腎・泌尿器

CKD(慢性腎臓病)

CKDは腎障害や腎機能低下が3か月以上続く状態の総称。症状が乏しい時期から、尿蛋白・eGFRの推移と血圧・生活・薬の安全性をつなげて支える。

主な症状
初期は無症状 むくみ だるさ
代表的な薬
ACE阻害薬 ARB SGLT2阻害薬
検査値UP
Cr K P
検査値DOWN
eGFR Hb

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

腎障害の手がかり:蛋白尿

糸球体の障害によって血液の蛋白が尿へ漏れる血液側尿側糸球体の濾過障壁に障害蛋白が尿へ漏れる → 尿蛋白で捉えるeGFRが保たれている場合もある
  1. 糖尿病・糸球体疾患などで腎障害
  2. 尿への蛋白漏出が続く場合がある
  3. 自覚症状がなくてもリスク評価が必要

観察へ:尿の泡だけで判定せず尿検査の結果と持続を確認。腎機能が保たれていても受診・治療を途切れさせない。

腎機能の手がかり:eGFR低下

腎機能の手がかり:eGFR低下:働く腎組織が減る → 濾過能力が低下血流が届く腎臓で濾過尿路へ流れる血液尿の流れ働く腎組織が減る → 濾過能力が低下
  1. 腎臓の障害が持続する
  2. 老廃物・水分・電解質の調節が低下
  3. 進行すると浮腫・貧血などの合併症

観察へ:単回値より低下速度を確認。急な悪化は慢性の進行と決めず、AKIや薬剤・脱水・閉塞の重なりを評価。

腎臓の働きを「蛋白を漏らさない仕組み」と「濾過・排泄する力」に分けた模式図。二つは重なり、全員が同じ順で進行するわけではない。原因・eGFR区分・蛋白尿区分を合わせてリスクを評価する。

症状から観察・再確認へ

初期は無症状

見る・聞く
直近と過去の尿蛋白・eGFR、受診間隔、家庭血圧、服薬・市販薬、生活上の困りごとを確認。
何を反映するか
自覚症状は腎障害の強さと一致しない。早期には検査と生活の変化が主な評価材料。
普段と比較
数か月以上の推移、治療開始前後、感染・食事不良の時期と比較。
悪化を疑う変化
急なCr上昇、尿量低下、血尿、新しい浮腫など。
再確認
次の検査・受診予定と相談目安を本人の言葉で確認。無症状だけを理由に自己中断していないか見る。

むくみ

見る・聞く
同条件の体重、下腿・仙骨の浮腫、血圧、尿量、飲食と点滴、息苦しさを確認。
何を反映するか
水・Na貯留や蛋白喪失などが関与しうる。心不全・肝疾患なども含めて考える。
普段と比較
普段の体重と連日の変化、塩分摂取、薬の変更と比較。
悪化を疑う変化
急な体重増加に安静時の息苦しさ、尿量低下、酸素条件増加が加わる。
再確認
指示治療後の呼吸・体重・血圧・検査を評価。体重低下時も食事低下や脱水を見分ける。

倦怠感

見る・聞く
同じ活動での疲れ、息切れ・動悸、顔色、食事量・体重、睡眠、出血徴候を確認。
何を反映するか
貧血、栄養状態、尿毒症などを考える。腎性貧血と決めず鉄欠乏・出血も評価する。
普段と比較
普段の活動量、Hb・鉄関連値、体重と食事の経過を比較。
悪化を疑う変化
日常動作が急にできない、胸痛・失神・強い呼吸苦、意識変化。
再確認
治療後の活動性と症状を追い、検査値改善だけで回復を判断しない。

立ちくらみ

見る・聞く
姿勢との関係、血圧・脈拍、口渇、尿量、飲食量、最近の降圧薬・利尿薬を確認。
何を反映するか
過度の降圧や体液不足などの可能性。低灌流からAKIが重なるリスクもある。
普段と比較
家庭血圧と診察時の値、服薬前後、普段の歩行・起立時症状を比較。
悪化を疑う変化
失神、持続する低血圧、尿量低下、転倒、意識の変化。
再確認
安全な姿勢で休み再測定。症状と体液・腎機能を共有し、処方と個別目標を再確認。

看護判断:変化の緊急度

継続観察

個別の目標と受診計画があり、検査・血圧・体重が評価され、新しい症状や急な変化がない。

次の行動:家庭での記録と定期検査を継続。尿蛋白・eGFR・生活機能を合わせて振り返る。

早めに共有

薬変更後のふらつき、食事不良、浮腫増加、検査値の予想外の変化、感染症状。

次の行動:薬・飲水・食事と検査の前後関係を伝え、受診時期と服薬の対応を相談。

直ちに応援要請

安静時の強い呼吸苦、失神・意識障害、循環不良を伴う動悸、急激な尿量低下と全身悪化。

次の行動:慢性疾患だからと待たず急変対応。呼吸・循環と心電図・電解質の評価を準備。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1 急性の変化を分ける

新しい呼吸苦や反応低下は先に安全確保・応援要請。Crの急な上昇を慢性経過だけで説明しない。

2 血圧・体液を同じ条件で追う

家庭血圧の測定方法と記録、体重・浮腫・尿量を確認。値だけでなく起立時症状を聞き、転倒を予防する。

3 薬と検査を照合

処方薬、市販の鎮痛薬、サプリ、Kを含む代替塩も確認。開始・変更後のCr/Kや症状を薬剤師・処方者へ共有。

4 生活に合う継続方法を探す

食事の実際、経済面、調理・服薬の負担を聞き、栄養士などと支援を調整。水分・蛋白・K制限を全員に一律に課さない。

5 次の確認までつなぐ

体調不良時の連絡、検査予定、個別の服薬指示を確認。進行例は治療選択の説明を受ける機会と本人の希望を共有する。

治療前・中・後の看護

ACE阻害薬・ARB:降圧と腎保護

目的
適応に応じて血圧・蛋白尿を管理し、腎・心血管のリスクを減らす。
前に確認
個別の血圧目標、Cr/K、脱水、併用薬、妊娠の可能性などの禁忌を確認。
中に観察
ふらつき・低血圧、尿量、K/Cr推移。顔や舌の腫れ・呼吸苦は緊急評価。
反応・再評価
血圧だけでなく症状・尿蛋白・腎機能を再評価。過度の低下やAKI・高Kを疑う変化を共有。
適応・注意
糖尿病・蛋白尿・忍容性で選択が異なる。下記ARBは高血圧治療の代表例で、全CKDへの一律処方ではない。
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SGLT2阻害薬

目的
適応のあるCKDで腎機能悪化や心不全などのリスクを抑える。糖尿病の有無だけでは選ばない。
前に確認
適応・腎機能・体液量、感染症状、食事摂取、手術予定、糖尿病薬・利尿薬の併用。
中に観察
口渇・多尿・血圧低下、排尿痛・発熱、性器・会陰部症状。悪心・腹痛・呼吸異常にも注意。
反応・再評価
血圧・体液・eGFRの推移を確認。開始早期の低下だけで中止を決めず、程度と経過、脱水・AKIを評価する。
適応・注意
血糖が高くなくてもケトアシドーシスはありうる。食べられない・嘔吐などの時は事前の個別指示に従い、継続可否を速やかに相談。
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食事・活動・禁煙の支援

目的
血圧・代謝と栄養状態を整え、心血管リスクと生活機能低下を防ぐ。
前に確認
食事量・食習慣、体重と筋力、検査値、活動性、本人が続けられる方法。
中に観察
減塩等の実施状況と、食事量低下・体重減少・疲労。制限が生活を圧迫していないか確認。
反応・再評価
血圧・体液だけでなく筋力・栄養・生活の継続しやすさを評価し調整。
適応・注意
蛋白・K・水分の調整は病期、検査、栄養状態で異なる。自己流の過度な制限を避ける。

検査の意味と読み方

eGFR

腎臓の濾過能力の推定値。低下の程度と速度を追う。

組み合わせ・推移:筋肉量などで推定に限界がある。単回低値だけで慢性とせず、尿蛋白と持続、急性変化を確認。

eGFRの検査詳細

Cr

腎機能をみる指標で、上昇は排泄低下などを示唆する。

組み合わせ・推移:筋肉量・体液量にも影響される。治療開始後の変化を尿量・血圧・摂取と合わせ、AKIの重なりを考える。

Crの検査詳細

尿蛋白尿アルブミン

腎障害と進行・心血管リスクを評価する材料。

組み合わせ・推移:発熱・運動などで一時的に変わる場合がある。採尿条件と持続、eGFRを合わせ、尿の泡だけで量を判断しない。

K

腎機能低下や薬剤で上昇し、利尿・摂取不足などで低下することもある。

組み合わせ・推移:薬・代替塩・便通・溶血と心電図を確認。異常の程度と変化速度を追い、症状なしでも共有。

Kの検査詳細

Hb

低下は貧血の手がかり。腎臓の造血を促す働きの低下が関与する。

組み合わせ・推移:鉄欠乏・出血・炎症も評価。活動時の症状と鉄関連検査を合わせ、腎性貧血と即断しない。

Hbの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S:今回の変化

  • いつから浮腫・息切れ・立ちくらみ・摂取量が変わったか。
  • 現在の意識・呼吸・循環。

B:慢性経過と治療条件

  • 原疾患、普段のeGFR・尿蛋白、心不全・糖尿病。
  • 降圧薬・SGLT2阻害薬、酸素・輸液、直近の感染・食事不良。

A:前回との差

  • 家庭血圧・体重・尿量、Cr/K/Hbの直近と現在。
  • 安全確保、指示された対応と反応。

R:確認したい対応

  • 受診・採血の時期、AKIの評価、服薬と飲食の個別指示、次の観察と再検査。

患者・家族への説明

症状がなくても記録と受診を続ける

尿検査と血液検査は別の情報を教えてくれる。検査の推移と血圧・体重を一緒に確認する。

体調不良時の相談を決めておく

食べられない、嘔吐・下痢、発熱時は薬の扱いを確認する。処方薬・市販薬・サプリをまとめて伝える。

続けられる生活調整にする

食事は過度に減らさず、制限の種類と目的を相談。強い息苦しさ・意識の変化は次の予約を待たず助けを求める。

参考文献

  1. 日本腎臓学会:急性腎障害と慢性腎臓病

    慢性の定義、蛋白尿と濾過能力の組み合わせ。

  2. 日本腎臓学会:CKD患者の血圧管理に関するステートメント2026

    個別の降圧目標と忍容性、AKI・高K・低血圧関連症状の確認。

  3. 日本腎臓学会:CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用

    適応と開始後の腎機能評価。薬剤ごとの使用条件は現行添文を確認。

  4. PMDA:フォシーガ錠 電子添文

    2026年4月改訂版。脱水・感染・ケトアシドーシスへの注意。

  5. PMDA:オルメテックOD錠 電子添文

    高血圧治療の代表薬の禁忌、低血圧・腎機能・K・血管性浮腫。

  6. NIDDK:Managing chronic kidney disease

    血圧、生活調整、薬剤と継続支援。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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