皮膚・熱傷

IAD(失禁関連皮膚炎)

排泄物が触れる場所・時間と皮膚の変化を結ぶ。汚れを落とすだけで終えず、刺激を減らし、皮膚を守り、次の排泄後に効果を確かめる。成人の学習用。

主な症状
発赤 びらん 痛み
代表的な薬
皮膚保護剤 抗真菌薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

IAD:皮膚の表面からバリアが傷む

尿・便・湿潤 → 表面のバリア障害尿・便・湿潤 → 表面のバリア障害接触範囲を確認 → やさしく洗浄・皮膚保護両方の原因が重なることもある
  1. 尿・便との接触と湿潤が続く
  2. 角層がふやけ、刺激や摩擦に弱くなる
  3. 排泄物に触れる範囲の発赤・びらん・痛み

観察へ:接触範囲、便性状、交換間隔、清拭時の摩擦を確認。表面のケアと排泄管理を一緒に見直す。

褥瘡との違い:圧迫・ずれで組織が傷む

圧迫・ずれ → 深部にも負担圧迫・ずれ → 深部にも負担骨突出部圧迫の部位・深さ → 除圧と専門評価両方の原因が重なることもある
  1. 骨突出部や機器接触部に圧迫・ずれが続く
  2. 皮膚と深部組織に負担がかかる
  3. 持続する発赤・変色や組織損傷 → 除圧を評価

観察へ:骨突出部・機器、同一体位の時間、深さも確認。失禁があっても全てIADとはせず、褥瘡の併存を専門職と評価する。

IADと褥瘡は原因が異なり、同じ場所に併存することもある。図は皮膚障害の仕組みの比較で、見た目だけの診断表ではない。

症状から観察・再確認へ

発赤皮膚のふやけ

見る・聞く
説明と同意のもと必要部分だけ露出し、会陰・臀部・皮膚の重なる場所を確認。範囲、境界、湿り、圧迫部位を記録。
何を反映するか
排泄物接触による刺激の可能性。色だけではIAD・褥瘡・感染を区別できない。
普段と比較
前回と同じ部位の広がり、便・尿の付着、交換後の湿りを比較。
悪化を疑う変化
範囲が拡大、紫色・黒色の変色、深い損傷、周囲の強い熱感・腫れ。
再確認
洗浄・保護と除圧後に、再汚染、湿潤、圧迫が減ったかを見る。

びらん浸出液

見る・聞く
表面が剥けた部分の範囲、深さ、浸出液・出血、汚染を確認。こすって深さを確かめない。
何を反映するか
皮膚バリアが失われ刺激を受けやすい。深い傷では他の損傷や併存病態を評価。
普段と比較
新しい欠損、浸出液量、保護剤が保てる時間を前回と比較。
悪化を疑う変化
急な拡大、膿、悪臭を伴う悪化、発熱、壊死を疑う変色。
再確認
医師・皮膚排泄ケアの専門職へ共有し、保護方法と交換頻度、処置後の刺激を確認。

痛みかゆみ

見る・聞く
安静時、排泄時、洗浄時の痛みを分けて聞く。言葉にしにくい人では表情・逃避・ケア拒否を観察。
何を反映するか
皮膚障害、製品の刺激、感染などの可能性。拒否を性格の問題にしない。
普段と比較
製品変更前後、ケア方法、痛みの場所と程度を比較。
悪化を疑う変化
外観に不釣り合いな強い痛み、急な悪化、全身状態の変化。
再確認
刺激を減らし、疼痛対応後に排泄・体位変換ができるか確認。重い感染を疑えば緊急評価へ。

排泄物の接触が続く

見る・聞く
尿・便の回数、量、便性状、漏れ、パッドの適合、トイレに間に合わない理由を確認。
何を反映するか
皮膚への曝露が治癒を妨げる。下痢や移動・認知機能の問題への対応が必要。
普段と比較
薬・栄養・排便習慣の変化と発症時期、交換までの時間を比較。
悪化を疑う変化
水様便が続く、血便、腹痛、尿量低下や脱水徴候。
再確認
排泄計画・製品調整後に漏れと皮膚への付着が減ったか確認する。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察

皮膚障害の広がりがなく、痛み・湿潤・排泄物接触がケアで改善する。

次の行動:同じ部位と条件で記録し、次の交換時にも効果を確認。予防ケアを続ける。

早めに共有・報告

びらんが拡大、痛みが続く、深さや原因が不明、真菌感染を疑う発疹、ケアを調整しても改善しない。

次の行動:医師・専門看護師へ皮膚所見と実施ケアを共有。感染・褥瘡・接触皮膚炎などの評価と処置計画を相談する。

直ちに応援要請

急速な発赤拡大と強い痛み、紫色・黒色変化、発熱に意識・呼吸・循環の異常を伴う。

次の行動:IADのみと考えず重症感染などの緊急評価を要請。呼吸循環を確認し、施設の急変対応に沿って準備する。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|尊厳と痛みに配慮

目的を説明し、露出を最小限にする。無理に股関節を開かず、安楽な体位と介助人数を確保。

2|排泄物をやさしく除去

付着した尿・便を速やかに除去。低刺激の洗浄・清拭を選び、こすらず、水分を軽く押さえる。洗い過ぎや強い摩擦を避ける。

3|皮膚を守る

乾燥部の保湿と排泄物からの保護を区別。製品の適用部位・塗布量・重ね塗り・除去方法を確認する。

4|失禁の原因と収集方法を見直す

排泄誘導、移動介助、適切な吸収用品を検討。下痢や便秘に伴う漏れは原因評価へつなぎ、自己判断で止痢薬を開始しない。

5|次の交換で再評価

接触・漏れ、皮膚範囲、痛み、製品による刺激を比較。圧迫やずれがある場合は除圧も行う。

治療前・中・後の看護

皮膚保護剤・撥水性製品

目的
尿・便との直接接触を減らし皮膚バリアを補う。
前に確認
皮膚の欠損・湿潤、使用部位、製品の適応、アレルギーを確認。
中に観察
指示・製品説明に沿って塗布。厚塗りによる観察困難や除去時の摩擦を避ける。
反応・再評価
刺激痛、再汚染、保護が持続する時間と皮膚の推移を確認。
適応・注意
亜鉛華軟膏は代表的な保護薬の一つ。全ての保護製品と同じ使用法ではない。
亜鉛華軟膏の詳細を開く

排泄自立支援・吸収用品の調整

目的
皮膚に排泄物が触れる機会と時間を減らす。
前に確認
排泄パターン、移動・認知機能、便性状、用品の適合と交換状況を確認。
中に観察
トイレ誘導・介助を調整し、漏れ、蒸れ、圧迫を観察。
反応・再評価
付着と皮膚症状の減少、本人の負担を再評価する。
適応・注意
カテーテルや便収集器具を一律に使わない。必要な場合は適応・禁忌・粘膜損傷や感染の危険を評価する。

感染・炎症に対する局所治療

目的
真菌などの感染や持続する炎症がある場合に原因へ対応する。
前に確認
医師の診察で原因を確認し、必要時に真菌検査などを準備。
中に観察
処方薬の塗布範囲と回数、刺激・発疹の増加、保護剤との使用順を確認。
反応・再評価
発赤・びらん・痛みの経過を比較し、悪化や無効なら再評価を依頼。
適応・注意
発赤だけで抗真菌薬やステロイドを使用しない。感染の種類や皮膚状態に応じて処方が変わる。

検査の意味と読み方

皮膚排泄の評価

部位、範囲、深さ、痛みと尿・便の接触を繰り返し評価する。

組み合わせ・推移:特有の血液検査はない。褥瘡や接触皮膚炎、感染の併存を評価し、見た目だけで断定しない。

真菌検査培養

感染が疑われる場合に原因を調べる。必要性と採取方法を確認する。

組み合わせ・推移:検出だけで原因とは決めず、皮膚所見・治療反応と合わせて解釈する。

CRP

全身感染・炎症が疑われる場合の補助評価。通常の局所IADで一律に採血する項目ではない。

組み合わせ・推移:正常でも局所皮膚障害は否定できない。発熱、循環、範囲の拡大と推移を照合する。

CRPの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|皮膚と全身の変化

  • どの部位がいつから悪化したか。
  • 痛み・広がり・深さと、発熱や意識・呼吸循環の変化。

B|排泄とケア条件

  • 尿・便の性状と頻度、接触状況、使用製品・交換方法。
  • 抗菌薬・免疫抑制治療、使用中の酸素・点滴など全身管理の条件。

A|前回との差と反応

  • 前回と現在の皮膚の範囲・痛み・漏れ。
  • 洗浄・保護・除圧・排泄支援の内容と、実施後の変化。

R|確認してほしいこと

  • IADと褥瘡・感染等の鑑別、処方・保護方法、排泄管理、再評価時期。
  • 全身異常時は緊急診察。

患者・家族への説明

漏れを相談しやすくする

失禁や皮膚の痛みを我慢せず伝えてもらう。排泄や交換の希望も聞き、できることを一緒に選ぶ。

こすらず守る

汚れをやさしく落とし、決めた保護剤を使う。強い洗浄や自己判断での薬の追加を避ける。

悪化のサイン

傷が広がる、痛みが増す、熱感・腫れ・発熱がある場合は相談。急な強い痛みや全身の不調は早急に伝える。

参考文献

  1. 日本創傷・オストミー・失禁管理学会:IADベストプラクティス

    成人のアセスメント、標準的スキンケア、排泄管理。先行研究と専門家の経験に基づく資料。

  2. 日本創傷・オストミー・失禁管理学会:失禁ケアについて

    排泄の相談、低刺激の洗浄・保護と洗い過ぎへの注意。

  3. PMDA:亜鉛華軟膏「日医工」

    保護薬の適応、使用部位、過敏症などの注意。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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