腎・泌尿器

横紋筋融解症

筋肉の障害を見つけたら、尿量・K・腎機能と呼吸循環を一緒に追う。筋痛や褐色尿がそろわない例もあり、CKだけで重症度や輸液量を決めない。

主な症状
筋痛 脱力 濃い尿 動悸
代表的な薬
高K血症への治療薬
検査値UP
CK K Cr
検査値DOWN
Ca

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

筋細胞の内容が血液へ流出

傷んだ筋肉から流出した成分が腎臓と心臓に影響する傷んだ筋肉血液へ流出CK:筋障害の目安ミオグロビン・Kミオグロビン → 腎障害尿量・Crを追うK上昇 → 不整脈K・心電図を追う
  1. 圧迫・虚血、過度の運動、熱、薬剤などで筋細胞が傷む
  2. CK・ミオグロビン・Kなどが血液へ出る
  3. ミオグロビンなどによる腎障害/高Kによる不整脈リスク

観察へ:CKで筋障害を追いながら、K・心電図・尿量・Crで全身への影響を別々に確認する。原因薬の追加・増量や動けなかった時間も聞く。

強い腫れ:筋肉を囲む区画の圧上昇

筋膜内の腫れによる圧上昇で局所の血流が低下する筋膜に囲まれた区画の断面腫れた筋肉区画内の血管が圧迫される圧が上がる → 血流が低下強い痛み・感覚と運動の変化 → 外科評価
  1. 外傷・圧迫・筋肉の腫れなど
  2. 筋膜で囲まれた区画の内圧が上がり、局所の血流が低下
  3. 強い痛み・感覚や運動の変化 → さらに筋肉が障害される

観察へ:見た目に比べて強い痛み、鎮痛後も増す痛み、張りやしびれは直ちに報告。脈が触れることだけで安心しない。

筋障害の全身への影響と、緊急評価が必要な局所の圧上昇を分けた模式図。コンパートメント症候群は全例に起こるものではなく、原因にも合併症にもなりうる。実際の画像や心電図を再現していない。

症状から観察・再確認へ

筋痛筋力低下

見る・聞く
痛む範囲・腫れ・圧迫痕、起き上がりや手足の動き、発症時刻、運動・転倒・長時間の不動・発熱・薬を確認。
何を反映するか
骨格筋の障害を疑う情報。筋痛がない例や、意識低下で訴えられない例もある。
普段と比較
普段の動作と筋力、左右差、鎮痛前後、原因を除いた後の変化を比較。
悪化を疑う変化
急に動けない、腫れと痛みの急増、呼吸筋の弱さ、発熱と意識の変化。
再確認
移動を介助して転倒を防ぎ、CK・K・腎機能と全身状態を確認。薬剤性を疑う所見は投薬前に直ちに共有する。

局所の強い痛みしびれ

見る・聞く
腫れの張り、痛みの強さと鎮痛反応、感覚・運動、皮膚色・温度・末梢循環を繰り返し確認。
何を反映するか
区画内の圧上昇による虚血の可能性。強い痛みを繰り返し誘発して確かめない。
普段と比較
直前の痛みと感覚、腫れ、鎮痛薬の量・時刻、反対側を比較。
悪化を疑う変化
見た目に不釣り合いな痛み、他動運動での痛み、しびれ・運動障害の進行。
再確認
緊急の外科評価を依頼。圧迫する固定・包帯の状態を共有し、解除や体位の対応は指示・手順に従う。脈消失まで待たない。

濃い尿尿量減少

見る・聞く
色だけでなく時間尿量、総出納、血圧、口渇・浮腫、尿カテーテルがある場合は屈曲・閉塞を確認。
何を反映するか
ミオグロビン尿や腎障害の可能性。濃縮尿・血尿などでも色が変わるため、尿検査と採血を合わせる。
普段と比較
普段と直前の尿量、輸液開始・変更前後、Cr・Kの推移を比較。
悪化を疑う変化
尿量が減り続ける、無尿、K上昇、息苦しさや浮腫が加わる。
再確認
採尿・採血を指示に沿って実施。尿が出ない理由を確認せず輸液だけを増やさず、循環と体液過剰を再評価する。

動悸息苦しさ

見る・聞く
脈・リズム・血圧、意識、呼吸数・深さ、会話、SpO₂と酸素条件、呼吸音を確認。
何を反映するか
高K、不整脈、呼吸筋障害、輸液による体液過剰などを考える。
普段と比較
輸液量と変更時刻、治療前後の心電図・K・酸素条件を比較。
悪化を疑う変化
失神、循環不良、持続する不整脈、酸素需要増加、浅い呼吸・意識低下。
再確認
応援要請と気道・呼吸循環の評価を優先。モニター・緊急採血・指示された高K治療の準備を並行する。

看護判断:変化の緊急度

治療計画に沿って経過を追う

原因への対応が始まり、筋症状・尿量・呼吸循環と検査推移が安定している。

次の行動:予定の再採血と尿量評価を続ける。CK低下だけで腎障害・電解質の監視を終了しない。

早めの共有・報告

新しい筋痛・脱力・尿の変化、CK上昇、尿量減少、腎機能悪化やKの上昇傾向。

次の行動:原因候補と発症時刻、直前と現在の値、輸液と尿量を共有し、採血・治療計画の再評価を依頼する。

直ちに応援・緊急対応

循環不良を伴う脈の異常、重度高Kや新しい心電図変化、呼吸不全・意識低下、強い局所痛と進行する神経症状。

次の行動:急変対応を開始し、緊急の内科・外科評価につなぐ。検査結果が全部そろうまで待たない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1 心臓と呼吸の危険を先に見る

意識・呼吸・循環を確認し、K異常が疑われるときはモニターと心電図を準備。症状が乏しくても重大な採血異常は直ちに共有。

2 筋障害が続く原因を確認

発症に関わる圧迫・熱・運動を確認し安全を確保。薬の開始・増量・併用を医師・薬剤師に伝え、中止の判断を速やかに確認する。

3 尿量と輸液を対応させる

投与液・速度・実投与量、尿量、血圧、浮腫・呼吸を同じ時間帯で記録。無尿や体液過剰では増量前に指示を確認。

4 採血と局所所見を再確認

CK・K・Cr・Caなどの推移と筋力・痛み・腫れを追う。鎮痛後も神経・血流の観察を続け、疼痛増悪を薬で隠さない。

5 合併症治療後まで追う

高K治療後はK再上昇と低血糖、輸液後は呼吸・尿量を再評価。必要時は透析や外科処置の準備を指示に沿って進める。

治療前・中・後の看護

原因への対応

目的
筋細胞の障害が続く要因を除く。
前に確認
原因候補の薬・運動・圧迫・高体温、発症時刻、既往と併用薬を確認。
中に観察
原因薬の中止、体温管理、圧迫・虚血の治療など個別の指示を実施し、呼吸循環と筋症状を観察。
反応・再評価
筋症状とCKの推移に加え、K・尿量・腎機能が悪化していないか確認。
適応・注意
原因を一つに決めつけない。原因薬の中止後も筋症状が続けば別の筋疾患などの再評価が必要。

晶質液による補液

目的
循環血液量を適正化し腎臓への血流を保つ。
前に確認
血圧・尿量・出納、心腎機能、K、脱水と体液過剰の所見、輸液の種類と指示速度を確認。
中に観察
尿量と循環の反応を見ながら、呼吸音・酸素需要・浮腫も確認する。
反応・再評価
循環と尿量の改善、Cr・電解質の推移で評価。尿が増えず呼吸苦が加わる場合は速やかに再評価。
適応・注意
一律の大量輸液や固定の尿量目標を当てはめない。製剤と量は病態別に選び、生食の大量投与でも電解質異常・アシドーシスに注意する。
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高K血症への治療

目的
心臓への影響を抑え、Kを細胞内へ移し、必要に応じ体外へ除去する。
前に確認
K、心電図、血糖、腎機能、直前の治療とK含有薬を確認。
中に観察
カルシウム製剤、インスリン・ブドウ糖、K除去療法を病態に応じ指示で実施。各治療の目的を混同しない。
反応・再評価
心電図・Kの再検と、インスリン使用後の遅れて起こる低血糖を追う。
適応・注意
カルシウムはK値自体を下げない。細胞内移動だけではKを除去できず、筋障害が続くと再上昇しうる。製剤・経路・測定間隔は個別指示。

腎代替療法

目的
保存的治療で対応できない電解質・酸塩基・体液の異常を管理する。
前に確認
尿量、K、酸塩基、呼吸と体液量、循環、アクセス準備を確認。
中に観察
血圧・リズム、回路・穿刺部、除水と症状を観察する。
反応・再評価
K・酸塩基・呼吸状態の改善と循環の安定を再評価。
適応・注意
CKが高いことだけで導入を決めない。重症AKIの合併症と全身状態から専門医が判断する。

区画内圧上昇への外科対応

目的
圧迫された筋肉・神経への血流を回復させる。
前に確認
痛み・鎮痛反応、腫れ、感覚・運動・循環と経過を報告。必要な内圧測定や手術の準備を確認。
中に観察
外科評価を急ぎ、指示された減圧処置に備える。評価できない意識状態や麻酔の影響も伝える。
反応・再評価
処置後の痛み・感覚・運動、創部出血、筋障害・腎機能の推移を追う。
適応・注意
疑った段階で相談する。局所の圧測定や減圧手術は医師が判断・実施する。

検査の意味と読み方

CK

筋細胞の障害で上昇する酵素。

組み合わせ・推移:発症直後の単回値だけで除外せず推移を見る。運動などでも上がり、値の高さだけでAKIや不整脈の程度は決まらない。

CKの検査詳細

K

筋細胞からの流出や腎排泄低下で上がりうる。

組み合わせ・推移:心電図・腎機能・治療時刻と合わせる。採血時の溶血も確認するが、危険な症状や心電図変化があれば対応を遅らせない。

Kの検査詳細

クレアチニン

腎機能悪化の手掛かり。

組み合わせ・推移:普段からの上昇と尿量・出納を合わせる。CKが改善しても腎機能の回復が遅れる場合がある。

クレアチニンの検査詳細

Ca

筋障害に伴う電解質変化を評価する。

組み合わせ・推移:病期・P・腎機能、しびれ・けいれんなどと合わせる。数値だけで一律に補充せず、補正の必要性を確認。

Caの検査詳細

尿検査ミオグロビン

尿の色の変化が筋由来成分によるものかを評価する。

組み合わせ・推移:尿潜血反応だけでは血尿・ヘモグロビン尿と区別できない。尿沈渣、筋症状、CKと組み合わせる。

報告:SBARで情報をそろえる

S 現在の危険

  • いつから筋力・痛み・尿量が変わったか。
  • 現在の意識・呼吸・循環、心電図、局所の進行所見。

B 原因と治療条件

  • 運動・熱・圧迫・不動の経過、追加・増量された薬と併用薬、心腎疾患、現在の輸液・酸素条件。

A 変化と反応

  • CK・K・Crの直前値と現在値、時間尿量と輸液量、鎮痛・補液・高K治療の実施と反応。

R 確認してほしい判断

  • 緊急診察、高K治療、輸液調整、再採血の時期、外科評価や透析の必要性を確認。

患者・家族への説明

筋肉と尿の変化を伝える

普段と違う筋肉の痛み・脱力、尿の変化は早めに相談。尿が褐色になるまで待たない。

薬とサプリも共有

処方薬、市販薬、サプリの開始・変更を伝える。疑われた薬の中止・再開は医療者と確認する。

回復後の活動と水分

運動再開や水分量は回復状況・心腎機能に合わせて相談。水を大量に飲めば治ると考えず、尿量低下・息苦しさ・強い腫れはすぐ知らせる。

参考文献

  1. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症

    2022年2月時点修正。薬剤性の症状・機序・検査・対応。症例の個人情報や画像は転載していない。

  2. AAST:Rhabdomyolysis Clinical Consensus(2022)

    筋障害・検査・補液の考え方。外傷領域の資料であり個別の病態に合わせる。

  3. BOA:急性コンパートメント症候群の診断と管理(2025年改訂)

    局所の痛み、神経・血流所見の反復評価と緊急外科対応。

  4. UK Kidney Association:成人の高K血症(2026年7月更新)

    治療目的の区別とインスリン後の血糖監視。海外の用量を国内標準として転記していない。

  5. PMDA:大塚生食注 電子添文

    心腎機能への注意、大量・急速投与の副作用、輸液の確認。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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