救急

低栄養

食べた割合だけで判断せず、何が食べにくさを生み、体重・筋力・生活動作がどう変化したかを結ぶ。栄養を増やした後も、実際の摂取量、耐容性、電解質と体液を追う。成人を対象とした学習用。

主な症状
体重減少 筋力低下 食べにくさ
代表的な薬
ビタミン
検査値UP
検査値DOWN
Alb

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

摂取・吸収不足:体へ届く栄養が減る

食べる量と腸から吸収される量が不足すると体の蓄えが減る体へ届くまでの、どこで減った?食事消化管体へ摂取不足吸収低下不足が続く → 体重・筋肉・動作の変化
  1. 口腔・嚥下の問題、食欲低下、食事を用意できない状況など
  2. 摂取量の不足や消化吸収の低下が続く
  3. 体の蓄え・筋肉が減り、体重や生活動作が変化する

観察へ:配膳量ではなく実際に摂れた量と期間を把握。口から腸までのどこに問題があるか、食事の場面と便の変化から探す。

疾患・炎症:筋肉の分解が進む

疾病負荷と炎症で筋肉の分解が進み生活動作に影響する疾病負荷・炎症 → 体蛋白の分解筋肉筋肉量の減少移乗・歩行・食事動作を比較栄養補給 + 原疾患の治療 + 安全な活動
  1. 感染症・手術・慢性疾患などで炎症や疾病負荷がある
  2. 食欲低下に加え、体蛋白の分解と利用のバランスが崩れる
  3. 筋肉量・活動が低下し、回復が遅れることがある

観察へ:栄養補給だけでなく原因疾患の経過も追う。食べる量が増えても、筋力・生活動作の回復には時間がかかる。

2図は重なりうる機序。炎症の有無や消化吸収の状態で介入が変わる。栄養リスクをスクリーニングし、体の変化と原因を組み合わせて専門チームが評価する。体格が大きい人にも低栄養は起こりうる。

症状から観察・再確認へ

食事摂取量低下

見る・聞く
主食・副食・補助食品・飲水を分け、実際の摂取と中断理由を確認。口の痛み、義歯、吐き気、味覚、気分、食事介助や買物の支援も聞く。
何を反映するか
必要量に対し体に届く栄養が不足する入口。食べる意欲だけの問題にしない。
普段と比較
普段の食事量、減り始めた時期、食形態・薬・処置が変わった時期を比べる。
悪化を疑う変化
ほとんど摂れない状態が続く、飲水も難しい、嘔吐や下痢で失う量が増える。
再確認
口腔ケア、姿勢・食具・食形態の調整後に、摂取量と疲労が改善したかを確認する。

食事中のむせ疲労

見る・聞く
覚醒、座位保持、食べる速さ、咳、声の変化、口腔内残留、呼吸負担を食前・食中・食後に見る。
何を反映するか
嚥下の障害や姿勢・筋力の問題で、安全な摂取が難しくなる可能性。むせがなくても誤嚥は否定できない。
普段と比較
普段の嚥下と介助量、食形態、食事時間、呼吸状態を比較する。
悪化を疑う変化
窒息、呼吸困難、意識低下、急な声・咳の変化が重なる。
再確認
危険があれば摂取を中断し呼吸を確認。嚥下評価と再開条件を共有し、自己判断で水を飲ませて試さない。

体重減少浮腫

見る・聞く
意図しない減量の量と期間を聞き、同じ条件の体重、浮腫、尿量・出納を記録。衣服の緩みも手掛かりにする。
何を反映するか
体重減少は栄養リスクの手掛かり。浮腫や補液による体重増加が、組織の減少を隠す場合がある。
普段と比較
入院時だけでなく病前の体重、補液・利尿薬の変更前後と比べる。
悪化を疑う変化
短期間に減少が進む、尿が減る、栄養開始後に浮腫や息苦しさが増す。
再確認
体重増加を回復と決めず、摂取・排泄、呼吸、腎機能と照合する。

筋力低下活動低下

見る・聞く
起き上がり、移乗、食具を持つ動作、歩行の介助量を確認。皮膚・創傷の経過も観察する。
何を反映するか
筋肉の減少や低活動が生活を難しくする。筋力は痛み・神経疾患などにも左右され、筋肉量そのものではない。
普段と比較
普段の生活動作と現在の介助量、離床時間、疲労から回復する時間を比べる。
悪化を疑う変化
急な脱力、立位不能、咳が弱い、呼吸が浅い。栄養開始後なら電解質変化にも注意。
再確認
転倒を防ぎ、呼吸・電解質・原疾患を評価。栄養とリハビリの計画を合わせて動作の推移を追う。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察

安全に摂取でき、個別計画に沿う栄養が入り、呼吸・循環と生活動作に新しい悪化がない。

次の行動:実際の摂取量と体重・機能の推移を記録し、決めた時期に再評価する。すぐ体重が増えないことだけで失敗としない。

早めに共有・報告

摂取不足が続く、体重・動作が悪化する、新しい嚥下困難、嘔吐・下痢、栄養開始後の電解質低下がある。

次の行動:摂取量・期間・原因候補を添え、医師・管理栄養士・NSTへ共有。経路・量・補充と再検時期を確認する。

直ちに応援要請

窒息、急な意識障害、強い呼吸困難、循環不安定、栄養開始後の急な脱力や不整脈を疑う変化。

次の行動:食事など危険な投与を中断して応援を呼び、気道・呼吸・循環を確認。施設手順に沿い緊急対応、血糖・心電図・採血の準備を行う。低栄養だけを原因と決めない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|食事の安全を先に確認

覚醒・姿勢・呼吸と嚥下の安全性を確認。無理に完食させず、むせや疲労が出る場面を記録して専門職へつなぐ。

2|リスクを拾い、原因を伝える

施設採用の検証済みツールでスクリーニング。体重変化、摂取不足の期間、疾病負荷を整理し、管理栄養士・NST(栄養サポートチーム)の評価へつなぐ。

3|食べられる条件を整える

口腔の清潔、義歯、食具、姿勢、介助時間を調整。痛み・便秘・吐き気の対応や食形態の変更は担当者と相談し、調整後の摂取を確かめる。

4|開始前に再栄養の計画を確認

長期の摂取不足や著しい体重減少がある場合、P・K・Mg、血糖、腎機能、B₁補充の要否と再検計画を確認。開始量・増量は個別指示に従う。

5|入った量と体の反応を追う

経口・経管・静脈の栄養と水分を合算し、中断分も記録。排泄、浮腫、呼吸、投与部位を確認し、安全な離床・除圧を続ける。

治療前・中・後の看護

食事調整・経口栄養補助

目的
安全に食べられる範囲で不足分を補い、食事を続けやすくする。
前に確認
嚥下、好み、アレルギー、食事制限、腎機能と不足量を確認。
中に観察
少量で摂れる工夫を相談し、満腹感、吐き気、便の変化、通常の食事への影響を記録。
反応・再評価
実摂取量と生活動作の推移を確認し、体重だけで効果を判定しない。
適応・注意
必要エネルギー・蛋白量は病態に合わせる。飲める補助食品でも嚥下に安全とは限らない。

経腸栄養

目的
口から十分に摂れない場合に消化管を使って栄養を届ける。
前に確認
適応、チューブ位置確認、投与経路・速度、誤嚥リスク、再栄養リスクを確認。
中に観察
体位と施設手順を守り、嘔吐、腹部膨満、下痢、呼吸変化、閉塞や自己抜去を観察。
反応・再評価
指示量ではなく実投与量、消化器症状、体液・電解質を確認して計画を調整。
適応・注意
消化管の使用可否を医師が評価する。中断後の不足分を自己判断で急速投与しない。

静脈栄養

目的
経口・経腸で必要量を確保できない場合に、不足を静脈から補う。
前に確認
適応、末梢・中心静脈の経路、糖・電解質・水分量、腎機能、感染リスクを確認。
中に観察
投与速度、血糖、出納、刺入部の疼痛・発赤、発熱を観察。
反応・再評価
実投与量と代謝・体液への負担を評価し、消化管を使えるようになれば経路を再検討する。
適応・注意
点滴が入っているだけで必要栄養が満たされるとは限らない。製剤と不足栄養素を医師・薬剤師と確認。

ビタミンB₁補充・電解質補正

目的
再栄養に伴う欠乏や電解質低下を予防・治療する。
前に確認
摂取不足の期間、開始前の採血、腎機能、全投与経路、補充指示を照合。
中に観察
B₁静注では投与方法を確認し過敏反応に注意。電解質は希釈・速度・配合を確認して投与する。
反応・再評価
P・K・Mgの推移と脱力・意識・呼吸・脈を再確認。正常な開始前値でも開始後の低下を追う。
適応・注意
全員に同じ補充を行うものではない。高リスクでは栄養開始前から計画する。具体的な補正薬はリフィーディングの治療欄へ。
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検査の意味と読み方

体重BMI筋肉量

GLIMではリスク抽出後、意図しない体重減少・低BMI・筋肉量減少などの体の変化と、摂取吸収不足・疾病負荷などの原因を組み合わせる。

組み合わせ・推移:成人の診断評価をチームで行う。浮腫や測定条件を確認し、握力を筋肉量と読み替えない。

Alb

炎症、肝での合成、蛋白喪失や体液の影響を受ける。低値だけで低栄養と診断しない。

組み合わせ・推移:摂取量や筋肉量の代用にはしない。CRP、肝・腎疾患、浮腫と合わせ、上昇だけで栄養改善としない。

Albの検査詳細

CRP

炎症という背景を評価する補助。上昇の原因と原疾患の経過を確認する。

組み合わせ・推移:正常でも摂取・吸収不足による低栄養を否定できない。GLIM評価で測定は必須ではない。

CRPの検査詳細

P

栄養再開時の低下は再栄養に伴う代謝変化の手掛かり。

組み合わせ・推移:開始前後の推移と筋力・呼吸を照合。低P単独でリフィーディング症候群とは決めない。

Pの検査詳細

K

不足・消化管喪失・腎機能・栄養再開の影響を評価。

組み合わせ・推移:高低いずれも問題になりうる。脈・心電図、腎機能、補充量と再検値を照合する。

Kの検査詳細

Mg

再栄養中の低下や消化管からの喪失を評価。

組み合わせ・推移:筋症状や不整脈、Kと合わせて追う。補正時は腎機能と投与量を確認する。

Mgの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|何が変わったか

  • 摂取不能・嚥下・脱力・呼吸の変化と発症時点。
  • 現在の意識、呼吸、脈、血圧。

B|不足の期間と治療条件

  • 病前と現在の体重、摂取低下の期間、原因疾患、栄養経路・開始や増量の時点、補液・薬・酸素条件。

A|前後比較と介入反応

  • 実摂取・投与量、出納・尿量・浮腫、直近と現在の電解質。
  • 食事介助・投与中断など実施したことと反応。

R|確認してほしいこと

  • 嚥下と栄養経路の評価、開始・増量の可否、補充・採血時期、NST介入。
  • 急変時は診察と緊急対応を優先して依頼。

患者・家族への説明

食べにくさを一緒に探す

食べられないことを責めず、口の痛み、飲み込み、吐き気、食事の準備で困ることを伝えてもらう。

量の目標は個別に決める

少量で摂りやすい食事や補助食品を相談する。長く食べられなかった後は、急に大量に摂る前に栄養の再開計画を確認する。

回復を生活で確かめる

食事量だけでなく、起き上がりや歩行などの変化を共有。新しいむせ、息苦しさ、強い脱力、むくみは早めに伝える。

退院後の食事を確保する

買物・調理・食事介助が続けられるか確認し、必要に応じて配食や相談先を退院前に調整する。補助食品やサプリは自己判断で増やさない。

参考文献

  1. 日本栄養治療学会:GLIM基準について(2024年改訂)

    成人のスクリーニング、表現型と病因を組み合わせる診断評価。

  2. 日本栄養治療学会:GLIM よくあるご質問

    Alb単独評価の問題、筋肉量測定、摂取・吸収と炎症の評価。

  3. NHS:Malnutrition — Treatment

    2023年レビューの患者向け資料。食事調整、栄養経路、生活支援。国内の処方指示の代用にはしない。

  4. NHS:Malnutrition — Symptoms

    体重減少が目立たない場合、筋力・回復・創傷の変化。

  5. ASPEN:Refeeding Syndrome Consensus Recommendations(2020)

    栄養開始前のリスク確認、B₁・電解質と再評価。開始量の一律適用はしない。

  6. PMDA:チアミン塩化物塩酸塩注射液「ツルハラ」

    B₁製剤の適応、過敏反応と静注時の注意。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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