症状・生体機能管理技術 更新・文献確認:2026年8月23日

動脈ライン(Aライン)

観血的動脈圧モニタリングについて、末梢循環の観察、ゼロ点校正、回路管理、採血、抜去介助を整理した学習ノート。

学習用。実際の管理では、患者の状態、医師の指示、モニタ・トランスデューサ・採血システム・止血器具の取扱説明書、院内手順を優先する。

注意事項

患者を先に見る
  • 数値や波形の変化だけで判断しない
  • 意識、呼吸、皮膚、脈拍などの所見と照合する
  • 値が疑わしいときは、回路を点検し、必要時は非観血的血圧と比較する
  • 急な波形消失では、患者の循環とカテーテル抜去・回路離断を同時に確認する
動脈回路として扱う
  • 回路とポートを明確に識別する
  • 薬剤投与や静脈注射に使用しない
  • 接続部を不用意に開放しない
  • 気泡を患者側へ送らない
  • 閉鎖式回路への出入りを最小限にする
  • 不要になったカテーテルは速やかに抜去する

目的

  • 動脈圧を連続的に測定
  • 急速な循環変化を波形と数値で把握
  • 頻回の動脈血採取に使用
  • 治療・循環管理に必要な情報を得る

観察項目

患者

  • 意識、呼吸、皮膚色、冷汗
  • 心拍数、心電図、非観血的血圧との整合
  • 収縮期・拡張期・平均動脈圧の値と推移
  • 波形の形、振幅、ノッチ、呼吸性変動

挿入側の末梢循環

  • 皮膚色、蒼白、チアノーゼ
  • 皮膚温、左右差
  • 毛細血管再充満時間
  • 末梢動脈の触知
  • 疼痛、しびれ、感覚の変化
  • 自動運動、筋力の変化
  • 腫脹、出血、血腫
  • 発赤、熱感、硬結、排液

カテーテルと測定回路

  • 固定状態、抜け、屈曲、牽引
  • ドレッシングの湿潤、緩み、汚染
  • 接続部の緩み、漏れ、血液の逆流
  • 回路内の気泡、凝血、沈着物
  • 三方活栓の向きとキャップ
  • フラッシュ液の種類、残量、使用期限
  • 加圧バッグの圧。300 mmHgは一般的な製品設定
  • トランスデューサの高さと固定
  • アラーム設定と波形表示

挿入介助・回路準備

必要物品

  • 動脈カテーテル
  • 圧トランスデューサセット
  • 圧モニタケーブル
  • 加圧バッグ
  • 指示されたフラッシュ液
  • 点滴スタンド
  • 皮膚消毒薬
  • 滅菌手袋
  • マスク
  • 帽子
  • 滅菌穴あきドレープ
  • 滅菌ガーゼ
  • 透明ドレッシング材
  • 固定用具
  • ラベル
  • 鋭利物廃棄容器
  • 必要時、超音波診断装置

挿入部位と方法で必要物品は変わる。大腿・腋窩動脈では最大限の滅菌バリアを用いる。

手順

  1. 指示と患者を確認

    目的、挿入部位、出血リスク、アレルギー、末梢循環、必要な検査を確認する。

  2. 患者へ説明

    目的、体位、動かし方、疼痛やしびれを伝えることを説明する。

  3. 回路をプライミング

    無菌操作でフラッシュ液を接続。バッグと回路から空気を除き、全経路を液で満たす。

  4. 加圧・接続準備

    採用製品の設定へ加圧する。300 mmHgは一般的だが、取扱説明書を優先する。接続部を締め、ポートを閉じる。

  5. 挿入を介助

    手指衛生と無菌操作を守る。患者の循環・疼痛・しびれを観察し、必要物品を清潔に受け渡す。

  6. 回路を接続

    術者の指示で、空気がないことを再確認して接続する。三方活栓を患者側へ開く。

  7. 固定・表示

    刺入部を観察できるよう固定する。牽引を避け、動脈回路と分かるよう表示する。

  8. ゼロ点校正

    基準点に高さを合わせ、大気開放でゼロを取る。患者側へ戻して波形と数値を確認する。

  9. 終了時の観察

    末梢循環、出血、固定、接続、気泡、加圧、波形、アラームを確認して記録する。

ゼロ点校正

必要物品

  • 接続済みの圧トランスデューサ
  • モニタ
  • 基準点を確認する水平器または院内指定器具
  • 非通気性キャップ

手順

  1. 体位を確認

    血圧を評価する体位を整える。患者とトランスデューサの位置関係を確認する。

  2. 基準の高さへ合わせる

    通常の全身動脈圧では、トランスデューサの大気開放点を右心房レベルへ合わせる。

  3. 患者側を閉じる

    三方活栓を患者側に閉じ、大気側へ開く。患者を大気へ開放しない。

  4. ゼロを実行

    モニタのゼロ操作を行い、0 mmHgと平坦な波形を確認する。

  5. 患者側へ戻す

    大気側を閉じ、患者側へ開く。キャップを装着する。

  6. 測定を確認

    波形と数値が戻ることを確認。患者所見、非観血的血圧、回路状態と照合する。

動脈圧トランスデューサの高さとゼロ点 仰臥位の患者の右心房レベルとトランスデューサの大気開放点を同じ水平線上に合わせ、患者側を閉じて大気へ開放してゼロ点校正する図 高さを合わせる → 患者側を閉じる → 大気でゼロ 右心房レベル 0点 大気へ開放 患者側を閉じる 動脈圧トランスデューサの高さとゼロ点 患者の右心房レベルとトランスデューサの大気開放点を同じ高さに合わせ、患者側を閉じて大気へ開放する手順を縦に示す図 ① 高さを合わせる 右心房レベル 0点 ② 患者側を閉じる 患者を大気へ開放しない ③ 大気へ開放してゼロ 0 mmHg・平坦な波形を確認
高さとゼロは別の操作体位やベッド高が変わったら基準点を再確認。脳灌流圧など測定目的が異なる場合は、指示された基準点を使う。

Aラインからの採血

必要物品

  • 検査指示
  • 患者識別ラベル
  • 採用回路専用の採血器具
  • 必要な採血容器
  • 未滅菌手袋
  • 院内指定の消毒綿
  • 清潔なガーゼ
  • 感染性廃棄物容器

手順

  1. 指示と回路を確認

    検査、必要量、採血ポート、閉鎖式採血システムの操作方法を確認する。

  2. 本人確認と説明

    複数の識別情報で照合し、目的と操作を説明する。

  3. 手指衛生・手袋

    清潔な作業面を作る。回路の接続、気泡、加圧、末梢循環を確認する。

  4. 採血ポートを消毒

    採用製品と院内手順に従って摩擦消毒し、乾燥させる。

  5. 検体を採取

    死腔血の扱いと採取順は採血システムに従う。回路を開放したままにしない。

  6. 回路を戻す

    閉鎖式システムの手順で血液を処理し、フラッシュする。血液の残留と気泡がないことを確認する。

  7. 再評価

    三方活栓、キャップ、波形、数値、加圧、刺入部、末梢循環を確認する。

  8. 表示・搬送・記録

    採取時刻、採取源が動脈ラインであること、必要事項を記録し、速やかに提出する。

死腔量、廃棄量、返血の可否、フラッシュ方法はシステムごとに異なる。汚染した血液や閉鎖性を失った血液を回路へ戻さない。

測定回路の交換

必要物品

  • 新しい圧トランスデューサセット
  • 新しい加圧バッグ
  • 指示されたフラッシュ液
  • 未滅菌手袋
  • 院内指定の消毒綿
  • 非通気性キャップ
  • ラベル
  • 感染性廃棄物容器

手順

  1. 交換条件を確認

    交換時期、回路、フラッシュ液、採用製品の手順を確認する。

  2. 新回路を準備

    無菌操作で接続し、バッグと回路内の空気を完全に除去する。指定圧へ加圧する。

  3. 患者側を閉じる

    患者に最も近い指定箇所で流路を遮断する。患者側を大気へ開放しない。

  4. 接続部を交換

    接続部を消毒して乾燥。新回路を無菌的に接続し、緩みがないことを確認する。

  5. 患者側へ開く

    流路を正しい向きへ戻す。血液逆流、漏れ、気泡がないことを確認する。

  6. ゼロ点と波形を確認

    トランスデューサを基準高へ合わせてゼロ点校正。波形、数値、末梢循環を確認する。

  7. 表示・記録

    交換日時、回路、フラッシュ液、観察結果を記録する。

抜去介助

必要物品

  • 未滅菌手袋
  • 必要時、固定材剥離剤
  • 皮膚消毒薬
  • 滅菌ガーゼ
  • 止血用ドレッシング材
  • 廃棄物容器

手順

  1. 指示と出血リスクを確認

    抜去指示、凝固状態、抗凝固・抗血小板薬、刺入部と末梢循環を確認する。

  2. 本人確認と説明

    抜去、圧迫止血、安静、出血時の伝え方を説明する。

  3. 体位と物品を整える

    安全に圧迫できる体位にする。廃棄物容器を手元へ置く。

  4. 固定を外す

    手指衛生と手袋装着。皮膚を傷つけず、カテーテルを引っ張らないよう固定材を外す。

  5. 抜去・圧迫

    指示された方法で抜去。滅菌ガーゼで直接圧迫し、完全に止血するまで続ける。

  6. カテーテルを確認

    抜去したカテーテルが完全か確認する。異常時は直ちに報告する。

  7. 被覆する

    止血を確認してドレッシング材を貼付。止血器具の使用時間は製品説明書と院内手順に従う。

  8. 再観察・記録

    再出血、血腫、疼痛、皮膚色、温度、感覚、運動、末梢脈拍を確認。抜去時刻と結果を記録する。

関連知識

測定回路のつながり

血管内の圧変化が、液で満たした硬い回路を通り、トランスデューサで電気信号に変わる。

動脈圧測定回路の構成 患者の動脈カテーテル、採血ポート、トランスデューサ、加圧バッグ、モニタの接続と、気泡、接続、薬剤注入を確認する図 患者からモニタまで、一本の測定系 動脈カテーテル 採血ポート 変換器 加圧バッグ 気泡なし 接続を閉鎖・固定 薬剤を入れない
異常値は回路全体をたどる患者、カテーテル、採血ポート、気泡、接続、トランスデューサ、加圧、モニタを順に確認する。

動脈圧波形とダンピング

正常、オーバーダンピング、アンダーダンピングの動脈圧波形 正常波形は急な立ち上がりと切痕があり、オーバーダンピングは丸く低振幅、アンダーダンピングは鋭く振動が多いことを比較する図 波形の形が崩れると、表示値もずれる 正常 切痕 急な立ち上がり 過減衰 丸い・振幅が小さい 不足減衰 鋭い・リンギング 正常、オーバーダンピング、アンダーダンピングの動脈圧波形 正常、過減衰、不足減衰の動脈圧波形を縦に並べて比較する図 波形の形と表示値を比べる 正常 切痕 急な立ち上がり 過減衰 丸い・振幅が小さい 不足減衰 鋭い・リンギング
波形異常を患者の血圧変化と決めつけない過減衰は収縮期を低く、拡張期を高く表示しやすい。不足減衰はその逆。原因を除き、正しい波形で再評価する。
  • 過減衰:気泡、凝血、屈曲、閉塞、接続不良、加圧不足などを確認
  • 不足減衰:硬すぎる回路、回路構成、カテーテルの動き、共振などを確認
  • 波形消失:患者の循環、抜去・離断、活栓、屈曲、凝血、ケーブル、モニタ設定を確認
  • 高速フラッシュテストは、適応と操作を理解した者が採用製品・院内手順に従って行う

トランスデューサの高さで値が変わる

  • 基準点より低い:表示圧は高くなる
  • 基準点より高い:表示圧は低くなる
  • 高さ10 cmのずれで、約7.5 mmHgの差が生じる
  • 体位変換、ベッド高変更、移動後は高さを再確認する
  • 通常の全身動脈圧は右心房レベルを基準にする
  • 脳灌流圧など目的が異なる場合は指示された基準点を使う

主な合併症

出血・失血
抜去、離断、接続部の緩み、活栓の誤操作で起こる
血栓・末梢虚血
疼痛、蒼白、冷感、しびれ、脈拍低下、毛細血管再充満遅延など
感染
発赤、熱感、腫脹、疼痛、排液、発熱など
血腫
刺入時、固定不良、抜去後の止血不十分などで起こる
空気塞栓
回路の開放・離断、気泡を含む回路のフラッシュなどで起こる
誤注入
動脈回路を静脈ラインと誤認し、薬剤などを注入する事故

交換時期と感染対策

  • 動脈カテーテルは定期交換せず、臨床的な適応で交換
  • 不要になったら速やかに抜去
  • CDCはトランスデューサを96時間間隔で交換し、チューブ、持続フラッシュ器具、フラッシュ液も同時交換するよう推奨
  • 回路構成と交換時期は、最新の院内手順と製品説明書も確認
  • すべての構成品の無菌性を保ち、操作回数を減らす
  • ドレッシングが湿潤・緩み・汚染したら交換する

出典