検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
慢性狭窄:歩行時の需要に血流が足りない
- 動脈壁にプラークができ内腔が狭くなる
- 歩行で筋肉が必要とする酸素が増える
- 供給が追いつかず痛み・だるさが出て休むと軽くなる
観察へ:歩ける距離と休息での回復を確認。腰部疾患など別の原因とも区別し、無症状でも足を観察。
慢性の高度虚血:皮膚・組織が保てない
- 持続する重い血流不足
- 安静時にも組織へ酸素が届きにくい
- 安静時痛、治りにくい創、壊疽などにつながる
観察へ:創・感染・血流をまとめて評価。糖尿病の神経障害では痛みが乏しくても組織傷害が進む。
急性虚血:血流が急に途絶える
- 血栓・塞栓や治療部位の閉塞など
- 末梢への血流が急激に低下する
- 疼痛・冷感・色調変化に感覚低下や運動障害を伴う
観察へ:発症時点と感覚・運動の変化を直ちに報告。すべての所見がそろうまで待たない。
下肢の動脈硬化による病変を中心に整理。無症状例、慢性の症候性病変、足を脅かす慢性虚血、急性虚血を区別する。すべてが同じ順番で進行するわけではなく、痛みが乏しい例もある。
症状から観察・再確認へ
歩行時痛・だるさ
- 見る・聞く
- 症状の部位、出現までの距離・時間、休息での回復、生活で困る動作を確認。
- 何を反映するか
- 運動時の血流需要を満たせない可能性。関節・脊椎・神経疾患も考える。
- 普段と比較
- 以前の歩行距離、靴、速度、体調、運動療法前後。
- 悪化を疑う変化
- 歩ける距離が急に短縮、安静でも痛い、新しい創。
- 再確認
- 足の皮膚・温度・脈・感覚と、運動計画の適否を確認。
冷感・色調変化
- 見る・聞く
- 左右の皮膚温・色、足背・後脛骨動脈の触知、必要時ドプラを確認。
- 何を反映するか
- 末梢血流低下の手がかり。室温や浮腫、検者・機器条件にも影響される。
- 普段と比較
- 反対側と本人の基準、体位、処置前後の同じ部位。
- 悪化を疑う変化
- 急な蒼白・紫色化、いつも聞こえた動脈音の消失、痛み・しびれを伴う。
- 再確認
- 緊急度を判断し、機器調整に時間を使って報告を遅らせない。
安静時痛・創傷
- 見る・聞く
- 夜間痛、足趾・踵・趾間の創、深さ・浸出・周囲発赤、靴の圧迫を確認。
- 何を反映するか
- 慢性の高度虚血や感染の可能性。創の見た目だけでは治癒能力は分からない。
- 普段と比較
- 創の大きさ・色・臭い、安静時痛と鎮痛への反応。
- 悪化を疑う変化
- 創の拡大、湿った壊死、発赤の広がり、発熱や全身状態悪化。
- 再確認
- 血流評価と創傷・感染治療の計画、免荷方法を共有。
感覚低下・運動障害
- 見る・聞く
- 足趾を動かせるか、触覚の左右差、新しいしびれ・麻痺を確認。
- 何を反映するか
- 急性虚血による神経・筋の危機を疑う。既存の神経障害との差が重要。
- 普段と比較
- 普段の感覚・筋力、症状開始時点、血行再建前後。
- 悪化を疑う変化
- 急に動かせない、感覚が鈍くなる、冷感・色調変化を伴う。
- 再確認
- 直ちに応援・専門評価を要請し、患肢と全身の状態を継続確認。
血行再建後の痛み・腫れ
- 見る・聞く
- 穿刺・創部の出血、末梢血流、腫脹・硬さ、痛み、感覚・運動、尿量を確認。
- 何を反映するか
- 出血、再閉塞、再灌流に伴う組織障害などの可能性。
- 普段と比較
- 処置直後を基準に、色・温度・脈・疼痛と採血を比較。
- 悪化を疑う変化
- 強い痛みと緊満、感覚運動の悪化、冷感再発、低血圧や暗色尿。
- 再確認
- 脈が触れてもコンパートメント症候群を除外せず緊急報告。K・CK・腎機能の評価を準備。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
慢性症状が普段と同じで、安静時痛や新しい創がなく治療・運動計画がある。
次の行動:歩行能力と足の皮膚を定期確認し、危険因子と服薬の管理を継続。
早めの共有・報告
歩行距離の短縮、安静時痛、新しい創、治りにくい傷や局所感染。
次の行動:血流・創・感染の評価を早めに相談。無理な運動や自己処置を避け、保護・免荷を確認。
直ちに応援・緊急対応
急な疼痛・冷感・色調変化、感覚や運動の低下、再建後の強い緊満・疼痛、全身感染徴候。
次の行動:発症時点を伝え緊急の血管評価を要請。全所見や検査結果を待たず、安静・保護と処置準備を進める。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|急変なら歩かせない
急性虚血を疑う足を保護し、感覚・運動と発症時点を報告。マッサージや直接の加温で様子を見ない。
2|同じ部位で比較
皮膚、脈・ドプラ、感覚・運動を左右と前値で比較。脈が触れないという一所見だけで結論を出さない。
3|検査と処置の準備
採血・画像・血行再建の準備を指示に沿って行い、出血歴、抗血栓薬、腎機能、造影剤反応を共有。
4|足を傷つけない
靴・寝具の圧迫を減らし、創に合った保護と免荷を確認。血流評価前に強い圧迫療法や壊死除去を独自に行わない。
5|活動条件を分ける
安定した跛行では処方された運動を支援。高度虚血や創傷、急な悪化時は同じ歩行訓練を続けない。
6|再建後を継続評価
末梢血流だけでなく出血・腫脹・神経所見・全身の循環と尿量を確認。改善後も再閉塞を見逃さない。
治療前・中・後の看護
抗血小板薬・抗血栓療法
- 目的
- 血栓と心血管・下肢イベントを減らす。
- 前に確認
- 出血歴、併用薬、血算、予定処置と治療目的を確認。
- 中に観察
- 皮下・消化管・尿路の出血、貧血症状、服薬継続を確認。
- 反応・再評価
- 新しい虚血症状と出血の両方を追う。
- 適応・注意
- 症状・再建方法・出血リスクで薬剤と併用期間が異なる。急性虚血の抗凝固と慢性期の抗血小板を混同しない。
スタチンなどの脂質管理
- 目的
- 動脈硬化と心血管イベントのリスクを減らす。
- 前に確認
- 脂質、肝機能、筋症状、腎機能・相互作用を確認。
- 中に観察
- 新しい筋痛・脱力・暗色尿、肝障害を疑う症状を確認。
- 反応・再評価
- 脂質値と忍容性、継続できる服薬方法を確認。
- 適応・注意
- 下肢症状だけを目的にせず全身のリスクを管理。薬剤・強度は個別に選択。
クレストール錠・OD錠2.5mg・5mgの詳細を開く構造化された運動療法
- 目的
- 安定した慢性症状で歩行能力と生活機能を改善する。
- 前に確認
- 安静時痛・創傷・急性変化、心肺状態、転倒リスクを確認。
- 中に観察
- 脚の症状、胸痛・息切れ、回復時間、足の擦れを観察。
- 反応・再評価
- 歩行距離だけでなく日常生活の改善を評価。
- 適応・注意
- 専門家と定めた計画で実施。急性虚血や高度虚血の足を痛みを我慢して歩かせない。
血行再建
- 目的
- 狭窄・閉塞を治療して末梢血流を改善する。
- 前に確認
- 病変、創・感染、心腎機能、抗血栓薬、同意と安静度を確認。
- 中に観察
- 血圧、穿刺部・創部、末梢血流、感覚・運動を比較。
- 反応・再評価
- 痛み・灌流・創の経過を追い、出血・再閉塞・再灌流障害を評価。
- 適応・注意
- 血管内治療・バイパス等は病変と全身状態で選択。急性例では緊急性と救肢可能性を専門チームが判断。
創傷・感染管理と免荷
- 目的
- 感染拡大と追加損傷を防ぎ治癒を支える。
- 前に確認
- 血流、創の深さ・壊死・感染、荷重部、栄養を確認。
- 中に観察
- 創と周囲皮膚、痛み、被覆材・免荷具の圧迫を観察。
- 反応・再評価
- 創の縮小だけでなく感染・血流・生活動作の変化を評価。
- 適応・注意
- デブリードマンや抗菌薬は血流と感染に応じ決定。乾燥壊死を一律に除去しない。
検査の意味と読み方
ABI
足首と上腕の血圧の比。下肢血流評価に使う。
組み合わせ・推移:血液検査ではない。糖尿病・腎疾患などの石灰化では高く出ることがあり、症状と合わなければ追加評価。
ドプラ・TBI・皮膚灌流評価
血流信号や足趾・皮膚への灌流を確認。
組み合わせ・推移:測定条件と前値を比較し、創の状態や神経所見と合わせる。一つの値で治癒可能性を断定しない。
クレアチニン
腎機能と造影・薬剤のリスクを確認。
組み合わせ・推移:処置前後の尿量・循環と比較。上昇の原因を造影剤だけに決めない。
クレアチニンの検査詳細
Hgb
出血・貧血の評価。
組み合わせ・推移:症状、穿刺部、便・尿、循環と推移を照合。
Hgbの検査詳細
K
急性虚血・再灌流時の高Kなどを確認。
組み合わせ・推移:心電図、CK、腎機能と組み合わせ、処置後も再評価。
Kの検査詳細
CRP
感染・炎症の手がかり。
組み合わせ・推移:高値だけで足の感染と断定せず、局所所見と他の感染源を確認。
CRPの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S|急変の有無
- どちらの脚の何が、いつから変わったか。
- 新しい感覚・運動の異常、悪化速度。
- 現在の意識・呼吸・脈・血圧。
B|背景と治療条件
- 普段の歩行・足所見、糖尿病・腎疾患。
- 血行再建やカテーテル処置の内容と経過、抗血栓薬・最終投与、酸素・点滴の条件。
A|左右・前回との比較
- 左右と前回の色・温度・脈・ドプラ音、感覚・運動、痛み・腫脹・出血。
- 再建後は尿量・尿色、直近と現在のK・CK・腎機能。
- 実施した保護・安静・指示治療と、その後の足所見・全身状態。
R|必要な判断
- 急性虚血・再閉塞・再灌流障害を疑う変化への緊急診察。
- 画像・採血・治療準備、安静度と次の観察時点を確認。
- 情報がそろうまで緊急報告を待たない。
患者・家族への説明
毎日足を見る
足裏・かかと・足の指の間の傷や色の変化を確認。見えにくければ鏡や家族の支援を使う。
足を守る
合う靴で圧迫・擦れを防ぎ、裸足や直接の暖房による熱傷を避ける。傷を自分で削らず相談。
急な変化は待たない
急に冷たい・痛い・しびれる・動かしにくい足は緊急相談。禁煙支援、服薬と処方された運動を続ける。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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