清潔・衣生活援助技術更新・文献確認:2026年8月28日

口腔ケア

磨くだけで終わらない。始める前に口の中と飲み込む力を見て、落とした汚れを口の外へ回収する学習ノート。

学習用。患者の意識、呼吸、嚥下機能、出血リスク、治療内容、医療機器、使用製品の表示、院内手順を優先する。

注意事項

始める前に方法を変える条件を探す
  • 意識低下、咳反射・嚥下機能の低下、含嗽ができない
  • 呼吸不安定、酸素療法・NPPV・人工呼吸管理中
  • 出血傾向、血小板減少、抗凝固薬・抗血小板薬の使用
  • 口腔粘膜炎、放射線・化学療法後、口腔内の手術創
  • 動揺歯、破折歯、義歯、インプラント、矯正装置がある
  • 開口困難、疼痛、咬反射、ケアへの拒否がある
中止してすぐ確認する変化
  • むせ、連続する咳、湿性嗄声、呼吸苦、SpO₂低下
  • 顔色不良、意識・反応の変化
  • 持続する出血、強い痛み、粘膜損傷
  • 歯、義歯、器具の一部が見当たらない
  • 気管チューブや酸素デバイスの位置変化・アラーム

目的

口腔ケアを、湿らせる、汚れを壊す、回収する、再観察するの4段階で示した図
落とした汚れを口の中へ残さないところまでが口腔ケア。
  • 歯垢、食物残渣、痰、舌苔などを除去する
  • 歯、歯肉、粘膜、舌、義歯を清潔に保つ
  • 乾燥、疼痛、出血、腫脹、傷を早く見つける
  • 口臭や不快感を減らし、会話・食事・休息を支える
  • 本人ができるセルフケアを保つ

口腔ケアは肺炎予防に関わる援助の一つだが、実施だけで肺炎を必ず防げるとはしない。嚥下、咳嗽、体位、全身状態も合わせてみる。

実施前の観察

口唇、歯、歯肉、頬粘膜、舌、口蓋、唾液、義歯を観察する口腔内の図

入口から奥へ、左右を比べる

  • 全身:意識、呼吸、SpO₂、疲労、体位保持
  • 機能:開口、咳、嚥下、含嗽、唾液を吐き出せるか
  • 口唇:乾燥、亀裂、出血、口角炎
  • 歯・歯肉:歯垢、動揺、破折、う蝕、発赤、腫脹、出血
  • 粘膜・舌:乾燥、発赤、白斑、潰瘍、舌苔、痰
  • 義歯:装着、汚れ、破損、適合、粘膜の圧迫
  • 痛み、口臭、本人の訴えと普段の方法
OHAT-Jを使う場合
  • 口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛の8項目をみる
  • 評価者間で判定をすり合わせる
  • スコアだけで診断せず、変化と歯科相談の必要性を共有する

必要物品

観察、清掃、汚れの回収に使う口腔ケア物品を役割別に分けた図
「何で落とすか」と「どう回収するか」を患者ごとに組み合わせる。
  • 口腔内を照らすライト
  • 歯ブラシ
  • 患者に適した歯磨剤
  • コップ
  • 水またはぬるま湯
  • ガーグルベースン
  • タオル
  • 非滅菌手袋
  • エプロン
  • 飛散リスクに応じたマスク・眼の防護具
  • 必要時、スポンジブラシまたは口腔ケア用綿棒
  • 必要時、タフトブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロス
  • 必要時、舌清掃用具
  • 必要時、口腔保湿剤
  • 必要時、吸引装置と吸引機能付き歯ブラシ
  • 義歯がある場合、義歯用ブラシ
  • 義歯がある場合、義歯容器
  • 廃棄物袋

歯ブラシ、スポンジ、保湿剤、洗口液、歯磨剤は、口腔状態と製品表示に合わせる。薬剤を含む製品を全員へ一律に使わない。

基本の手順

  1. 本人確認と説明を行い、口腔ケアでできる動作を確認する図
    説明し、できる動作を確認

    本人確認、目的、方法、中止の合図を共有。自分で磨ける場所、義歯の扱い、普段の用品と好みを確認する。

  2. 上体を起こし、顎を上げず、排液が口の外へ出る体位を整える図
    呼吸と嚥下に合わせて体位を整える

    可能なら上体を起こし、頭頸部を安定させる。顎を上げない。臥位では排液方向を考え、吸引をすぐ使える位置へ置く。

  3. ライトで口腔内を照らし、義歯や動揺歯を確認する図
    義歯を外し、口腔内を観察

    義歯は外し方を確認し、落下させない。ライトで歯、歯肉、粘膜、舌、分泌物を観察。動揺歯や出血部位を把握する。

  4. 乾燥した痰や痂皮を少量の水分で湿らせる図
    乾いた汚れを先に湿らせる

    乾燥した痰や痂皮へ少量ずつ水分または保湿剤を使う。無理にはがさず、軟らかくなってから回収する。

  5. 歯ブラシを軽く持ち、歯面と歯肉境界を小さく動かして磨く図
    歯垢を歯ブラシで落とす

    歯ブラシを強く握らず、小さく動かす。歯の外側、かみ合わせ、内側、歯と歯肉の境界を見ながら磨く。

  6. 頬粘膜、口蓋、舌をやさしく清掃する図
    粘膜と舌は傷つけずに清掃

    頬粘膜、口蓋、舌、舌の下を確認。スポンジやガーゼは水分を絞り、奥へ押し込まず、汚れたら交換する。

  7. 汚れを口の手前へ集め、吐き出す、拭き取る、吸引する方法で回収する図
    落とした汚れを口の外へ回収

    含嗽できる人は吐き出す。難しい人は手前へ集め、拭き取りや吸引で回収する。多量の水を咽頭へ流さない。

  8. 口腔内を再観察し、口唇を保湿して記録する図
    再観察し、安楽を整える

    出血、傷、汚れ、乾燥、疼痛を再確認。必要時は保湿し、義歯・体位・酸素機器を戻して反応を記録する。

含嗽できない人のケア

少量の水分を使い、汚れを手前へ集めて吸引・拭き取りする図

水分を入れる量より、回収できる量を考える

  • 開始前に吸引装置の作動と接続を確認する
  • スポンジや綿棒の余分な水分を絞る
  • 口腔内へシリンジで多量の水を流し込まない
  • 汚れを咽頭側へ押さず、手前へ集める
  • 吸引管を深く入れず、粘膜へ長く押し当てない
  • 咳、むせ、呼吸、声、SpO₂を見ながら短く区切る

吸引圧、器具、カテーテルの扱いは患者の状態、機器の表示、院内手順に従う。

義歯の扱い

義歯を外して容器の上でブラシ洗浄し、口腔粘膜も観察する図

義歯と口の中を別々に見る

  • 本人の義歯であることと、外し方・戻し方を確認する
  • 洗面器や水を張った容器の上など、落下・破損を防げる場所で洗う
  • 義歯用ブラシで汚れを落とし、洗浄剤は製品表示に従う
  • 熱湯や研磨性の強い用品を避ける
  • 義歯を外した口腔粘膜の発赤、傷、圧迫部位を観察する
  • 保管方法と夜間の装着は歯科指示・本人の計画を確認する

方法を変える場面

  • 口腔粘膜炎・易出血:柔らかい器具と弱い力へ変更。持続出血、潰瘍、白斑、強い痛みを報告する
  • 動揺歯・破折歯:脱落と誤嚥の危険を共有し、強く磨かず歯科評価につなぐ
  • 絶食・経管栄養:食べていなくても口腔ケアを省かない。乾燥、痰、舌苔を観察する
  • NPPV・高流量酸素:ケア中の呼吸状態と休止方法を事前に確認し、治療を無断で中断しない
  • 気管挿管中:チューブ位置、固定、カフ、バイトブロックを確認。固定交換やカフ圧調整は口腔ケアと分け、担当者と院内手順に従う
  • 気管切開:口腔ケアは必要。気管孔のガーゼ交換、カニューレ・カフ・側管管理は別手技として指示を確認する
  • 抗菌性洗口剤:人工呼吸中を含め一律のルーチンにせず、適応、禁忌、濃度、使用法を確認する

報告・記録

すぐに報告する変化

  • 呼吸苦、むせ、湿性嗄声、SpO₂低下、意識変化
  • 止まりにくい出血、強い痛み、粘膜損傷
  • 歯の動揺・脱落、義歯や器具の破損・紛失
  • 腫脹、膿、潰瘍、白斑、悪臭、急な口腔乾燥
  • 気管チューブ、酸素デバイス、経鼻チューブの異常

記録すること

  • 実施方法、使用した器具・製品、吸引の有無
  • 実施前後の口腔内所見と全身状態
  • 含嗽、嚥下、咳、セルフケア能力
  • 義歯の装着・保管、医療機器の確認
  • 実施中・実施後の反応、報告内容と対応

出典