腎・泌尿器

急性腎障害(AKI)

短期間のCr上昇と尿量変化を追い、血流・腎臓自体・尿路のどこに問題があるかを考える。尿量だけで体液不足や腎機能回復を決めない。

主な症状
尿量変化 むくみ 息切れ だるさ 動悸
代表的な薬
高K血症治療薬
検査値UP
Cr K BUN
検査値DOWN
HCO₃⁻

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

腎前性:腎臓に届く血流が不足

腎前性:腎臓に届く血流が不足:血流低下 → 濾過量が減る血流が届く腎臓で濾過尿路へ流れる血液尿の流れ血流低下 → 濾過量が減る
  1. 出血・体液喪失・循環障害など
  2. 腎臓への灌流が低下
  3. 尿量減少・Cr上昇の可能性

観察へ:血圧・末梢冷感・出血や喪失量を確認。心不全では体液が多くても灌流不足があり、浮腫と循環を一緒に見る。

腎性:腎組織そのものが障害

腎性:腎組織そのものが障害:組織障害 → 濾過・調節が低下血流が届く腎臓で濾過尿路へ流れる血液尿の流れ組織障害 → 濾過・調節が低下
  1. 虚血・薬剤・炎症など
  2. 糸球体や尿細管が障害
  3. Cr・K上昇、体液調節の異常

観察へ:感染・薬の変更・造影・筋障害などの経過、尿所見を共有。尿が出ていても検査値の悪化を見逃さない。

腎後性:尿の出口が閉塞

腎後性:尿の出口が閉塞:尿路の閉塞 → 腎臓側に圧がかかる血流が届く腎臓で濾過尿路へ流れる血液尿の流れ尿路の閉塞 → 腎臓側に圧がかかる
  1. 尿路結石・腫瘍・尿閉など
  2. 尿が流れにくくなる
  3. 尿量低下・腎機能悪化

観察へ:下腹部膨満、排尿困難、カテーテルの屈曲・流出を確認。閉塞解除後は多尿と体液・電解質変化を追う。

腎臓へ届く血流、濾過、尿の排出の関係を簡略化した図。血液すべてが尿になるわけではない。橙色は問題が起こる場所。実際には複数の原因が重なり、尿量が保たれるAKIもある。

症状から観察・再確認へ

尿量減少

見る・聞く
測定時間と尿量、直前の排尿、採尿漏れ、留置時の屈曲・バッグ位置を確認。下腹部膨満も見る。
何を反映するか
灌流低下・腎障害・閉塞などの手がかり。尿量が保たれていてもAKIは否定できない。
普段と比較
時間あたりの量、普段の量、体重、輸液・飲水・利尿薬の条件を比較。
悪化を疑う変化
尿が急に出なくなる、循環不良・呼吸苦・意識変化が重なる。
再確認
流出経路を確認後も少尿が続けば報告。補液や利尿薬の後は尿量と呼吸・循環・検査を合わせて再評価。

むくみ息切れ

見る・聞く
体重・浮腫、呼吸数・会話・体位・SpO₂、酸素条件、血圧を確認。輸液を含む入出量を集計。
何を反映するか
体液貯留や肺うっ血を疑う。むくみだけで血管内の充満や補液適応を決められない。
普段と比較
同条件の体重、酸素必要量、臥位の耐容、直近の輸液量と比較。
悪化を疑う変化
安静時呼吸苦、酸素条件増加、会話困難、循環不良。
再確認
体位や指示治療後の呼吸、体重・尿量・血圧。尿だけ増えても低灌流になっていないか確認。

動悸脱力

見る・聞く
脈拍・心電図、筋力、しびれ、意識と呼吸を確認。最新のKと採血条件を確認。
何を反映するか
Kなどの電解質異常が筋・心臓に影響する可能性。症状なしでも危険な異常はありうる。
普段と比較
Kの変化速度、薬剤・Kを含む輸液、前回心電図と比較。
悪化を疑う変化
失神、脈の乱れと循環不良、強い筋力低下、急速なK上昇の報告。
再確認
治療後の心電図・Kと症状を再確認。緊急性のある値は再採血の結果だけを待たず共有。

食欲低下意識の変化

見る・聞く
悪心・摂取量、反応・見当識、呼吸・循環、内服や鎮静薬の使用を確認。
何を反映するか
尿毒症、感染、電解質・酸塩基異常、薬剤蓄積などを考える。Crだけで原因を断定しない。
普段と比較
普段の覚醒と食事、直近の薬・検査・尿量の変化を比較。
悪化を疑う変化
反応低下、痙攣、呼吸異常、強い胸痛などが加わる。
再確認
安全確保と報告後、原因治療に対する反応と再検査の予定を確認。

看護判断:変化の緊急度

継続観察

原因評価と治療計画があり、呼吸・循環・意識が安定し、尿量と検査推移が評価されている。

次の行動:指定間隔で入出量と検査を追う。新規のCr上昇や少尿を未評価のまま経過観察にしない。

早めに共有

普段より尿が少ない、Crが上がる、新しい浮腫・食欲低下、薬や造影後の変化。

次の行動:測定条件、体液量、薬と検査の前後関係を整理し、原因評価と処方見直しを相談。

直ちに応援要請

少尿に急な呼吸不全・循環不良・意識障害が伴う、重い高K血症や不整脈が疑われる。

次の行動:急変対応とモニター確認。緊急採血・電解質治療・腎代替療法の準備を指示と手順に沿って行う。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1 全身の危険を先に評価

気道・呼吸・循環・意識を確認。呼吸苦では楽な体位を調整し、重い変化は直ちに応援を求める。

2 尿量の測定と流れを確認

採尿時間・漏れ・流出障害を確認する。カテーテルは不用意に接続を外さず、閉塞が疑われれば手順に沿い報告する。

3 体液と原因の情報を集める

出血、嘔吐・下痢、発熱、摂取不足、体重・入出量、最近の薬と造影を整理。尿が少ないことだけを理由に水分を増やさない。

4 指示された検査・治療を準備

血液・尿検査、超音波などの準備。腎排泄薬や腎障害に関わる薬の処方を確認し、独断の中止・増減を避けて相談する。

5 回復期も喪失を追う

閉塞解除後や回復期に尿量が増えたら血圧・口渇・体重・Na/Kを再確認。移動時のふらつきを予防し、退院後の再検査を確認。

治療前・中・後の看護

高K血症への緊急治療

目的
不整脈の危険に対応し、Kを細胞内へ移す治療と体外へ除く治療を組み合わせる。
前に確認
Kの値と推移、心電図・循環、血糖、静脈路、原因薬と輸液、各治療の指示。
中に観察
心電図・血圧・症状を確認。インスリンとブドウ糖による治療では低血糖を監視し、血管外漏出にも注意。
反応・再評価
治療後も指定時刻にK・血糖を再検査。細胞内への移動は体外除去ではなく、Kの再上昇と遅れて起こる低血糖を追う。
適応・注意
心保護目的のCa投与はKを下げる治療とは別。薬の選択・製剤・投与量は国内の手順と専門チームの指示で確認する。

原因に応じた循環・体液管理

目的
体液不足や循環障害を是正し、腎臓への灌流を確保する。
前に確認
血圧・末梢循環、出血・喪失量、心不全の有無、呼吸・体重・輸液条件。
中に観察
指示された補液等への血圧・尿量の反応と、新しい呼吸苦・浮腫。
反応・再評価
循環改善と体液過剰の両方を評価。反応が乏しければ補液を重ねる前に再評価を依頼。
適応・注意
全AKIで補液するわけではない。原因・心機能・体液量により治療は異なる。

ループ利尿薬:体液過剰の調整

目的
適応のある体液過剰を軽減する。AKIの予防・腎機能回復目的で一律には使わない。
前に確認
尿量、血圧、体液量、Na/K、Cr、無尿などの禁忌と投与経路・速度。
中に観察
尿量と呼吸の変化、低血圧・脱水、筋力低下・動悸、耳鳴りや聴力変化。
反応・再評価
うっ血軽減と循環・電解質を再評価。尿量増加だけを腎回復の証拠にしない。
適応・注意
薬剤・用量は処方者が調整する。静注例の詳細は下の製品情報で確認。
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尿路閉塞の解除

目的
尿の流出を回復させる。閉塞部位と原因により処置を選ぶ。
前に確認
排尿経過、下腹部膨満、画像、抗凝固薬、処置内容と感染徴候。
中に観察
疼痛、血尿、尿の流出、発熱、血圧。ドレーン類の屈曲・固定を確認。
反応・再評価
解除後の尿量とCr推移、体液・電解質を再評価。急な多尿による不足にも注意。
適応・注意
導尿だけでは解除できない閉塞もある。処置方法は医師が判断し、無理な挿入・洗浄をしない。

腎代替療法:透析・血液濾過など

目的
重い体液・電解質・酸塩基異常や尿毒症に対応する。
前に確認
K・血液ガス、呼吸循環、体液量、出血リスク、アクセスと治療条件。
中に観察
血圧・意識・不整脈、出血、回路・アクセス、除水と入出量、体温。
反応・再評価
呼吸・循環・Kや酸塩基の改善、過度の除水、治療後の再上昇を確認。
適応・注意
Crの高さだけで開始を決めない。治療抵抗性の異常や症状を含め専門チームが判断する。

検査の意味と読み方

Cr

血清濃度の短期間の上昇は腎機能悪化の手がかり。

組み合わせ・推移:筋肉量や体液量にも影響され、障害より遅れて上がる場合がある。基準値内でも普段との差と尿量を確認。

Crの検査詳細

BUN

老廃物である尿素の排泄と代謝の状態を反映する。

組み合わせ・推移:脱水、消化管出血、蛋白摂取などでも変わる。Cr・体液量・便性状・栄養と推移を合わせる。

BUNの検査詳細

K

排泄低下などで上昇し、不整脈のリスクとなる。

組み合わせ・推移:溶血の影響、薬剤・輸液、心電図を確認。心電図が目立たなくても異常値と上昇速度を共有。

Kの検査詳細

HCO₃⁻

低下は代謝性アシドーシスを考える手がかり。

組み合わせ・推移:pH・PaCO₂・循環状態と組み合わせる。腎障害だけでなく乳酸増加や消化管喪失も検討。

HCO₃⁻の検査詳細

尿検査尿路超音波

血尿・蛋白・沈渣は腎内の原因、尿路拡張や残尿は閉塞評価の手がかり。

組み合わせ・推移:単独所見で原因を断定しない。発症経過、感染、投薬、画像と合わせ、採尿条件も伝える。

報告:SBARで情報をそろえる

S:尿量と全身状態の変化

  • いつからどれだけ尿量が変わったか、現在の意識・呼吸・血圧、動悸や急な苦痛。

B:腎機能と原因候補

  • 普段のCr・CKD、出血・喪失・感染・閉塞症状。
  • 酸素、点滴、利尿薬、腎機能に関わる薬、造影・処置。

A:測定と反応

  • 測定時間ごとの尿量、体重・入出量、Cr/Kの直近と現在。
  • カテーテル確認、体位・指示治療後の反応。

R:必要な判断

  • 直ちに診察・採血・心電図が必要か、補液や薬の変更、閉塞評価、腎代替療法の要否と次の再評価。

患者・家族への説明

尿だけで回復を決めない

尿が出るようになっても採血と経過の確認が必要。息苦しさ、動悸、強いだるさ、尿の急な変化を知らせる。

水分と薬は個別に確認

水を多く飲めば治るとは限らない。市販の鎮痛薬・サプリも伝え、飲水量と服薬の指示を確認する。

退院後も検査につなぐ

回復の程度は原因によって異なる。再診・採血・尿検査の予定と、体調不良時の相談先を確認する。

参考文献

  1. NHS:Acute kidney injury

    2026年3月確認更新。原因、症状、原因別治療、回復後の検査。

  2. 日本腎臓学会:急性腎障害と慢性腎臓病

    原因の3分類、症状、尿量が保たれる例と回復後の注意。

  3. 日本腎臓学会ほか:AKI診療ガイドライン2016

    原因評価、Crと尿量、利尿薬の位置づけ、腎代替療法の検討。発行年に留意し一律の開始条件を示さない。

  4. PMDA:ラシックス注20mg 電子添文

    体液過剰時の代表薬。禁忌、脱水・電解質・聴力への注意。

  5. UK Kidney Association:高K血症診療ガイドライン

    2026年7月更新版の治療後のK・血糖監視を参照。海外の薬剤・用量を国内の手順として転記しない。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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