検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
IAD:皮膚の表面からバリアが傷む
- 尿・便との接触と湿潤が続く
- 角層がふやけ、刺激や摩擦に弱くなる
- 排泄物に触れる範囲の発赤・びらん・痛み
観察へ:接触範囲、便性状、交換間隔、清拭時の摩擦を確認。表面のケアと排泄管理を一緒に見直す。
褥瘡との違い:圧迫・ずれで組織が傷む
- 骨突出部や機器接触部に圧迫・ずれが続く
- 皮膚と深部組織に負担がかかる
- 持続する発赤・変色や組織損傷 → 除圧を評価
観察へ:骨突出部・機器、同一体位の時間、深さも確認。失禁があっても全てIADとはせず、褥瘡の併存を専門職と評価する。
IADと褥瘡は原因が異なり、同じ場所に併存することもある。図は皮膚障害の仕組みの比較で、見た目だけの診断表ではない。
症状から観察・再確認へ
発赤・皮膚のふやけ
- 見る・聞く
- 説明と同意のもと必要部分だけ露出し、会陰・臀部・皮膚の重なる場所を確認。範囲、境界、湿り、圧迫部位を記録。
- 何を反映するか
- 排泄物接触による刺激の可能性。色だけではIAD・褥瘡・感染を区別できない。
- 普段と比較
- 前回と同じ部位の広がり、便・尿の付着、交換後の湿りを比較。
- 悪化を疑う変化
- 範囲が拡大、紫色・黒色の変色、深い損傷、周囲の強い熱感・腫れ。
- 再確認
- 洗浄・保護と除圧後に、再汚染、湿潤、圧迫が減ったかを見る。
びらん・浸出液
- 見る・聞く
- 表面が剥けた部分の範囲、深さ、浸出液・出血、汚染を確認。こすって深さを確かめない。
- 何を反映するか
- 皮膚バリアが失われ刺激を受けやすい。深い傷では他の損傷や併存病態を評価。
- 普段と比較
- 新しい欠損、浸出液量、保護剤が保てる時間を前回と比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な拡大、膿、悪臭を伴う悪化、発熱、壊死を疑う変色。
- 再確認
- 医師・皮膚排泄ケアの専門職へ共有し、保護方法と交換頻度、処置後の刺激を確認。
痛み・かゆみ
- 見る・聞く
- 安静時、排泄時、洗浄時の痛みを分けて聞く。言葉にしにくい人では表情・逃避・ケア拒否を観察。
- 何を反映するか
- 皮膚障害、製品の刺激、感染などの可能性。拒否を性格の問題にしない。
- 普段と比較
- 製品変更前後、ケア方法、痛みの場所と程度を比較。
- 悪化を疑う変化
- 外観に不釣り合いな強い痛み、急な悪化、全身状態の変化。
- 再確認
- 刺激を減らし、疼痛対応後に排泄・体位変換ができるか確認。重い感染を疑えば緊急評価へ。
排泄物の接触が続く
- 見る・聞く
- 尿・便の回数、量、便性状、漏れ、パッドの適合、トイレに間に合わない理由を確認。
- 何を反映するか
- 皮膚への曝露が治癒を妨げる。下痢や移動・認知機能の問題への対応が必要。
- 普段と比較
- 薬・栄養・排便習慣の変化と発症時期、交換までの時間を比較。
- 悪化を疑う変化
- 水様便が続く、血便、腹痛、尿量低下や脱水徴候。
- 再確認
- 排泄計画・製品調整後に漏れと皮膚への付着が減ったか確認する。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察
皮膚障害の広がりがなく、痛み・湿潤・排泄物接触がケアで改善する。
次の行動:同じ部位と条件で記録し、次の交換時にも効果を確認。予防ケアを続ける。
早めに共有・報告
びらんが拡大、痛みが続く、深さや原因が不明、真菌感染を疑う発疹、ケアを調整しても改善しない。
次の行動:医師・専門看護師へ皮膚所見と実施ケアを共有。感染・褥瘡・接触皮膚炎などの評価と処置計画を相談する。
直ちに応援要請
急速な発赤拡大と強い痛み、紫色・黒色変化、発熱に意識・呼吸・循環の異常を伴う。
次の行動:IADのみと考えず重症感染などの緊急評価を要請。呼吸循環を確認し、施設の急変対応に沿って準備する。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|尊厳と痛みに配慮
目的を説明し、露出を最小限にする。無理に股関節を開かず、安楽な体位と介助人数を確保。
2|排泄物をやさしく除去
付着した尿・便を速やかに除去。低刺激の洗浄・清拭を選び、こすらず、水分を軽く押さえる。洗い過ぎや強い摩擦を避ける。
3|皮膚を守る
乾燥部の保湿と排泄物からの保護を区別。製品の適用部位・塗布量・重ね塗り・除去方法を確認する。
4|失禁の原因と収集方法を見直す
排泄誘導、移動介助、適切な吸収用品を検討。下痢や便秘に伴う漏れは原因評価へつなぎ、自己判断で止痢薬を開始しない。
5|次の交換で再評価
接触・漏れ、皮膚範囲、痛み、製品による刺激を比較。圧迫やずれがある場合は除圧も行う。
治療前・中・後の看護
皮膚保護剤・撥水性製品
- 目的
- 尿・便との直接接触を減らし皮膚バリアを補う。
- 前に確認
- 皮膚の欠損・湿潤、使用部位、製品の適応、アレルギーを確認。
- 中に観察
- 指示・製品説明に沿って塗布。厚塗りによる観察困難や除去時の摩擦を避ける。
- 反応・再評価
- 刺激痛、再汚染、保護が持続する時間と皮膚の推移を確認。
- 適応・注意
- 亜鉛華軟膏は代表的な保護薬の一つ。全ての保護製品と同じ使用法ではない。
亜鉛華軟膏の詳細を開く排泄自立支援・吸収用品の調整
- 目的
- 皮膚に排泄物が触れる機会と時間を減らす。
- 前に確認
- 排泄パターン、移動・認知機能、便性状、用品の適合と交換状況を確認。
- 中に観察
- トイレ誘導・介助を調整し、漏れ、蒸れ、圧迫を観察。
- 反応・再評価
- 付着と皮膚症状の減少、本人の負担を再評価する。
- 適応・注意
- カテーテルや便収集器具を一律に使わない。必要な場合は適応・禁忌・粘膜損傷や感染の危険を評価する。
感染・炎症に対する局所治療
- 目的
- 真菌などの感染や持続する炎症がある場合に原因へ対応する。
- 前に確認
- 医師の診察で原因を確認し、必要時に真菌検査などを準備。
- 中に観察
- 処方薬の塗布範囲と回数、刺激・発疹の増加、保護剤との使用順を確認。
- 反応・再評価
- 発赤・びらん・痛みの経過を比較し、悪化や無効なら再評価を依頼。
- 適応・注意
- 発赤だけで抗真菌薬やステロイドを使用しない。感染の種類や皮膚状態に応じて処方が変わる。
検査の意味と読み方
皮膚・排泄の評価
部位、範囲、深さ、痛みと尿・便の接触を繰り返し評価する。
組み合わせ・推移:特有の血液検査はない。褥瘡や接触皮膚炎、感染の併存を評価し、見た目だけで断定しない。
真菌検査・培養
感染が疑われる場合に原因を調べる。必要性と採取方法を確認する。
組み合わせ・推移:検出だけで原因とは決めず、皮膚所見・治療反応と合わせて解釈する。
CRP
全身感染・炎症が疑われる場合の補助評価。通常の局所IADで一律に採血する項目ではない。
組み合わせ・推移:正常でも局所皮膚障害は否定できない。発熱、循環、範囲の拡大と推移を照合する。
CRPの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S|皮膚と全身の変化
- どの部位がいつから悪化したか。
- 痛み・広がり・深さと、発熱や意識・呼吸循環の変化。
B|排泄とケア条件
- 尿・便の性状と頻度、接触状況、使用製品・交換方法。
- 抗菌薬・免疫抑制治療、使用中の酸素・点滴など全身管理の条件。
A|前回との差と反応
- 前回と現在の皮膚の範囲・痛み・漏れ。
- 洗浄・保護・除圧・排泄支援の内容と、実施後の変化。
R|確認してほしいこと
- IADと褥瘡・感染等の鑑別、処方・保護方法、排泄管理、再評価時期。
- 全身異常時は緊急診察。
患者・家族への説明
漏れを相談しやすくする
失禁や皮膚の痛みを我慢せず伝えてもらう。排泄や交換の希望も聞き、できることを一緒に選ぶ。
こすらず守る
汚れをやさしく落とし、決めた保護剤を使う。強い洗浄や自己判断での薬の追加を避ける。
悪化のサイン
傷が広がる、痛みが増す、熱感・腫れ・発熱がある場合は相談。急な強い痛みや全身の不調は早急に伝える。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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