検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
心原性脳塞栓症
- 心臓内で血栓ができる
- 血流に乗って脳の動脈へ移動
- 血管を塞ぎ脳への血流が低下
- 麻痺・失語などが出現
観察へ:心房細動・弁膜症、抗凝固薬の最終服用を確認。脈が整っている時点の心電図だけで心房細動を除外しない。
アテローム血栓性脳梗塞
- 頚部や脳の動脈にプラーク
- 狭窄部の血栓・末梢への塞栓
- 脳への血流が不足
- 症状の出現・進行
観察へ:神経所見を反復し、血圧・体位や出納の変化と照合。症状が軽くなっても報告と原因評価を継続する。
ラクナ梗塞
- 深部へ入る細い動脈が障害される
- 穿通枝の流れが途絶える
- 小さな深部領域が虚血になる
- 運動・感覚などの機能が低下
観察へ:小さな病変でも歩行や手の動作に影響する。画像の大きさだけで軽症とせず、進行と生活上の支障を確認。
代表的な3機序を示す概念図。解離など他の原因もあり、症状だけで病型や脳出血との区別はできない。病変の大きさ・血管の形や診断画像を再現していない。
症状から観察・再確認へ
片麻痺・顔面の左右差
- 見る・聞く
- 顔の動き、両上肢の保持、下肢の動きと感覚を同じ方法で比較。発症前の麻痺と区別する。
- 何を反映するか
- 局所の脳機能低下を捉える。分布だけで閉塞血管や病型を断定しない。
- 普段と比較
- 最終健常時と発見時、直前の観察、再灌流治療前後を分ける。
- 悪化を疑う変化
- 新しい麻痺、保持できなくなる、範囲の拡大、意識や呼吸の変化。
- 再確認
- 直ちに共有し、血圧・血糖・酸素条件を並行確認。NIHSSの採点完了まで連絡を待たない。
言語・視野・注意の変化
- 見る・聞く
- 短い指示の理解、物の名前、発音、視線、片側への気づきを確認。聞こえ・眼鏡・普段の言語も確認。
- 何を反映するか
- 失語は言葉の理解・表出の障害。構音障害は発音の障害で、必要な支援が異なる。
- 普段と比較
- 同じ問いかけへの反応、元の会話能力と現在を比較。
- 悪化を疑う変化
- 新たに言葉が出ない、理解できない、片側に気づかない、視線が偏る。
- 再確認
- 神経変化として速やかに報告。会話困難を意思がないと扱わず、指差し等で意思を確認。
意識低下・頭痛・嘔吐
- 見る・聞く
- 開眼・会話・指示動作、瞳孔と呼吸を確認。頭痛・嘔吐の始まりと薬の投与時点を照合。
- 何を反映するか
- 出血性変化、浮腫、再閉塞、発作などの可能性。鎮静や血糖も影響する。
- 普段と比較
- 処置前後のGCS内訳と神経所見、血圧・酸素条件を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な覚醒低下、強い頭痛、反復嘔吐、瞳孔差、発作。
- 再確認
- 急変手順で応援要請。再画像・気道管理の準備を行い、原因を一つに決めない。
嚥下・呼吸の変化
- 見る・聞く
- 覚醒、唾液処理、声の湿り、咳、呼吸数・努力・SpO₂と酸素条件を確認。独断で水を飲ませて試さない。
- 何を反映するか
- 嚥下や咳の障害は誤嚥・肺炎につながる。むせがなくても安全とは限らない。
- 普段と比較
- 嚥下評価の結果、食形態・姿勢・介助と食事前後の呼吸を比較。
- 悪化を疑う変化
- 唾液を処理できない、窒息、酸素需要増加、発熱と呼吸悪化。
- 再確認
- 経口摂取を止め安全確保し、必要な吸引・気道対応と再評価を相談。
めまい・ふらつき・複視
- 見る・聞く
- 突然の発症、二重に見えるか、発音・嚥下・眼球運動と座位保持を確認。歩かせて症状を再現しない。
- 何を反映するか
- 後方循環の脳梗塞でも起こる。顔・腕・言葉の異常が目立たない場合がある。
- 普段と比較
- 普段のバランス、症状の発症経過と神経所見を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急に立てない、複視や嚥下障害を伴う、反応や呼吸が悪化。
- 再確認
- 転倒を防ぎ直ちに共有。めまいだけの良性疾患と決めつけない。
治療後の出血・循環変化
- 見る・聞く
- 穿刺部、皮下・口腔・尿便、血圧・脈・末梢循環を確認。血栓溶解後は舌・口唇の腫れも見る。
- 何を反映するか
- 頭蓋外出血や血管合併症、血管性浮腫の手がかり。頭蓋内出血は神経所見と画像で評価する。
- 普段と比較
- 治療・シース抜去の前後、投与薬、出血量と循環の推移を照合。
- 悪化を疑う変化
- 止まらない出血、広がる腫脹、血圧低下、冷たい四肢、舌の腫れや呼吸困難。
- 再確認
- 応援要請し止血・気道対応を準備。再開通したという情報だけで監視を緩めない。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
診断と治療計画があり、神経所見・呼吸循環が安定し新たな変化がない。
次の行動:指示頻度の神経観察と嚥下・活動評価を継続。未評価の新しい症状や一過性症状は含めない。
早めの共有・報告が必要
急な神経変化はないが摂取不良、発熱、尿量変化、離床時のふらつき、服薬困難がある。
次の行動:経過と原因候補を整理し、栄養・水分・薬・安静度の計画を調整。新しい局所症状は緊急段階へ。
直ちに応援・緊急対応
新しい麻痺・失語・視覚異常、急な意識低下、強い頭痛、持続発作、気道障害・循環不良。症状が消失しても急な発症は評価が必要。
次の行動:脳卒中対応・院内急変手順を開始。最終健常時刻と現在所見を伝え、再灌流の適応を自己判断で除外しない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|発見と応援
発見時刻と最終健常時刻を別に記録して共有。目覚めた時からの症状でも、就寝前の状態と発見時点を伝える。
2|気道と安全
呼吸循環を確認し、転落・誤嚥を防ぐ。体位は呼吸、循環、誤嚥リスクと指示に合わせ、全員を一律に同じ角度にしない。
3|短い神経評価と血糖
顔・四肢・言語・視覚・意識を確認。施設手順で血糖を測定し、低値への対応後も所見を再評価。
4|治療判断に必要な情報
抗血栓薬の名前と最終服用、出血・手術歴、発症前の生活機能を確認。画像・採血・静脈路の準備を並行する。
5|治療後の監視
血圧目標、投与時刻、穿刺部と止血方法を引き継ぐ。侵襲処置・抗血栓薬の開始時点は治療後の指示を照合。
6|二次障害を予防
嚥下評価まで飲食・経口薬を保留して代替経路を相談。水分出納・口腔ケア・排泄・皮膚と血栓予防を計画する。
7|離床と再評価
安定性と安静度を確認して介助。麻痺側の肩を引っ張らず、注意・視野の障害にも配慮。前後の神経所見と循環を比較。
治療前・中・後の看護
静注血栓溶解療法
- 目的
- 適応例で血栓を溶かし、虚血領域への血流回復を図る。
- 前に確認
- 最終健常時刻、画像、血圧、血糖・凝固と薬歴、禁忌確認をチームで行う。
- 中に観察
- 神経所見と血圧、出血、舌・口唇の腫れと呼吸を監視。
- 反応・再評価
- 症状の改善だけでなく悪化・出血を反復評価。疑い時は投与中断等の緊急手順と画像評価へ。
- 適応・注意
- 国内の指針・添文と個別指示で薬・適応を決定。発症不明や時間経過だけで看護師が治療不可と決めない。
機械的血栓回収療法
- 目的
- 選択した血管閉塞で血栓を除き再開通を目指す。
- 前に確認
- 閉塞部位・画像、神経所見、腎機能、アクセス・麻酔と抗血栓薬を確認。
- 中に観察
- 呼吸循環、鎮静条件、穿刺部と末梢循環を確認。
- 反応・再評価
- 覚醒後の神経所見、止血部・画像を比較。再開通と機能回復は同義ではない。
- 適応・注意
- 時間・画像・血管と症状で適応が変わる。血栓溶解薬の効果を待つために準備を遅らせない。
抗血小板薬
- 目的
- 主に非心原性の脳梗塞で血栓の形成・再発を抑える。
- 前に確認
- 出血の除外、再灌流治療後の開始条件、薬の併用と嚥下・投与経路を確認。
- 中に観察
- 頭痛・神経変化、皮下出血、尿便と消化器症状を観察。
- 反応・再評価
- 再発徴候と出血、服薬継続の可否を評価。
- 適応・注意
- 単剤・併用と期間は病型・重症度等で異なる。画像前に独断で投与しない。
アスピリンの詳細を開く抗凝固薬
- 目的
- 心房細動など適応のある塞栓源からの再発を予防。
- 前に確認
- 塞栓源、梗塞範囲・出血性変化、腎機能と開始日、薬の適応を確認。
- 中に観察
- 新しい神経所見と全身出血、服薬・嚥下を確認。
- 反応・再評価
- 画像と臨床経過、腎機能・服薬状況で再評価。
- 適応・注意
- 発症直後から全例開始しない。機械弁等を含め薬の選択が異なる。
血圧・血糖・体液管理
- 目的
- 脳灌流を保ち、低酸素・低血糖・体液異常による二次障害を減らす。
- 前に確認
- 再灌流治療の有無と目標、心腎機能、出納・栄養を確認。
- 中に観察
- 神経所見と血圧、血糖、尿量・呼吸を関連づけて監視。
- 反応・再評価
- 目標に近づいたかと、低灌流・低血糖・体液過剰がないかを比較。
- 適応・注意
- 正常値に早く戻すことだけを目的にしない。降圧・インスリン・輸液変更は個別指示に従う。
浮腫への減圧・集中治療
- 目的
- 適応例で脳の圧迫と生命への危険を軽減。
- 前に確認
- 病変部位と拡がり、意識・瞳孔・呼吸、画像と治療方針を確認。
- 中に観察
- 神経所見、呼吸循環、創部と指示された圧・排液を監視。
- 反応・再評価
- 画像と神経所見の推移、合併症を再評価。
- 適応・注意
- 大きな梗塞等の悪化では迅速な専門評価。ステロイドを脳梗塞性浮腫へ一律使用しない。
嚥下・生活機能の回復支援
- 目的
- 安全な栄養摂取と生活動作の回復を支える。
- 前に確認
- 覚醒・嚥下・注意、運動と生活目標を多職種で評価。
- 中に観察
- 食形態・姿勢、呼吸、疲労と活動時の循環を確認。
- 反応・再評価
- 摂取量・介助量と本人の負担、コミュニケーション手段を見直す。
- 適応・注意
- 急性期から評価するが、一律の強い離床負荷はかけない。嚥下訓練の方法は評価に合わせる。
検査の意味と読み方
CT・MRI
出血、梗塞範囲と組織の状態を評価。
組み合わせ・推移:発症と撮影時点を照合。初期画像だけで新しい神経症状を否定しない。
血管・灌流画像
閉塞部位と救済可能な組織を評価。
組み合わせ・推移:治療適応は時間だけでなく臨床所見と画像を組み合わせる。
心電図・心臓評価
心房細動など塞栓源を探る。
組み合わせ・推移:一時点の正常心電図で発作性不整脈を除外しない。
血糖
神経症状に影響する低血糖・高血糖を確認。
組み合わせ・推移:栄養・薬と経時変化を比較。低血糖の是正後も症状が続けば再評価。
血糖の検査詳細
PT-INR
ワルファリンの影響と凝固状態を評価。
組み合わせ・推移:正常でもDOACの残存を除外できない。薬と最終服用時刻を伝える。
PT-INRの検査詳細
APTT
凝固と一部抗凝固薬の影響を評価。
組み合わせ・推移:薬によって検査への反映が異なる。単独で血栓溶解の安全性を決めない。
APTTの検査詳細
血小板
止血能と治療安全性の評価。
組み合わせ・推移:数だけでは抗血小板薬の作用は判断できない。薬歴と出血も確認。
血小板の検査詳細
クレアチニン
造影や薬剤選択に関わる腎機能の評価。
組み合わせ・推移:尿量と前回値を確認。薬の蓄積リスクも合わせる。
クレアチニンの検査詳細
Na
意識へ影響する電解質異常と体液変化を評価。
組み合わせ・推移:出納・薬・補正速度と神経所見を比較。
Naの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S|発症と変化
- 発見時点・最終健常時点、今ある神経症状、意識・呼吸・循環。
B|適応に関わる背景
- 発症前の機能、抗血栓薬の一般名と最終服用、出血・手術歴、再灌流治療の内容。
A|比較と反応
- 神経所見の内訳、血圧・血糖・酸素条件、治療前後と実施した看護への反応。
R|今すぐ確認
- 脳卒中診療チームの評価、画像・再灌流・再画像、気道管理、血圧目標と観察頻度。
患者・家族への説明
症状が消えても連絡
突然の手足・言葉・視覚・バランスの変化は、改善しても早急に評価を受ける。自分で運転しない。
再発予防を続ける
薬を自己中断せず、出血や飲みにくさを相談。血圧・糖尿病・脂質、禁煙などの計画を確認。
食事と活動を合わせる
飲み込みと疲労に合う食形態・介助・活動量を確認。水分量も心腎機能に応じて相談する。
生活上の困りごと
会話・記憶・注意・気分の変化を相談。復職や運転、家族の負担は多職種と調整する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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