検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
腎前性:腎臓に届く血流が不足
- 出血・体液喪失・循環障害など
- 腎臓への灌流が低下
- 尿量減少・Cr上昇の可能性
観察へ:血圧・末梢冷感・出血や喪失量を確認。心不全では体液が多くても灌流不足があり、浮腫と循環を一緒に見る。
腎性:腎組織そのものが障害
- 虚血・薬剤・炎症など
- 糸球体や尿細管が障害
- Cr・K上昇、体液調節の異常
観察へ:感染・薬の変更・造影・筋障害などの経過、尿所見を共有。尿が出ていても検査値の悪化を見逃さない。
腎後性:尿の出口が閉塞
- 尿路結石・腫瘍・尿閉など
- 尿が流れにくくなる
- 尿量低下・腎機能悪化
観察へ:下腹部膨満、排尿困難、カテーテルの屈曲・流出を確認。閉塞解除後は多尿と体液・電解質変化を追う。
腎臓へ届く血流、濾過、尿の排出の関係を簡略化した図。血液すべてが尿になるわけではない。橙色は問題が起こる場所。実際には複数の原因が重なり、尿量が保たれるAKIもある。
症状から観察・再確認へ
尿量減少
- 見る・聞く
- 測定時間と尿量、直前の排尿、採尿漏れ、留置時の屈曲・バッグ位置を確認。下腹部膨満も見る。
- 何を反映するか
- 灌流低下・腎障害・閉塞などの手がかり。尿量が保たれていてもAKIは否定できない。
- 普段と比較
- 時間あたりの量、普段の量、体重、輸液・飲水・利尿薬の条件を比較。
- 悪化を疑う変化
- 尿が急に出なくなる、循環不良・呼吸苦・意識変化が重なる。
- 再確認
- 流出経路を確認後も少尿が続けば報告。補液や利尿薬の後は尿量と呼吸・循環・検査を合わせて再評価。
むくみ・息切れ
- 見る・聞く
- 体重・浮腫、呼吸数・会話・体位・SpO₂、酸素条件、血圧を確認。輸液を含む入出量を集計。
- 何を反映するか
- 体液貯留や肺うっ血を疑う。むくみだけで血管内の充満や補液適応を決められない。
- 普段と比較
- 同条件の体重、酸素必要量、臥位の耐容、直近の輸液量と比較。
- 悪化を疑う変化
- 安静時呼吸苦、酸素条件増加、会話困難、循環不良。
- 再確認
- 体位や指示治療後の呼吸、体重・尿量・血圧。尿だけ増えても低灌流になっていないか確認。
動悸・脱力
- 見る・聞く
- 脈拍・心電図、筋力、しびれ、意識と呼吸を確認。最新のKと採血条件を確認。
- 何を反映するか
- Kなどの電解質異常が筋・心臓に影響する可能性。症状なしでも危険な異常はありうる。
- 普段と比較
- Kの変化速度、薬剤・Kを含む輸液、前回心電図と比較。
- 悪化を疑う変化
- 失神、脈の乱れと循環不良、強い筋力低下、急速なK上昇の報告。
- 再確認
- 治療後の心電図・Kと症状を再確認。緊急性のある値は再採血の結果だけを待たず共有。
食欲低下・意識の変化
- 見る・聞く
- 悪心・摂取量、反応・見当識、呼吸・循環、内服や鎮静薬の使用を確認。
- 何を反映するか
- 尿毒症、感染、電解質・酸塩基異常、薬剤蓄積などを考える。Crだけで原因を断定しない。
- 普段と比較
- 普段の覚醒と食事、直近の薬・検査・尿量の変化を比較。
- 悪化を疑う変化
- 反応低下、痙攣、呼吸異常、強い胸痛などが加わる。
- 再確認
- 安全確保と報告後、原因治療に対する反応と再検査の予定を確認。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
原因評価と治療計画があり、呼吸・循環・意識が安定し、尿量と検査推移が評価されている。
次の行動:指定間隔で入出量と検査を追う。新規のCr上昇や少尿を未評価のまま経過観察にしない。
早めに共有
普段より尿が少ない、Crが上がる、新しい浮腫・食欲低下、薬や造影後の変化。
次の行動:測定条件、体液量、薬と検査の前後関係を整理し、原因評価と処方見直しを相談。
直ちに応援要請
少尿に急な呼吸不全・循環不良・意識障害が伴う、重い高K血症や不整脈が疑われる。
次の行動:急変対応とモニター確認。緊急採血・電解質治療・腎代替療法の準備を指示と手順に沿って行う。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1 全身の危険を先に評価
気道・呼吸・循環・意識を確認。呼吸苦では楽な体位を調整し、重い変化は直ちに応援を求める。
2 尿量の測定と流れを確認
採尿時間・漏れ・流出障害を確認する。カテーテルは不用意に接続を外さず、閉塞が疑われれば手順に沿い報告する。
3 体液と原因の情報を集める
出血、嘔吐・下痢、発熱、摂取不足、体重・入出量、最近の薬と造影を整理。尿が少ないことだけを理由に水分を増やさない。
4 指示された検査・治療を準備
血液・尿検査、超音波などの準備。腎排泄薬や腎障害に関わる薬の処方を確認し、独断の中止・増減を避けて相談する。
5 回復期も喪失を追う
閉塞解除後や回復期に尿量が増えたら血圧・口渇・体重・Na/Kを再確認。移動時のふらつきを予防し、退院後の再検査を確認。
治療前・中・後の看護
高K血症への緊急治療
- 目的
- 不整脈の危険に対応し、Kを細胞内へ移す治療と体外へ除く治療を組み合わせる。
- 前に確認
- Kの値と推移、心電図・循環、血糖、静脈路、原因薬と輸液、各治療の指示。
- 中に観察
- 心電図・血圧・症状を確認。インスリンとブドウ糖による治療では低血糖を監視し、血管外漏出にも注意。
- 反応・再評価
- 治療後も指定時刻にK・血糖を再検査。細胞内への移動は体外除去ではなく、Kの再上昇と遅れて起こる低血糖を追う。
- 適応・注意
- 心保護目的のCa投与はKを下げる治療とは別。薬の選択・製剤・投与量は国内の手順と専門チームの指示で確認する。
原因に応じた循環・体液管理
- 目的
- 体液不足や循環障害を是正し、腎臓への灌流を確保する。
- 前に確認
- 血圧・末梢循環、出血・喪失量、心不全の有無、呼吸・体重・輸液条件。
- 中に観察
- 指示された補液等への血圧・尿量の反応と、新しい呼吸苦・浮腫。
- 反応・再評価
- 循環改善と体液過剰の両方を評価。反応が乏しければ補液を重ねる前に再評価を依頼。
- 適応・注意
- 全AKIで補液するわけではない。原因・心機能・体液量により治療は異なる。
ループ利尿薬:体液過剰の調整
- 目的
- 適応のある体液過剰を軽減する。AKIの予防・腎機能回復目的で一律には使わない。
- 前に確認
- 尿量、血圧、体液量、Na/K、Cr、無尿などの禁忌と投与経路・速度。
- 中に観察
- 尿量と呼吸の変化、低血圧・脱水、筋力低下・動悸、耳鳴りや聴力変化。
- 反応・再評価
- うっ血軽減と循環・電解質を再評価。尿量増加だけを腎回復の証拠にしない。
- 適応・注意
- 薬剤・用量は処方者が調整する。静注例の詳細は下の製品情報で確認。
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- 目的
- 尿の流出を回復させる。閉塞部位と原因により処置を選ぶ。
- 前に確認
- 排尿経過、下腹部膨満、画像、抗凝固薬、処置内容と感染徴候。
- 中に観察
- 疼痛、血尿、尿の流出、発熱、血圧。ドレーン類の屈曲・固定を確認。
- 反応・再評価
- 解除後の尿量とCr推移、体液・電解質を再評価。急な多尿による不足にも注意。
- 適応・注意
- 導尿だけでは解除できない閉塞もある。処置方法は医師が判断し、無理な挿入・洗浄をしない。
腎代替療法:透析・血液濾過など
- 目的
- 重い体液・電解質・酸塩基異常や尿毒症に対応する。
- 前に確認
- K・血液ガス、呼吸循環、体液量、出血リスク、アクセスと治療条件。
- 中に観察
- 血圧・意識・不整脈、出血、回路・アクセス、除水と入出量、体温。
- 反応・再評価
- 呼吸・循環・Kや酸塩基の改善、過度の除水、治療後の再上昇を確認。
- 適応・注意
- Crの高さだけで開始を決めない。治療抵抗性の異常や症状を含め専門チームが判断する。
検査の意味と読み方
Cr
血清濃度の短期間の上昇は腎機能悪化の手がかり。
組み合わせ・推移:筋肉量や体液量にも影響され、障害より遅れて上がる場合がある。基準値内でも普段との差と尿量を確認。
Crの検査詳細
BUN
老廃物である尿素の排泄と代謝の状態を反映する。
組み合わせ・推移:脱水、消化管出血、蛋白摂取などでも変わる。Cr・体液量・便性状・栄養と推移を合わせる。
BUNの検査詳細
K
排泄低下などで上昇し、不整脈のリスクとなる。
組み合わせ・推移:溶血の影響、薬剤・輸液、心電図を確認。心電図が目立たなくても異常値と上昇速度を共有。
Kの検査詳細
HCO₃⁻
低下は代謝性アシドーシスを考える手がかり。
組み合わせ・推移:pH・PaCO₂・循環状態と組み合わせる。腎障害だけでなく乳酸増加や消化管喪失も検討。
HCO₃⁻の検査詳細
尿検査・尿路超音波
血尿・蛋白・沈渣は腎内の原因、尿路拡張や残尿は閉塞評価の手がかり。
組み合わせ・推移:単独所見で原因を断定しない。発症経過、感染、投薬、画像と合わせ、採尿条件も伝える。
報告:SBARで情報をそろえる
S:尿量と全身状態の変化
- いつからどれだけ尿量が変わったか、現在の意識・呼吸・血圧、動悸や急な苦痛。
B:腎機能と原因候補
- 普段のCr・CKD、出血・喪失・感染・閉塞症状。
- 酸素、点滴、利尿薬、腎機能に関わる薬、造影・処置。
A:測定と反応
- 測定時間ごとの尿量、体重・入出量、Cr/Kの直近と現在。
- カテーテル確認、体位・指示治療後の反応。
R:必要な判断
- 直ちに診察・採血・心電図が必要か、補液や薬の変更、閉塞評価、腎代替療法の要否と次の再評価。
患者・家族への説明
尿だけで回復を決めない
尿が出るようになっても採血と経過の確認が必要。息苦しさ、動悸、強いだるさ、尿の急な変化を知らせる。
水分と薬は個別に確認
水を多く飲めば治るとは限らない。市販の鎮痛薬・サプリも伝え、飲水量と服薬の指示を確認する。
退院後も検査につなぐ
回復の程度は原因によって異なる。再診・採血・尿検査の予定と、体調不良時の相談先を確認する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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