皮膚・熱傷

褥瘡/スキンテア

褥瘡は圧迫・ずれによる組織損傷、スキンテアは摩擦・粘着物の剥離などで皮膚が裂ける外傷。原因を分け、負担を取り除きながら創・周囲皮膚・全身状態の変化を追う。

主な症状
皮膚変化 浸出液 痛み 皮膚の脆弱性
代表的な薬
皮膚保護剤 抗菌薬
検査値UP
CRP WBC
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

褥瘡:圧迫・ずれによる損傷

褥瘡:圧迫・ずれによる損傷の力と組織への影響圧が持続皮膚骨突出部寝具・機器ずれ組織の変形・血流低下 → 深部も損傷除圧後も色・硬さ・温度・痛みを確認
  1. 骨突出部や医療機器と接する場所に圧迫・ずれが続く
  2. 皮下の組織が変形し、血流と細胞が傷む
  3. 消えにくい発赤・色調変化、硬さ・温度・痛み、潰瘍へ

観察へ:皮膚が閉じていても深部が傷んでいることがある。除圧後も色・硬さ・熱感・痛みの経過を見る。

スキンテア:皮膚が裂ける損傷

スキンテア:皮膚が裂ける損傷の力と組織への影響横向きの力めくれた皮弁皮膚が裂け、創面が露出止血・皮弁保護 → 再損傷を防ぐ皮弁の色・出血・交換時の痛みを確認
  1. 移乗時の摩擦、打撲、テープ剥離などの力が加わる
  2. 脆弱な皮膚が裂け、皮弁が残る・一部失われる
  3. 出血・痛み・露出した創 → 止血と皮弁の保護へ

観察へ:皮弁はめくれた皮膚。引っ張ったり切り取ったりせず、残存と生存性を評価する。創面をどこまで覆えるかを記録。

褥瘡とスキンテアは別の損傷で、IAD(排泄物による皮膚炎)も重なることがある。図は力と組織の関係を示す概念図。実際の創写真や深さの判定基準ではない。

症状から観察・再確認へ

皮膚の色硬さの変化

見る・聞く
骨突出部と機器接触部を確認。周囲との色・温度・硬さ・浮腫・痛みの差を見て、体位と接触時間も確認。
何を反映するか
圧迫による損傷の手がかり。赤みが見えにくい皮膚では色だけに頼らない。
普段と比較
前回の部位・範囲と除圧後の状態。新しい寝具、姿勢、機器固定の変更も照合。
悪化を疑う変化
紫色の変化、水疱、硬さ・痛みの増加、除圧しても範囲が広がる。
再確認
圧を取り除き専門チームへ共有。表面が破れていなくても繰り返し観察し、経過を記録。

創の深さ浸出液

見る・聞く
長さ・幅・見える深さ、創底、壊死、周囲の浸軟、浸出液の量・性状を同じ方法で評価。
何を反映するか
組織損傷と創環境を示す。壊死で覆われた創は実際の深さが見えない。
普段と比較
同じ測定方法と交換間隔で比較。被覆材の吸収・漏れ、皮膚のふやけも追う。
悪化を疑う変化
急な拡大、深部への広がり、排液増加、出血、周囲の発赤・熱感。
再確認
ポケット等の評価は訓練された手順で行う。見えない深さを推測で確定せず、被覆材・交換計画を相談。

踵の乾燥した壊死組織

見る・聞く
乾燥・表面の保たれ方、周囲の発赤・腫れ・排液を確認。足の冷感・色、血流評価の結果、踵の圧迫を確認する。
何を反映するか
炎症・感染がなく安定した乾燥踵壊死は、除去しない選択がある。虚血の有無と本人の治療目標が方針に関わる。
普段と比較
同じ部位の表面・周囲皮膚と痛み、排液の出現を前回と比較。除圧と保護が続けられているか確認。
悪化を疑う変化
新しい発赤・腫れ・排液、湿った壊死、痛みの増加や全身状態の悪化。
再確認
創傷担当者・医師へ再評価を依頼。独断で切除や湿潤化を始めず、血流・感染評価と保護方法を確認。全身悪化は直ちに報告する。

皮弁出血

見る・聞く
受傷機転、皮弁の有無・位置・色、露出範囲、止血状況と抗血栓薬を確認。
何を反映するか
スキンテアの組織欠損と皮弁の生存性を評価する。
普段と比較
初回と交換時の皮弁の色、乾燥、出血・創面の変化。
悪化を疑う変化
止血できない、皮弁が暗色化する、血腫が増える、創が再び裂ける。
再確認
非固着性材料で保護し早めに評価を依頼。交換で皮弁を引き剥がさない方法を引き継ぐ。

創の痛み感染を疑う変化

見る・聞く
安静時・処置時の痛み、発赤の広がり、熱感、腫れ、排液、発熱、呼吸・意識・循環を確認。
何を反映するか
局所刺激だけでなく感染・虚血などの可能性。臭いだけで感染とは決めない。
普段と比較
鎮痛・洗浄前後、創の経過と全身状態を比較。
悪化を疑う変化
急速な発赤拡大、強い痛み、意識低下、頻呼吸、循環不良。
再確認
全身変化では直ちに応援要請。局所悪化も報告し培養・感染源治療の評価へ。

活動摂取の低下

見る・聞く
自力で姿勢を変えられるか、座位時間、摂取・体重変化、嚥下、失禁、介助体制を確認。
何を反映するか
圧迫の持続と治癒を妨げる要因を探る。アルブミン値だけで栄養状態を判定しない。
普段と比較
普段の動作・食事量と、ケア実施後の負担・皮膚状態。
悪化を疑う変化
体位変換ができない、摂取低下が続く、複数部位に新たな損傷。
再確認
体圧分散、姿勢、栄養・排泄管理をチームで調整し、実行可能か再確認。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察

原因への対策と創処置計画があり、創・周囲皮膚と全身状態が安定している。

次の行動:計画した間隔で評価。改善しない場合は圧・湿潤・血流・栄養と処置方法を見直す。

早めに共有・報告

新しい発赤・紫色変化、水疱、創の拡大、皮弁の色調変化、疼痛・排液の増加。

次の行動:負担を除き、範囲・機器・体位と経過を共有。創の深さ・感染・血流の評価を依頼。

直ちに応援要請

止血困難、急速な創周囲の悪化に全身症状を伴う、意識・呼吸・循環が変化する。

次の行動:呼吸循環を確認し緊急評価へ。出血には手順に沿う圧迫止血を行い、対応と反応を報告。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|原因となる力を取り除く

患部を直接圧迫しない姿勢へ調整。医療機器は治療を維持しながら固定・接触を見直す。必要な機器を独断で外さない。

2|新しい裂傷は止血と保護

清潔な非固着性材料を用い手順に沿って圧迫。皮弁を引かず、止血後に創と受傷機転を評価する。

3|体圧分散と介助を調整

寝具・クッションの適合、底付き、踵や機器下の圧を確認。引きずらず移動補助具を使う。間隔は皮膚反応・自力運動・全身状態から決める。

4|創を洗浄し周囲を守る

施設手順で洗浄し、擦らず水分を整える。浸出液・失禁の影響と被覆材の漏れを確認。創の薬剤・材料は状態と指示に合わせる。

5|同じ方法で記録・再評価

部位、創・周囲皮膚、痛み、浸出液、実施した除圧と処置の反応を記録。写真を使う場合も施設の同意・保管手順を守る。

6|継続できる予防へ

栄養、排泄、離床、皮膚保湿、テープの選択・剥離方法を見直す。患者と介助者が実施できる方法を確認する。

治療前・中・後の看護

体圧分散・除圧

目的
組織に加わる持続的な圧とずれを減らす。
前に確認
自力運動、骨突出、呼吸循環、疼痛、座位・機器、寝具を評価。
中に観察
患部が圧迫されていないか、姿勢のずれ、呼吸の負担、新しい圧迫部位を確認。
反応・再評価
皮膚・痛みと耐えられる姿勢を再評価。寝具を使っていても体位調整の必要性を確認。
適応・注意
体位変換間隔や角度を一律にしない。終末期や循環不安定時は安楽と負担も含め計画する。

創傷被覆材・外用剤

目的
創面を保護し、水分と浸出液を調整する。
前に確認
深さ、壊死、感染、浸出液、周囲皮膚、アレルギーを確認。
中に観察
漏れ・浸軟、乾燥・固着、交換時痛、発赤を観察。
反応・再評価
創の縮小だけでなく皮弁・周囲皮膚と痛みが改善するか確認。状態変化で材料を見直す。
適応・注意
濡らせばよいわけではない。乾燥した壊死や血流不良は専門評価を先に行う。スキンテアは非固着性を重視。

デブリードマン・外科的治療

目的
必要に応じ壊死組織を除き、感染制御や創閉鎖を目指す。
前に確認
血流、感染、出血リスク、疼痛、栄養と治療目標を確認。
中に観察
出血・痛み・全身状態を観察し、処置後の被覆と除圧を実施。
反応・再評価
除去しない方針でも表面と周囲の変化を継続観察。炎症・感染の兆候が出たら方針を再評価する。処置後は出血・痛みと創の推移を追い、除圧・活動条件を確認。
適応・注意
壊死を看護師が独断で切り取らない。炎症・感染のない安定した乾燥踵壊死は除去しない選択があり、血流と目標で判断。

感染評価に基づく抗菌治療

目的
必要な場合に創感染と周囲・全身への拡大を抑える。
前に確認
局所・全身所見、採取する検体、既使用薬、アレルギー・腎機能を確認。
中に観察
発赤・熱感・疼痛、意識・循環、薬剤有害事象を観察。
反応・再評価
局所と全身の反応、培養結果で治療を見直す。感染源への処置も必要か確認。
適応・注意
培養陽性だけで感染と決めない。スキンテア全例への予防的抗菌薬投与はしない。

鎮痛薬:処置と動作を支える

目的
安静時・交換時・体位変換時の痛みを減らす。
前に確認
痛みの原因、処方・最終投与、重複薬、肝腎機能、絶食・低栄養を確認。
中に観察
痛みと処置への反応、有害事象を観察。材料剥離による再損傷も減らす。
反応・再評価
鎮痛後の安楽と皮膚状態を確認。強い痛みが続けば感染・虚血等の再評価を依頼。
適応・注意
リンクはアセトアミノフェン錠の例。重篤な肝障害・成分過敏症では禁忌。原因治療と併せて個別に選ぶ。
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検査の意味と読み方

CRP

炎症の程度と推移を補助的に評価。

組み合わせ・推移:上昇は創感染に特異的ではない。創所見・発熱・全身状態と組み合わせる。

CRPの検査詳細

WBC

感染・炎症などへの反応を確認。

組み合わせ・推移:高値だけで感染と断定せず、低値や正常値でも臨床的な悪化を重視する。

WBCの検査詳細

Hb

出血・貧血の影響を確認。

組み合わせ・推移:出血量・循環と前回値を比較。創の治癒や栄養状態をHbだけで判断しない。

Hbの検査詳細

培養画像血流評価

病原体、深部感染や骨への波及、血流の問題を必要に応じて調べる。

組み合わせ・推移:表面の菌検出と感染は同義ではない。採取方法は目的と指示に合わせ、結果を創・全身所見に戻して解釈する。

報告:SBARで情報をそろえる

S|今回の変化

  • 創の拡大・色・痛み・出血と出現時点。
  • 意識・呼吸・循環の現在の状態。

B|損傷の背景

  • 圧迫部位・機器・体位、スキンテアの受傷機転、血流や糖尿病等の背景、抗血栓薬と処置内容。

A|比較と反応

  • 同じ方法で見た創の範囲・深さ、皮弁、浸出液、周囲皮膚。
  • 除圧・止血・洗浄・鎮痛後の反応。

R|必要な評価

  • 感染・虚血・深さの診察、止血や処置、材料・体圧分散・栄養計画の変更、次の評価時点。

患者・家族への説明

同じ場所への負担を減らす

無理なくできる姿勢変更を一緒に決める。痛みや赤み、機器が当たる感じを早く伝える。

皮膚を引っ張らない

移動では補助具を使い、保湿と衣服で摩擦を減らす。テープや被覆材を勢いよく剥がさない。

創の変化を相談する

出血が止まらない、痛み・腫れ・赤みが増える、発熱や体調変化があるときは相談。自己判断で壊死や皮弁を切らない。

参考文献

  1. 日本褥瘡学会:褥瘡の治療

    創の状態に合わせる洗浄・被覆・外用・外科治療。第4版を引用した一般向け資料で、最新専門指針の全文確認とは区別。

  2. 日本褥瘡学会:床ずれ予防パンフレット

    深部損傷と圧迫・ずれ、皮膚変化の観察。元画像は使用しない。

  3. ISTAP:スキンテアの予防・管理 2025 第2版

    皮弁の評価、止血・保護、非固着性材料、感染評価。該当節を確認。

  4. WHS:褥瘡治療ガイドライン 2023 update

    出版社公開本文の推奨3.9・4.3・4.4を2026年9月16日に確認。安定した乾燥踵壊死、感染徴候が出た場合の再評価、虚血評価と処置の順序を参照。全文の全推奨を監査したという意味ではない。

  5. PMDA:カロナール錠電子添文

    2026年8月改訂。肝障害、重複投与、低栄養・脱水時の注意。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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