脳神経

脳梗塞

発症時刻と最後に普段どおりだった時刻を分けて確認する。新しい神経症状を捉え、再灌流治療の準備と治療後の出血・浮腫・嚥下障害の観察へつなぐ。

主な症状
片麻痺 顔面左右差 言葉 視覚の異常 嚥下障害
代表的な薬
血栓溶解薬 抗血小板薬 抗凝固薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

心原性脳塞栓症

心原性脳塞栓症の閉塞機序心臓内の血栓移動 → 閉塞心臓 → 脳の動脈へ血流低下 → 酸素・栄養が届きにくい障害された場所に応じた神経症状
  1. 心臓内で血栓ができる
  2. 血流に乗って脳の動脈へ移動
  3. 血管を塞ぎ脳への血流が低下
  4. 麻痺・失語などが出現

観察へ:心房細動・弁膜症、抗凝固薬の最終服用を確認。脈が整っている時点の心電図だけで心房細動を除外しない。

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞の閉塞機序動脈の壁にプラーク → 血栓が付着狭窄・血栓末梢へ飛ぶ場合もある血流低下 → 酸素・栄養が届きにくい障害された場所に応じた神経症状
  1. 頚部や脳の動脈にプラーク
  2. 狭窄部の血栓・末梢への塞栓
  3. 脳への血流が不足
  4. 症状の出現・進行

観察へ:神経所見を反復し、血圧・体位や出納の変化と照合。症状が軽くなっても報告と原因評価を継続する。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞の閉塞機序脳深部へ入る細い動脈が閉塞深部の虚血穿通枝血流低下 → 酸素・栄養が届きにくい障害された場所に応じた神経症状
  1. 深部へ入る細い動脈が障害される
  2. 穿通枝の流れが途絶える
  3. 小さな深部領域が虚血になる
  4. 運動・感覚などの機能が低下

観察へ:小さな病変でも歩行や手の動作に影響する。画像の大きさだけで軽症とせず、進行と生活上の支障を確認。

代表的な3機序を示す概念図。解離など他の原因もあり、症状だけで病型や脳出血との区別はできない。病変の大きさ・血管の形や診断画像を再現していない。

症状から観察・再確認へ

片麻痺顔面の左右差

見る・聞く
顔の動き、両上肢の保持、下肢の動きと感覚を同じ方法で比較。発症前の麻痺と区別する。
何を反映するか
局所の脳機能低下を捉える。分布だけで閉塞血管や病型を断定しない。
普段と比較
最終健常時と発見時、直前の観察、再灌流治療前後を分ける。
悪化を疑う変化
新しい麻痺、保持できなくなる、範囲の拡大、意識や呼吸の変化。
再確認
直ちに共有し、血圧・血糖・酸素条件を並行確認。NIHSSの採点完了まで連絡を待たない。

言語視野注意の変化

見る・聞く
短い指示の理解、物の名前、発音、視線、片側への気づきを確認。聞こえ・眼鏡・普段の言語も確認。
何を反映するか
失語は言葉の理解・表出の障害。構音障害は発音の障害で、必要な支援が異なる。
普段と比較
同じ問いかけへの反応、元の会話能力と現在を比較。
悪化を疑う変化
新たに言葉が出ない、理解できない、片側に気づかない、視線が偏る。
再確認
神経変化として速やかに報告。会話困難を意思がないと扱わず、指差し等で意思を確認。

意識低下頭痛嘔吐

見る・聞く
開眼・会話・指示動作、瞳孔と呼吸を確認。頭痛・嘔吐の始まりと薬の投与時点を照合。
何を反映するか
出血性変化、浮腫、再閉塞、発作などの可能性。鎮静や血糖も影響する。
普段と比較
処置前後のGCS内訳と神経所見、血圧・酸素条件を比較。
悪化を疑う変化
急な覚醒低下、強い頭痛、反復嘔吐、瞳孔差、発作。
再確認
急変手順で応援要請。再画像・気道管理の準備を行い、原因を一つに決めない。

嚥下呼吸の変化

見る・聞く
覚醒、唾液処理、声の湿り、咳、呼吸数・努力・SpO₂と酸素条件を確認。独断で水を飲ませて試さない。
何を反映するか
嚥下や咳の障害は誤嚥・肺炎につながる。むせがなくても安全とは限らない。
普段と比較
嚥下評価の結果、食形態・姿勢・介助と食事前後の呼吸を比較。
悪化を疑う変化
唾液を処理できない、窒息、酸素需要増加、発熱と呼吸悪化。
再確認
経口摂取を止め安全確保し、必要な吸引・気道対応と再評価を相談。

めまいふらつき複視

見る・聞く
突然の発症、二重に見えるか、発音・嚥下・眼球運動と座位保持を確認。歩かせて症状を再現しない。
何を反映するか
後方循環の脳梗塞でも起こる。顔・腕・言葉の異常が目立たない場合がある。
普段と比較
普段のバランス、症状の発症経過と神経所見を比較。
悪化を疑う変化
急に立てない、複視や嚥下障害を伴う、反応や呼吸が悪化。
再確認
転倒を防ぎ直ちに共有。めまいだけの良性疾患と決めつけない。

治療後の出血循環変化

見る・聞く
穿刺部、皮下・口腔・尿便、血圧・脈・末梢循環を確認。血栓溶解後は舌・口唇の腫れも見る。
何を反映するか
頭蓋外出血や血管合併症、血管性浮腫の手がかり。頭蓋内出血は神経所見と画像で評価する。
普段と比較
治療・シース抜去の前後、投与薬、出血量と循環の推移を照合。
悪化を疑う変化
止まらない出血、広がる腫脹、血圧低下、冷たい四肢、舌の腫れや呼吸困難。
再確認
応援要請し止血・気道対応を準備。再開通したという情報だけで監視を緩めない。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察できる状態

診断と治療計画があり、神経所見・呼吸循環が安定し新たな変化がない。

次の行動:指示頻度の神経観察と嚥下・活動評価を継続。未評価の新しい症状や一過性症状は含めない。

早めの共有・報告が必要

急な神経変化はないが摂取不良、発熱、尿量変化、離床時のふらつき、服薬困難がある。

次の行動:経過と原因候補を整理し、栄養・水分・薬・安静度の計画を調整。新しい局所症状は緊急段階へ。

直ちに応援・緊急対応

新しい麻痺・失語・視覚異常、急な意識低下、強い頭痛、持続発作、気道障害・循環不良。症状が消失しても急な発症は評価が必要。

次の行動:脳卒中対応・院内急変手順を開始。最終健常時刻と現在所見を伝え、再灌流の適応を自己判断で除外しない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|発見と応援

発見時刻と最終健常時刻を別に記録して共有。目覚めた時からの症状でも、就寝前の状態と発見時点を伝える。

2|気道と安全

呼吸循環を確認し、転落・誤嚥を防ぐ。体位は呼吸、循環、誤嚥リスクと指示に合わせ、全員を一律に同じ角度にしない。

3|短い神経評価と血糖

顔・四肢・言語・視覚・意識を確認。施設手順で血糖を測定し、低値への対応後も所見を再評価。

4|治療判断に必要な情報

抗血栓薬の名前と最終服用、出血・手術歴、発症前の生活機能を確認。画像・採血・静脈路の準備を並行する。

5|治療後の監視

血圧目標、投与時刻、穿刺部と止血方法を引き継ぐ。侵襲処置・抗血栓薬の開始時点は治療後の指示を照合。

6|二次障害を予防

嚥下評価まで飲食・経口薬を保留して代替経路を相談。水分出納・口腔ケア・排泄・皮膚と血栓予防を計画する。

7|離床と再評価

安定性と安静度を確認して介助。麻痺側の肩を引っ張らず、注意・視野の障害にも配慮。前後の神経所見と循環を比較。

治療前・中・後の看護

静注血栓溶解療法

目的
適応例で血栓を溶かし、虚血領域への血流回復を図る。
前に確認
最終健常時刻、画像、血圧、血糖・凝固と薬歴、禁忌確認をチームで行う。
中に観察
神経所見と血圧、出血、舌・口唇の腫れと呼吸を監視。
反応・再評価
症状の改善だけでなく悪化・出血を反復評価。疑い時は投与中断等の緊急手順と画像評価へ。
適応・注意
国内の指針・添文と個別指示で薬・適応を決定。発症不明や時間経過だけで看護師が治療不可と決めない。

機械的血栓回収療法

目的
選択した血管閉塞で血栓を除き再開通を目指す。
前に確認
閉塞部位・画像、神経所見、腎機能、アクセス・麻酔と抗血栓薬を確認。
中に観察
呼吸循環、鎮静条件、穿刺部と末梢循環を確認。
反応・再評価
覚醒後の神経所見、止血部・画像を比較。再開通と機能回復は同義ではない。
適応・注意
時間・画像・血管と症状で適応が変わる。血栓溶解薬の効果を待つために準備を遅らせない。

抗血小板薬

目的
主に非心原性の脳梗塞で血栓の形成・再発を抑える。
前に確認
出血の除外、再灌流治療後の開始条件、薬の併用と嚥下・投与経路を確認。
中に観察
頭痛・神経変化、皮下出血、尿便と消化器症状を観察。
反応・再評価
再発徴候と出血、服薬継続の可否を評価。
適応・注意
単剤・併用と期間は病型・重症度等で異なる。画像前に独断で投与しない。
アスピリンの詳細を開く

抗凝固薬

目的
心房細動など適応のある塞栓源からの再発を予防。
前に確認
塞栓源、梗塞範囲・出血性変化、腎機能と開始日、薬の適応を確認。
中に観察
新しい神経所見と全身出血、服薬・嚥下を確認。
反応・再評価
画像と臨床経過、腎機能・服薬状況で再評価。
適応・注意
発症直後から全例開始しない。機械弁等を含め薬の選択が異なる。

血圧・血糖・体液管理

目的
脳灌流を保ち、低酸素・低血糖・体液異常による二次障害を減らす。
前に確認
再灌流治療の有無と目標、心腎機能、出納・栄養を確認。
中に観察
神経所見と血圧、血糖、尿量・呼吸を関連づけて監視。
反応・再評価
目標に近づいたかと、低灌流・低血糖・体液過剰がないかを比較。
適応・注意
正常値に早く戻すことだけを目的にしない。降圧・インスリン・輸液変更は個別指示に従う。

浮腫への減圧・集中治療

目的
適応例で脳の圧迫と生命への危険を軽減。
前に確認
病変部位と拡がり、意識・瞳孔・呼吸、画像と治療方針を確認。
中に観察
神経所見、呼吸循環、創部と指示された圧・排液を監視。
反応・再評価
画像と神経所見の推移、合併症を再評価。
適応・注意
大きな梗塞等の悪化では迅速な専門評価。ステロイドを脳梗塞性浮腫へ一律使用しない。

嚥下・生活機能の回復支援

目的
安全な栄養摂取と生活動作の回復を支える。
前に確認
覚醒・嚥下・注意、運動と生活目標を多職種で評価。
中に観察
食形態・姿勢、呼吸、疲労と活動時の循環を確認。
反応・再評価
摂取量・介助量と本人の負担、コミュニケーション手段を見直す。
適応・注意
急性期から評価するが、一律の強い離床負荷はかけない。嚥下訓練の方法は評価に合わせる。

検査の意味と読み方

CTMRI

出血、梗塞範囲と組織の状態を評価。

組み合わせ・推移:発症と撮影時点を照合。初期画像だけで新しい神経症状を否定しない。

血管灌流画像

閉塞部位と救済可能な組織を評価。

組み合わせ・推移:治療適応は時間だけでなく臨床所見と画像を組み合わせる。

心電図心臓評価

心房細動など塞栓源を探る。

組み合わせ・推移:一時点の正常心電図で発作性不整脈を除外しない。

血糖

神経症状に影響する低血糖・高血糖を確認。

組み合わせ・推移:栄養・薬と経時変化を比較。低血糖の是正後も症状が続けば再評価。

血糖の検査詳細

PT-INR

ワルファリンの影響と凝固状態を評価。

組み合わせ・推移:正常でもDOACの残存を除外できない。薬と最終服用時刻を伝える。

PT-INRの検査詳細

APTT

凝固と一部抗凝固薬の影響を評価。

組み合わせ・推移:薬によって検査への反映が異なる。単独で血栓溶解の安全性を決めない。

APTTの検査詳細

血小板

止血能と治療安全性の評価。

組み合わせ・推移:数だけでは抗血小板薬の作用は判断できない。薬歴と出血も確認。

血小板の検査詳細

クレアチニン

造影や薬剤選択に関わる腎機能の評価。

組み合わせ・推移:尿量と前回値を確認。薬の蓄積リスクも合わせる。

クレアチニンの検査詳細

Na

意識へ影響する電解質異常と体液変化を評価。

組み合わせ・推移:出納・薬・補正速度と神経所見を比較。

Naの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|発症と変化

  • 発見時点・最終健常時点、今ある神経症状、意識・呼吸・循環。

B|適応に関わる背景

  • 発症前の機能、抗血栓薬の一般名と最終服用、出血・手術歴、再灌流治療の内容。

A|比較と反応

  • 神経所見の内訳、血圧・血糖・酸素条件、治療前後と実施した看護への反応。

R|今すぐ確認

  • 脳卒中診療チームの評価、画像・再灌流・再画像、気道管理、血圧目標と観察頻度。

患者・家族への説明

症状が消えても連絡

突然の手足・言葉・視覚・バランスの変化は、改善しても早急に評価を受ける。自分で運転しない。

再発予防を続ける

薬を自己中断せず、出血や飲みにくさを相談。血圧・糖尿病・脂質、禁煙などの計画を確認。

食事と活動を合わせる

飲み込みと疲労に合う食形態・介助・活動量を確認。水分量も心腎機能に応じて相談する。

生活上の困りごと

会話・記憶・注意・気分の変化を相談。復職や運転、家族の負担は多職種と調整する。

参考文献

  1. 京都大学病院:脳梗塞

    病型・機序と合併症。治療適応の更新は別途確認。

  2. AHA/ASA 2026急性期脳梗塞:公式要点

    画像による適応選択、血圧・血糖管理。海外薬剤の適応や用量を国内へ転用しない。

  3. AHA 2021脳梗塞看護:公式要点

    周術期観察、出血・嚥下・生活機能の支援。

  4. PMDA:バイアスピリン電子添文

    2026年1月第4版の適応・禁忌と投与時の注意。

資料確認:2026年9月16日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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