救急

静脈炎

血管に沿う痛み・発赤を見つけたら、点滴部位と全身状態を確認する。機械的刺激・薬液・感染・血栓で対応が変わり、抜去した後も悪化がないか追う。

主な症状
痛み 発赤 硬結 発熱 腫脹
代表的な薬
鎮痛薬 抗菌薬 抗凝固薬
検査値UP
CRP WBC
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

機械的・化学的な刺激

管・薬液の刺激 → 静脈壁の炎症管の動き・薬液の性質が刺激赤い線:炎症を起こした静脈壁管・薬液の刺激 → 静脈壁の炎症
  1. カテーテルの摩擦や薬液の刺激
  2. 静脈壁に炎症
  3. 血管沿いの痛み・発赤・熱感

観察へ:薬剤・濃度・速度、固定、関節運動との関係を確認。速度を下げるだけでその部位の投与を続けない。

感染を伴う可能性

微生物の侵入 → 局所炎症・全身感染も評価刺入部・接続部などから微生物赤い線:炎症を起こした静脈壁微生物の侵入 → 局所炎症・全身感染も評価
  1. 皮膚・接続部などから侵入
  2. 局所の感染・炎症
  3. 膿・発赤の拡大/悪寒・発熱は全身評価

観察へ:発熱だけで原因を決めず、刺入部、悪寒、呼吸・血圧・意識を確認。重症感染の対応を遅らせない。

表在性血栓性静脈炎

血栓と炎症 → 硬結・腫れ表在静脈内に血栓ができる赤い線:炎症を起こした静脈壁血栓と炎症 → 硬結・腫れ
  1. 静脈瘤・血流停滞などを背景に血栓
  2. 血管壁の炎症を伴う
  3. 索状の硬結・痛み/広がりと深部への進展を評価

観察へ:病変の長さだけでなく部位と深部静脈との距離、肢全体の腫れを確認。超音波などで治療条件が変わる。

静脈壁の炎症と原因を示す模式図。原因は重なることがある。静脈炎と血管外漏出は別の病態で、投与中の腫れでは両方を考える。表在静脈の炎症・血栓と深部静脈血栓症を同一視しない。

症状から観察・再確認へ

血管沿いの痛み発赤

見る・聞く
刺入部から血管走行に沿って、痛み・熱感・発赤・硬結の範囲、皮膚の状態を確認。本人の訴えを聞く。
何を反映するか
静脈壁の炎症の手がかり。皮膚色だけでは分かりにくい場合もあり、痛み・熱感を合わせる。
普段と比較
投与開始・薬剤変更・体動との時間関係、前回の範囲と痛みを比較。
悪化を疑う変化
発赤が拡大、痛みが強くなる、膿、腕や脚全体の腫れ。
再確認
投与中止・抜去等の対応後も痛みと範囲を追い、改善しない場合は感染・血栓を再評価する。

腫脹点滴不良

見る・聞く
腫れの範囲、熱感・冷感、皮膚の張り、水疱、感覚、投与抵抗・漏れを確認。薬剤と推定量を把握。
何を反映するか
静脈炎に加え血管外漏出や血栓の可能性。ポンプが動いていても血管内に入っているとは限らない。
普段と比較
投与前後、左右差、腫れと痛み、指先の色・温度・感覚を比較。
悪化を疑う変化
強い痛み、広がる水疱・色調変化、しびれ、冷感、運動障害。
再確認
投与を止め無理にフラッシュしない。漏出が疑われる場合は薬剤別の吸引・解毒処置のため抜去前に手順を確認する。

発熱悪寒

見る・聞く
体温、悪寒の時刻、脈拍・血圧・呼吸・意識、刺入部の膿や発赤、他の感染源を確認。
何を反映するか
カテーテル関連感染を含む感染の可能性。局所所見が軽くても全身感染を否定できない。
普段と比較
点滴操作との関係、前回のバイタル、免疫抑制、抗菌薬と培養採取歴を比較。
悪化を疑う変化
血圧低下、意識変化、呼吸数増加、末梢冷感、尿量低下。
再確認
全身状態を再評価し、重症なら直ちに応援要請。培養準備と必要な治療を並行する。

索状の硬結肢全体の腫れ

見る・聞く
硬い血管の範囲、左右差、痛み、静脈瘤、血栓既往、呼吸症状を確認。強く揉まない。
何を反映するか
表在静脈の血栓の手がかり。深部静脈血栓症の合併・進展も評価が必要。
普段と比較
範囲が中枢側へ広がるか、腫れが増えるか、活動・治療前後を比較。
悪化を疑う変化
急な肢全体の腫れ、突然の息切れ・胸痛・失神。
再確認
局所症状だけで終了せず、超音波の範囲・再検査と抗凝固の適応評価を確認する。

看護判断:変化の緊急度

対応後の経過観察

原因評価と局所対応後、症状が改善し、全身症状や拡大がない。

次の行動:抜去後も範囲・痛みを追い、再評価と連絡方法を決める。異常のある末梢ルートをそのまま使い続ける意味ではない。

早めの報告・評価

新しい静脈炎所見、索状硬結、持続する痛み・腫れ、膿や発熱。

次の行動:投与と部位を評価し、抜去・別ルート、感染・血栓・漏出の評価を進める。

直ちに応援・緊急対応

ショック徴候、呼吸困難・胸痛・失神、急速な腫れと末梢循環・感覚運動障害。

次の行動:ABCと安全確保を優先。疑わしい部位の投与を止め、重症感染・肺塞栓・組織障害の緊急評価を求める。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1.投与部位と全身を確認

問題の部位への投与を停止し、薬液・濃度・速度・推定量を確認。循環作動薬など継続が必要なら代替ルート確保を急いで相談する。

2.抜去と漏出手順を区別

末梢静脈カテーテルの静脈炎では抜去を進める。血管外漏出を疑う場合は、抜去前の吸引等が必要か薬剤別手順を確認。PICC・中心静脈の抜去は別の判断と手順に従う。

3.感染を疑うときの培養を準備

血流感染を疑う場合は血液培養の指示を確認。末梢血とカテーテル血の採取が必要か相談し、採取源・ルーメン・時刻と抗菌薬投与前後を区別する。採取困難で治療を遅らせない。

4.血栓の評価を準備

索状硬結や肢全体の腫れでは超音波評価へつなぐ。抜去後も中枢側への広がり、腫れの増加、呼吸症状を再確認する。

5.局所ケアと再評価

部位を保護し、原因に合う挙上・鎮痛・罨法を確認。温冷を薬剤や病態を確認せず選ばない。対応後の範囲、痛み、全身状態を記録する。

治療前・中・後の看護

原因となる末梢ルートの中止・抜去

目的
カテーテルや薬液による刺激を取り除く。
前に確認
静脈炎か漏出か、必要な継続治療と代替経路、抗凝固薬・出血リスクを確認。
中に観察
抜去部の出血、疼痛、カテーテルの完全性と皮膚を確認。
反応・再評価
止血後も痛み・発赤・腫れが軽減するか追う。
適応・注意
末梢ルートの手順。中心静脈カテーテルの抜去判断へそのまま適用しない。

局所ケア・鎮痛

目的
痛みと腫れを和らげ、患肢の使用を支える。
前に確認
感染・血栓・漏出の評価、皮膚・末梢循環、薬剤の禁忌と併用抗凝固薬を確認。
中に観察
罨法による皮膚障害、痛み、腫れ、鎮痛薬の副作用を確認。
反応・再評価
安静時と体動時の痛み、皮膚と腫れを再評価。
適応・注意
圧迫は適応と動脈血流等を確認して行う。漏出では温冷の選択が薬剤で異なる。

感染に対する抗菌薬・感染源対応

目的
感染がある場合に病原体と感染源を治療する。
前に確認
培養、アレルギー、腎機能、重症度、残存カテーテルや膿瘍の有無を確認。
中に観察
体温・呼吸循環、局所拡大、薬剤反応を観察。
反応・再評価
局所と全身の改善、培養結果に応じた薬剤変更、感染源の残存を再評価。
適応・注意
非感染性静脈炎すべてに抗菌薬を使うわけではない。重症感染では検体採取で治療を遅らせない。

抗MRSA薬:グリコペプチド系の例

目的
MRSAによる血流感染など、適応のある感染を治療する。
前に確認
培養・感受性、アレルギー、腎機能、直近の投与を確認。血中濃度測定(TDM)の採血計画と、投与濃度・速度・代替ルートを照合する。
中に観察
皮膚の赤み・かゆみ、呼吸・血圧、尿量・腎機能を観察。新しい投与部位も痛み・発赤・腫れ・漏れを確認し、異常時は投与を止めて報告する。
反応・再評価
局所と全身状態、培養の陰性化、腎機能と血中濃度を共有。採血と投与の実時刻を記録し、効果不足・副作用と感染源の残存を再評価する。
適応・注意
バンコマイシンは選択肢の一つで、非感染性静脈炎の治療薬ではない。薬自体でも静脈炎・漏出障害が起こりうる。薬剤・期間・用量は感染部位、感受性、腎機能等で判断する。
バンコマイシン塩酸塩点滴静注用の詳細を開く

血栓に対する抗凝固療法

目的
適応例で深部への進展や再発を抑える。
前に確認
超音波で部位・範囲・深部との関係、出血、腎機能、血栓既往を確認。
中に観察
腫れ・痛みと出血、Hb・血小板など薬剤別の検査を確認。
反応・再評価
伸展や新しい呼吸症状がないか、出血との釣り合いを再評価。
適応・注意
表在性血栓や点滴後静脈炎の全例に投与しない。薬剤・期間は血栓の条件と国内適応で選ぶ。

検査の意味と読み方

CRP

炎症の程度を補助的に評価する。

組み合わせ・推移:高値だけで細菌感染やカテーテルが原因とは決めない。局所・体温・治療後の推移を合わせる。

CRPの検査詳細

WBC

感染や炎症の反応を評価する。

組み合わせ・推移:増加・減少を免疫状態や薬剤と合わせる。正常でも局所・全身感染を否定しない。

WBCの検査詳細

血液培養

血流感染の病原体を調べる。

組み合わせ・推移:採取源・ルーメン・時刻と抗菌薬投与前後を記録。末梢血とカテーテル血の菌種・陽性化時間を比較することがある。陽性だけでカテーテル由来と断定せず、症状と汚染の可能性を合わせる。

静脈超音波

表在・深部の血栓と広がりを評価する。

組み合わせ・推移:見た目の発赤範囲と血栓範囲は一致しないことがある。症状増悪時は再評価計画を確認する。

報告:SBARで情報をそろえる

S:部位と変化

  • 痛み・発赤・腫れの発症と拡大、現在の意識・呼吸・循環。

B:ルートと背景

  • 末梢・中心の区別、留置経過、薬剤・濃度・速度、血栓・感染リスク。

A:対応と反応

  • 範囲、皮膚・末梢循環、前回バイタルとの差、投与中止・抜去等の後の反応。

R:確認したいこと

  • 漏出・感染・血栓の評価、代替経路、検体・画像、局所ケアと再評価時点。

患者・家族への説明

小さな痛みでも伝える

点滴中の痛み、熱さ・冷たさ、腫れ、濡れを我慢せず知らせる。ポンプが鳴らなくても異常は起こりうる。

抜去した後も観察する

赤みや痛みが広がる、発熱、肢全体の腫れがあれば相談。突然の呼吸困難・胸痛はすぐ助けを求める。

自己処置を避ける

強く揉まず、湿布や温める・冷やす処置は原因に合う方法を確認する。血栓を防ぐ抗凝固薬の使用中に市販の鎮痛薬を追加する前に相談する。

参考文献

  1. CDC:血管内カテーテル関連感染の勧告

    2011年勧告の公開要約(掲載2024年)。2.1の6・7を確認。刺入部の観察と静脈炎・感染時の末梢カテーテル抜去に参照。

  2. NHS:Phlebitis

    表在静脈炎の症状、血栓の評価、局所支援。海外の薬剤適応を一律に転記しない。

  3. JAID/JSC:敗血症・カテーテル関連血流感染症2017

    成人カテーテル関連血流感染症25〜27頁の本文を確認。採取源の区別と培養、治療を遅らせない検体準備に参照。MRSA血流感染の薬剤例は2024年資料と現行添文も照合。

  4. 日本化学療法学会・日本感染症学会:MRSA感染症の診療ガイドライン2024

    V-2 菌血症(284頁):薬剤選択、感染源への対応、培養陰性化と持続時の再評価。MRSA血流感染の条件に限って参照し、静脈炎全般へ抗MRSA薬を勧めるものではない。

  5. PMDA:バンコマイシン塩酸塩点滴静注用「明治」

    2026年4月改訂版。8・11・14・16.8:投与時の観察、腎障害、血中濃度、静脈炎・血管外漏出を確認。投与量や血中濃度目標を一律掲載しない。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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