救急 消化器

リフィーディング症候群

栄養の開始・増量と、電解質・呼吸・循環・意識の変化を時間でつなぐ。開始前の採血が正常でも安心せず、補充と再評価を組み込んだ栄養計画を確認する。主に成人の学習用。

主な症状
脱力 浮腫 動悸 意識変化
代表的な薬
ビタミンB₁ 電解質補充製剤
検査値UP
血糖
検査値DOWN
P K Mg

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

電解質:血液から細胞内へ

再栄養に伴い血液側の電解質が減る糖質の投与 → インスリン反応血液側P・K ↓細胞内へ取り込み・利用Mgも低下しうる → 3項目を追う筋力・呼吸・心電図と採血を結ぶ
  1. 摂取不足が続き、体内の電解質の蓄えが減る
  2. 糖質投与でインスリンが増え、P・Kの細胞内移動・利用が進む。Mgも低下しうる
  3. 血中濃度低下 → 筋力・呼吸筋・心臓の働きに影響

観察へ:開始前と開始・増量後のP・K・Mgを比較。値の低下に脱力・呼吸負担・脈の変化が重なっていないか確認する。

ビタミンB₁:代謝に必要な補助役が不足

糖を利用するにはビタミンB1が必要B₁が必要エネルギー産生B₁が不足 → 代謝が滞る脳・心臓などの働きに影響開始前の補充・意識と循環を確認
  1. 低栄養でビタミンB₁の蓄えが減る
  2. 栄養再開で糖を利用するためのB₁需要が増す
  3. 不足するとエネルギー産生に支障 → 意識・眼球運動・歩行や循環の異常

観察へ:栄養開始前のB₁補充計画を確認。意識の変化を眠気だけとせず、急なふらつき・眼の動きの異常も報告する。

体液:栄養剤と補液を合わせて評価

再栄養中の水分は全経路と排出を合わせて評価する栄養剤・飲水・補液・薬の水分体内の水分尿など浮腫・体重増加の原因は一つではない出納 + 腎機能 + 呼吸循環で評価
  1. 栄養再開で代謝が変わり、栄養剤・補液・薬から水分も入る
  2. 体液の分布・排泄と投与量のバランスが変わる
  3. 浮腫・体重・呼吸の変化 → 体液過剰や他の原因を評価

観察へ:体重増加を栄養回復だけと見なさず、出納・浮腫・尿量・呼吸の変化と合わせて確認する。

3図は別の病型ではなく、同時に起こりうる機序を分けたもの。経口・経管・静脈のいずれの栄養経路でも起こりうる。診断基準・開始量には学会間の違いがあり、単独の低リン血症だけで診断しない。 再栄養中の浮腫の機序は一様ではなく、体液過剰と同義ではない。

症状から観察・再確認へ

筋力低下脱力

見る・聞く
握る力、起き上がり、姿勢保持、飲み込み・咳の力、歩行時の変化を確認。無理な歩行試験はしない。
何を反映するか
P・K・Mgの低下などで筋肉の働きが弱る可能性。もともとの廃用や栄養不足とも区別する。
普段と比較
栄養開始前と、開始・増量後の動作および採血の推移を比較。
悪化を疑う変化
急に起き上がれない、咳が弱い、飲み込みにくい、呼吸まで弱くなる。
再確認
転倒・誤嚥を防ぎ、電解質と呼吸を再評価。補正後に動作・咳・嚥下が回復したか確認する。

息苦しさ呼吸の変化

見る・聞く
呼吸数・深さ、努力呼吸、会話、SpO₂と酸素条件、横になれるか、呼吸音を確認。
何を反映するか
呼吸筋の機能低下や体液過剰などを考える。誤嚥・感染・心不全など別の原因も評価する。
普段と比較
栄養再開前の呼吸と、現在の酸素条件・体位・体重を比較。
悪化を疑う変化
会話が続かない、呼吸が浅い、酸素需要が増す、意識や循環の悪化を伴う。
再確認
応援を求め、気道・呼吸循環を再評価。酸素・換気補助は指示・緊急手順に沿い準備する。

浮腫動悸

見る・聞く
脈拍・リズム・血圧、浮腫、尿量、同じ条件での体重、経口を含む総水分量を確認。
何を反映するか
体液貯留と電解質異常による循環への影響を疑う。浮腫だけでは原因を確定できない。
普段と比較
開始前の体重・出納・心電図と、栄養・補液増量後を比較。
悪化を疑う変化
失神、血圧低下、持続する脈の乱れ、浮腫と呼吸苦の急な増悪。
再確認
モニターを確認し必要な心電図・採血を準備。補正中は低値の改善だけでなく過剰補充にも注意する。

意識歩行眼球運動の変化

見る・聞く
受け答え、見当識、覚醒、視線の動き、ふらつきを普段と比べ、血糖も確認。
何を反映するか
B₁不足や電解質異常の可能性。低血糖、感染、薬、脳疾患なども除外が必要。
普段と比較
栄養・糖含有輸液の開始時点、B₁投与時点、直前の意識と比較。
悪化を疑う変化
新しい混乱、反応低下、けいれん、歩けないほどのふらつき。
再確認
直ちに報告して診察を依頼。B₁の採血結果待ちだけで対応を遅らせず、気道・血糖・循環を再確認する。

看護判断:変化の緊急度

計画に沿って観察を継続

呼吸・循環・意識が安定し、栄養開始後の採血と再評価の計画が実施できている。

次の行動:症状がなくても予定の測定を続け、実際の摂取量と増量条件を確認。開始前の正常値だけで監視を終了しない。

早めの共有・報告

P・K・Mgが下がる、新たな浮腫・脱力、予定外の栄養増量、採血や補充計画の不足。

次の行動:現在値と開始前値、投与量・速度を共有。増量前に医師・栄養サポートチームへ補正と栄養計画の見直しを依頼する。

直ちに応援・緊急対応

呼吸不全徴候、循環不良を伴う不整脈、意識低下・けいれん、急激または重度の電解質異常。

次の行動:応援要請と気道・呼吸・循環の評価。心電図・緊急採血・指示された補正治療を準備し、栄養投与の減量・休止の判断も直ちに確認する。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1 開始前にリスクを拾う

食べられなかった期間と量、意図しない体重減少、筋肉・脂肪の減少、飲酒、嘔吐・下痢、利尿薬などを確認。P・K・Mg、腎機能と補充計画を共有する。

2 全経路の投与量を数える

食事、栄養補助食品、経管栄養、静脈栄養に加え、糖含有輸液・薬剤の希釈液も把握。指示とポンプ設定・実投与量を照合する。

3 観察時刻を決める

開始・増量・補正の時刻を記録。特に開始後の最初の数日はP・K・Mgと臓器症状の変化に注意し、高リスクでは頻回の採血計画と結果確認の担当を決める。日数だけで監視を終了せず、異常時は定時まで待たない。

4 安全と全身状態を守る

脱力時の移動を介助し、嚥下・咳の弱さを確認。呼吸・循環、心電図、水分出納と体重を追い、異常時は症状を伴う変化として報告する。

5 補正後も計画を見直す

採血値だけでなく筋力・呼吸・脈・意識も再評価。増量・減量・休止は個別指示で行い、必要以上の栄養制限を長引かせない。

治療前・中・後の看護

個別の栄養開始・増量計画

目的
代謝変化を監視しながら不足する栄養を回復する。
前に確認
摂取不足の程度、P・K・Mg、循環、腎機能、全経路の糖質・水分、採血体制を確認。
中に観察
処方量と実投与量、血糖、電解質の低下、浮腫・呼吸・意識の変化を追う。
反応・再評価
電解質が安定し、臓器症状がなく必要量へ進められるかを毎日の計画で確認。
適応・注意
開始・増量速度は推奨間にも差がある。重度の異常や補正困難時は増量を進めず診察を依頼し、減量・休止と再開条件を個別に決める。

ビタミンB₁補充

目的
糖代謝で増す需要に備え、B₁欠乏による臓器障害を防ぐ・治療する。
前に確認
栄養開始前の投与指示、製剤・経路・過敏症歴、既に含まれるビタミン量を確認。
中に観察
静注では指示された速度を守り、血管痛・発疹・血圧低下・呼吸困難を観察。
反応・再評価
意識・神経症状・循環の推移と、必要な補充が継続されているかを確認。
適応・注意
予防と欠乏症の治療で計画は異なる。主に成人を対象とし、用量・期間は一律にしない。
チアミン塩化物塩酸塩注射液50mg「ツルハラ」の詳細を開く

電解質補充:リン

目的
不足したリンを補い、筋肉や細胞のエネルギー代謝を支える。
前に確認
P・K・Ca・Mg、腎機能・尿量、経口投与の可否、製剤に含まれるK量を確認。
中に観察
静脈補正は希釈・速度・混和を照合。リン酸カリウム製剤はCa・Mgとの配合による沈殿に注意し、薬剤師に適合性を確認。
反応・再評価
PだけでなくK・Ca、呼吸・筋力・脈の変化を追い、過剰補充を防ぐ。
適応・注意
投与経路は不足の程度と全身状態で選ぶ。掲載キットは輸液への混注用で、直接静注・側管からの直接投与・シリンジポンプ使用はしない。
リン酸2カリウム注20mEqキットの詳細を開く

電解質補充:カリウム

目的
低Kに伴う筋力低下や不整脈リスクを改善する。
前に確認
K・Mg、腎機能・尿量、心電図、栄養剤やリン製剤から入るKも含めて確認。
中に観察
濃度・総量・速度・ルートを指示と照合。掲載キットは輸液へ混注・希釈し、直接静注やシリンジポンプで使わない。
反応・再評価
Kと心電図・筋力を再評価。補正が進まない場合はMg不足や喪失の持続も共有する。
適応・注意
腎機能低下・乏尿では過剰補充に注意。異なるK含有製剤を重ねて数え落とさない。
KCL注10mEqキットの詳細を開く

電解質補充:マグネシウム

目的
低Mgを補正し、神経・筋・心臓の働きとK補正を支える。
前に確認
Mg・K・Ca、腎機能・尿量、脈・呼吸、投与濃度と配合を確認。
中に観察
補正液は希釈・混和して使用。血管痛・ほてり・血圧と呼吸の変化を観察し、リン酸含有製剤との配合を確認。
反応・再評価
Mg・Kの推移と心電図・筋力を再評価。腎機能低下時は蓄積にも注意する。
適応・注意
製剤名が同じMgでも目的・濃度・経路は異なる。低Mg補正の処方を確認し、他目的の投与手順を流用しない。
硫酸Mg補正液1mEq/mLの詳細を開く

検査の意味と読み方

P(無機リン)

低下は再栄養による細胞内移動・利用増加の手掛かり。

組み合わせ・推移:開始前からの変化と呼吸・筋力を合わせる。血中正常でも体内の不足を除外できず、低値だけでもリフィーディングと確定できない。

P(無機リン)の検査詳細

K

低下は筋力・心臓の電気活動へ影響しうる。

組み合わせ・推移:下痢、利尿薬、腎機能、Mgと合わせて解釈。補充後は過剰な上昇も追う。

Kの検査詳細

Mg

低下は不整脈・神経筋症状に関与し、K補正が進みにくい背景にもなる。

組み合わせ・推移:K・Caと同時に確認。補充前後と腎機能を合わせ、単回の正常値で終了しない。

Mgの検査詳細

血糖

糖質投与と代謝の反応を確認する。

組み合わせ・推移:栄養経路・速度、インスリン、糖含有輸液と測定時刻を記録。高値だけでは診断できず、治療中の低血糖にも注意。

血糖の検査詳細

クレアチニン

腎機能は電解質の排泄と補充の安全性に関わる。

組み合わせ・推移:尿量・体液量と推移を見る。筋肉が少ない人では低めの値でも腎機能を過大評価しうる。

クレアチニンの検査詳細

心電図

電解質異常に伴うリズムの変化を捉える。

組み合わせ・推移:症状、P・K・Mg、薬剤と合わせる。心電図が正常でも電解質異常を否定しない。

報告:SBARで情報をそろえる

S 栄養再開後の変化

  • 開始・増量からの経過、現在の意識・呼吸・循環、新しい脱力・浮腫・脈の変化。

B 開始前の状態

  • 摂取不足と体重減少、腎・心疾患、開始前のP・K・Mg、B₁補充、栄養・糖含有輸液の量と経路。

A 値と実施後の反応

  • 開始前・直近・現在の電解質と血糖、尿量・出納・体重、実投与量、補充と症状の反応。

R 次に必要な判断

  • 緊急診察・モニター・追加採血、補充の指示、栄養の増量可否や減量・休止・再開条件を確認。

患者・家族への説明

食べられなかった期間を伝える

少量でも実際に食べていた量、体重変化、市販の栄養補助食品も医療者に伝える。

回復を確認しながら栄養を戻す

栄養は回復に必要。体内のミネラルや水分の変化を見るため採血・体重測定を行う。自己判断で増減しない。

新しい症状はすぐ伝える

息苦しさ、むくみ、急な脱力、動悸、ぼんやりする変化は、栄養を戻した時期と一緒に伝える。

参考文献

  1. 日本栄養治療学会:がん患者診療のための栄養治療ガイドライン2024年版 総論編

    本文78〜79頁。がん患者における再栄養の機序・電解質監視。対象集団に留意。

  2. ASPEN:Refeeding Syndrome Consensus Recommendations(2020)

    開始前リスク、電解質・B₁・水分、成人の管理。数値の一律適用はしない。

  3. AuSPEN:Consensus statements on refeeding syndrome(2025)

    公開本文で推奨を確認。診断と開始量の不確実性、過度な栄養制限を避ける視点。

  4. PMDA:チアミン塩化物塩酸塩注射液「ツルハラ」

    B₁製剤の適応、過敏症・ショック、静注時の注意。

  5. PMDA:リン酸2カリウム注20mEqキット「テルモ」

    混注・希釈、投与方法、配合変化。

  6. PMDA:KCL注10mEqキット「テルモ」

    補正用キットの投与方法と安全性。

  7. PMDA:硫酸Mg補正液1mEq/mL

    希釈・混和・リン酸との配合、副作用。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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