端位置、EDチューブは経腸栄養を主目的とする製品群で、胃内または幽門後に留置されることを比較した図
NGは「どこを通り、どこまでか」。EDは「何に使う製品か」。分類の軸が違う。
NGチューブ(nasogastric tube)
  • 鼻から食道を通り、先端を胃内へ置くチューブ
  • 栄養用、投薬用、減圧・排液用など目的が異なる製品がある
  • 細径・太径、単腔・複腔、側孔、材質、コネクタが異なる
  • 「NGだから吸引できる」「NGだから栄養に使える」と決めない
EDチューブ(elemental diet/経腸栄養用チューブ)
  • 経腸栄養を主目的とする細径チューブの呼び方・製品名として使われる
  • 製品と指示により、先端を胃、十二指腸、空腸へ置く
  • 診療報酬上の「EDチューブ挿入術」は、X線透視下で十二指腸・空腸まで留置する手技を指す
  • 細径のため閉塞しやすく、通常の胃減圧管と同じ吸引には使えない製品がある

先端位置でできることが変わる

鼻から食道を通り胃内へ留置するNGと、胃を越えて十二指腸・空腸へ留置する幽門後チューブの位置を比較する図
鼻元の目盛りが同じでも、体内で折れたり戻ったりすることがある。画像や承認された方法で先端を確認する。
  • 胃内:胃の貯留能を利用できる。胃内容の吸引・減圧は対応製品で行う
  • 十二指腸・空腸:幽門を越えて投与する。通常、胃内投与より持続的で慎重な投与管理が必要
  • 食道内・咽頭内:誤留置。逆流・誤嚥につながるため使用しない
  • 気管・肺:誤挿入。直ちに使用せず、安全に対応する

挿入前の観察

  • 目的、予定する先端位置、製品、挿入経路、使用期間
  • 本人確認、説明への理解、過去の挿入歴と困難
  • 意識、呼吸数、SpO₂、咳嗽、嚥下、分泌物
  • 鼻腔の通り、出血、疼痛、変形、皮膚、左右差
  • 口腔・咽頭、義歯、嘔吐反射、誤嚥リスク
  • 腹部膨満、疼痛、悪心・嘔吐、腸蠕動、排便・排ガス
  • 抗凝固薬、出血傾向、上部消化管疾患・手術歴

必要物品

  • 指示された種類・太さ・長さのチューブ
  • 製品指定のコネクタ・キャップ
  • 水溶性潤滑剤
  • 手袋
  • 必要時、マスク・眼の防護具・エプロン
  • 防水シートまたはタオル
  • ティッシュまたはガーゼ
  • 膿盆または嘔吐物受け
  • 固定用テープまたは専用固定具
  • 皮膚保護材
  • 長さを測る器具
  • 油性ペンなどマーキング用品
  • 経腸栄養用シリンジ
  • 吸引・排液する場合、指示された吸引装置・排液バッグ
  • 必要時、SpO₂モニター
  • 位置確認に必要な物品・検査
  • 廃棄物袋

聴診器だけを位置確認物品として準備しない。製品によってスタイレット、ガイドワイヤ、透視、専用確認装置が必要になる。

経鼻胃管挿入の流れ

  1. 指示、目的、患者、チューブ製品を照合する図
    指示・目的・製品を照合

    胃内か幽門後か、栄養か減圧かを確認。電子添文、禁忌・注意、実施者、位置確認方法をそろえる。

  2. 患者の上体を起こし呼吸状態を観察できる体位に整える図
    説明し、呼吸を見られる体位へ

    可能なら上体を起こす。義歯、嘔吐物受け、吸引、ナースコールを確認。中止の合図を共有する。

  3. 製品と院内手順に従って予定挿入長を測り印を付ける図
    予定挿入長を測って印を付ける

    患者の体格、予定先端位置、製品表示、院内手順に従う。全員へ同じ長さ・同じ測定式を当てはめない。

  4. 潤滑したチューブを鼻腔底に沿ってやさしく進める図
    潤滑し、無理なく進める

    鼻腔底に沿わせる。咽頭通過は嚥下できる患者なら安全を確認して協力を得る。抵抗に逆らわない。

  5. 咳、呼吸困難、SpO2低下、抵抗があれば挿入を止める図
    呼吸変化・咳・抵抗なら止める

    激しい咳、呼吸困難、チアノーゼ、SpO₂低下、発声困難、強い痛み、出血があれば中止して評価する。

  6. 予定位置でチューブを仮固定し鼻元の目盛りを記録する図
    予定位置で仮固定

    鼻元の目盛り、口腔内のたわみ、患者の呼吸を確認。画像確認前に深く押し込んだり引き戻したりしない。

  7. X線などの適切な方法でチューブ先端位置を確認する図
    先端位置を確認してから使用

    X線撮影など院内で承認された方法で確認。誰が画像・結果を確認したかを記録し、その後に本固定する。

幽門後へのEDチューブ留置、内視鏡・透視・ガイドワイヤ・スタイレット操作は、製品と手技ごとの訓練・権限に従う。

先端位置確認

初回挿入後はX線などで確認し、使用前は鼻元の目盛り、固定、口腔内、患者症状を確認し、疑わしければ使用を止めて再確認する流れ
「前回使えた」は、今も正しい位置にある証拠ではない。移動・咳・嘔吐・体位変換後も疑う。
初回挿入・再挿入後
  • X線撮影など、目的と先端位置に適した方法で確認する
  • 幽門後留置は透視や画像で十二指腸・空腸の位置を確認する
  • 画像では先端だけでなく、チューブ全体の走行と側孔位置も見る
  • 確認者、結果、使用開始可否、鼻元の長さを記録する
毎回の使用前・勤務ごと
  • 鼻元の目盛りと記録値
  • 固定の緩み、テープのずれ、チューブの牽引
  • 口腔・咽頭内でのたわみ、とぐろ
  • 咳、呼吸困難、SpO₂低下、嘔吐、逆流、疼痛
  • 院内手順に基づく胃内容吸引・pHなどの確認

栄養・水・薬剤を投与するとき

  • 先端位置、指示、患者、栄養剤・薬剤、量、速度、経路を確認する
  • 経腸栄養用コネクタを使い、静脈ラインへ接続できないことを確認する
  • 投与中は上半身挙上など誤嚥リスクを下げる体位を患者に合わせて整える
  • 腹部膨満、悪心、嘔吐、逆流、腹痛、下痢、便秘を観察する
  • 咳、湿性嗄声、呼吸数増加、SpO₂低下、発熱など誤嚥を疑う変化を見る
  • 前後のフラッシュ量・方法は製品、薬剤、患者の水分管理に合わせる
  • 薬剤は剤形、配合、粉砕可否、栄養剤との相互作用を薬剤師へ確認する

幽門後留置ではボーラス投与が適さない場合がある。投与方式と速度は、先端位置と処方を優先する。

減圧・排液するとき

胃管からの排液量、色、性状、吸引圧、チューブの屈曲、腹部を確認する図

管だけでなく腹部と全身を見る

  • 吸引方法:自然排液、間欠・持続吸引、設定圧
  • 排液:量、色、混濁、臭気、血液、便様物
  • 腹部:膨満、疼痛、硬さ、悪心・嘔吐、排ガス
  • 管:屈曲、閉塞、接続、側孔位置、固定
  • 全身:循環、脱水、電解質、酸塩基平衡

留置中の管理

鼻翼、頬、耳、口腔を観察し圧迫と牽引を避けて固定する図

固定と皮膚・粘膜

  • 鼻翼の発赤、びらん、潰瘍、出血、疼痛
  • 頬・耳周囲のテープかぶれ、圧迫、牽引
  • 口腔乾燥、舌苔、痰、咽頭痛、耳痛、副鼻腔症状
  • チューブの重みを分散し、鼻翼へ食い込ませない
  • 固定交換時も鼻元の長さを保持する
経腸栄養用シリンジで無理な圧をかけずチューブ閉塞を予防する図

閉塞を予防する

  • 投与前後、薬剤間のフラッシュを指示量で行う
  • 複数薬剤を一度に混ぜない
  • 栄養剤・薬剤をチューブ内へ長時間残さない
  • 抵抗があれば強く加圧しない
  • 閉塞解除にスタイレットやガイドワイヤを再挿入しない

交換間隔、留置期間、固定材、洗浄液、閉塞時対応は製品差がある。日付だけでなく、適応が続いているかを毎日確認する。

合併症と異常のサイン

呼吸器、消化管、鼻口腔、チューブの合併症を4群に分けた図

症状を部位で分ける

  • 呼吸器:気管・肺への誤挿入、誤嚥、肺炎、気胸
  • 消化管:出血、穿孔、潰瘍、逆流、悪心・嘔吐、下痢・便秘
  • 鼻・口腔:鼻出血、鼻翼潰瘍、咽頭痛、副鼻腔炎、口腔乾燥
  • チューブ:抜去、移動、屈曲、閉塞、破損、接続間違い
すぐ使用を止めて報告
  • 新しい咳、呼吸困難、SpO₂低下、チアノーゼ
  • 大量の吐血・血性排液、強い胸腹部痛、腹膜刺激症状
  • 鼻元の長さが変わった、口腔内でとぐろを巻いた
  • チューブが破損した、スタイレットが抜けない
  • 注入中の嘔吐、逆流、意識変化、誤嚥疑い

抜去するとき

  1. 抜去指示、目的終了、再留置時の対応を確認する
  2. 注入・吸引を止め、接続を外してチューブ内残留物を確認する
  3. 患者へ説明し、嘔吐物受けとティッシュを準備する
  4. 固定を外し、呼吸状態を見ながら滑らかに抜去する
  5. 抵抗や強い痛みがあれば無理に引かない
  6. 抜去したチューブの長さ、先端、破損の有無を確認する
  7. 鼻腔・口腔、呼吸、悪心、腹部症状を観察し記録する

術後吻合部、スタイレット・ガイドワイヤ、幽門後留置、チューブ損傷が疑われる場合は、単純な経鼻胃管と同じ抜去にしない。

報告・記録

  • 挿入目的、製品名、材質、太さ、長さ、ルーメン
  • 挿入経路、予定・確認された先端位置
  • 鼻元の目盛り、固定位置、挿入・交換・抜去日時
  • 位置確認方法、確認結果、確認者、使用開始可否
  • 挿入中の咳、呼吸、SpO₂、疼痛、出血、患者の反応
  • 栄養・水・薬剤の内容、量、速度、フラッシュ量
  • 吸引方法・圧、排液量・色・性状
  • 鼻腔・口腔・皮膚、腹部、呼吸、排便の観察
  • 異常、対応、報告先、再確認結果

出典