検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
褥瘡:圧迫・ずれによる損傷
- 骨突出部や医療機器と接する場所に圧迫・ずれが続く
- 皮下の組織が変形し、血流と細胞が傷む
- 消えにくい発赤・色調変化、硬さ・温度・痛み、潰瘍へ
観察へ:皮膚が閉じていても深部が傷んでいることがある。除圧後も色・硬さ・熱感・痛みの経過を見る。
スキンテア:皮膚が裂ける損傷
- 移乗時の摩擦、打撲、テープ剥離などの力が加わる
- 脆弱な皮膚が裂け、皮弁が残る・一部失われる
- 出血・痛み・露出した創 → 止血と皮弁の保護へ
観察へ:皮弁はめくれた皮膚。引っ張ったり切り取ったりせず、残存と生存性を評価する。創面をどこまで覆えるかを記録。
褥瘡とスキンテアは別の損傷で、IAD(排泄物による皮膚炎)も重なることがある。図は力と組織の関係を示す概念図。実際の創写真や深さの判定基準ではない。
症状から観察・再確認へ
皮膚の色・硬さの変化
- 見る・聞く
- 骨突出部と機器接触部を確認。周囲との色・温度・硬さ・浮腫・痛みの差を見て、体位と接触時間も確認。
- 何を反映するか
- 圧迫による損傷の手がかり。赤みが見えにくい皮膚では色だけに頼らない。
- 普段と比較
- 前回の部位・範囲と除圧後の状態。新しい寝具、姿勢、機器固定の変更も照合。
- 悪化を疑う変化
- 紫色の変化、水疱、硬さ・痛みの増加、除圧しても範囲が広がる。
- 再確認
- 圧を取り除き専門チームへ共有。表面が破れていなくても繰り返し観察し、経過を記録。
創の深さ・浸出液
- 見る・聞く
- 長さ・幅・見える深さ、創底、壊死、周囲の浸軟、浸出液の量・性状を同じ方法で評価。
- 何を反映するか
- 組織損傷と創環境を示す。壊死で覆われた創は実際の深さが見えない。
- 普段と比較
- 同じ測定方法と交換間隔で比較。被覆材の吸収・漏れ、皮膚のふやけも追う。
- 悪化を疑う変化
- 急な拡大、深部への広がり、排液増加、出血、周囲の発赤・熱感。
- 再確認
- ポケット等の評価は訓練された手順で行う。見えない深さを推測で確定せず、被覆材・交換計画を相談。
踵の乾燥した壊死組織
- 見る・聞く
- 乾燥・表面の保たれ方、周囲の発赤・腫れ・排液を確認。足の冷感・色、血流評価の結果、踵の圧迫を確認する。
- 何を反映するか
- 炎症・感染がなく安定した乾燥踵壊死は、除去しない選択がある。虚血の有無と本人の治療目標が方針に関わる。
- 普段と比較
- 同じ部位の表面・周囲皮膚と痛み、排液の出現を前回と比較。除圧と保護が続けられているか確認。
- 悪化を疑う変化
- 新しい発赤・腫れ・排液、湿った壊死、痛みの増加や全身状態の悪化。
- 再確認
- 創傷担当者・医師へ再評価を依頼。独断で切除や湿潤化を始めず、血流・感染評価と保護方法を確認。全身悪化は直ちに報告する。
皮弁・出血
- 見る・聞く
- 受傷機転、皮弁の有無・位置・色、露出範囲、止血状況と抗血栓薬を確認。
- 何を反映するか
- スキンテアの組織欠損と皮弁の生存性を評価する。
- 普段と比較
- 初回と交換時の皮弁の色、乾燥、出血・創面の変化。
- 悪化を疑う変化
- 止血できない、皮弁が暗色化する、血腫が増える、創が再び裂ける。
- 再確認
- 非固着性材料で保護し早めに評価を依頼。交換で皮弁を引き剥がさない方法を引き継ぐ。
創の痛み・感染を疑う変化
- 見る・聞く
- 安静時・処置時の痛み、発赤の広がり、熱感、腫れ、排液、発熱、呼吸・意識・循環を確認。
- 何を反映するか
- 局所刺激だけでなく感染・虚血などの可能性。臭いだけで感染とは決めない。
- 普段と比較
- 鎮痛・洗浄前後、創の経過と全身状態を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急速な発赤拡大、強い痛み、意識低下、頻呼吸、循環不良。
- 再確認
- 全身変化では直ちに応援要請。局所悪化も報告し培養・感染源治療の評価へ。
活動・摂取の低下
- 見る・聞く
- 自力で姿勢を変えられるか、座位時間、摂取・体重変化、嚥下、失禁、介助体制を確認。
- 何を反映するか
- 圧迫の持続と治癒を妨げる要因を探る。アルブミン値だけで栄養状態を判定しない。
- 普段と比較
- 普段の動作・食事量と、ケア実施後の負担・皮膚状態。
- 悪化を疑う変化
- 体位変換ができない、摂取低下が続く、複数部位に新たな損傷。
- 再確認
- 体圧分散、姿勢、栄養・排泄管理をチームで調整し、実行可能か再確認。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察
原因への対策と創処置計画があり、創・周囲皮膚と全身状態が安定している。
次の行動:計画した間隔で評価。改善しない場合は圧・湿潤・血流・栄養と処置方法を見直す。
早めに共有・報告
新しい発赤・紫色変化、水疱、創の拡大、皮弁の色調変化、疼痛・排液の増加。
次の行動:負担を除き、範囲・機器・体位と経過を共有。創の深さ・感染・血流の評価を依頼。
直ちに応援要請
止血困難、急速な創周囲の悪化に全身症状を伴う、意識・呼吸・循環が変化する。
次の行動:呼吸循環を確認し緊急評価へ。出血には手順に沿う圧迫止血を行い、対応と反応を報告。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|原因となる力を取り除く
患部を直接圧迫しない姿勢へ調整。医療機器は治療を維持しながら固定・接触を見直す。必要な機器を独断で外さない。
2|新しい裂傷は止血と保護
清潔な非固着性材料を用い手順に沿って圧迫。皮弁を引かず、止血後に創と受傷機転を評価する。
3|体圧分散と介助を調整
寝具・クッションの適合、底付き、踵や機器下の圧を確認。引きずらず移動補助具を使う。間隔は皮膚反応・自力運動・全身状態から決める。
4|創を洗浄し周囲を守る
施設手順で洗浄し、擦らず水分を整える。浸出液・失禁の影響と被覆材の漏れを確認。創の薬剤・材料は状態と指示に合わせる。
5|同じ方法で記録・再評価
部位、創・周囲皮膚、痛み、浸出液、実施した除圧と処置の反応を記録。写真を使う場合も施設の同意・保管手順を守る。
6|継続できる予防へ
栄養、排泄、離床、皮膚保湿、テープの選択・剥離方法を見直す。患者と介助者が実施できる方法を確認する。
治療前・中・後の看護
体圧分散・除圧
- 目的
- 組織に加わる持続的な圧とずれを減らす。
- 前に確認
- 自力運動、骨突出、呼吸循環、疼痛、座位・機器、寝具を評価。
- 中に観察
- 患部が圧迫されていないか、姿勢のずれ、呼吸の負担、新しい圧迫部位を確認。
- 反応・再評価
- 皮膚・痛みと耐えられる姿勢を再評価。寝具を使っていても体位調整の必要性を確認。
- 適応・注意
- 体位変換間隔や角度を一律にしない。終末期や循環不安定時は安楽と負担も含め計画する。
創傷被覆材・外用剤
- 目的
- 創面を保護し、水分と浸出液を調整する。
- 前に確認
- 深さ、壊死、感染、浸出液、周囲皮膚、アレルギーを確認。
- 中に観察
- 漏れ・浸軟、乾燥・固着、交換時痛、発赤を観察。
- 反応・再評価
- 創の縮小だけでなく皮弁・周囲皮膚と痛みが改善するか確認。状態変化で材料を見直す。
- 適応・注意
- 濡らせばよいわけではない。乾燥した壊死や血流不良は専門評価を先に行う。スキンテアは非固着性を重視。
デブリードマン・外科的治療
- 目的
- 必要に応じ壊死組織を除き、感染制御や創閉鎖を目指す。
- 前に確認
- 血流、感染、出血リスク、疼痛、栄養と治療目標を確認。
- 中に観察
- 出血・痛み・全身状態を観察し、処置後の被覆と除圧を実施。
- 反応・再評価
- 除去しない方針でも表面と周囲の変化を継続観察。炎症・感染の兆候が出たら方針を再評価する。処置後は出血・痛みと創の推移を追い、除圧・活動条件を確認。
- 適応・注意
- 壊死を看護師が独断で切り取らない。炎症・感染のない安定した乾燥踵壊死は除去しない選択があり、血流と目標で判断。
感染評価に基づく抗菌治療
- 目的
- 必要な場合に創感染と周囲・全身への拡大を抑える。
- 前に確認
- 局所・全身所見、採取する検体、既使用薬、アレルギー・腎機能を確認。
- 中に観察
- 発赤・熱感・疼痛、意識・循環、薬剤有害事象を観察。
- 反応・再評価
- 局所と全身の反応、培養結果で治療を見直す。感染源への処置も必要か確認。
- 適応・注意
- 培養陽性だけで感染と決めない。スキンテア全例への予防的抗菌薬投与はしない。
鎮痛薬:処置と動作を支える
- 目的
- 安静時・交換時・体位変換時の痛みを減らす。
- 前に確認
- 痛みの原因、処方・最終投与、重複薬、肝腎機能、絶食・低栄養を確認。
- 中に観察
- 痛みと処置への反応、有害事象を観察。材料剥離による再損傷も減らす。
- 反応・再評価
- 鎮痛後の安楽と皮膚状態を確認。強い痛みが続けば感染・虚血等の再評価を依頼。
- 適応・注意
- リンクはアセトアミノフェン錠の例。重篤な肝障害・成分過敏症では禁忌。原因治療と併せて個別に選ぶ。
カロナール錠200・300・500の詳細を開く検査の意味と読み方
CRP
炎症の程度と推移を補助的に評価。
組み合わせ・推移:上昇は創感染に特異的ではない。創所見・発熱・全身状態と組み合わせる。
CRPの検査詳細
WBC
感染・炎症などへの反応を確認。
組み合わせ・推移:高値だけで感染と断定せず、低値や正常値でも臨床的な悪化を重視する。
WBCの検査詳細
Hb
出血・貧血の影響を確認。
組み合わせ・推移:出血量・循環と前回値を比較。創の治癒や栄養状態をHbだけで判断しない。
Hbの検査詳細
培養・画像・血流評価
病原体、深部感染や骨への波及、血流の問題を必要に応じて調べる。
組み合わせ・推移:表面の菌検出と感染は同義ではない。採取方法は目的と指示に合わせ、結果を創・全身所見に戻して解釈する。
報告:SBARで情報をそろえる
S|今回の変化
- 創の拡大・色・痛み・出血と出現時点。
- 意識・呼吸・循環の現在の状態。
B|損傷の背景
- 圧迫部位・機器・体位、スキンテアの受傷機転、血流や糖尿病等の背景、抗血栓薬と処置内容。
A|比較と反応
- 同じ方法で見た創の範囲・深さ、皮弁、浸出液、周囲皮膚。
- 除圧・止血・洗浄・鎮痛後の反応。
R|必要な評価
- 感染・虚血・深さの診察、止血や処置、材料・体圧分散・栄養計画の変更、次の評価時点。
患者・家族への説明
同じ場所への負担を減らす
無理なくできる姿勢変更を一緒に決める。痛みや赤み、機器が当たる感じを早く伝える。
皮膚を引っ張らない
移動では補助具を使い、保湿と衣服で摩擦を減らす。テープや被覆材を勢いよく剥がさない。
創の変化を相談する
出血が止まらない、痛み・腫れ・赤みが増える、発熱や体調変化があるときは相談。自己判断で壊死や皮弁を切らない。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
疾患・病態の一覧に戻る