検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
低Na:低張性の場合
- 水が溶質に対して多くなる
- 細胞外が低張になり水が細胞内へ移動
- 脳の腫れが意識・けいれんに関係
観察へ:Naの低さだけで重症度を決めない。血糖・浸透圧、発症速度、神経症状を確認する。
高Na:水の不足との関係
- 水の喪失・摂取不足やNa負荷
- 細胞外が高張になり細胞から水が移動
- 細胞の脱水が口渇・意識変化に関係
観察へ:飲める環境、嚥下、発熱・下痢・尿量、輸液内容を確認。高Naを塩分の摂りすぎだけと考えない。
高K:排泄低下・細胞外への移動
- 腎からの排泄低下・薬剤・細胞障害など
- 細胞外Kが増えて電気的な性質が変わる
- 不整脈・筋力低下につながる
観察へ:心電図が目立って変化しなくても危険な高Kを除外できない。溶血検体の確認と緊急評価を並行する。
低K:喪失・細胞内への移動
- 下痢・利尿薬・インスリンなど
- 体外への喪失または細胞内への移動
- 筋力低下・腸管運動低下・不整脈
観察へ:補充後のKだけでなく、続く喪失、Mg、腎機能と心電図を確認する。
低Ca:神経・筋が興奮しやすい
- Ca調節の障害・Mg不足など
- 働く形のCaが低下
- 口周囲のしびれ・筋痙攣・けいれん
観察へ:総CaだけでなくAlb、必要時のイオン化Ca、pHを合わせる。気道症状・けいれんは緊急対応。
高Ca:尿と水分の悪循環
- 骨からの放出増加・ホルモンや薬の影響
- 血中Ca上昇と尿を濃くする機能の低下
- 多尿・脱水が腎機能を悪化させる
観察へ:口渇、尿量、便秘、食事量、反応の鈍さをつなぐ。多尿から尿量減少へ変わった場合も再評価。
Mg:不足と蓄積を分ける
- 下痢・薬剤で不足/腎排泄低下などで蓄積
- 神経・筋と心臓の働きが変化
- 低値では痙攣、高値では反応・呼吸の低下に注意
観察へ:K・Ca異常が続くときもMgを確認。下剤やサプリを含む摂取源を聞き、腎機能だけで安全と判断しない。
低リン:エネルギーへの影響
- 栄養再開による細胞内移動・摂取不足など
- 低リンでは細胞のエネルギー供給に影響
- 筋力・呼吸筋機能の低下につながる
観察へ:栄養開始・増量との前後関係を確認。高リンでは腎機能とCaを合わせ、低リンと同じ補充をしない。
細胞と電解質の関係を示す模式図。大きさ・粒子数は実測値ではなく、診断画像や心電図ではない。
症状から観察・再確認へ
意識変化・けいれん
- 見る・聞く
- 呼びかけへの反応、会話、頭痛・嘔吐、発作の持続と反復、呼吸を確認。血糖も測る。
- 何を反映するか
- Naの変化やCa・Mg異常などが関係するが、脳卒中・低血糖なども除外が必要。
- 普段と比較
- 普段の認知・反応、直近の電解質、補正開始からの変化を比較。
- 悪化を疑う変化
- 反応低下、反復発作、呼吸異常、新しい局所神経症状。
- 再確認
- 処置後も反応と呼吸を追う。Na補正後に新しい嚥下・発語・運動の変化があれば再報告。
動悸・脈の異常
- 見る・聞く
- 心電図、脈拍、血圧、意識、胸部症状、冷感を同時に確認。
- 何を反映するか
- K・Ca・Mg異常が心筋の電気活動に影響する。波形だけで電解質値は推定しない。
- 普段と比較
- 以前の心電図、腎機能、投薬・透析・補充の前後を比較。
- 悪化を疑う変化
- 失神、著しい徐脈、持続する不整脈に低灌流が重なる。
- 再確認
- 治療後の心電図と再採血を確認。一度改善しても高Kの再上昇を見逃さない。
脱力・筋痙攣
- 見る・聞く
- 握力や起き上がりの変化、しびれの部位、筋痙攣、呼吸の深さ・会話を確認。
- 何を反映するか
- K・Ca・Mg・リン異常が筋機能に関係。症状だけで高値と低値は分けられない。
- 普段と比較
- 日常動作、下痢、栄養開始・増量、利尿薬や補充の前後を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な筋力低下、起き上がれない、浅い呼吸、嚥下困難。
- 再確認
- 安全な体位と移動介助を行い、補正後の動作・呼吸を再確認。
口渇・尿量の変化
- 見る・聞く
- 飲水できるか、粘膜、体重、尿量・色、嘔吐下痢、点滴を確認。
- 何を反映するか
- Naは水との比率、高Caは多尿と脱水に関係。多尿でも循環が保たれるとは限らない。
- 普段と比較
- 同条件の体重、入出量、血圧・脈拍、前回のNa・Crを比較。
- 悪化を疑う変化
- 意識変化、循環不良、急な乏尿。低Na治療中の急な多尿も速やかに共有。
- 再確認
- 補液後は呼吸苦・浮腫も評価。低Na補正中は尿量増加とNa上昇速度を再確認。
便秘・悪心
- 見る・聞く
- 便通、腹部膨満、嘔吐、食事量と、下剤・制酸薬の種類を確認。
- 何を反映するか
- 低Kの腸管運動低下、高Caの便秘、Mg製剤による蓄積などを考える材料。
- 普段と比較
- 普段の便通と薬の増減、摂取量、腎機能を比較。
- 悪化を疑う変化
- 繰り返す嘔吐に脱力・傾眠・徐脈が伴う、強い腹部症状。
- 再確認
- 原因評価につなぎ、下剤追加だけで終えない。治療後の便通・水分・電解質を追う。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
原因と治療計画が確認され、意識・呼吸・循環が安定し、値も個別計画に沿って推移。
次の行動:次の採血・観察時点と報告条件を確認。症状がないことだけで新規異常値を放置しない。
早めに共有
新しい脱力・しびれ、摂取不良、下痢、多尿、検査値の予想外の変化。補正中の急な尿量増加。
次の行動:直近値と変化速度、入出量、薬・輸液条件を共有し、再採血と補正計画を確認。緊急値は施設の連絡基準に従う。
直ちに応援要請
意識低下・けいれん、呼吸障害、不整脈と循環不良、急速に進む麻痺。重篤な高Kなど緊急値の連絡。
次の行動:急変対応を起動し気道・呼吸・循環とモニターを確認。再検結果を待って応援要請を遅らせない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
安全を確保
発作時は周囲を安全にし口へ物を入れない。意識低下・嚥下困難では飲水や内服を無理に行わず、気道・呼吸を優先。
心電図と採血をつなぐ
電極・記録品質を確認。採血部位、点滴混入、溶血の有無を確認して再検を相談。症状が強い場合は検体確認と緊急対応を並行。
補正内容を照合
製剤、濃度、経路、速度、開始時刻、併用輸液、ポンプ設定を指示と照合。高濃度電解質は施設のダブルチェックを実施。
出入りと変化を記録
尿・下痢・嘔吐・ドレーン、飲水・栄養・輸液をそろえる。補正中は累積量と採血時点を結びつける。
再評価の時点を決める
投与前に採血・血糖・心電図の再確認時点をそろえる。改善しない、逆方向へ変化する場合は次の定時まで待たず共有。
治療前・中・後の看護
高張食塩液:症候性低Na
- 目的
- 脳の腫れに伴う症状を改善。
- 前に確認
- 症状、Na・血糖・浸透圧、発症経過、補正目標と採血計画。
- 中に観察
- 意識・呼吸、Naの上昇速度、急な多尿。
- 反応・再評価
- 神経症状とNa推移を照合し、過補正が疑われれば直ちに処方者へ共有。
- 適応・注意
- 原因に応じた治療へつなぐ。慢性・期間不明の低Naでは急な補正による神経障害に注意。速度を自己調整しない。
補液・飲水計画:高Na
- 目的
- 水不足と循環状態を改善。
- 前に確認
- 循環不良の有無、Na推移、喪失源、心腎機能、嚥下。
- 中に観察
- 意識、入出量、Na変化、呼吸苦・浮腫。
- 反応・再評価
- 口渇・循環と検査推移が改善するか再評価。
- 適応・注意
- 輸液の種類・速度は循環状態と発症期間で異なる。水だけを一律に急速投与しない。
K補充
- 目的
- 不足したKを補う。
- 前に確認
- K・Mg、腎機能・尿量、心電図、投与経路と希釈・混和。
- 中に観察
- 不整脈、穿刺部痛・腫脹、速度、併用液のK。
- 反応・再評価
- Kと筋力・心電図を再評価。腎機能低下や喪失の停止で過剰にならないか確認。
- 適応・注意
- 下記KCLキットは輸液への混注用。直接静注・側管からの直接投与・シリンジポンプ使用は禁止。製剤ごとの添文と施設手順を守る。
KCL注10mEqキットの詳細を開くインスリン・ブドウ糖:高K
- 目的
- Kを一時的に細胞内へ移す。
- 前に確認
- 血糖・K、腎機能、静注に適した製剤、投与量と血糖監視計画。
- 中に観察
- 低血糖の症状と測定値、心電図、静脈路。
- 反応・再評価
- K低下後も再上昇と遅れて起こる低血糖を追う。
- 適応・注意
- 体外へKを除去する治療ではない。投与後数時間の監視を継続し、反復投与時は監視期間を再確認。
Ca静注:高Kの心筋保護
- 目的
- 適応がある場合に心筋の電気的な不安定さを抑える。
- 前に確認
- 心電図、Ca、製剤と適応、静脈路、ジギタリスなど併用薬。
- 中に観察
- 心電図・血圧、徐脈、漏出。
- 反応・再評価
- 心電図改善を確認し、Kを下げる治療も並行。
- 適応・注意
- K値自体を下げる薬ではない。国内の適応・施設手順・個別指示を確認。低Caの補充目的と区別する。
K除去:排泄・吸着・透析
- 目的
- 体内の過剰なKを減らす。
- 前に確認
- 腎機能・尿量、体液量、腸管状態、処方と透析の必要性。
- 中に観察
- 尿量・血圧、便通、治療ごとの有害事象。
- 反応・再評価
- Kの持続的な低下と再上昇、過度の低Kを確認。
- 適応・注意
- 吸着薬は製剤で作用開始が異なる。緊急対応を経口薬の効果待ちで遅らせない。透析前後も監視する。
Ca補充:低Ca
- 目的
- 低Caによる神経・筋症状を改善。
- 前に確認
- Ca・Alb、必要時イオン化Ca、Mg、腎機能、併用薬。
- 中に観察
- 静注時は心電図、血圧、注入部の疼痛・腫脹。
- 反応・再評価
- しびれ・筋痙攣とCa推移、再低下を確認。
- 適応・注意
- 下記製剤の禁忌・相互作用を照合。急速注入や漏出に注意し、原因とMg異常も評価。
カルチコール注射液8.5%10mLの詳細を開く補液と原因治療:高Ca
- 目的
- 脱水を改善し、Ca上昇の原因へ対応。
- 前に確認
- 体液量、心腎機能、Ca推移、薬・サプリ、原因精査。
- 中に観察
- 尿量・血圧と呼吸苦・浮腫を同時に観察。
- 反応・再評価
- 意識・口渇・腎機能とCaの推移を再評価。
- 適応・注意
- 心腎機能に応じて補液量を調整。骨吸収抑制薬などは原因別に選択し、遅れて低Caになる可能性も確認。
Mg補充
- 目的
- 不足を補い神経・筋機能の回復を支える。
- 前に確認
- Mg・K・Ca、腎機能、尿量、希釈と配合条件。
- 中に観察
- 血圧、呼吸、反応・筋力、必要時腱反射、心電図。
- 反応・再評価
- Mg推移と症状、K・Caの改善を確認。
- 適応・注意
- 下記補正液は輸液へ添加・希釈して使う。腎機能低下では蓄積に注意し、高Mgへの補充をしない。
硫酸Mg補正液1mEq/mLの詳細を開く高Mg:摂取源の中止確認と排泄支援
- 目的
- 蓄積を止め、呼吸・循環障害を防ぐ。
- 前に確認
- Mg製剤・下剤・サプリ、腎機能、便秘、呼吸・反応。
- 中に観察
- 呼吸の深さ、徐脈、血圧、尿量。
- 反応・再評価
- Mg低下と呼吸・筋力・意識の回復を確認。
- 適応・注意
- 原因薬の中止と補液・Ca投与・透析の要否を緊急度に応じ確認。症候性では内服追加を続けず診察へつなぐ。
リン補正・栄養計画の調整
- 目的
- 不足と原因に対応し筋機能を支える。
- 前に確認
- リン・K・Ca・Mg、腎機能、栄養の開始・増量と補正製剤。
- 中に観察
- 筋力・呼吸、心電図、注入部を観察。希釈・混和・速度を照合し、Ca・Mg含有液との沈殿に注意。
- 反応・再評価
- リンだけでなくCa・Kと腎機能を追い、補正後の低Ca・過剰を確認。
- 適応・注意
- 製剤のK・Naも合算。掲載キットは輸液への混注用で、直接静注・側管からの直接投与・シリンジポンプ使用は禁止。高リンでは補充せず原因別の計画を確認。
リン酸2カリウム注20mEqキットの詳細を開く検査の意味と読み方
Na
水と溶質の比率の手がかり。
組み合わせ・推移:血糖・浸透圧、発症期間、意識と合わせる。補正中は単回値より変化速度と累積変化を見る。
Naの検査詳細
K
心筋・骨格筋の電気活動に関係。
組み合わせ・推移:溶血、薬剤、pH、腎機能と照合。血中値は体内総量をそのまま表さず、移動治療後は再上昇もある。
Kの検査詳細
Ca
Ca調節と神経・筋機能を評価。
組み合わせ・推移:総CaはAlbに左右される。症状と不一致ならイオン化Ca・pHの評価を相談。補正式だけで確定しない。
Caの検査詳細
Mg
不足または蓄積を評価。
組み合わせ・推移:腎機能、薬、下痢、K・Caと合わせる。血中正常でも体内の不足を完全には除外できない。
Mgの検査詳細
IP
リンの過不足を評価。
組み合わせ・推移:栄養開始・増量、腎機能、Caと合わせる。低下時の筋力・呼吸と補正後の推移を追う。
IPの検査詳細
血液浸透圧
水の移動に関係する溶質の状態を評価。
組み合わせ・推移:Naだけでなく血糖・尿素などに影響される。低Naをすべて低張性と扱わない。
血液浸透圧の検査詳細
血糖
意識変化の鑑別とインスリン治療の安全確認。
組み合わせ・推移:高血糖はNa解釈に影響。高K治療後は一度正常でも低血糖監視を続ける。
血糖の検査詳細
Cr
腎から排泄できる状態を評価。
組み合わせ・推移:尿量と推移、薬・体液量を合わせる。Cr単独で電解質補充の安全を決めない。
Crの検査詳細
尿浸透圧・尿Na
水・Naを腎がどう扱っているかを評価。
組み合わせ・推移:血液と採取時点、輸液・利尿薬を合わせて解釈。単独でSIAD(水の排泄が抑えられる状態)などの原因を断定しない。
心電図
電解質異常の心臓への影響を評価。
組み合わせ・推移:前回・治療前後と比較。典型波形がないことを安全の根拠にしない。
報告:SBARで情報をそろえる
S:変化
- 意識・発作・脈・筋力・呼吸の変化と発症からの経過。
B:背景
- 腎機能、下痢・多尿、栄養、薬・補正液の濃度・経路・速度、直近の治療。
A:現在と推移
- 現在と直近の電解質・血糖、心電図、尿量・体重。
- 採血条件、実施した対応と反応。
R:確認
- 緊急診察、再採血、補正継続・変更、監視場所と再評価時点。
- 緊急対応を情報収集の完了まで待たない。
患者・家族への説明
自己補正を避ける
水・塩・サプリを急に増減せず、原因に合った計画を確認。スポーツ飲料も一律の治療にはならない。
変化を早めに伝える
新しいしびれ・脱力・動悸・強い口渇を相談。反応低下、けいれん、息苦しさ、失神は緊急対応につなぐ。
薬をまとめて伝える
処方薬に加え、下剤・制酸薬・サプリも共有。酸化マグネシウム服用中に強い眠気・筋力低下などが出たら服用を中止し直ちに受診。
採血と生活をつなぐ
飲水・食事・便通・尿の変化を記録し、再採血の予定を確認。制限や補充は腎機能と治療で変わる。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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