与薬の技術 更新・文献確認:2026年7月25日

中心静脈カテーテル(CVC)

成人の非トンネル型CVCを中心に、観察、測定、日常管理、挿入介助、抜去を処置別に整理した学習ノート。

学習用。実際の管理では、カテーテル・接続器具の電子添文、院内手順、医師・感染管理部門の指示を優先する。

注意事項

感染・接続
  • アクセス前後に手指衛生
  • 接続部を規定の消毒薬・時間で消毒
  • 開放時間を最小限にする
  • 接続の緩み、亀裂、漏れ、血液逆流を確認
  • ルート開放時はクランプ忘れに注意
異常時
  • 発赤、腫脹、熱感、疼痛、排膿、原因不明の発熱
  • 呼吸困難、胸痛、SpO2低下、急な血圧低下
  • 注入時痛、抵抗、滴下不良、逆血不良
  • 固定位置の変化、事故抜去、カテーテル損傷
  • 異常時は使用を中止し、クランプ・安全確保後に報告

目的

  • 高浸透圧輸液・中心静脈栄養の投与
  • 血管刺激性の強い薬剤・昇圧薬などの投与
  • 安定した静脈路の確保
  • 血液採取
  • 中心静脈圧(CVP)の測定

観察項目

  • 必要性:留置目的、使用中のルーメン、不要となった可能性
  • 全身:体温、悪寒、呼吸、循環、意識、疼痛
  • 挿入部:発赤、腫脹、熱感、疼痛、出血、排膿、浸出液、皮膚障害
  • 固定:挿入長、縫合・固定具、ドレッシング材の浮き・汚染・破損
  • ルート:接続、クランプ、屈曲、亀裂、漏れ、血液逆流、気泡、ラベル
  • 開存性:滴下・注入状態、注入時痛、抵抗、逆血の状態
  • 血栓・位置異常:頸部・上肢の腫脹、左右差、疼痛、挿入長の変化
  • CVP:値だけでなく波形、体位、呼吸条件、経時変化

CVP測定

必要物品

  • CVP測定用ルーメン
  • 圧トランスデューサー付きモニタリングキット
  • 指示されたフラッシュ液
  • 加圧バッグ
  • 生体情報モニター
  • 接続ケーブル
  • 水平器またはレベリング器具
  • 接続部用消毒薬
  • 手袋

手順

  1. 指示・測定条件を確認

    測定目的、単位、体位、人工呼吸器設定、測定ルーメンを確認。

  2. 測定系を確認

    接続の緩み、屈曲、閉塞、血液逆流、気泡、フラッシュ液を確認。

  3. 体位を整える

    原則として仰臥位。経時比較では同じ体位と呼吸条件へそろえる。

  4. 基準点へ高さを合わせる

    トランスデューサーの大気開放点を右心房の高さに合わせる。目安は第4肋間・中腋窩線。

  5. 大気開放する

    患者側を閉じ、大気側を開く。活栓の向きを指差し確認。

  6. ゼロ校正する

    モニターでゼロ校正。ゼロ完了表示を確認。

  7. 患者側へ開放する

    大気側を閉じ、患者側を開く。生理的なCVP波形を確認。

  8. 値を読む

    呼気終末の値を確認。咳、体動、会話、胸腔内圧の影響を除く。

  9. 測定系を復帰する

    三方活栓、クランプ、輸液を指示どおり戻す。漏れと気泡を再確認。

  10. 記録する

    値、単位、体位、呼吸条件、時刻、波形、関連所見を記録。

CVP測定時の基準点と大気開放点 仰臥位の患者の第4肋間と中腋窩線が交わる右心房の高さに、圧トランスデューサーの大気開放点を水平に合わせる模式図 右心房の高さと大気開放点を水平に合わせる 第4肋間・中腋窩線 右心房の高さの目安 大気開放点 圧トランスデューサー 同じ高さ CVP測定時の基準点と大気開放点 仰臥位の患者の右心房の高さに、圧トランスデューサーの大気開放点を水平に合わせるスマートフォン向け模式図 右心房と大気開放点を同じ高さにする 第4肋間・中腋窩線 右心房の高さの目安 大気開放点 同じ高さ 体位変更後は再確認
CVP測定のゼロ基準 体位変更のたびに高さを再確認する。経時比較では体位と呼吸条件をそろえる。

CVCヘパリンロック

必要物品

  • 指示されたロック用ヘパリン製剤
  • 接続部用消毒薬
  • 手袋
  • 必要時、フラッシュ用生理食塩液
  • 廃棄物容器

このページで扱う製剤:ヘパリンNaロック用100単位/mLシリンジ10mL(1シリンジ中1000単位)

必要量:使用ルーメンのプライミング量+接続器具のプライミング量

名称に注意:10単位/mL・10mL製剤は総量100単位。100単位/mL・10mL製剤は総量1000単位。

ロック時間:100単位/mL製剤の電子添文では12時間までを標準、最長24時間。継続時は指示と院内手順を確認。

製品例:Arrow AK-15703系・7Fr・トリプルルーメン・20cm
  • 茶・ディスタル(16G):約0.47mL
  • 青・メディアル(18G):約0.40mL
  • 白・プロキシマル(18G):約0.42mL

同系統のTeleflex公開資料による概算値。付属品を含まない。型番・世代により値が異なるため、実物の包装表示・電子添文を優先する。

手順

  1. 指示と製剤を確認

    患者、ルーメン、濃度、使用目的、アレルギー、出血、HIT歴を確認。

  2. 必要量を算出

    カテーテルと接続器具の電子添文から内腔量を確認。合計量を算出。

  3. 接続部を消毒

    規定の方法と時間で消毒。十分に乾燥。

  4. 開存性を確認

    院内手順とデバイス仕様に沿って確認。抵抗があれば無理に注入しない。

  5. ロック液を注入

    算出量を注入。デバイス指定の陽圧操作・クランプ順序を守る。

  6. 終了・記録

    接続とクランプを確認。製剤、濃度、使用量、時刻を記録。残液は再使用しない。

消毒・CHGドレッシング材交換

必要物品

  • CHG含有ドレッシング材
  • 規定の皮膚消毒薬
  • 滅菌手袋
  • 未滅菌手袋
  • マスク
  • 滅菌ガーゼ
  • 必要時、固定用具
  • 必要時、皮膚被膜剤
  • 必要時、剥離剤
  • 日付ラベル
  • 廃棄物容器

手順

  1. 適応と皮膚を確認

    CHG過敏症、発赤、びらん、出血、浸出液、固定位置を確認。

  2. 説明・体位調整

    挿入部を観察しやすく、カテーテルを牽引しない体位へ調整。

  3. 古いドレッシング材を外す

    カテーテルと皮膚を押さえ、端を折り返すようにゆっくり剥がす。

  4. 挿入部を観察

    発赤、熱感、疼痛、腫脹、異臭、排膿、浸出液、挿入長を確認。

  5. 手指衛生・無菌操作

    手指衛生後、院内手順に沿って無菌操作へ移行。

  6. 消毒・乾燥

    規定の消毒薬と接触時間で処置。薬液を完全に乾燥。

  7. ゲルパッドを合わせる

    CHGゲルパッド中央を挿入部へ合わせ、カテーテル周囲から密着。

  8. フィルムを貼付・固定

    伸ばさず貼付。中央から端へ押さえ、観察を妨げない位置へラベルを貼付。

  9. 記録

    挿入部、固定、交換日、皮膚状態、異常の有無を記録。

CVルート交換

必要物品

  • 新しい輸液
  • 新しい輸液セット
  • 必要時、フィルター
  • 必要時、延長チューブ
  • 必要時、閉鎖式コネクタ
  • 接続部用消毒薬
  • 手袋
  • 廃棄物容器
  • 必要時、輸液ポンプ
  • ルートラベル

手順

  1. 指示と交換対象を確認

    輸液、投与速度、ルーメン、配合変化、フィルター、交換時期を確認。

  2. 新しいルートを組む

    清潔操作で接続。輸液を満たし、気泡を除去。末端を汚染しない。

  3. 患者側を止める

    輸液ポンプを停止。対象ルーメンをクランプ。ほかのルートとの取り違えを防ぐ。

  4. 接続部を交換する

    旧ルートを外す。接続部を規定どおり消毒・乾燥し、新ルートを接続。

  5. 投与を再開する

    クランプを開放。設定を照合し、滴下・ポンプ・接続部を確認。

  6. 全ルートをたどる

    バッグから患者まで確認。屈曲、漏れ、気泡、誤接続、不要な三方活栓を確認。

  7. 記録する

    交換日時、輸液、ルート、フィルター、投与状態を記録。

交換間隔の目安
  • 一般の持続輸液:96時間以上の間隔をあけ、7日以内に交換
  • 血液・血液製剤・脂肪乳剤:投与開始から24時間以内
  • プロポフォール:バイアル交換時。製品指示に従い6時間または12時間ごと

CDCの感染対策上の目安。投与薬剤の電子添文、輸液セットの仕様、院内手順を優先。

CVPルート交換

必要物品

  • 圧トランスデューサー付きモニタリングキット
  • 指示されたフラッシュ液
  • 加圧バッグ
  • 接続ケーブル
  • 固定板
  • 水平器またはレベリング器具
  • 接続部用消毒薬
  • 手袋
  • 交換日ラベル

手順

  1. 指示とシステムを確認

    フラッシュ液、交換対象、加圧条件、測定ルーメン、デバイス仕様を確認。

  2. 新しい測定系を接続

    清潔操作でフラッシュ液、モニタリングキット、トランスデューサーを接続。

  3. 回路内を満たす

    バッグ側から末端まで順に満たす。気泡を残さない。

  4. 加圧・固定する

    製品指定の圧へ設定。トランスデューサーを固定板へ取り付ける。

  5. 患者側をクランプする

    測定ルーメンを確認。旧回路を止め、開放時間を最小限にする。

  6. 新しい回路へ交換する

    接続部を消毒・乾燥。無菌的に新回路を接続し、閉鎖系を保つ。

  7. ゼロ校正する

    右心房の高さへ合わせ、大気開放してゼロ校正。患者側へ戻す。

  8. 波形と回路を確認

    CVP波形、値、気泡、漏れ、屈曲、接続、加圧バッグを確認。

  9. 記録する

    交換日時、フラッシュ液、回路、ゼロ校正、CVP値と測定条件を記録。

挿入介助

必要物品

  • 予定したCVC挿入セット
  • 帽子
  • マスク
  • 滅菌ガウン
  • 滅菌手袋
  • 全身を覆う滅菌ドレープ
  • 超音波装置
  • 滅菌プローブカバー
  • 滅菌超音波ゲル
  • 局所麻酔薬
  • 規定の皮膚消毒薬
  • 滅菌生理食塩液
  • シリンジ
  • 注射針
  • 閉鎖式コネクタ
  • 固定具
  • 滅菌ドレッシング材
  • 生体情報モニター
  • 酸素投与物品
  • 救急対応物品
  • 鋭利物容器
  • 廃棄物容器

手順

  1. 指示・同意・患者を確認

    適応、穿刺部位、デバイス、ルーメン数、説明・同意、アレルギーを確認。

  2. 出血・感染リスクを確認

    凝固、血小板、抗血栓薬、穿刺部位の感染、既存デバイスを確認。

  3. モニター・体位を準備

    心電図、血圧、SpO2を装着。緊急時に対応できる環境を確保。

  4. タイムアウトする

    患者、部位、左右、デバイス、役割分担、緊急時対応を共有。

  5. 最大無菌バリアを準備

    帽子、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋、全身用滅菌ドレープを準備。

  6. プレスキャンを確認

    標的静脈、深さ、虚脱、動脈・神経・肺との位置関係、穿刺経路を共有。

  7. 無菌操作を介助

    超音波、消毒、器具展開、局所麻酔を介助。清潔・不潔の境界を維持。

  8. ガイドワイヤーを確認

    短軸像と長軸像で静脈内を確認。抵抗時は進めない。抜去後は遺残がないことを確認。

  9. ダイレーター操作を見守る

    過度な力や深い挿入を避ける。異常時は声をかけ、手技を止める。

  10. 留置後を確認

    各ルーメン、固定、挿入長、先端位置の確認方法を照合。

  11. 合併症を観察

    呼吸、循環、胸痛、出血、血腫、不整脈、神経症状を確認。使用直後から数日以内の呼吸・循環異常では輸液を中止し、位置異常を疑って報告。

  12. 記録する

    穿刺部位、デバイス、挿入長、ルーメン、固定、観察所見を記録。

CVC抜去

必要物品

  • 未滅菌手袋
  • 滅菌手袋
  • マスク
  • 規定の皮膚消毒薬
  • 抜糸器具
  • 滅菌ガーゼ
  • 気密性の高い被覆材
  • 必要時、検体容器
  • 鋭利物容器
  • 廃棄物容器

手順

  1. 指示・患者・カテーテルを確認

    抜去理由、部位、挿入長、出血リスク、培養指示、実施者の権限を確認。

  2. 輸液を停止・クランプする

    全ルーメンを確認。輸液とポンプを停止し、カテーテルを閉鎖。

  3. 体位を整える

    内頸・鎖骨下静脈では仰臥位。可能なら下肢挙上または頭低位で静脈圧を保つ。禁忌や呼吸状態を確認。

  4. ドレッシング材と固定を外す

    挿入部を観察。無菌操作で消毒し、固定具または縫合糸を解除。

  5. 呼吸法を共有する

    咳・深吸気・会話を避ける。息こらえなど、施設手順と患者状態に合う方法を実施者と確認。

  6. カテーテルを抜去する

    実施者が抵抗を確認しながら滑らかに抜去。抵抗があれば中止。

  7. 圧迫・密閉する

    止血を確認。空気流入を防ぐ気密性の高い被覆材で確実に密閉。

  8. カテーテルを確認する

    先端を含め完全性を確認。破損・欠損があれば直ちに報告。

  9. 抜去後を観察する

    呼吸困難、胸痛、SpO2低下、意識変化、出血、血腫を観察。

  10. 記録する

    抜去日時、部位、カテーテルの完全性、止血、被覆、患者状態を記録。

関連知識

CVCと関連デバイス

上半身から挿入する場合の経路を簡略化した模式図。赤い点は上大静脈下部〜上大静脈・右心房接合部付近の先端位置を示す。

非トンネル型CVCの模式図

非トンネル型CVC

  • 内頸・鎖骨下・大腿静脈などから挿入
  • 短期〜中期の重症管理、昇圧薬、高浸透圧輸液など
PICCの模式図

PICC

  • 上腕などの末梢静脈から挿入
  • 先端は中心静脈。中期〜長期の輸液・薬剤投与
トンネル型CVCの模式図

トンネル型CVC

  • 皮下トンネルを通して中心静脈へ留置
  • 長期使用。出口部とカフの管理が必要
CVポートの模式図

CVポート

  • 皮下にポート本体を埋め込み
  • 長期・間欠的使用。専用針で穿刺
ミッドラインカテーテルの模式図

ミッドラインカテーテル

  • 上腕の末梢静脈から挿入
  • 先端は中心静脈に到達しない。CVCではない

主な合併症

CLABSI・局所感染
発熱、悪寒、発赤、疼痛、排膿。無菌操作と不要時の早期抜去が重要。
気胸・血胸
呼吸困難、胸痛、SpO2低下、呼吸音左右差など。
動脈誤穿刺・血腫
出血、腫脹、疼痛、循環変動など。
空気塞栓
急な呼吸困難、胸痛、低酸素、血圧低下、意識変容など。
不整脈
ガイドワイヤー・カテーテル先端による刺激。心電図変化を観察。
血栓・閉塞
逆血不良、注入抵抗、上肢・頸部の腫脹、疼痛など。
位置異常・損傷・事故抜去
挿入長の変化、滴下不良、漏れ、亀裂、固定不良など。

ルーメンとカテーテル先端

  • Arrowの上記代表例:茶=ディスタル、青=メディアル、白=プロキシマル
  • ルーメンの色、太さ、先端開口部、充填量は製品ごとに異なる
  • 色だけでCVP用・輸液用などの用途を決めない
  • カテーテル表示、電子添文、ルートラベルを照合
  • 先端は上大静脈下部〜上大静脈・右心房接合部付近が目安
  • 逆血のみで先端位置や静脈内留置を断定しない

出典