検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
筋細胞の内容が血液へ流出
- 圧迫・虚血、過度の運動、熱、薬剤などで筋細胞が傷む
- CK・ミオグロビン・Kなどが血液へ出る
- ミオグロビンなどによる腎障害/高Kによる不整脈リスク
観察へ:CKで筋障害を追いながら、K・心電図・尿量・Crで全身への影響を別々に確認する。原因薬の追加・増量や動けなかった時間も聞く。
強い腫れ:筋肉を囲む区画の圧上昇
- 外傷・圧迫・筋肉の腫れなど
- 筋膜で囲まれた区画の内圧が上がり、局所の血流が低下
- 強い痛み・感覚や運動の変化 → さらに筋肉が障害される
観察へ:見た目に比べて強い痛み、鎮痛後も増す痛み、張りやしびれは直ちに報告。脈が触れることだけで安心しない。
筋障害の全身への影響と、緊急評価が必要な局所の圧上昇を分けた模式図。コンパートメント症候群は全例に起こるものではなく、原因にも合併症にもなりうる。実際の画像や心電図を再現していない。
症状から観察・再確認へ
筋痛・筋力低下
- 見る・聞く
- 痛む範囲・腫れ・圧迫痕、起き上がりや手足の動き、発症時刻、運動・転倒・長時間の不動・発熱・薬を確認。
- 何を反映するか
- 骨格筋の障害を疑う情報。筋痛がない例や、意識低下で訴えられない例もある。
- 普段と比較
- 普段の動作と筋力、左右差、鎮痛前後、原因を除いた後の変化を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急に動けない、腫れと痛みの急増、呼吸筋の弱さ、発熱と意識の変化。
- 再確認
- 移動を介助して転倒を防ぎ、CK・K・腎機能と全身状態を確認。薬剤性を疑う所見は投薬前に直ちに共有する。
局所の強い痛み・しびれ
- 見る・聞く
- 腫れの張り、痛みの強さと鎮痛反応、感覚・運動、皮膚色・温度・末梢循環を繰り返し確認。
- 何を反映するか
- 区画内の圧上昇による虚血の可能性。強い痛みを繰り返し誘発して確かめない。
- 普段と比較
- 直前の痛みと感覚、腫れ、鎮痛薬の量・時刻、反対側を比較。
- 悪化を疑う変化
- 見た目に不釣り合いな痛み、他動運動での痛み、しびれ・運動障害の進行。
- 再確認
- 緊急の外科評価を依頼。圧迫する固定・包帯の状態を共有し、解除や体位の対応は指示・手順に従う。脈消失まで待たない。
濃い尿・尿量減少
- 見る・聞く
- 色だけでなく時間尿量、総出納、血圧、口渇・浮腫、尿カテーテルがある場合は屈曲・閉塞を確認。
- 何を反映するか
- ミオグロビン尿や腎障害の可能性。濃縮尿・血尿などでも色が変わるため、尿検査と採血を合わせる。
- 普段と比較
- 普段と直前の尿量、輸液開始・変更前後、Cr・Kの推移を比較。
- 悪化を疑う変化
- 尿量が減り続ける、無尿、K上昇、息苦しさや浮腫が加わる。
- 再確認
- 採尿・採血を指示に沿って実施。尿が出ない理由を確認せず輸液だけを増やさず、循環と体液過剰を再評価する。
動悸・息苦しさ
- 見る・聞く
- 脈・リズム・血圧、意識、呼吸数・深さ、会話、SpO₂と酸素条件、呼吸音を確認。
- 何を反映するか
- 高K、不整脈、呼吸筋障害、輸液による体液過剰などを考える。
- 普段と比較
- 輸液量と変更時刻、治療前後の心電図・K・酸素条件を比較。
- 悪化を疑う変化
- 失神、循環不良、持続する不整脈、酸素需要増加、浅い呼吸・意識低下。
- 再確認
- 応援要請と気道・呼吸循環の評価を優先。モニター・緊急採血・指示された高K治療の準備を並行する。
看護判断:変化の緊急度
治療計画に沿って経過を追う
原因への対応が始まり、筋症状・尿量・呼吸循環と検査推移が安定している。
次の行動:予定の再採血と尿量評価を続ける。CK低下だけで腎障害・電解質の監視を終了しない。
早めの共有・報告
新しい筋痛・脱力・尿の変化、CK上昇、尿量減少、腎機能悪化やKの上昇傾向。
次の行動:原因候補と発症時刻、直前と現在の値、輸液と尿量を共有し、採血・治療計画の再評価を依頼する。
直ちに応援・緊急対応
循環不良を伴う脈の異常、重度高Kや新しい心電図変化、呼吸不全・意識低下、強い局所痛と進行する神経症状。
次の行動:急変対応を開始し、緊急の内科・外科評価につなぐ。検査結果が全部そろうまで待たない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1 心臓と呼吸の危険を先に見る
意識・呼吸・循環を確認し、K異常が疑われるときはモニターと心電図を準備。症状が乏しくても重大な採血異常は直ちに共有。
2 筋障害が続く原因を確認
発症に関わる圧迫・熱・運動を確認し安全を確保。薬の開始・増量・併用を医師・薬剤師に伝え、中止の判断を速やかに確認する。
3 尿量と輸液を対応させる
投与液・速度・実投与量、尿量、血圧、浮腫・呼吸を同じ時間帯で記録。無尿や体液過剰では増量前に指示を確認。
4 採血と局所所見を再確認
CK・K・Cr・Caなどの推移と筋力・痛み・腫れを追う。鎮痛後も神経・血流の観察を続け、疼痛増悪を薬で隠さない。
5 合併症治療後まで追う
高K治療後はK再上昇と低血糖、輸液後は呼吸・尿量を再評価。必要時は透析や外科処置の準備を指示に沿って進める。
治療前・中・後の看護
原因への対応
- 目的
- 筋細胞の障害が続く要因を除く。
- 前に確認
- 原因候補の薬・運動・圧迫・高体温、発症時刻、既往と併用薬を確認。
- 中に観察
- 原因薬の中止、体温管理、圧迫・虚血の治療など個別の指示を実施し、呼吸循環と筋症状を観察。
- 反応・再評価
- 筋症状とCKの推移に加え、K・尿量・腎機能が悪化していないか確認。
- 適応・注意
- 原因を一つに決めつけない。原因薬の中止後も筋症状が続けば別の筋疾患などの再評価が必要。
晶質液による補液
- 目的
- 循環血液量を適正化し腎臓への血流を保つ。
- 前に確認
- 血圧・尿量・出納、心腎機能、K、脱水と体液過剰の所見、輸液の種類と指示速度を確認。
- 中に観察
- 尿量と循環の反応を見ながら、呼吸音・酸素需要・浮腫も確認する。
- 反応・再評価
- 循環と尿量の改善、Cr・電解質の推移で評価。尿が増えず呼吸苦が加わる場合は速やかに再評価。
- 適応・注意
- 一律の大量輸液や固定の尿量目標を当てはめない。製剤と量は病態別に選び、生食の大量投与でも電解質異常・アシドーシスに注意する。
大塚生食注の詳細を開く高K血症への治療
- 目的
- 心臓への影響を抑え、Kを細胞内へ移し、必要に応じ体外へ除去する。
- 前に確認
- K、心電図、血糖、腎機能、直前の治療とK含有薬を確認。
- 中に観察
- カルシウム製剤、インスリン・ブドウ糖、K除去療法を病態に応じ指示で実施。各治療の目的を混同しない。
- 反応・再評価
- 心電図・Kの再検と、インスリン使用後の遅れて起こる低血糖を追う。
- 適応・注意
- カルシウムはK値自体を下げない。細胞内移動だけではKを除去できず、筋障害が続くと再上昇しうる。製剤・経路・測定間隔は個別指示。
腎代替療法
- 目的
- 保存的治療で対応できない電解質・酸塩基・体液の異常を管理する。
- 前に確認
- 尿量、K、酸塩基、呼吸と体液量、循環、アクセス準備を確認。
- 中に観察
- 血圧・リズム、回路・穿刺部、除水と症状を観察する。
- 反応・再評価
- K・酸塩基・呼吸状態の改善と循環の安定を再評価。
- 適応・注意
- CKが高いことだけで導入を決めない。重症AKIの合併症と全身状態から専門医が判断する。
区画内圧上昇への外科対応
- 目的
- 圧迫された筋肉・神経への血流を回復させる。
- 前に確認
- 痛み・鎮痛反応、腫れ、感覚・運動・循環と経過を報告。必要な内圧測定や手術の準備を確認。
- 中に観察
- 外科評価を急ぎ、指示された減圧処置に備える。評価できない意識状態や麻酔の影響も伝える。
- 反応・再評価
- 処置後の痛み・感覚・運動、創部出血、筋障害・腎機能の推移を追う。
- 適応・注意
- 疑った段階で相談する。局所の圧測定や減圧手術は医師が判断・実施する。
検査の意味と読み方
CK
筋細胞の障害で上昇する酵素。
組み合わせ・推移:発症直後の単回値だけで除外せず推移を見る。運動などでも上がり、値の高さだけでAKIや不整脈の程度は決まらない。
CKの検査詳細
K
筋細胞からの流出や腎排泄低下で上がりうる。
組み合わせ・推移:心電図・腎機能・治療時刻と合わせる。採血時の溶血も確認するが、危険な症状や心電図変化があれば対応を遅らせない。
Kの検査詳細
クレアチニン
腎機能悪化の手掛かり。
組み合わせ・推移:普段からの上昇と尿量・出納を合わせる。CKが改善しても腎機能の回復が遅れる場合がある。
クレアチニンの検査詳細
Ca
筋障害に伴う電解質変化を評価する。
組み合わせ・推移:病期・P・腎機能、しびれ・けいれんなどと合わせる。数値だけで一律に補充せず、補正の必要性を確認。
Caの検査詳細
尿検査・ミオグロビン
尿の色の変化が筋由来成分によるものかを評価する。
組み合わせ・推移:尿潜血反応だけでは血尿・ヘモグロビン尿と区別できない。尿沈渣、筋症状、CKと組み合わせる。
報告:SBARで情報をそろえる
S 現在の危険
- いつから筋力・痛み・尿量が変わったか。
- 現在の意識・呼吸・循環、心電図、局所の進行所見。
B 原因と治療条件
- 運動・熱・圧迫・不動の経過、追加・増量された薬と併用薬、心腎疾患、現在の輸液・酸素条件。
A 変化と反応
- CK・K・Crの直前値と現在値、時間尿量と輸液量、鎮痛・補液・高K治療の実施と反応。
R 確認してほしい判断
- 緊急診察、高K治療、輸液調整、再採血の時期、外科評価や透析の必要性を確認。
患者・家族への説明
筋肉と尿の変化を伝える
普段と違う筋肉の痛み・脱力、尿の変化は早めに相談。尿が褐色になるまで待たない。
薬とサプリも共有
処方薬、市販薬、サプリの開始・変更を伝える。疑われた薬の中止・再開は医療者と確認する。
回復後の活動と水分
運動再開や水分量は回復状況・心腎機能に合わせて相談。水を大量に飲めば治ると考えず、尿量低下・息苦しさ・強い腫れはすぐ知らせる。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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