検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
急性のCO₂上昇
- 気道閉塞・呼吸筋疲労・呼吸中枢抑制など
- 肺胞換気がCO₂産生に見合わない
- PaCO₂上昇とpH低下/急な意識・呼吸変化
観察へ:数値だけでなく変化速度を追う。呼吸が遅い場合だけでなく、速く浅い呼吸でも換気が不足する。
慢性のCO₂貯留と急性増悪
- COPD・肥満低換気・神経筋疾患などで換気不足が持続
- 腎臓がHCO₃⁻を保持し酸性化を補う
- 感染・鎮静薬などが重なると代償を超えて悪化
観察へ:普段のPaCO₂・HCO₃⁻・pHと比較。HCO₃⁻高値だけで慢性と断定せず、混合性の酸塩基異常も評価する。
CO₂排出と酸塩基の模式図。高CO₂血症すべてがCO₂ナルコーシスではない。CO₂ナルコーシスは高CO₂に伴う意識障害を指し、薬剤・低血糖・脳疾患などの鑑別も必要。
症状から観察・再確認へ
眠気・意識変化
- 見る・聞く
- 呼びかけへの反応、会話・見当識、覚醒の持続、瞳孔、呼吸の深さ・回数、SpO₂と酸素条件を確認。
- 何を反映するか
- CO₂上昇・低酸素や鎮静薬などの影響の可能性。正常SpO₂でも換気不足を否定できない。
- 普段と比較
- 普段の覚醒、直前の状態、鎮痛鎮静薬の追加、酸素・換気設定変更と血液ガスを比較。
- 悪化を疑う変化
- 起こしにくい、気道を保てない、嘔吐・分泌物を処理できない、無呼吸。
- 再確認
- 気道と換気を評価し応援を求める。意識低下を単なる睡眠として放置せず、治療後も反応を追う。
呼吸疲労・浅い呼吸
- 見る・聞く
- 胸腹部の動き、呼吸の深さ、補助筋、会話、咳の強さ、痰、呼吸数を確認する。
- 何を反映するか
- 気道抵抗や呼吸筋の負荷に対して換気が足りない可能性。呼吸数の低下が疲弊の結果であることもある。
- 普段と比較
- 努力呼吸と換気量、前回の血液ガス、NPPVへの同調、分泌物の増加を比較。
- 悪化を疑う変化
- 胸腹部の奇異性運動、呼吸努力が弱まるのに意識が低下、排痰不能、循環悪化。
- 再確認
- 体位・気道・分泌物・装置を確認。介入後の深さと努力、血液ガスを再評価する。
頭痛・不穏
- 見る・聞く
- 発症、朝に強いか、眠気・注意力、睡眠中の呼吸、薬剤、神経症状を確認。
- 何を反映するか
- CO₂貯留の手がかりになりうるが非特異的。疼痛・せん妄・脳疾患なども考える。
- 普段と比較
- 普段の頭痛、睡眠、呼吸補助の使用状況、酸素条件、PaCO₂の推移を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な強い頭痛、麻痺、けいれん、急速な意識変化。
- 再確認
- 呼吸評価と原因の確認を並行し、症状だけからCO₂上昇と決めない。
NPPV中の苦痛・換気不良
- 見る・聞く
- マスク漏れ、同調、実測換気量・呼吸数、分泌物、嘔気、腹満、圧迫部の皮膚を確認。
- 何を反映するか
- 漏れや非同調、気道保護困難などで換気補助が十分に働かない可能性。
- 普段と比較
- 装着前後の呼吸努力・意識・pH、変更後の漏れと患者の負担を比較。
- 悪化を疑う変化
- 意識・pH・循環の悪化、持続する呼吸困難、嘔吐、排痰不能。
- 再確認
- 調整可能な問題をチームで修正しつつ、改善しなければ挿管を含む治療変更の評価を急ぐ。
看護判断:変化の緊急度
計画に沿った経過観察
慢性貯留の基準状態と治療計画が分かり、意識・呼吸・pHが安定している。
次の行動:普段との差と装置の使用状況を追う。PaCO₂高値だけを理由に急速な正常化を目指さない。
早めの共有・再評価
新しい頭痛・眠気、痰や呼吸負担の増加、酸素条件変更後の変化、NPPVの漏れ・不耐。
次の行動:血液ガスと原因の再評価、監視の強化、換気補助の条件確認を求める。
直ちに応援・緊急対応
覚醒困難、気道保護不能、無呼吸、疲弊、急速な酸性化や循環悪化。
次の行動:応援要請とABC評価。吸引・酸素・バッグ換気・挿管物品を準備し、権限と訓練に沿って気道・換気を支える。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1.気道と換気を先に見る
意識低下時は転落・誤嚥を防ぎ、経口摂取を中断して評価。酸素飽和度だけを見て対応を止めない。
2.条件をそろえて採血・記録
採血時の酸素・NPPV設定、薬剤投与時刻、呼吸状態を記録。血液ガスを普段・治療前と比較する。
3.原因と装置を確認
気道閉塞、痰、感染、鎮静薬、神経筋疾患、装置不使用・漏れを確認。薬や設定の変更は指示・プロトコルに沿う。
4.再評価の予定を明確にする
開始・変更後の観察と再採血の時点、報告先、急変時に対応できる観察体制を共有。悪化時は予定時刻を待たず応援を求める。
5.治療の目標を共有する
挿管へ移行する方針か、NPPVを治療の上限とする方針かをチームで確認。本人の希望と説明内容を共有し、方針が未確認でも急変の報告・安全確保を遅らせない。
治療前・中・後の看護
目標を定めた酸素療法
- 目的
- 低酸素を補正しつつ過剰投与を避ける。
- 前に確認
- 低酸素の程度、慢性CO₂貯留、普段の酸素、目標SpO₂と血液ガスの指示を確認。
- 中に観察
- SpO₂、意識、呼吸の深さ・努力、PaCO₂とpHを観察。
- 反応・再評価
- 酸素化の改善だけでなく、換気と意識が悪化していないかを再確認。
- 適応・注意
- CO₂上昇を恐れて必要な酸素を中断しない。酸素誘発性高CO₂は換気血流の変化なども関与し、呼吸中枢抑制だけでは説明できない。
NPPV:非侵襲的な換気補助
- 目的
- マスク等から圧補助を行い、呼吸筋の負担を減らしてCO₂排出を支える。
- 前に確認
- 気道保護、意識、排痰、嘔吐、循環、装着可能性を確認。不成功時の治療方針と、急変に対応できる人員・場所を共有。
- 中に観察
- 同調・漏れ・換気量、呼吸努力、意識、血圧、皮膚、胃膨満を確認。
- 反応・再評価
- pH・PaCO₂と呼吸努力の改善を追う。数値が一部改善しても意識・循環が悪化すれば再評価。
- 適応・注意
- COPD増悪など原因に応じて適応を判断。気道保護困難や悪化が続く例で、NPPVを続けて挿管評価を遅らせない。
挿管・侵襲的人工呼吸
- 目的
- 自力やNPPVで保てない気道・換気を支える。
- 前に確認
- 挿管物品、酸素・吸引、モニター、循環維持、治療方針を準備・共有。
- 中に観察
- チューブ位置・固定、実測換気、呼吸との同調、気道内圧、血圧、鎮静と分泌物を確認。
- 反応・再評価
- ガス・意識・循環と肺過膨張の有無を追い、原因治療に応じて離脱を評価。
- 適応・注意
- 閉塞性疾患では呼気時間不足による空気の閉じ込めに注意。慢性貯留例の目標はpHと基準状態を含め個別設定する。
換気不足の原因治療
- 目的
- 気道閉塞・感染・薬剤作用などの負荷を減らす。
- 前に確認
- 吸入薬、鎮痛鎮静薬、感染徴候、分泌物、基礎疾患と腎肝機能を確認。
- 中に観察
- 原因に応じた薬剤の効果・副作用と換気の変化を観察。薬剤性では最終投与と作用持続を共有する。
- 反応・再評価
- 気道の通り・咳と排痰・覚醒が改善したか、再び低換気にならないかを追う。
- 適応・注意
- 薬剤拮抗薬は原因と適応を確認して使用する。CO₂高値を直接下げる共通の内服薬があるわけではない。
検査の意味と読み方
PaCO₂
肺胞換気とCO₂産生の釣り合いを評価する。
組み合わせ・推移:高値だけで緊急度を決めず、pH・意識・上昇速度と比較。呼吸数が多くても有効な換気が少なければ上昇する。
PaCO₂の検査詳細
pH
血液の酸性・アルカリ性を評価する。
組み合わせ・推移:CO₂上昇と低pHは呼吸性アシドーシスを示唆。代謝性異常が重なる場合もありHCO₃⁻と合わせる。正常範囲でも基準値からの悪化を確認。
pHの検査詳細
HCO₃⁻
腎代償や代謝性の酸塩基変化をみる。
組み合わせ・推移:慢性CO₂貯留では高くなりうる。利尿薬・嘔吐等でも変化するため、単独で慢性・安定としない。
HCO₃⁻の検査詳細
PaO₂
酸素化を評価する。
組み合わせ・推移:酸素条件と合わせる。PaO₂やSpO₂が改善してもCO₂排出が十分とは限らない。
PaO₂の検査詳細
呼気終末CO₂・経皮CO₂
換気の変化を連続的に追う補助。
組み合わせ・推移:肺血流・死腔・皮膚灌流・漏れ等で動脈血との差が変わる。動脈血ガスとの対応を確認し、値を同一視しない。
報告:SBARで情報をそろえる
S:意識と呼吸の変化
- いつから眠気・疲弊・浅い呼吸が出たか。
- 現在の気道保護、意識・呼吸・循環。
B:基準状態と治療
- 普段の血液ガス、COPD・神経筋疾患等、酸素・換気設定、鎮静薬と変更時刻。
A:前回との比較
- 直近と現在のPaCO₂・pH・HCO₃⁻、呼吸努力・換気量、それぞれの採血時の酸素・換気条件。
- 体位・気道・装置調整後の反応。
R:必要な評価
- 原因、再採血、NPPV適応・不成功、挿管を含む換気支援と観察体制。
患者・家族への説明
いつもより眠いときは知らせる
頭痛・眠気・息切れの増加は相談。起こしにくい、呼吸が弱い場合はすぐ助けを求める。
酸素・換気装置を自己調整しない
酸素量や装置設定を勝手に変えず、不快感・漏れ・皮膚の痛みを相談する。飲酒や眠くなる薬の追加も確認する。
睡眠と日常の変化を共有
装置を使えなかった時間、睡眠の質、朝の頭痛、活動時の息切れを記録し、治療の調整につなぐ。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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