内分泌・代謝 救急

HHS(高浸透圧高血糖状態)

HHSでは高血糖による尿への水分喪失が進み、脱水と高浸透圧を生じる。血糖値を下げることだけを目標にせず、意識・循環・尿量と、血糖・Na・浸透圧の変化速度を合わせて評価する。

主な症状
口渇 多尿 脱水 意識変化
代表的な薬
インスリン 電解質製剤
検査値UP
血糖 血漿浸透圧 BUN
検査値DOWN
K

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

高血糖から脱水・高浸透圧へ

高血糖から脱水・高浸透圧へ血液:高血糖腎臓 → 尿糖+水分を喪失脱水・高浸透圧 → 意識・灌流に影響飲水・尿量・血圧・意識を確認
  1. インスリン作用不足や感染等で高血糖が続く
  2. 糖とともに尿へ水分・電解質が失われる
  3. 飲水で補えず脱水・高浸透圧が進み、意識と臓器灌流に影響

観察へ:多尿が続いた後に乏尿へ変わることもある。口渇の訴えや尿量一つで脱水の程度を決めない。

治療中:細胞内外の水分とKが変化

治療中:細胞内外の水分とKが変化細胞外細胞内水分・Kが移動低K・浸透圧の急変に注意採血・意識・心電図を治療前後で比較
  1. 補液で灌流が改善し、インスリンで血糖が低下
  2. 水分とKの細胞内外の分布が変化する
  3. 低血糖・低K、急な浸透圧変化による神経症状に注意

観察へ:治療開始後も意識、血糖・Na・K・浸透圧を追う。Naが一時的に上がっただけで低張液へ変更しない。

発症と治療中の変化を分けた図。全例が昏睡するわけではない。HHS単独では強いケトーシス・アシドーシスは目立たないが、DKAとの混合例もあり、血糖だけで区別しない。成人の学習用で、小児の治療手順にそのまま当てはめない。

症状から観察・再確認へ

口渇多尿摂取低下

見る・聞く
飲水・食事、尿量、嘔吐・下痢・発熱、口腔乾燥、飲水を自分で確保できるかを確認。
何を反映するか
浸透圧利尿と補給不足による水分喪失の手がかり。
普段と比較
数日間の摂取・排尿、体重、いつもと違う飲料摂取。
悪化を疑う変化
水分を取れない、尿量が減る、ふらつき・傾眠。
再確認
補液後の循環と尿量、呼吸・浮腫など過負荷徴候。

意識変化

見る・聞く
受け答え、見当識、眠気、頭痛・嘔吐・けいれん、左右差を確認。
何を反映するか
高浸透圧・低灌流だけでなく脳卒中、感染、治療関連の神経障害も考える。
普段と比較
普段の認知・意識、治療開始前、血糖・浸透圧の推移。
悪化を疑う変化
新たな反応低下、片麻痺、けいれん、強い頭痛・嘔吐。
再確認
直ちに応援を呼び、ABC・血糖と神経所見を再評価。高血糖のせいと決めない。

低血圧頻脈乏尿

見る・聞く
血圧・脈、冷感、末梢再充満、時間尿量と測定条件を確認。
何を反映するか
循環血液量低下や誘因となる急性疾患の可能性。
普段と比較
補液前後、普段の腎機能、BUN・Crと出納。
悪化を疑う変化
灌流不良が続く、胸痛・不整脈、呼吸苦が同時に増える。
再確認
補液量だけでなく反応と過負荷を確認し、治療調整を相談。

脱力動悸

見る・聞く
筋力、心電図、脈とKの推移、呼吸の弱さを確認。
何を反映するか
治療中のK低下などが不整脈・筋力低下を起こすことがある。
普段と比較
インスリン・K補充前後、腎機能・尿量。
悪化を疑う変化
新しい不整脈、著しい脱力、呼吸筋の疲弊。
再確認
Kと心電図を再評価し、インスリン・補充の継続条件を直ちに確認。

治療中の冷汗呼吸変化

見る・聞く
血糖、意識、発汗、呼吸数・努力、SpO₂と酸素条件、肺音を確認。
何を反映するか
低血糖、体液過剰、感染・血栓症など複数の原因がある。
普段と比較
輸液・インスリン変更、飲食開始の前後。
悪化を疑う変化
低血糖を伴う意識変化、酸素需要増加、突然の胸痛や呼吸困難。
再確認
施設手順で初動を行い、血糖と呼吸・循環の反応を確認する。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察できる状態

診断・治療中で、意識・循環が安定し、血糖と浸透圧の推移が個別計画内にある。

次の行動:指示された頻度の測定・採血を継続。血糖改善だけで監視を終了しない。

早めの共有・報告

計画より速い血糖変化、K低下、尿量低下、輸液反応不十分や軽い過負荷徴候。

次の行動:投与条件・前値・採取時点を照合し、治療変更と次の測定時点を確認。

直ちに応援・緊急対応

意識低下、けいれん、新しい神経症状、ショック、重い不整脈、強い呼吸困難。

次の行動:応援要請、ABCと血糖確認。酸素・モニター・救急物品を準備し、投与中の薬・輸液条件を伝える。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|意識と気道を守る

転倒・誤嚥を防ぎ、意識不良時に無理に飲ませない。呼吸・循環・神経の緊急変化を確認。

2|開始前の情報をそろえる

血糖、Na・K、腎機能、浸透圧、ケトン・pHの採血を指示で準備。心腎疾患と最終の糖尿病薬を確認。

3|輸液とインスリンを照合

バイアルからの採取はインスリン専用注射器を使用。製剤・濃度・経路・ポンプ速度と単位を照合し、補液状況・K評価を踏まえた開始指示を確認する。

4|推移を同じ時系列で記録

血糖・採血値と輸液量、インスリン変更、尿量、意識を並べる。測定間隔と急変時の追加測定を明確にする。

5|誘因を探す

感染症状、服薬中断の理由、飲水困難、最近の薬変更、胸痛・神経症状を共有。中断を本人の責任と決めつけない。

6|移行時も投与を確認

経口摂取・皮下注への移行計画を確認し、持続静注の中止と皮下注の開始に必要な重なりを処方で照合。自己判断で中断しない。

治療前・中・後の看護

補液

目的
循環と腎灌流を回復し、水分不足を補う。
前に確認
心腎機能、血圧・灌流、Na・浸透圧、尿量・出納を確認。
中に観察
循環・尿量・呼吸、体重・浮腫、Naと浸透圧の変化を追う。
反応・再評価
灌流が改善し過負荷がないか。補液だけでも血糖は下がりうる。
適応・注意
国内2024ガイドラインは生理食塩水を中心に開始。液の種類・速度は循環、心腎機能、Na・浸透圧の推移で調整し、過負荷を頻回に再評価する。
大塚生食注の詳細を開く

インスリン持続静注

目的
高血糖を是正し、混合例ではケトン産生も抑える。
前に確認
補液後の循環・血糖の反応、K・腎機能、ケトン・pHを確認。速効型インスリンの製剤・濃度・単位・ポンプ設定を照合。
中に観察
血糖低下速度、K低下、意識、ラインと投与の中断を監視。
反応・再評価
血糖だけでなく浸透圧・循環・意識、混合例のケトン・酸塩基が改善するか。
適応・注意
HHS単独とDKA混合では治療条件が異なる。低K時は補充と開始・継続の可否を確認し、一律量を示さない。
ヒューマリンR注100単位/mLの詳細を開く

電解質補充

目的
喪失と治療で変動するKなどを補う。
前に確認
採血、心電図、腎機能・尿量、製剤濃度と投与経路を確認。
中に観察
再検Kと心電図、投与速度、刺入部を確認。
反応・再評価
過不足が是正され、不整脈・筋力低下がないか。
適応・注意
血清Kが正常でも総量不足はありうるが、腎機能や推移を見ずに一律補充しない。濃厚K製剤をそのまま静注せず、希釈・濃度・速度を施設手順と指示で確認。

ブドウ糖を含む輸液への調整

目的
必要な治療を続けながら低血糖と急な浸透圧低下を避ける。
前に確認
血糖・浸透圧、摂取、インスリン継続の理由を確認。
中に観察
輸液組成変更とインスリン速度、血糖の再測定を照合。
反応・再評価
低血糖を避けながら全体の代謝状態が改善するか。
適応・注意
血糖が下がった後の追加は計画的治療。高血糖だから糖液はすべて誤りと判断しない。

誘因治療・血栓予防

目的
感染・虚血などの誘因を治療し二次障害を防ぐ。
前に確認
感染源、胸痛・神経所見、出血・血栓リスク、活動性を評価。
中に観察
原因治療への反応、出血、下肢・呼吸・神経の新しい症状を観察。
反応・再評価
全身状態と再発要因が改善するか。
適応・注意
抗菌薬・抗血栓薬は適応と禁忌に応じ選択。HHSだけで全員に同じ薬を使わない。

検査の意味と読み方

血糖

高血糖と治療反応を確認。

組み合わせ・推移:単回値でなく低下速度を評価。測定器の上限表示や所見と合わない値は検査室測定等で確認。

血糖の検査詳細

血液浸透圧

高浸透圧とその改善を確認。

組み合わせ・推移:実測・計算値、有効浸透圧と総浸透圧を区別。Na・血糖・意識と経時的に評価。

血液浸透圧の検査詳細

Na

水分と溶質の関係を確認。

組み合わせ・推移:血糖低下に伴いNaが上がることがある。Naだけで低張液へ変更せず浸透圧と出納を確認。

Naの検査詳細

K

体外への喪失と細胞内外移動を評価。

組み合わせ・推移:治療で低下しうる。心電図、尿量・腎機能、補充・インスリンの前後を照合。

Kの検査詳細

クレアチニン

脱水・腎機能の経過を確認。

組み合わせ・推移:普段の値と尿量、補液反応を比較。腎障害では薬剤・補液・K管理を調整。

クレアチニンの検査詳細

pHケトン

DKAとの混合や別のアシドーシスを確認。

組み合わせ・推移:尿ケトンだけで判断せず血中βヒドロキシ酪酸等を組み合わせる。血糖改善と酸塩基改善を区別。

pHの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|現在の問題

  • 意識・呼吸・循環、急変の時点と血糖。

B|治療と背景

  • 誘因、糖尿病薬、心腎疾患、輸液とインスリン・Kの条件。

A|変化速度

  • 血糖・Na・K・浸透圧の前値と現在値、尿量・出納、介入と反応。

R|確認事項

  • 投与調整、再採血・血糖測定の時点、集中管理や神経症状の追加評価。

患者・家族への説明

体調不良時の連絡方法

飲めない、食べられない、血糖が高い状態が続く、眠気・嘔吐があるときの連絡先と対応を一緒に決める。

薬を自己中断しない

発熱などで体調を崩したときの薬・インスリン・飲水は個別指示を確認。全薬を一律に中止・継続する説明にしない。

続けられる支援を整える

測定器・薬の入手、飲水や服薬の介助、経済的負担などを確認し、家族・地域と支援をつなぐ。

参考文献

  1. 成人の高血糖クリーゼ:2024国際コンセンサス

    病態と治療節の補液・浸透圧・インスリン・K監視を本文確認。HHSの治療には未解決の点もあり施設手順と個別判断を優先。

  2. 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024 第20章

    Q20-2(449〜450頁)のHHS病態・診断・補液・インスリン・合併症監視を本文確認。具体的な開始量や切替条件は国際資料と差があり、施設手順・個別指示を優先する。

  3. PMDA:ヒューマリンR注100単位/mL電子添文

    2025年3月第2版。静脈内投与の用法、単位・mL混同防止、低血糖等の注意を確認。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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