検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
高血糖から脱水・高浸透圧へ
- インスリン作用不足や感染等で高血糖が続く
- 糖とともに尿へ水分・電解質が失われる
- 飲水で補えず脱水・高浸透圧が進み、意識と臓器灌流に影響
観察へ:多尿が続いた後に乏尿へ変わることもある。口渇の訴えや尿量一つで脱水の程度を決めない。
治療中:細胞内外の水分とKが変化
- 補液で灌流が改善し、インスリンで血糖が低下
- 水分とKの細胞内外の分布が変化する
- 低血糖・低K、急な浸透圧変化による神経症状に注意
観察へ:治療開始後も意識、血糖・Na・K・浸透圧を追う。Naが一時的に上がっただけで低張液へ変更しない。
発症と治療中の変化を分けた図。全例が昏睡するわけではない。HHS単独では強いケトーシス・アシドーシスは目立たないが、DKAとの混合例もあり、血糖だけで区別しない。成人の学習用で、小児の治療手順にそのまま当てはめない。
症状から観察・再確認へ
口渇・多尿・摂取低下
- 見る・聞く
- 飲水・食事、尿量、嘔吐・下痢・発熱、口腔乾燥、飲水を自分で確保できるかを確認。
- 何を反映するか
- 浸透圧利尿と補給不足による水分喪失の手がかり。
- 普段と比較
- 数日間の摂取・排尿、体重、いつもと違う飲料摂取。
- 悪化を疑う変化
- 水分を取れない、尿量が減る、ふらつき・傾眠。
- 再確認
- 補液後の循環と尿量、呼吸・浮腫など過負荷徴候。
意識変化
- 見る・聞く
- 受け答え、見当識、眠気、頭痛・嘔吐・けいれん、左右差を確認。
- 何を反映するか
- 高浸透圧・低灌流だけでなく脳卒中、感染、治療関連の神経障害も考える。
- 普段と比較
- 普段の認知・意識、治療開始前、血糖・浸透圧の推移。
- 悪化を疑う変化
- 新たな反応低下、片麻痺、けいれん、強い頭痛・嘔吐。
- 再確認
- 直ちに応援を呼び、ABC・血糖と神経所見を再評価。高血糖のせいと決めない。
低血圧・頻脈・乏尿
- 見る・聞く
- 血圧・脈、冷感、末梢再充満、時間尿量と測定条件を確認。
- 何を反映するか
- 循環血液量低下や誘因となる急性疾患の可能性。
- 普段と比較
- 補液前後、普段の腎機能、BUN・Crと出納。
- 悪化を疑う変化
- 灌流不良が続く、胸痛・不整脈、呼吸苦が同時に増える。
- 再確認
- 補液量だけでなく反応と過負荷を確認し、治療調整を相談。
脱力・動悸
- 見る・聞く
- 筋力、心電図、脈とKの推移、呼吸の弱さを確認。
- 何を反映するか
- 治療中のK低下などが不整脈・筋力低下を起こすことがある。
- 普段と比較
- インスリン・K補充前後、腎機能・尿量。
- 悪化を疑う変化
- 新しい不整脈、著しい脱力、呼吸筋の疲弊。
- 再確認
- Kと心電図を再評価し、インスリン・補充の継続条件を直ちに確認。
治療中の冷汗・呼吸変化
- 見る・聞く
- 血糖、意識、発汗、呼吸数・努力、SpO₂と酸素条件、肺音を確認。
- 何を反映するか
- 低血糖、体液過剰、感染・血栓症など複数の原因がある。
- 普段と比較
- 輸液・インスリン変更、飲食開始の前後。
- 悪化を疑う変化
- 低血糖を伴う意識変化、酸素需要増加、突然の胸痛や呼吸困難。
- 再確認
- 施設手順で初動を行い、血糖と呼吸・循環の反応を確認する。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
診断・治療中で、意識・循環が安定し、血糖と浸透圧の推移が個別計画内にある。
次の行動:指示された頻度の測定・採血を継続。血糖改善だけで監視を終了しない。
早めの共有・報告
計画より速い血糖変化、K低下、尿量低下、輸液反応不十分や軽い過負荷徴候。
次の行動:投与条件・前値・採取時点を照合し、治療変更と次の測定時点を確認。
直ちに応援・緊急対応
意識低下、けいれん、新しい神経症状、ショック、重い不整脈、強い呼吸困難。
次の行動:応援要請、ABCと血糖確認。酸素・モニター・救急物品を準備し、投与中の薬・輸液条件を伝える。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|意識と気道を守る
転倒・誤嚥を防ぎ、意識不良時に無理に飲ませない。呼吸・循環・神経の緊急変化を確認。
2|開始前の情報をそろえる
血糖、Na・K、腎機能、浸透圧、ケトン・pHの採血を指示で準備。心腎疾患と最終の糖尿病薬を確認。
3|輸液とインスリンを照合
バイアルからの採取はインスリン専用注射器を使用。製剤・濃度・経路・ポンプ速度と単位を照合し、補液状況・K評価を踏まえた開始指示を確認する。
4|推移を同じ時系列で記録
血糖・採血値と輸液量、インスリン変更、尿量、意識を並べる。測定間隔と急変時の追加測定を明確にする。
5|誘因を探す
感染症状、服薬中断の理由、飲水困難、最近の薬変更、胸痛・神経症状を共有。中断を本人の責任と決めつけない。
6|移行時も投与を確認
経口摂取・皮下注への移行計画を確認し、持続静注の中止と皮下注の開始に必要な重なりを処方で照合。自己判断で中断しない。
治療前・中・後の看護
補液
- 目的
- 循環と腎灌流を回復し、水分不足を補う。
- 前に確認
- 心腎機能、血圧・灌流、Na・浸透圧、尿量・出納を確認。
- 中に観察
- 循環・尿量・呼吸、体重・浮腫、Naと浸透圧の変化を追う。
- 反応・再評価
- 灌流が改善し過負荷がないか。補液だけでも血糖は下がりうる。
- 適応・注意
- 国内2024ガイドラインは生理食塩水を中心に開始。液の種類・速度は循環、心腎機能、Na・浸透圧の推移で調整し、過負荷を頻回に再評価する。
大塚生食注の詳細を開くインスリン持続静注
- 目的
- 高血糖を是正し、混合例ではケトン産生も抑える。
- 前に確認
- 補液後の循環・血糖の反応、K・腎機能、ケトン・pHを確認。速効型インスリンの製剤・濃度・単位・ポンプ設定を照合。
- 中に観察
- 血糖低下速度、K低下、意識、ラインと投与の中断を監視。
- 反応・再評価
- 血糖だけでなく浸透圧・循環・意識、混合例のケトン・酸塩基が改善するか。
- 適応・注意
- HHS単独とDKA混合では治療条件が異なる。低K時は補充と開始・継続の可否を確認し、一律量を示さない。
ヒューマリンR注100単位/mLの詳細を開く電解質補充
- 目的
- 喪失と治療で変動するKなどを補う。
- 前に確認
- 採血、心電図、腎機能・尿量、製剤濃度と投与経路を確認。
- 中に観察
- 再検Kと心電図、投与速度、刺入部を確認。
- 反応・再評価
- 過不足が是正され、不整脈・筋力低下がないか。
- 適応・注意
- 血清Kが正常でも総量不足はありうるが、腎機能や推移を見ずに一律補充しない。濃厚K製剤をそのまま静注せず、希釈・濃度・速度を施設手順と指示で確認。
ブドウ糖を含む輸液への調整
- 目的
- 必要な治療を続けながら低血糖と急な浸透圧低下を避ける。
- 前に確認
- 血糖・浸透圧、摂取、インスリン継続の理由を確認。
- 中に観察
- 輸液組成変更とインスリン速度、血糖の再測定を照合。
- 反応・再評価
- 低血糖を避けながら全体の代謝状態が改善するか。
- 適応・注意
- 血糖が下がった後の追加は計画的治療。高血糖だから糖液はすべて誤りと判断しない。
誘因治療・血栓予防
- 目的
- 感染・虚血などの誘因を治療し二次障害を防ぐ。
- 前に確認
- 感染源、胸痛・神経所見、出血・血栓リスク、活動性を評価。
- 中に観察
- 原因治療への反応、出血、下肢・呼吸・神経の新しい症状を観察。
- 反応・再評価
- 全身状態と再発要因が改善するか。
- 適応・注意
- 抗菌薬・抗血栓薬は適応と禁忌に応じ選択。HHSだけで全員に同じ薬を使わない。
検査の意味と読み方
血糖
高血糖と治療反応を確認。
組み合わせ・推移:単回値でなく低下速度を評価。測定器の上限表示や所見と合わない値は検査室測定等で確認。
血糖の検査詳細
血液浸透圧
高浸透圧とその改善を確認。
組み合わせ・推移:実測・計算値、有効浸透圧と総浸透圧を区別。Na・血糖・意識と経時的に評価。
血液浸透圧の検査詳細
Na
水分と溶質の関係を確認。
組み合わせ・推移:血糖低下に伴いNaが上がることがある。Naだけで低張液へ変更せず浸透圧と出納を確認。
Naの検査詳細
K
体外への喪失と細胞内外移動を評価。
組み合わせ・推移:治療で低下しうる。心電図、尿量・腎機能、補充・インスリンの前後を照合。
Kの検査詳細
クレアチニン
脱水・腎機能の経過を確認。
組み合わせ・推移:普段の値と尿量、補液反応を比較。腎障害では薬剤・補液・K管理を調整。
クレアチニンの検査詳細
pH・ケトン
DKAとの混合や別のアシドーシスを確認。
組み合わせ・推移:尿ケトンだけで判断せず血中βヒドロキシ酪酸等を組み合わせる。血糖改善と酸塩基改善を区別。
pHの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S|現在の問題
B|治療と背景
- 誘因、糖尿病薬、心腎疾患、輸液とインスリン・Kの条件。
A|変化速度
- 血糖・Na・K・浸透圧の前値と現在値、尿量・出納、介入と反応。
R|確認事項
- 投与調整、再採血・血糖測定の時点、集中管理や神経症状の追加評価。
患者・家族への説明
体調不良時の連絡方法
飲めない、食べられない、血糖が高い状態が続く、眠気・嘔吐があるときの連絡先と対応を一緒に決める。
薬を自己中断しない
発熱などで体調を崩したときの薬・インスリン・飲水は個別指示を確認。全薬を一律に中止・継続する説明にしない。
続けられる支援を整える
測定器・薬の入手、飲水や服薬の介助、経済的負担などを確認し、家族・地域と支援をつなぐ。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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