救急

廃用症候群

動けない期間だけで重症度を決めず、病前の生活と今できる動作を比べる。離床の前・中・後に呼吸循環と症状を確認し、できる活動を生活の中へ戻す。急な機能低下は廃用と決めつけない。

主な症状
筋力低下 立ちくらみ 生活機能低下
代表的な薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

筋肉・関節:動かさないことで動きにくくなる

不活動で筋肉への負荷と関節の動きが減り、生活動作が難しくなる臥床・不活動 → 使う機会が減る筋力・可動域 ↓さらに活動 ↓移乗・更衣で、介助量と痛みを比較
  1. 臥床・不活動で筋肉への負荷と関節の動きが減る
  2. 筋力・持久力が低下し、関節が動かしにくくなる
  3. 移乗・更衣・歩行が難しい → 活動がさらに減る

観察へ:筋力だけでなく、痛み、関節が動く範囲、介助量、動作後の疲労を比べる。本人ができる部分を日常ケアでも使う。

起立時の循環:姿勢変化に追いつかない

起立時に下半身へ血液が移り、循環調節が不十分だと立ちくらみが生じる起立で血液が下方へ調節が追いつかない血圧低下・立ちくらみ姿勢・症状・血圧・脈を一緒に確認
  1. 臥床が続き、起き上がる機会が減る
  2. 起立時の血液分布の変化に循環調節が追いつかないことがある
  3. 立ちくらみ・ふらつき → 転倒リスクと離床への不安

観察へ:姿勢を変えた時点と症状・血圧・脈を結ぶ。脱水、出血、降圧薬、自律神経障害など別の原因も確認する。

筋肉・関節と起立時の循環は、重なりうる機能低下の側面。廃用の病型分類ではない。重症疾患による神経・筋障害、栄養不足、薬の影響が併存する場合もある。

症状から観察・再確認へ

筋力低下移動困難

見る・聞く
寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、移乗で必要な介助を確認。左右差、痛み、補助具も記録する。
何を反映するか
不活動による筋力・持久力低下の可能性。筋力低下の原因は廃用だけではない。
普段と比較
病前と前日の動作、同じ補助具・介助条件での達成度を比較。
悪化を疑う変化
急な片側の脱力、言葉の変化、急に座位を保てない、呼吸筋の弱りを疑う変化。
再確認
新しい神経症状は直ちに報告。活動後も疲労・疼痛と介助量を確認し、次の負荷を調整する。

立ちくらみふらつき

見る・聞く
臥位から座位・立位への変化時に症状、顔色、意識、血圧・脈を確認。支持と転倒予防を準備して行う。
何を反映するか
起立に伴う血圧低下などの可能性。数値が測れるまで無理に立たせない。
普段と比較
症状が出た姿勢・時間、安静時値、食事・補液・薬の変更を比較。
悪化を疑う変化
失神、胸痛、強い息切れ、冷汗、休んでも回復しない意識や循環の異常。
再確認
活動を止め安全に座る・臥床する。呼吸状態に配慮して体位を選び、回復と血圧・脈を再評価する。

関節の動かしにくさ

見る・聞く
自力で動く範囲と痛み、腫れ、皮膚状態、清潔・更衣への支障を確認。無理な他動運動はしない。
何を反映するか
拘縮(関節が動きにくくなる状態)や疼痛の可能性。骨折・炎症などとの区別が必要。
普段と比較
前回の可動域、姿勢、同じ動作での痛みと介助量を比較。
悪化を疑う変化
新しい強い痛み、発赤・腫れ、片脚の急な腫脹、運動に伴う神経症状。
再確認
動作を中止して評価を依頼。ポジショニング後に疼痛、圧迫、皮膚と末梢循環を確認する。

生活機能低下疲れやすさ

見る・聞く
食事、更衣、排泄、洗面をどこまで自分でできるか確認。呼吸数、会話、休憩の必要性、睡眠・気分も見る。
何を反映するか
身体機能と意欲・環境が相互に影響する。できない原因を意欲不足だけにしない。
普段と比較
病前の生活習慣と、介助すればできること、準備だけでできることを分ける。
悪化を疑う変化
少しの動作で強い呼吸困難、急な注意・意識の変化、食事・飲水の大幅な低下。
再確認
休憩後の回復と食事摂取を確認。補助具・環境・栄養計画を見直し、小さな生活目標を共有する。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察

個別の活動範囲内で動作でき、呼吸循環が安定し、休憩で疲労が回復する。

次の行動:できた動作と必要介助、実施量と回復を記録。同じ条件で推移を追い、次の目標をチームで決める。

早めに共有・報告

前より介助が増える、起立時症状を繰り返す、痛み・摂取不足・眠気が活動を妨げる。

次の行動:負荷を進めず、原疾患・薬・栄養・環境を再評価。医師とリハビリ職へ条件と変化を伝える。

直ちに応援要請

失神、胸痛、強い呼吸困難、循環不安定、急な片麻痺や言語障害。

次の行動:活動を中止して転倒を防ぎ、応援を要請。気道・呼吸・循環と発症時刻を確認し、施設の急変手順に従う。廃用による疲労として待たない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|開始条件をそろえる

安静度・荷重制限・術後の禁忌、覚醒、痛み、呼吸循環を確認。酸素・点滴・ドレーンを安全に動かせる人員と物品を準備する。

2|段階ごとに反応を見る

許可された範囲でベッド上運動、座位、立位、移乗へ進める。各段階の症状・脈・血圧・呼吸を確かめ、達成を急がない。

3|生活動作を練習の機会にする

洗面、食具を持つ、更衣など、できる部分を本人に任せる。見守り・一部介助・全介助を区別して申し送る。

4|動けない間の二次障害を防ぐ

体位・除圧、皮膚、関節の位置、排泄、口腔の状態を確認。片脚の腫れは揉まず評価へつなぐ。血栓予防は適応と禁忌を確認する。

5|実施後まで評価する

終了直後と休憩後の痛み・疲労・呼吸循環を確認。食事や翌日の活動に支障が残る場合は、量・頻度・休憩を見直す。

治療前・中・後の看護

段階的な離床・運動療法

目的
筋力・持久力と姿勢保持を回復し、生活動作を広げる。
前に確認
原疾患の安定性、活動指示、荷重・関節の制限、開始・中止条件を共有。
中に観察
呼吸循環、疲労、痛み、ふらつき、ライン牽引を観察。異常時は中断して再評価。
反応・再評価
距離だけでなく介助量、動作の質、回復時間と生活での使用を評価する。
適応・注意
強度を上げればよいとは限らない。重症患者の推奨を全患者へ一律適用しない。

関節運動・ポジショニング

目的
動かせる範囲を保ち、清潔・更衣・座位を行いやすくする。
前に確認
痛み、骨折・術後の制限、関節・皮膚状態を確認。
中に観察
痛みのない許可範囲で実施し、抵抗に逆らって押し込まない。支持具の圧迫を確認。
反応・再評価
可動域だけでなく、ケアのしやすさ・疼痛・皮膚状態を再確認する。
適応・注意
拘縮の原因に応じて理学療法士・作業療法士と方法を選ぶ。

栄養支援と活動の調整

目的
活動に必要な栄養を確保し、筋肉・生活機能の回復を支える。
前に確認
実摂取量、体重変化、嚥下、腎機能、再栄養リスクを確認。
中に観察
食事前に疲れ切らない配分を相談。実摂取と運動後の疲労、消化器症状を追う。
反応・再評価
摂取量・筋力・動作を合わせて評価。体重増加だけで回復とはしない。
適応・注意
エネルギー・蛋白量は病態で異なる。管理栄養士と個別に調整する。

活動を妨げる原因の治療・薬の見直し

目的
痛み、貧血、脱水、眠気、起立時症状などへの対応で活動を可能にする。
前に確認
症状と投薬時刻の関係、鎮静薬・降圧薬など、出納と検査値を確認。
中に観察
処方変更や鎮痛後の意識、血圧、呼吸、疼痛を観察する。
反応・再評価
症状軽減に加え、安全に行える動作が増えたかを見る。
適応・注意
廃用自体の特効薬ではない。処方・補液の変更は医師の判断で行い、一律に飲水や塩分を増やさない。

検査の意味と読み方

生活動作筋力関節可動域

介助量と動作能力を同じ条件で経時評価する。必要に応じ標準化された尺度を用いる。

組み合わせ・推移:痛み、認知・理解、補助具によって成績は変わる。筋力の値だけで生活の自立を決めない。

体位変化時の血圧脈拍

起立による循環変化を症状と合わせて評価する。

組み合わせ・推移:体位・測定時刻・薬の条件を記録。立位が危険なら測定を強行しない。

Hb

貧血が疲れやすさ・息切れに関与していないか評価する。

組み合わせ・推移:低下の速度、出血、呼吸循環と照合する。廃用を診断する検査ではない。

Hbの検査詳細

K

脱力に電解質異常が関わっていないか評価する。

組み合わせ・推移:腎機能・薬・摂取や排泄と推移を確認。急な脱力を活動不足だけにしない。

Kの検査詳細

CRP

感染・炎症など活動低下の背景を評価する補助。

組み合わせ・推移:症状・原疾患の経過と合わせる。正常でも廃用は否定できず、高値だけで運動可否を決めない。

CRPの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|活動中の変化

  • どの動作のどの段階で何が起きたか。
  • 発症時刻と現在の意識・呼吸・循環。

B|普段と活動条件

  • 病前の生活、直近の介助量、臥床期間、安静度・荷重制限、酸素・点滴・薬の条件。

A|前後の比較

  • 活動前・症状時・休憩後の値、実施した活動量と看護、回復の有無。

R|必要な評価

  • 急変の診察、活動の中止・再開条件、薬・補液の見直し、リハビリ・栄養評価を依頼。

患者・家族への説明

できることを一緒に決める

寝返りや洗面など、今の状態で安全にできる小さな目標を相談する。できないことを努力不足と考えなくてよい。

症状を我慢しない

立ちくらみ、胸痛、息苦しさ、いつもと違う痛みはその場で知らせる。初回の立ち上がりは決められた介助で行う。

退院後につなげる

家の段差、トイレ、食事準備に必要な動作を確認し、補助具・家族の介助・継続リハビリを退院前に調整する。

参考文献

  1. 日本集中治療医学会:重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023

    多職種での機能回復支援と介入の益・害。重症患者を対象とする資料で、一般患者への一律適用はしない。

  2. Lancashire Teaching Hospitals:Deconditioning

    不活動による生活機能低下、日常生活での活動と退院支援。

  3. NHS:Low blood pressure

    体位変化に伴う症状と段階的な起き上がり。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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