注意事項
- 数値や波形の変化だけで判断しない
- 意識、呼吸、皮膚、脈拍などの所見と照合する
- 値が疑わしいときは、回路を点検し、必要時は非観血的血圧と比較する
- 急な波形消失では、患者の循環とカテーテル抜去・回路離断を同時に確認する
- 回路とポートを明確に識別する
- 薬剤投与や静脈注射に使用しない
- 接続部を不用意に開放しない
- 気泡を患者側へ送らない
- 閉鎖式回路への出入りを最小限にする
- 不要になったカテーテルは速やかに抜去する
目的
- 動脈圧を連続的に測定
- 急速な循環変化を波形と数値で把握
- 頻回の動脈血採取に使用
- 治療・循環管理に必要な情報を得る
観察項目
患者
- 意識、呼吸、皮膚色、冷汗
- 心拍数、心電図、非観血的血圧との整合
- 収縮期・拡張期・平均動脈圧の値と推移
- 波形の形、振幅、ノッチ、呼吸性変動
挿入側の末梢循環
- 皮膚色、蒼白、チアノーゼ
- 皮膚温、左右差
- 毛細血管再充満時間
- 末梢動脈の触知
- 疼痛、しびれ、感覚の変化
- 自動運動、筋力の変化
- 腫脹、出血、血腫
- 発赤、熱感、硬結、排液
カテーテルと測定回路
- 固定状態、抜け、屈曲、牽引
- ドレッシングの湿潤、緩み、汚染
- 接続部の緩み、漏れ、血液の逆流
- 回路内の気泡、凝血、沈着物
- 三方活栓の向きとキャップ
- フラッシュ液の種類、残量、使用期限
- 加圧バッグの圧。300 mmHgは一般的な製品設定
- トランスデューサの高さと固定
- アラーム設定と波形表示
挿入介助・回路準備
必要物品
- 動脈カテーテル
- 圧トランスデューサセット
- 圧モニタケーブル
- 加圧バッグ
- 指示されたフラッシュ液
- 点滴スタンド
- 皮膚消毒薬
- 滅菌手袋
- マスク
- 帽子
- 滅菌穴あきドレープ
- 滅菌ガーゼ
- 透明ドレッシング材
- 固定用具
- ラベル
- 鋭利物廃棄容器
- 必要時、超音波診断装置
挿入部位と方法で必要物品は変わる。大腿・腋窩動脈では最大限の滅菌バリアを用いる。
手順
- 指示と患者を確認
目的、挿入部位、出血リスク、アレルギー、末梢循環、必要な検査を確認する。
- 患者へ説明
目的、体位、動かし方、疼痛やしびれを伝えることを説明する。
- 回路をプライミング
無菌操作でフラッシュ液を接続。バッグと回路から空気を除き、全経路を液で満たす。
- 加圧・接続準備
採用製品の設定へ加圧する。300 mmHgは一般的だが、取扱説明書を優先する。接続部を締め、ポートを閉じる。
- 挿入を介助
手指衛生と無菌操作を守る。患者の循環・疼痛・しびれを観察し、必要物品を清潔に受け渡す。
- 回路を接続
術者の指示で、空気がないことを再確認して接続する。三方活栓を患者側へ開く。
- 固定・表示
刺入部を観察できるよう固定する。牽引を避け、動脈回路と分かるよう表示する。
- ゼロ点校正
基準点に高さを合わせ、大気開放でゼロを取る。患者側へ戻して波形と数値を確認する。
- 終了時の観察
末梢循環、出血、固定、接続、気泡、加圧、波形、アラームを確認して記録する。
ゼロ点校正
必要物品
- 接続済みの圧トランスデューサ
- モニタ
- 基準点を確認する水平器または院内指定器具
- 非通気性キャップ
手順
- 体位を確認
血圧を評価する体位を整える。患者とトランスデューサの位置関係を確認する。
- 基準の高さへ合わせる
通常の全身動脈圧では、トランスデューサの大気開放点を右心房レベルへ合わせる。
- 患者側を閉じる
三方活栓を患者側に閉じ、大気側へ開く。患者を大気へ開放しない。
- ゼロを実行
モニタのゼロ操作を行い、0 mmHgと平坦な波形を確認する。
- 患者側へ戻す
大気側を閉じ、患者側へ開く。キャップを装着する。
- 測定を確認
波形と数値が戻ることを確認。患者所見、非観血的血圧、回路状態と照合する。
Aラインからの採血
必要物品
- 検査指示
- 患者識別ラベル
- 採用回路専用の採血器具
- 必要な採血容器
- 未滅菌手袋
- 院内指定の消毒綿
- 清潔なガーゼ
- 感染性廃棄物容器
手順
- 指示と回路を確認
検査、必要量、採血ポート、閉鎖式採血システムの操作方法を確認する。
- 本人確認と説明
複数の識別情報で照合し、目的と操作を説明する。
- 手指衛生・手袋
清潔な作業面を作る。回路の接続、気泡、加圧、末梢循環を確認する。
- 採血ポートを消毒
採用製品と院内手順に従って摩擦消毒し、乾燥させる。
- 検体を採取
死腔血の扱いと採取順は採血システムに従う。回路を開放したままにしない。
- 回路を戻す
閉鎖式システムの手順で血液を処理し、フラッシュする。血液の残留と気泡がないことを確認する。
- 再評価
三方活栓、キャップ、波形、数値、加圧、刺入部、末梢循環を確認する。
- 表示・搬送・記録
採取時刻、採取源が動脈ラインであること、必要事項を記録し、速やかに提出する。
死腔量、廃棄量、返血の可否、フラッシュ方法はシステムごとに異なる。汚染した血液や閉鎖性を失った血液を回路へ戻さない。
測定回路の交換
必要物品
- 新しい圧トランスデューサセット
- 新しい加圧バッグ
- 指示されたフラッシュ液
- 未滅菌手袋
- 院内指定の消毒綿
- 非通気性キャップ
- ラベル
- 感染性廃棄物容器
手順
- 交換条件を確認
交換時期、回路、フラッシュ液、採用製品の手順を確認する。
- 新回路を準備
無菌操作で接続し、バッグと回路内の空気を完全に除去する。指定圧へ加圧する。
- 患者側を閉じる
患者に最も近い指定箇所で流路を遮断する。患者側を大気へ開放しない。
- 接続部を交換
接続部を消毒して乾燥。新回路を無菌的に接続し、緩みがないことを確認する。
- 患者側へ開く
流路を正しい向きへ戻す。血液逆流、漏れ、気泡がないことを確認する。
- ゼロ点と波形を確認
トランスデューサを基準高へ合わせてゼロ点校正。波形、数値、末梢循環を確認する。
- 表示・記録
交換日時、回路、フラッシュ液、観察結果を記録する。
抜去介助
必要物品
- 未滅菌手袋
- 必要時、固定材剥離剤
- 皮膚消毒薬
- 滅菌ガーゼ
- 止血用ドレッシング材
- 廃棄物容器
手順
- 指示と出血リスクを確認
抜去指示、凝固状態、抗凝固・抗血小板薬、刺入部と末梢循環を確認する。
- 本人確認と説明
抜去、圧迫止血、安静、出血時の伝え方を説明する。
- 体位と物品を整える
安全に圧迫できる体位にする。廃棄物容器を手元へ置く。
- 固定を外す
手指衛生と手袋装着。皮膚を傷つけず、カテーテルを引っ張らないよう固定材を外す。
- 抜去・圧迫
指示された方法で抜去。滅菌ガーゼで直接圧迫し、完全に止血するまで続ける。
- カテーテルを確認
抜去したカテーテルが完全か確認する。異常時は直ちに報告する。
- 被覆する
止血を確認してドレッシング材を貼付。止血器具の使用時間は製品説明書と院内手順に従う。
- 再観察・記録
再出血、血腫、疼痛、皮膚色、温度、感覚、運動、末梢脈拍を確認。抜去時刻と結果を記録する。
関連知識
測定回路のつながり
血管内の圧変化が、液で満たした硬い回路を通り、トランスデューサで電気信号に変わる。
動脈圧波形とダンピング
- 過減衰:気泡、凝血、屈曲、閉塞、接続不良、加圧不足などを確認
- 不足減衰:硬すぎる回路、回路構成、カテーテルの動き、共振などを確認
- 波形消失:患者の循環、抜去・離断、活栓、屈曲、凝血、ケーブル、モニタ設定を確認
- 高速フラッシュテストは、適応と操作を理解した者が採用製品・院内手順に従って行う
トランスデューサの高さで値が変わる
- 基準点より低い:表示圧は高くなる
- 基準点より高い:表示圧は低くなる
- 高さ10 cmのずれで、約7.5 mmHgの差が生じる
- 体位変換、ベッド高変更、移動後は高さを再確認する
- 通常の全身動脈圧は右心房レベルを基準にする
- 脳灌流圧など目的が異なる場合は指示された基準点を使う
主な合併症
- 出血・失血
- 抜去、離断、接続部の緩み、活栓の誤操作で起こる
- 血栓・末梢虚血
- 疼痛、蒼白、冷感、しびれ、脈拍低下、毛細血管再充満遅延など
- 感染
- 発赤、熱感、腫脹、疼痛、排液、発熱など
- 血腫
- 刺入時、固定不良、抜去後の止血不十分などで起こる
- 空気塞栓
- 回路の開放・離断、気泡を含む回路のフラッシュなどで起こる
- 誤注入
- 動脈回路を静脈ラインと誤認し、薬剤などを注入する事故
交換時期と感染対策
- 動脈カテーテルは定期交換せず、臨床的な適応で交換
- 不要になったら速やかに抜去
- CDCはトランスデューサを96時間間隔で交換し、チューブ、持続フラッシュ器具、フラッシュ液も同時交換するよう推奨
- 回路構成と交換時期は、最新の院内手順と製品説明書も確認
- すべての構成品の無菌性を保ち、操作回数を減らす
- ドレッシングが湿潤・緩み・汚染したら交換する
出典
- CDC「Summary of Recommendations: Peripheral Arterial Catheters and Pressure Monitoring Devices」
- CDC「Strategies for Prevention of Catheter-Related Infections」
- Edwards Lifesciences「Pressure Monitoring Kit: Instructions for Use」
- Saugel B, et al.「How to measure blood pressure using an arterial catheter: a systematic 5-step approach」
- German Society of Anaesthesiology and Intensive Care Medicine「Intraoperative haemodynamic monitoring and management」