症状・生体機能管理技術更新・文献確認:2026年8月28日

透析

機械の数字だけを追わない。透析前の「たまった量」と、透析中の「変化の速さ」、透析後の「戻り方」をつなげて見る学習ノート。

学習用。治療方式、処方、アクセス、抗凝固薬、除水、透析液、機器設定、緊急時対応は患者ごとの指示・機器表示・院内手順を優先する。

注意事項

このページの範囲
  • 維持血液透析を受ける成人の基本的な観察を中心にする
  • 腹膜透析、持続的腎代替療法、血漿交換は別の処方・機器として扱う
  • 穿刺、返血、回路操作、アラーム対応は訓練と権限の範囲で行う
  • 透析用カテーテル挿入は医師による中心静脈カテーテル挿入手技として扱う
すぐ応援を呼ぶ変化
  • 意識低下、けいれん、急な不穏
  • 胸痛、呼吸困難、チアノーゼ、重い不整脈、ショック
  • 穿刺針の抜去、回路離断、止まらない出血
  • 発熱・悪寒戦慄と血圧低下
  • 血液漏れ、空気、溶血、急なアレルギー反応を疑うアラーム・症状

腎代替療法の中の透析

腎代替療法を血液透析、腹膜透析、腎移植に分け、急性期には持続的腎代替療法があることを示した図
同じ「透析」でも、体外回路を使う血液透析と、腹膜を使う腹膜透析では観察点が異なる。
  • 血液透析:血液を体外へ取り出し、ダイアライザを通して戻す
  • 腹膜透析:腹腔内へ透析液を入れ、腹膜を介して物質と水分を移動させる
  • 持続的腎代替療法:循環が不安定な急性期などで、ゆっくり連続して行う方式がある
  • 腎移植:提供された腎臓の機能を利用する

治療選択は腎機能の数値だけでは決めない。全身状態、生活、予後、本人の価値観、支援体制を含めて意思決定する。

血液透析が代替すること

血液透析が主に老廃物、余分な水分、電解質と酸塩基を調整し、腎臓の内分泌機能は薬剤などの管理が必要と示す図
血液透析は腎臓の働きの一部を代替する。すべてを置き換える治療ではない。
  • 尿毒素などの老廃物を除去する
  • 余分な水分を除去する
  • カリウム、ナトリウム、カルシウムなどのバランスを調整する
  • 酸塩基平衡を調整する
  • 体液量の調整を通じて血圧管理を助ける
透析装置だけでは代替しない
  • エリスロポエチン産生低下に伴う腎性貧血
  • 活性型ビタミンDに関わる骨・ミネラル代謝
  • 残存腎機能と尿量
  • 腎不全の原因疾患や心血管合併症

血液透析の流れ

患者から脱血し、血液ポンプ、ダイアライザ、気泡検知器を通って返血する血液回路と、反対方向へ流れる透析液を示した図
血液側と透析液側は膜で隔てられ、拡散と限外濾過で物質・水分を移動させる。
  • 拡散:濃度差を利用して、尿毒素や電解質を移動させる
  • 限外濾過:圧力差を利用して、余分な水分を除去する
  • 抗凝固:体外回路内で血液が凝固しないようにする
  • 監視:圧、気泡、血液漏れ、温度、透析液などを機器が監視する

血流量、透析液流量、除水量、抗凝固薬、治療時間は処方で決まる。一般的な値を患者へ一律に当てはめない。

バスキュラーアクセス

自己血管内シャント、人工血管内シャント、透析用中心静脈カテーテルの構造と感染リスクの違いを示した図
アクセスの種類で、穿刺、感染、閉塞、日常管理の重点が変わる。
  • 自己血管内シャント(AVF):動脈と静脈を吻合し、静脈を発達させる
  • 人工血管内シャント(AVG):人工血管で動脈と静脈をつなぐ
  • 透析用中心静脈カテーテル:短期間で使用できるが、血流感染への警戒が特に重要
  • その他:動脈表在化など、患者ごとのアクセスがある

アクセス選択は「全員にAVF」ではない。血管、心機能、予想される治療期間、穿刺、生活、合併症を含めて個別に決める。

透析前の観察

体重、血圧、呼吸、浮腫、アクセス、検査と内服を透析前に確認する図

今日は何を、どれだけ動かす治療か

  • 体重:前回終了時、今回開始時、体重増加量、目標体重
  • 循環:血圧、脈拍、不整脈、起立時症状
  • 呼吸:SpO₂、呼吸困難、咳、肺うっ血を疑う所見
  • 水分:浮腫、頸静脈、口渇、尿量、飲水・食事
  • 全身:体温、意識、疼痛、倦怠感、転倒リスク
  • アクセス:視診・触診・聴診、前回の止血時間
  • 検査:電解質、尿素窒素、クレアチニン、血算など
  • 治療:透析処方、抗凝固、内服・注射、食事、検査予定
目標体重(ドライウェイト)は固定値ではない
  • 浮腫、呼吸、血圧、食欲、筋肉量、残存尿量の変化を合わせる
  • 入院、感染、栄養状態、切断、妊娠などで見直しが必要になる
  • 単に目標体重へ合わせるため、症状を無視して除水しない

シャントは「見る・触る・聴く」

シャント肢を視診、触診、聴診し、反対側や過去の状態と比較する図

一つの音だけで正常・異常を決めない

  • 見る:発赤、腫脹、熱感、血腫、瘤、皮膚、出血、左右差
  • 触る:スリルの範囲と変化、張り、硬さ、圧格差、冷感、疼痛
  • 聴く:音の強弱、連続性・拍動性、高低、途中での変化
  • 透析中:得られる血流量、動・静脈圧、再循環を疑う変化
  • 透析後:止血時間、後出血、末梢循環、しびれ
  • アクセス肢での血圧測定、採血、末梢静脈路は原則避ける
  • 腕時計、きつい衣類、長時間の圧迫、アクセス肢を下にした睡眠を避ける
  • スリル消失、急な変化、冷感、疼痛、手指色調変化はすぐ報告する
  • 穿刺位置、方向、間隔、ローテーションはアクセスマップと院内手順に従う

透析中の観察

  1. 透析開始直後に患者、アクセス、回路、接続、抗凝固を確認する図
    開始直後:接続と急な反応を見る

    本人確認、処方、アクセス、穿刺・接続、回路、クランプ、抗凝固を確認。血圧低下、アレルギー、出血、疼痛がないかを見る。

  2. 透析中に血圧、症状、除水、回路圧、血液回路を継続観察する図
    治療中:症状と機械の変化をつなぐ

    血圧・脈拍、意識、呼吸、除水進行、アクセス、動静脈圧、回路の色・凝血、アラームを経時的に見る。

  3. 透析終了時に返血、抜針、止血、体重、起立時症状を確認する図
    終了時:止血と離床まで確認

    返血、抜針、止血、アクセス、血圧、体重、症状を確認。起立・歩行時のふらつきや転倒を防ぐ。

よくみる症状

  • あくび、気分不良、悪心、嘔吐、冷汗、めまい、血圧低下
  • 筋けいれん、腹痛、胸痛、背部痛、頭痛
  • 呼吸困難、咳、SpO₂低下、不整脈
  • 穿刺部痛、腫脹、血腫、漏血、針位置の変化
  • 回路内凝血、静脈圧・動脈圧の変化、血液漏れアラーム

症状から考える透析中の変化

血圧低下、胸痛・呼吸困難、発熱悪寒、頭痛・意識変化、出血を症状群に分けた図

一つの症状を一つの原因に決めない

  • 血圧低下:除水、薬剤、食事、心機能、不整脈、出血、感染など
  • 胸痛・呼吸困難:心筋虚血、肺うっ血、不整脈、空気、溶血、アレルギーなど
  • 発熱・悪寒:アクセス感染、血流感染、透析液・回路関連反応など
  • 頭痛・悪心・意識変化:血圧、電解質、血糖、不均衡症候群、脳血管障害など
  • 出血:穿刺部、回路離断、抗凝固、凝固異常など
不均衡症候群
  • 透析導入時や高度な尿毒症で、急な溶質変化により起こりやすい
  • 頭痛、悪心、落ち着かなさ、意識変化、けいれんなどをみる
  • 脳卒中、低血糖、低酸素、電解質異常などを除外せず、すぐ報告する

急変時のポンプ・クランプ・返血・回路処理は原因により異なる。施設の緊急手順に従い、返血してよい状況かを自己判断しない。

透析用カテーテルの管理

透析用カテーテルの出口部、ドレッシング、ハブ、専用使用、ロック液を確認する図

接続のたびに感染と失血を防ぐ

  • 発熱、悪寒、出口部の発赤・疼痛・腫脹・排液を確認する
  • ドレッシングの湿潤、汚染、剥がれ、固定、位置を確認する
  • 接続・離脱・ドレッシング交換は手指衛生と無菌操作を守る
  • ハブは毎回、指定された方法と接触時間で消毒する
  • 透析以外の採血・輸液へ使うかは、緊急性と院内方針を確認する
  • クランプ開放やキャップ外れによる失血・空気流入を防ぐ
ロック液はカテーテルごとに確認する
  • カテーテルごとの内腔容量、製品表示、処方を確認する
  • 薬剤、濃度、注入量、使用前の吸引・除去方法は院内手順に従う
  • 「ヘパリン原液を注入」をすべてのカテーテルへ共通する手順にしない
  • 塗布剤もカテーテル材質との適合性を確認する

カテーテル挿入は、中心静脈カテーテルの安全手順、製品別指示、実施者の訓練・権限に従う。

透析後の観察と生活

透析後に体重、血圧、止血、ふらつき、帰宅後の症状を確認する図

治療終了ではなく、安全に戻るまで

  • 終了時体重と目標体重との差
  • 血圧、脈拍、不整脈、起立時のめまい
  • 呼吸、浮腫、筋けいれん、疲労、頭痛、悪心
  • 穿刺部の止血、後出血、血腫、スリル
  • 帰宅・移動方法、転倒リスク、次回までの連絡方法
  • 水分・塩分:尿量、心機能、透析処方、体重増加に合わせて個別に決める
  • カリウム・リン・たんぱく質:検査値と栄養状態をもとに管理栄養士と調整する
  • 薬剤:透析で除去されるか、透析前後の投与時刻、血圧・血糖への影響を確認する
  • アクセス:毎日見る・触る。出血、スリル消失、発赤、疼痛、冷感は連絡する

報告・記録

記録すること

  • 開始・終了時刻、治療方式、アクセス、処方からの変更
  • 開始前・中・後の体重、血圧、脈拍、体温、呼吸、症状
  • 除水目標、実除水量、終了時体重、残存尿量に関する情報
  • アクセスの視診・触診・聴診、穿刺、止血、カテーテル所見
  • 抗凝固薬、透析中の投薬・輸血・検査
  • アラーム、回路・機器の異常、対応、医師への報告
  • 患者の訴え、セルフケア、指導、次回へ引き継ぐ内容

出典