与薬の技術更新・文献確認:2026年8月29日

輸液管理

バッグから患者まで一本ずつたどる。指示、流量、ルート、ポンプ、刺入部、全身反応をつなげて確認する学習ノート。

学習用。成人の一般的な末梢・中心静脈輸液を扱う。薬剤、濃度、投与経路、流量、配合、ポンプ操作、ルート交換は、処方、電子添文、院内手順、採用機器・輸液セットの取扱説明書を優先する。

まず押さえること

開始・変更・再開の前
  • 患者、薬剤・輸液、目的、濃度、量、投与経路、速度、開始時刻を照合
  • アレルギー、腎・心機能、電解質、体液量、投与部位を確認
  • 処方に必要な速度または投与時間がなければ推定せず、確認する
  • 高警戒薬は院内基準に沿った独立ダブルチェックを行う

輸液の目的を分ける

5つの目的と再評価

蘇生、維持、補充、再分布への対応、再評価。

目的が違えば液の種類、量、速度、観察項目も変わる。経口・経腸で満たせるなら静脈輸液を減らす。

投与前の照合

  1. 指示を読む

    薬剤・輸液名、濃度、総量、経路、速度または投与時間、開始・終了条件。

  2. 患者と目的を確認

    本人確認、アレルギー、病態、検査値、投与目的、現在の水分出納。

  3. 製剤と期限を確認

    ラベル、外観、混濁・変色・漏れ、有効期限、調製日時、遮光・フィルタの要否。

  4. ルートを患者までたどる

    接続先、ルーメン、三方活栓、クレンメ、フィルタ、配合変化、末梢・中心静脈の別。

  5. 機器を照合

    専用セット、シリンジの製造元・容量、薬剤ライブラリ、流量、予定量、アラーム。

輸液速度と滴下計算

単位をそろえて計算

mL/h=総量(mL)÷時間(h)

滴/分=総量×滴下係数÷投与時間(分)

滴下係数は輸液セットの表示を確認する。

例:500mLを0時から12時まで
  • 投与時間:12時間
  • 500÷12=41.7mL/h
  • 設定は処方と院内ルールに従って丸め、終了予定時刻を再確認

「速度指定なし」を自動的に均等割りするのではなく、総量と明確な投与時間が指示されているか確認する。自然滴下では患者の体位、血管抵抗、バッグの高さで速度が変わるため、開始後も再測定する。

バッグから患者までたどる

上流から下流へ一本ずつ

輸液バッグ、滴下筒、ポンプ、クレンメ、フィルタ、接続部、三方活栓、カテーテル、刺入部まで手と目で追う。

複数ルートは一度に見ず、一本ずつ薬剤ラベルと接続先を照合する。

  • 滴下筒の液面、チューブ内の空気、屈曲、圧迫、漏れ
  • 接続部の緩み、閉鎖、不要な接続、ルートの引っ張り
  • 配合変化、同時投与可否、専用ルーメンの必要性
  • 末梢ラインの刺入部、中心静脈ラインの固定・ドレッシング
  • 患者移動・体位変換・引き継ぎ後にもう一度たどる

輸液ポンプ

セット・設定・送液を確認

機器指定の輸液セットを正しい向きと位置に装着。

流量、予定量、積算量、開始表示、滴下・回路の動きを確認し、患者側クレンメの開放も見る。

  1. 機器と電源

    点検済み表示、破損、電源、バッテリー残量、ポールへの固定を確認。

  2. 回路をプライミング

    患者へ接続する前に空気を除去。ポンプ専用部を伸ばしたり傷つけたりしない。

  3. 正しく装着

    チューブの向き、センサ部、ドア、フリーフロー防止機構を機種の手順で確認。

  4. 設定を照合

    mL/hなど単位を含め、流量・予定量を指示と照合。薬剤ライブラリがあれば適切な領域・薬剤を選ぶ。

  5. 開始後に再確認

    運転表示だけでなく、回路、刺入部、患者反応、終了予定時刻を確認する。

シリンジポンプ

微量・高濃度ほど中断と急速注入に注意

適合するシリンジの製造元・容量を選び、外筒フランジと押し子を確実に固定。

低流量では開始遅延とルート内の残量が臨床効果へ影響する。

  • シリンジラベル、薬剤名、濃度、調製時刻、患者名
  • シリンジの製造元・容量設定と実物の一致
  • 押し子・フランジの固定、ルート接続、三方活栓の向き
  • ポンプと刺入部の高低差を急に変えない
  • 専用ルート、デッドスペース、同時投与薬との相互作用
  • 患者につないだまま早送り・プライミングを行わない

持続薬のシリンジ交換

中断とボーラスを同時に防ぐ

循環作動薬などは短い中断でも状態が変化する。交換方法は薬剤、流量、半減期、ルート構成と院内手順で決める。

  1. 交換計画を確認

    残量と交換時刻、処方、患者状態、次のシリンジ、代替ポンプの要否を確認。

  2. 新しい薬剤を照合

    患者、薬剤、濃度、流量、経路、シリンジ規格、ラベルを独立して確認。

  3. 患者から切り離して準備

    ルートを薬液で満たす操作や早送りは、患者へ流入しない状態で行う。

  4. 逆流・急速注入を防いで交換

    必要なクランプ、二台法・重複法、切替順序は採用機器と院内手順に従う。鉗子でチューブを傷つけない。

  5. 切替後に患者を見る

    流量、接続、運転表示、積算量、血圧・脈拍など薬剤に応じた反応を確認して記録。

アラーム対応

患者を見て、原因を直してから再開

消音・停止は原因解決ではない。投与中断が患者へ与える影響も同時に考える。

気泡
  • 患者状態と薬剤中断の危険を確認し、送液を止める
  • 患者側への流入を防ぐため、機種・回路に沿ってクランプ
  • 接続外れ、バッグ空、滴下筒液面、上流からの空気混入を確認
  • 患者へ押し流さず、無菌的に空気を除去してから再装着・再開
閉塞・圧上昇
  • 刺入部の腫脹・疼痛、クレンメ、屈曲、圧迫、フィルタ、三方活栓を確認
  • 閉塞部の解除で加圧された薬液が急に流れることがある
  • 抵抗のあるカテーテルへ無理にフラッシュしない
完了・残量・シリンジ空
  • 処方量、実投与量、バッグ・シリンジ・回路内の残量を確認
  • 次の輸液、終了、KVO、ルート閉鎖の指示を確認
  • 中心静脈カテーテルとの接続を、アラームだけを理由に不用意に外さない
電源・機器異常
  • 電源コード、コンセント、バッテリー、ドア、セット装着を確認
  • 原因不明、破損、異常作動では使用を中止し、代替機へ切替
  • 問題の機器を識別・隔離し、院内手順で報告する

観察項目

刺入部疼痛、発赤、熱感、腫脹、硬結、冷感、漏れ、血液逆流、固定。
ルート・機器流量、残量、滴下、積算、接続、空気、屈曲、配合、アラーム。
全身反応意識、呼吸、血圧、脈拍、体温、発疹、悪寒、呼吸苦、疼痛。
体液・電解質摂取・排出、尿量、体重、浮腫、呼吸音、腎機能、Na・Kなど。

観察頻度は薬剤、投与経路、患者状態、開始・速度変更直後かどうかで変える。循環作動薬、インスリン、抗凝固薬、鎮静薬などは薬剤固有の効果・副作用を追加する。

合併症と初期対応

血管外漏出は「止めて、流さない」

疼痛、腫脹、冷感・熱感、皮膚色変化、滴下不良を認めたら投与を止める。

カテーテルをすぐ抜去せず、フラッシュせず、薬剤を特定して院内手順へ。

  • 浸潤・血管外漏出:投与停止、応援要請、薬剤・範囲・症状を確認。吸引や解毒薬、温冷罨法は薬剤別手順へ
  • 静脈炎:疼痛、発赤、熱感、静脈に沿う硬結。投与とカテーテル継続を再評価
  • 感染:発赤、排膿、発熱、悪寒。ルートと全身状態を評価し報告
  • アレルギー・アナフィラキシー:投与停止、応援要請、ABCDE、救急対応
  • 体液過剰:呼吸苦、SpO2低下、湿性ラ音、浮腫、急な体重増加。投与を見直し報告
  • 過少投与・中断:残量と投与経過を確認。自己判断で遅れを取り戻す急速投与をしない

感染と接続部の管理

  • 操作前後の手指衛生
  • 接続部は適切な消毒薬で十分に擦式消毒し、乾燥させる
  • 接続回数を減らし、閉鎖系を保つ
  • すべての部品の適合性を確認し、漏れ・破損を防ぐ
  • 輸液セット、ニードルレスコネクタ、フィルタは輸液の種類と院内基準・製造元指示で交換
  • 血液、脂肪乳剤、プロポフォールなどは一般輸液と交換基準が異なる

引き継ぎと移動

薬剤・残量・接続先まで渡す

薬剤名、濃度、流量、残量、交換予定、投与経路、刺入部、アラーム履歴、患者反応を共有。

移動後は電源、ポンプ高さ、設定、ルート、刺入部を再確認する。

記録

  • 開始・変更・中断・終了日時、輸液・薬剤名、濃度、量、経路
  • 流量、予定量、積算量、残量、終了予定時刻
  • 投与部位、カテーテル種類、刺入部と固定状態
  • 患者のバイタルサイン、体液状態、薬効・副作用
  • アラーム内容、原因、対応、中断時間、再開後の状態
  • 血管外漏出などの異常、範囲、薬剤、初期対応、報告先
  • シリンジ・バッグ・ルート交換とダブルチェック

出典