呼吸・循環を整える技術内容・リンク確認:2026年8月29日

ドップラーによる血流確認

触れにくい末梢動脈の血流信号を捉え、皮膚色・冷感・感覚・運動などと合わせて四肢の循環をみる。

学習用。ここでは携帯型の連続波ドップラーによる血流信号の確認を扱う。信号の有無だけで閉塞や狭窄を診断せず、患者の症状、触診、皮膚所見、左右差、ABIなどの検査と合わせて評価する。突然の疼痛、蒼白・冷感、感覚低下、運動障害を伴う場合は、信号探しを続けて対応を遅らせず直ちに報告する。

ドップラーで何を確認するか

プローブから出た超音波が動く血球で周波数変化を起こし血流信号として聞こえる仕組み
動いている血球から返る超音波の変化を音や波形として捉える。
聞こえるのは「その場所の血流信号」
  • 触診で脈拍が分かりにくいときに、末梢動脈の信号を探す。
  • 同じ部位を左右で比べ、処置や経過の前後で変化をみる。
  • 携帯型装置の音だけでは血管の形、狭窄率、閉塞部位を確定できない。
  • 信号が聞こえても、組織への血流が十分とは限らない。

まず四肢全体を観察する

疼痛、皮膚色、温度、毛細血管再充満、感覚、運動、脈拍を左右比較する図
装置を当てる前に、患者の訴えと末梢循環を左右同じ条件でみる。
  • 症状:突然の痛み、安静時痛、しびれ、歩行時の痛み、創傷
  • 皮膚:蒼白、チアノーゼ、発赤、光沢、潰瘍、壊死、左右差
  • 循環:皮膚温、毛細血管再充満、触知できる脈拍、浮腫
  • 神経・運動:感覚低下、しびれ、筋力低下、動かしにくさ
  • 背景:糖尿病、腎疾患、喫煙、動脈疾患、血管手術、カテーテル治療、ギプス・圧迫物

よく確認する末梢動脈

上肢の上腕・橈骨・尺骨動脈と下肢の足背・後脛骨動脈のおおよその位置
最初に触診し、解剖学的な走行を意識して周囲を少しずつ探す。
足部は2か所を確認する
  • 足背動脈:足背で、長母趾伸筋腱の外側付近を探す。
  • 後脛骨動脈:内果の後方からアキレス腱側にかけて探す。
  • 一方が生理的に触れにくい場合があるため、足背動脈と後脛骨動脈を確認し、反対側とも比べる。
  • 測定部位は施設の記録方法に合わせ、曖昧に「足の脈」と書かない。

準備

ドップラー本体、プローブ、超音波ゼリー、清拭物品、手袋を準備する図

患者と装置の両方を整える

  • 患者確認、目的、観察部位を確認して説明する
  • 安楽な体位を整え、対象部位を露出して左右を比べられるようにする
  • 携帯型ドップラー、本体に適合するプローブ、超音波ゼリー
  • ゼリーを拭き取る物品、必要時の手袋
  • 電源、音量、プローブやコードの破損、装置の作動を確認する

冷えや緊張は末梢血管を収縮させる。急変でなければ室温と患者の安楽を整え、測定条件をそろえる。

血流信号を確認する手順

触診、ゼリー、プローブを傾ける、信号を探す、左右比較、記録の流れ
強く押すのではなく、角度と位置を小さく変えて最も明瞭な信号を探す。
  1. 観察して触診する

    皮膚色、温度、創傷、感覚、運動を確認し、血管の走行をイメージして指で脈拍を探す。

  2. ゼリーをのせる

    予測した血管上に超音波ゼリーを置き、プローブと皮膚の間に空気が入らないようにする。

  3. 軽く当てて傾ける

    プローブ先端をゼリーに入れ、血管の長軸に沿って皮膚に対しおよそ45~60度を目安に傾ける。細い血管を押しつぶさない。

  4. 最も明瞭な信号を探す

    位置、角度、向きを少しずつ変える。音量を上げるだけでなく、拍動と同期した信号かを確認する。

  5. 同じ条件で左右を比べる

    同名動脈を同じ体位・部位で確認し、信号の有無、強さ、性状、左右差をみる。

  6. 終了して清潔にする

    ゼリーを拭き取り皮膚を整える。プローブは製造元の方法と施設基準に従って清拭・消毒する。

音・波形の捉え方

多相性の鋭い動脈信号、単相性で鈍い動脈信号、連続的な静脈信号の模式図
「何相か」だけで正常・異常を決めず、血管、部位、症状、左右差と合わせる。
  • 動脈信号:心拍に同期した拍動性の音。末梢動脈では鋭い多相性波形がみられることが多い。
  • 単相性・鈍い信号:動脈病変より末梢でみられることがあるが、運動、発熱、局所の血管拡張などでも変化する。
  • 静脈信号:動脈より連続的で、呼吸などに伴って変化することがある。近接する静脈を動脈と誤認しない。
  • 音だけによる相分類にはばらつきがある。表示波形があれば波形も保存・記録し、判断に迷う場合は経験者や血管検査へつなぐ。

信号が得られないとき

ゼリー、圧、角度、位置、装置、別の動脈を順に確認する図

「脈なし」と決める前に手技を見直す

  • ゼリーが少ない、先端と皮膚の間に空気がある
  • 押す力が強く、血管を圧迫している
  • 血管の長軸から外れ、角度が合っていない
  • 予測位置からずれている、浮腫や創傷で探しにくい
  • 電源、音量、プローブ、コードに問題がある
  • 同じ肢の別の末梢動脈と反対側を確認する

血流確認とABIは別の評価

携帯型ドップラーで音を探すだけでは、末梢動脈疾患を診断できない。病歴や診察で末梢動脈疾患が疑われる場合、上腕と足関節の収縮期血圧を測定するABIが基本的な生理検査となる。ABIはカフとドップラー装置を使い、左右の上腕動脈、足背動脈、後脛骨動脈の血圧を定められた方法で測定する。

糖尿病や慢性腎臓病では動脈が圧迫されにくく、ABIが高値・判定困難になることがある。症状や創傷があるのにABIと合わない場合は、足趾上腕血圧比、波形、皮膚灌流圧、画像検査などの追加評価が検討される。

すぐに報告する変化

突然の痛み、蒼白、脈拍消失、感覚低下、運動障害、冷感を示す図
急性下肢虚血では、時間経過とともに肢の救済が難しくなる。
突然起きた左右差を見逃さない
  • 急な強い疼痛、安静時痛の増悪
  • 蒼白・チアノーゼ、著明な冷感
  • 触診・ドップラーで末梢動脈信号が得られない、急に弱くなった
  • しびれ、感覚低下
  • 筋力低下、足趾や足関節を動かせない
  • 血管処置後、ギプス・包帯・圧迫物装着後の新しい循環障害

記録と申し送り

  • 確認した日時、目的、体位、左右と動脈名
  • 触診の可否とドップラー信号の有無
  • 信号の性状、表示波形、左右差、前回からの変化
  • 皮膚色、温度、毛細血管再充満、疼痛、感覚、運動、創傷
  • 血管処置・圧迫・固定具との時間関係
  • 報告した相手、時刻、指示、対応後の変化

出典