皮膚・熱傷

蜂窩織炎

赤みの大きさだけでなく、痛み・広がる速さ・全身状態を追う。皮膚の入口を探し、抗菌薬開始後も深い感染や膿瘍が隠れていないか再評価する。

主な症状
発赤 腫脹 痛み 発熱
代表的な薬
抗菌薬 鎮痛薬
検査値UP
CRP WBC
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

真皮・皮下組織に広がる感染

皮膚の傷から細菌が入り真皮・皮下組織に炎症が広がる表皮真皮皮下組織小さな傷・亀裂などが入口になる炎症が広がる → 発赤・熱感・腫れ・痛み
  1. 傷・亀裂・足白癬などで皮膚のバリアが傷む
  2. 細菌が入り、真皮・皮下組織で炎症
  3. 発赤・腫れ・痛み/全身に影響すると発熱・循環変化

観察へ:発赤の境界、痛み、熱感と全身を同時に確認。糖尿病・浮腫・免疫抑制、動物咬傷・水への曝露も共有する。

鑑別:皮膚膿瘍(膿がたまる)

膿のたまり → 排膿の必要性を評価炎症の中に膿のたまりができる表皮真皮皮下←皮下の筋膜膿のたまり → 排膿の必要性を評価
  1. 局所に細菌感染
  2. 膿が一か所にたまる
  3. 限局した腫れ・痛み → 排膿の適応を評価

観察へ:膿・局所の盛り上がり・圧痛を確認。自己判断で押し出さず、診察や超音波での評価につなぐ。蜂窩織炎と併存することもある。

緊急鑑別:壊死性軟部組織感染症

筋膜に沿う広がり → 緊急外科評価表面より深い組織で感染が広がる表皮真皮皮下←皮下の筋膜筋膜に沿う広がり → 緊急外科評価
  1. 筋膜など深い組織に感染
  2. 深部で急速に広がり組織を損傷
  3. 不釣り合いな痛み・全身悪化 → 緊急外科評価

観察へ:皮膚の変化が軽くても深い感染は除外できない。水疱・壊死が出そろうまで待たず、進行速度と全身状態を報告する。

皮膚の層と感染の広がりを簡略化した模式図。後の2図は蜂窩織炎と治療が異なる鑑別疾患で、必ずこの順に進行するわけではない。見た目だけで感染の深さは決められない。

症状から観察・再確認へ

発赤腫脹熱感

見る・聞く
境界・範囲、左右差、熱感、皮膚の亀裂・創・趾間、膿や水疱を確認。必要時は施設手順で境界を印す。
何を反映するか
皮膚と皮下の炎症を反映する。両側性の赤みなどでは感染以外の原因も考える。
普段と比較
同じ体位・観察条件で範囲と腫れ、治療開始からの経過を比較する。
悪化を疑う変化
急速な拡大、紫色・黒色変化、水疱、感覚低下、全身状態の悪化。
再確認
境界だけでなく痛み・体温・循環も再評価。治療開始直後に赤みが残ることだけで失敗と決めない。

疼痛

見る・聞く
安静・体動時の強さ、皮膚所見に比べた痛み、圧痛、感覚、歩行・睡眠への影響を確認する。
何を反映するか
炎症の程度の手がかり。見た目に不釣り合いな強い痛みは深い感染を疑う理由になる。
普段と比較
鎮痛前後、前回からの増加、痛む範囲の拡大を比較。
悪化を疑う変化
急激な激痛、急速な拡大、皮膚の感覚低下や循環不良。
再確認
鎮痛後に軽減しても原因の評価を続ける。皮膚壊死や検査値の異常がそろうまで緊急評価を待たない。

発熱悪寒倦怠感

見る・聞く
体温、脈拍、呼吸数、血圧、意識、尿量、食事・水分摂取を確認。
何を反映するか
感染の全身への影響や脱水の手がかり。高齢・免疫抑制例では高熱が目立たない場合もある。
普段と比較
普段の意識・活動と直前値、抗菌薬・解熱鎮痛薬の時刻、尿量を比較。
悪化を疑う変化
意識変化、低血圧、呼吸数増加、冷感、尿量低下。
再確認
敗血症の評価へつなぎ、治療後の循環・意識・局所変化を追う。

看護判断:変化の緊急度

計画に沿った経過観察

治療計画があり、局所症状と全身状態が安定・改善している。

次の行動:範囲・痛み・体温と服薬を追い、再診時点と悪化時の連絡先を確認。

早めの共有・再評価

拡大や発熱が続く、改善が始まらない、膿が疑われる、内服や飲水が困難。

次の行動:診断・抗菌薬・膿瘍・基礎疾患を再評価。眼や鼻の周囲の感染、咬傷・水曝露も早く共有する。

直ちに応援・緊急評価

不釣り合いな激痛、急速な拡大、水疱・壊死、感覚低下、循環不良や意識変化。

次の行動:壊死性軟部組織感染症・敗血症の緊急評価を求める。ABC・安全確保と検体・点滴・外科処置の準備を並行する。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1.重い感染を先に拾う

意識・呼吸・循環と痛みの強さ、進行速度を確認。壊死性の感染を疑うときは画像や採血結果待ちで外科評価を遅らせない。

2.広がりと全身の基準を記録

初回の範囲・痛み・皮膚・バイタルをそろえ、再評価で比較できるようにする。

3.抗菌薬と局所ケアを支える

投与前のアレルギー・培養指示・腎機能を確認。皮膚を優しく清潔に保ち保護し、下肢は状態に応じて挙上。強いマッサージをしない。

4.入口と再発要因を確認

創・亀裂・趾間病変、浮腫、糖尿病、履物と皮膚ケアを確認。痛みと歩行障害に合わせ転倒を予防する。

5.治療後を同じ条件で比較

抗菌薬・鎮痛・局所ケアの時刻と、痛み・皮膚範囲・意識・循環を比較。急速な拡大や全身悪化は予定の再評価まで待たず共有する。赤みが残ることだけで治療失敗と決めない。

治療前・中・後の看護

第1世代セフェム系などの抗菌薬

目的
原因菌を治療し感染の拡大を抑える。
前に確認
アレルギー、腎肝機能、薬剤歴、膿・咬傷・水曝露、重症度、内服可能性を確認。
中に観察
発赤・痛み・体温・循環、注射部位を追う。投与直後の呼吸苦・全身発疹・血圧低下は投与を止め応援要請。下痢、腎肝機能・血算、意識変化も確認。
反応・再評価
局所と全身の改善、培養結果、経口への切替と期間を再評価。急速な悪化なら予定の評価日を待たない。
適応・注意
セファゾリンは代表例。原因菌・重症度・腎機能で薬剤や経路が変わる。MRSAリスク、咬傷、水曝露、壊死性病変では別の治療選択を評価する。
セファゾリンナトリウム水和物の詳細を開く

膿瘍の切開・排膿

目的
局所にたまった膿を排出して感染源を減らす。
前に確認
診察・超音波等で膿瘍の有無を評価。部位、出血リスク、鎮痛と培養採取の指示を確認。
中に観察
痛み・出血・気分不良と排液の性状を確認。検体を指示どおり提出する。
反応・再評価
処置後の痛み・腫れ、排液、発熱の推移を確認。再貯留や周囲への拡大を共有する。
適応・注意
通常の蜂窩織炎に一律に行わない。排膿と抗菌薬の必要性は別に評価する。

壊死組織の除去(デブリードマン)

目的
壊死性軟部組織感染症の感染源を外科的に除去する。
前に確認
緊急外科評価につなぎ、ABC、静脈路、検体・手術準備を指示と並行。検査待ちで評価を遅らせない。
中に観察
意識・呼吸・循環、出血、体温、尿量、投与中の抗菌薬・輸液を確認する。
反応・再評価
処置後も局所の広がりと全身状態、創からの排液・出血を追う。再手術の計画を共有する。
適応・注意
深い感染が疑われる場合の治療。初回処置だけで終わるとは限らず、全身管理と抗菌薬を組み合わせる。

挙上・皮膚保護・鎮痛

目的
浮腫と痛みを軽減し皮膚の回復を支える。
前に確認
末梢循環・感覚、創、体位の忍容性、鎮痛薬の禁忌と腎機能を確認。
中に観察
圧迫部の皮膚、痛み、しびれ、食事・睡眠、歩行を観察。
反応・再評価
腫れ・痛みと生活動作が改善するか再評価。
適応・注意
圧迫療法は急性期の状態・動脈血流などを評価して計画。足白癬や糖尿病等の治療も個別に進める。

検査の意味と読み方

CRP

炎症の経過を補助的に評価する。

組み合わせ・推移:症状より遅れて変化することもある。単独で重症度や治癒を決めず局所と全身を合わせる。

CRPの検査詳細

WBC

感染への反応をみる。

組み合わせ・推移:上昇だけでなく重症感染や免疫抑制時の低値にも注意。正常値で深い感染を除外しない。

WBCの検査詳細

Cr

腎機能と薬剤の処方条件を評価する。

組み合わせ・推移:基準値からの上昇、尿量・脱水・循環を合わせ、抗菌薬投与中も追う。

Crの検査詳細

乳酸

重症例で臓器灌流不足等を評価する。

組み合わせ・推移:血圧・意識・皮膚・尿量と合わせる。正常でも壊死性軟部組織感染症を否定しない。

乳酸の検査詳細

培養画像

必要時に病原体や膿瘍・深部病変を評価する。

組み合わせ・推移:全例に血液培養や表面スワブが必要なわけではない。検体と検査の適応を確認し、緊急処置を遅らせない。

報告:SBARで情報をそろえる

S:変化

  • どこが、いつから、どの速さで赤く腫れ痛むか。
  • 現在の意識・呼吸・循環。

B:背景

  • 創・足白癬、糖尿病・浮腫・免疫抑制、咬傷・水曝露。
  • 抗菌薬と投与時刻、使用中の酸素・点滴の条件。

A:比較と反応

  • 範囲・痛み・体温・血圧・尿量の変化、薬剤と挙上・鎮痛後の反応。

R:必要な確認

  • 深い感染・膿瘍・敗血症の評価、抗菌薬と外科処置の必要性、再評価時点。

患者・家族への説明

悪化を待たず伝える

急に広がる赤み、強い痛み、水ぶくれ、ぼんやりする・息が速い変化はすぐ相談する。

薬と再診

指示された抗菌薬を使用し、副作用や服用困難を相談。赤みの回復には時間がかかることがあり、自己判断で薬を増減しない。

再発予防

足の傷・亀裂・足の指の間の皮膚を確認し、水虫やむくみの治療を続ける。洗った後は乾かし、皮膚を傷つけない履物とケアを相談する。

参考文献

  1. 東京都健康長寿医療センター:蜂窩織炎

    皮膚・皮下の感染と深い感染の鑑別。

  2. 日本皮膚科学会:白癬Q29

    足白癬による皮膚損傷と感染の入口。

  3. NICE NG141:Cellulitis and erysipelas

    再評価、重症化徴候、基礎疾患と患者説明。国内の薬剤適応を優先。

  4. IDSA 2014:皮膚・軟部組織感染症ガイドライン

    膿瘍・蜂窩織炎・壊死性感染の区別と処置。2014年版。国内の診療手順・薬剤適応を優先。

  5. PMDA:セファゾリンNa注射用「CHM」

    第1世代セフェム系の代表例。適応、アレルギー、腎機能と投与中の観察。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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