検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
排泄・調節の低下:体液と老廃物
- 働く腎組織が減る
- 体液・電解質・酸塩基の調節が不足
- 浮腫、尿毒症症状、高Kなど
観察へ:体重と尿量、食事量、意識、呼吸を一緒に追う。尿が出ていても老廃物を十分に排泄できるとは限らない。
内分泌の低下:造血への影響
- 腎臓で作られるEPOが不足
- 赤血球の産生が低下
- 貧血・活動時の疲労
観察へ:Hbと活動性を比較。鉄欠乏・出血・炎症などの併存原因を確認し、腎不全だけで貧血の原因を決めない。
排泄・調節機能と内分泌機能の低下を分けた模式図。両方が重なり、症状や経過には個人差がある。EPOは赤血球を作るよう骨髄へ伝えるホルモン。CKD全体の進行予防は関連ページへ。
症状から観察・再確認へ
むくみ・息切れ
- 見る・聞く
- 透析等の治療日との関係、体重、尿量、浮腫、呼吸数・会話・体位・SpO₂と酸素条件を確認。
- 何を反映するか
- 排泄不足や心不全に伴う体液過剰の手がかり。体重には筋肉・栄養の変化も含まれる。
- 普段と比較
- 前回治療前後の体重と個別目標、飲食・点滴、1日の自尿量を比較。
- 悪化を疑う変化
- 安静時呼吸苦、横になれない、急な酸素必要量増加、循環不良。
- 再確認
- 除水・指示治療後の呼吸、血圧、ふらつきを確認。体重目標到達だけで安全と判断しない。
食欲低下・悪心
- 見る・聞く
- 食事量、味の変化、嘔吐、体重・筋力、便通、治療の実施状況を確認。
- 何を反映するか
- 尿毒症、薬剤、便秘などが関与する。制限の負担による低栄養も考える。
- 普段と比較
- いつもの食事と治療前後の症状、体液変化を含む体重推移を比較。
- 悪化を疑う変化
- 摂取できない状態が続く、意識変化、強い全身倦怠感、出血徴候。
- 再確認
- 原因への対応後に摂取と苦痛を再確認。栄養支援と治療条件の見直しをチームに相談。
動悸・脱力
- 見る・聞く
- 脈拍・心電図、胸痛、失神、筋力、最新のK/Hbと治療間隔を確認。
- 何を反映するか
- 電解質異常・貧血・循環変動が関与しうる。K異常は症状が目立たない場合もある。
- 普段と比較
- 普段の症状、治療前後、食事・薬とKの推移を比較。
- 悪化を疑う変化
- 失神、持続する胸痛、脈の乱れに血圧低下、強い筋力低下。
- 再確認
- 処置後の心電図とK、循環を再評価。症状が消えても再上昇や治療後の低値を確認。
かゆみ
- 見る・聞く
- 乾燥、掻破傷、範囲、睡眠への影響、発疹と薬変更の関係を確認。
- 何を反映するか
- 腎機能低下に伴うかゆみには複数の要因がある。Pの値だけで原因を決めない。
- 普段と比較
- 保湿や治療前後、夜間の症状、睡眠と生活への影響を比較。
- 悪化を疑う変化
- 皮膚の感染徴候、急な広範囲の発疹、粘膜症状や呼吸苦。
- 再確認
- 皮膚ケア後の苦痛・掻破と睡眠を確認。改善しない場合は治療を相談する。
意識の変化
- 見る・聞く
- 普段の会話・覚醒との差、呼吸・循環、発熱、低血糖の可能性、直近の薬と透析経過を確認。
- 何を反映するか
- 尿毒症、電解質異常、感染、薬剤蓄積、治療関連の変化などを考える。
- 普段と比較
- 症状の発症と透析・投薬の前後、前回の検査・意識と比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な反応低下、痙攣、新しい麻痺、強い頭痛。
- 再確認
- 緊急評価につなぎ、気道・呼吸と反応を継続観察。尿毒症だけと断定しない。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
選択した治療と再評価計画があり、呼吸・循環・意識が安定し、症状と検査が把握されている。
次の行動:体液・食事・活動と治療前後の反応を継続して記録する。
早めに共有
摂取低下、かゆみ・疲労の増加、体重や自尿量の変化、透析予定を実施できない、PD排液の混濁や腹痛。
次の行動:治療の条件と全身状態を添えて速やかに相談。PDの感染疑いは次回予約まで待たない。
直ちに応援要請
急な強い呼吸苦、意識障害、重い不整脈・循環不良、透析アクセスから止まらない出血、感染に伴う全身悪化。
次の行動:急変対応を起動し、呼吸循環の支持・止血などを施設手順に沿って行う。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1 治療条件と急変を把握
血液透析・PD・移植後・保存的腎臓療法のどの状態か確認。急な意識・呼吸・循環の変化は慢性症状と区別して対応。
2 体液と栄養を一緒に評価
体重・入出量・自尿量・食事を記録。体液で体重減少が隠れていないか見て、飲水や栄養の個別計画を確認。
3 アクセスと感染を確認
血液透析ではシャントの振動・音・皮膚・出血を確認。PDでは出口部、排液・腹痛を確認し、異常を速やかに共有。
4 投薬と検査の時刻を合わせる
透析での除去や腎機能に応じた薬の調整を薬剤師と確認。治療前後どちらの採血か、内服・注射の時刻を記録。
5 生活と意思決定を支える
除水後のふらつき・転倒、皮膚損傷、低栄養を予防。通院・自己管理の困難と本人の希望を聞き、支援と治療計画を見直す。
治療前・中・後の看護
血液透析
- 目的
- 血液を体外の装置へ通し、老廃物・余分な水分や電解質を調節する。
- 前に確認
- 体重と目標、血圧・呼吸、K、アクセス、出血・感染、前回の反応と服薬時刻。
- 中に観察
- 低血圧、筋痙攣、胸痛・不整脈、意識、回路・穿刺部と出血、除水の進み方。
- 反応・再評価
- 呼吸・体液・検査の改善と、立位でのふらつき、止血状態を確認。
- 適応・注意
- 除水目標や処方は個別に設定。シャント側の圧迫を避け、急な振動消失・出血は速やかに評価。
腹膜透析(PD)
- 目的
- 腹膜を介して透析液へ老廃物・水分を移し、排液で除去する。
- 前に確認
- 透析液と指示、接続手順、出口部、排液・体重・自尿量、自己管理を支える環境。
- 中に観察
- 注排液量・流れ、排液の混濁、腹痛・発熱、出口部、腹部膨満と呼吸。
- 反応・再評価
- 除水・体重・症状と検査を追う。混濁・腹痛時は排液の扱いを手順に従い、早急に治療チームへ連絡。
- 適応・注意
- 腹膜炎・出口部感染・漏れなどを評価。接続操作の清潔と本人・支援者の手技確認が重要。
ループ利尿薬
- 目的
- 残存する尿排泄を利用し、適応がある体液過剰を調整する。
- 前に確認
- 1日の自尿量、血圧・体重、Na/K、服薬と透析・飲水の条件、無尿などの禁忌。
- 中に観察
- 尿量、浮腫・呼吸、脱水・低血圧、筋力低下や動悸、聴力変化。
- 反応・再評価
- 体液過剰の軽減と循環・電解質を合わせる。尿が増えても透析が不要になったとは判断しない。
- 適応・注意
- 無尿では使用できない製剤があり、病態と添文を確認。自己判断で増量しない。
フロセミドの詳細を開く鉄補充:静注鉄剤
- 目的
- 不足する鉄を補い、赤血球を作る材料を確保する。腎機能低下だけを理由に投与しない。
- 前に確認
- Hb・フェリチン・TSAT、出血と炎症、肝機能・過敏症歴、経口鉄剤が困難な理由を確認。含糖酸化鉄では投与前のPと必要鉄量・投与速度の指示も照合する。
- 中に観察
- 呼吸苦・血圧低下・胸部不快感は投与を止めて応援要請。穿刺部の痛み・腫れは漏出を疑い投与を止め、製剤別手順で対応する。
- 反応・再評価
- Hb・活動性と鉄指標の推移を確認。含糖酸化鉄ではPを定期的に追い、骨・関節の痛みを共有する。効果不足を漫然と追加投与せず原因評価へつなぐ。
- 適応・注意
- 経口・静注は治療状況と内服の可否・反応で選ぶ。代表例の含糖酸化鉄は経口投与が困難・不適当な鉄欠乏性貧血に使用。鉄欠乏がない場合や重篤な肝障害等は禁忌。腎機能悪化にも注意する。
フェジン静注40mgの詳細を開くESA:赤血球造血刺激因子製剤
- 目的
- 赤血球を作る働きを刺激し、腎性貧血を改善する。
- 前に確認
- Hb・鉄関連値、出血・炎症、血圧・血栓歴、最終投与と注射経路を確認。治療法と個別のHb目標を照合する。
- 中に観察
- 注射後の皮膚・呼吸・血圧、Hbの上昇速度、シャントの振動・音を確認。胸痛・急な神経症状・呼吸苦は直ちに共有する。
- 反応・再評価
- 疲労・活動性とHbの推移を比較。反応不良や悪化は鉄不足・出血等の原因評価へつなぎ、休薬後も検査計画を確認する。
- 適応・注意
- 代表例はダルベポエチン。持続作用があり、Hbを正常値まで一律に上げない。増減・休薬は指示を確認し、腎性貧血以外の投与条件を流用しない。
ネスプ注射液プラシリンジの詳細を開くHIF-PH阻害薬
- 目的
- 体の低酸素への応答経路を介し、造血を促して腎性貧血を改善する内服薬。
- 前に確認
- 血栓の既往、Hb・鉄の状態、血圧、肝機能、妊娠の可能性、併用薬と前の貧血治療を確認。服薬日・最終服用を照合する。
- 中に観察
- 胸痛・急な息切れ・神経症状・シャント異常は直ちに共有。血圧・Hbと甲状腺機能の検査計画を確認し、疲労の変化を貧血だけと決めない。
- 反応・再評価
- Hbの上がり方と活動性、有害事象を再評価。飲み忘れや併用薬の吸収への影響も確認し、効果不足を自己判断の増量で補わない。
- 適応・注意
- 代表例はロキサデュスタット。服用間隔、禁忌・併用薬の条件は製剤別に確認する。毎日服用やESAとの自己判断の併用・切替えをしない。
エベレンゾ錠の詳細を開くリン吸着薬
- 目的
- 食事から吸収されるリンを減らし、高リン血症を改善する。
- 前に確認
- P・Ca・PTHの推移、食事量と服用時刻、便通、消化管疾患・手術歴、併用薬を確認。PTHは骨・ミネラル調節に関わる副甲状腺ホルモン。
- 中に観察
- 便秘、腹痛・膨満、悪心・嘔吐と摂取量を観察。持続する腹痛・嘔吐、吐血・下血は直ちに共有し、投与継続の判断を求める。
- 反応・再評価
- 採血と透析の条件をそろえてPの変化を比較。Ca・PTH、食事量と服薬の負担も合わせ、低値を薬効だけでなく摂取不足からも評価する。
- 適応・注意
- 代表例は炭酸ランタンの顆粒剤。食直後の指示と併用薬との間隔を照合する。製剤で注意点が異なり、Ca・鉄の状態や消化器症状等で選ぶ。自己判断の食事制限や増減を避ける。
ホスレノール顆粒分包の詳細を開く保存的腎臓療法
- 目的
- 透析・移植を行わない選択でも、症状緩和と生活の質を支える医療・ケアを続ける。
- 前に確認
- 本人の価値観、理解、意思決定支援の必要性、苦痛、家族・生活上の支援。
- 中に観察
- 呼吸苦、悪心、かゆみ、痛み、不安、摂取と介護負担、薬の蓄積による有害事象。
- 反応・再評価
- 本人が大切にする生活と苦痛の変化を確認し、支援と治療目標を見直す。
- 適応・注意
- 治療の放棄ではない。状態・希望の変化を聞き、透析・移植を含む選択肢について繰り返し話し合う。
腎移植
- 目的
- 移植腎の機能で排泄・調節を補う。移植後も継続した管理が必要。
- 前に確認
- 適応評価、感染・予防接種、服薬管理、生活支援と手術の説明内容を確認。
- 中に観察
- 術後の尿量・Cr、体液・血圧、創部、感染徴候、免疫抑制薬の投与と副作用。
- 反応・再評価
- 移植腎機能、薬物濃度などの検査と症状を継続確認。自己中断を防ぐ方法を相談。
- 適応・注意
- 適応は専門チームが判断。発熱や尿量・腎機能変化は拒絶反応だけと決めず、感染・閉塞・薬剤等も評価する。
検査の意味と読み方
Cr
老廃物の蓄積と経過をみる指標。
組み合わせ・推移:透析前後、筋肉量・体液で変わる。値だけで開始・継続の必要性を決めず、症状・K・体液と合わせる。
Crの検査詳細
BUN
尿素の蓄積と透析による除去をみる材料。
組み合わせ・推移:食事や異化、消化管出血でも変わる。透析前後の採血条件をそろえ、低値を栄養低下から切り離して評価しない。
BUNの検査詳細
K
排泄低下で上昇しうるが、透析後や摂取不足では低下することもある。
組み合わせ・推移:採血時点と治療条件、心電図、薬、食事を併記。無症状でも異常値は共有し再上昇を追う。
Kの検査詳細
Hb
貧血の程度と治療反応をみる。
組み合わせ・推移:鉄関連検査、出血・炎症、体液量と合わせる。急な変化は採血条件や他の原因も確認。
Hbの検査詳細
フェリチン
体内に貯蔵された鉄を評価する手がかり。低値では鉄不足を考える。
組み合わせ・推移:Hb・TSAT、出血・炎症と治療経過を合わせる。補充中は鉄の過剰にも注意し、単回値だけで追加投与を決めない。
フェリチンの検査詳細
TSAT
鉄を運ぶ蛋白がどの程度鉄と結合しているかを示す割合。血清鉄÷総鉄結合能×100で求め、低値は利用できる鉄の不足を考える。
組み合わせ・推移:血清鉄・総鉄結合能の詳細へ接続。フェリチン・Hbと鉄剤、ESA、HIF-PH阻害薬の経過を合わせる。採血と鉄投与の時刻を記録し、値の変化を比較する。
Feの検査詳細
TIBCの検査詳細
Ca
骨・ミネラル代謝の評価に用いる。腎機能低下で調節が変化し、薬の影響でも高低が変わる。
組み合わせ・推移:総Caはアルブミンの影響を受ける。P・PTH、症状、薬剤と推移を合わせ、単回値だけで骨の状態を決めない。
Caの検査詳細
P
腎機能低下で排泄されにくくなり、上昇しうる。
組み合わせ・推移:食事・リン吸着薬・透析と合わせて推移を追う。摂取不足等で低下する場合もあり、かゆみや骨痛だけで値を推測しない。
Pの検査詳細
HCO₃⁻
低下は酸の排泄不足等による代謝性の酸性化を示唆する。
組み合わせ・推移:pH・呼吸、Kと治療前後を合わせる。補正治療の反応とNa・体液への影響も見る。
HCO₃⁻の検査詳細
アルブミン
低値は炎症・蛋白喪失・栄養状態などの影響を考える。
組み合わせ・推移:水分量でも変わる。食事、体重・筋力、炎症、PDでの蛋白喪失などを合わせて評価。
アルブミンの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S:新しい苦痛と経過
- 息苦しさ、食べられない、意識変化、排液異常などの始まり。
- 現在の意識・呼吸・循環。
B:治療と残る腎機能
- 治療方法・最終実施・次回予定、自尿量、アクセス、個別の体重目標。
- 酸素・輸液・薬と本人の治療希望。
A:治療前後の比較
- 体重・入出量、血圧・K/Hbの直近と現在、排液・アクセスの所見。
- 実施した安全確保やケアへの反応。
R:確認すべき治療・支援
- 診察・緊急治療、採血や透析条件、感染評価、症状緩和と生活支援の見直し、再評価時点。
患者・家族への説明
変化を早めに知らせる
強い息苦しさ、意識の変化、止まらない出血はすぐ助けを求める。腹膜透析で出した液の濁りや腹痛、血液透析のシャント(血液を取り出すための血管)の変化も早めに連絡する。
食事と薬を治療に合わせる
飲水・食事・薬の時刻は治療方法や残る腎機能で変わる。自己流の制限や中断をせず、続けにくい理由を相談する。
選び直す相談もできる
仕事、家での生活、通院、苦痛など大切にしたいことを伝える。本人の希望と状態に合わせ、治療・支援を繰り返し話し合う。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
疾患・病態の一覧に戻る