循環器

不整脈/心房細動

心房細動では、心拍数・リズムによる負担と、血栓・塞栓の危険を別々に評価する。動悸がない、脈が落ち着いたという理由だけで安心せず、症状の時点、心電図、全身状態、服薬を結び付ける。

主な症状
動悸 息切れ 塞栓 出血
代表的な薬
抗凝固薬 心拍数 リズム調節薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

電気の乱れと循環への負担

電気の乱れと循環への負担と看護観察心房の電気活動が乱れる心室へ不規則に伝わる有効な心房収縮が低下頻脈など → 充満・拍出への負担脈・血圧・意識・呼吸を組み合わせる
  1. 心房内の電気活動がまとまらなくなる
  2. 心房の有効な収縮が失われ、心室の拍動が不規則になる
  3. 頻脈などで充満・拍出が妨げられると動悸・息切れ・低灌流

観察へ:脈の数だけでなく血圧・意識・呼吸・活動時の症状を確認。薬剤や伝導障害で徐脈になることもある。

血流停滞と塞栓

血流停滞と塞栓と看護観察左心房左心耳左心室から全身の動脈へ血流がよどみ血栓形成塞栓 → 片麻痺・言語・四肢の変化脈が落ち着いていても抗凝固の適応を評価
  1. 心房の有効な収縮が弱まり、血液がよどみやすい
  2. 左心耳などに血栓ができることがある
  3. 血栓が動脈へ流れると脳や手足などの血流を妨げる

観察へ:発作性・無症状でも塞栓リスクを評価する。抗凝固薬は脈を整える薬ではなく、血栓予防を目的とする。

二つの図は病型ではなく、同じ心房細動から生じる二つの問題。発作性か持続しているか、いつ始まったか、過去の治療と心機能で方針が変わる。発症時刻不明を短時間の発作として扱わない。心電図波形の再現ではない。

症状から観察・再確認へ

動悸脈の不整

見る・聞く
始まり・持続・誘因、心電図と実際の脈、血圧、意識、胸痛を確認。症状時の記録を残す。
何を反映するか
心拍数や拍出の変動を反映しうる。不整だけで心房細動とは確定できない。
普段と比較
普段と発作時、安静と動作時、投薬前後を比較。
悪化を疑う変化
失神、強い胸痛、冷汗、血圧低下、意識の変化。
再確認
重い症状は応援要請。電極・波形を確認し、12誘導心電図と診察へつなぐ。

息切れ浮腫

見る・聞く
呼吸数・努力呼吸・会話・体位、SpO2と酸素条件、肺音、体重・尿量を確認。
何を反映するか
心不全や頻脈による負担の手がかり。肺疾患等の別原因も評価する。
普段と比較
普段の歩行距離・睡眠体位、体重と出納、治療前後。
悪化を疑う変化
安静時呼吸困難、会話困難、酸素化の悪化、尿量低下。
再確認
呼吸循環を再評価し必要時は緊急対応。安楽な体位とモニターを整え、酸素・治療を指示に沿って準備。

片麻痺言葉の変化

見る・聞く
顔の左右差、上肢・下肢の動き、言葉・視覚・意識、発症と最終健常時点を確認。
何を反映するか
脳塞栓などの可能性。抗凝固薬使用中でも脳卒中は起こりうる。
普段と比較
普段の神経所見と現在、症状の持続・改善。
悪化を疑う変化
新しい局所神経症状、突然の強い頭痛、意識低下。
再確認
直ちに脳卒中対応を要請。最終服薬を伝え、自己判断で薬や飲食を追加しない。

出血貧血の徴候

見る・聞く
皮下出血、鼻・歯肉、尿・便、頭痛、ふらつき、外傷と抗凝固薬の最終使用を確認。
何を反映するか
抗凝固に伴う出血の可能性。体表に見えない出血もある。
普段と比較
Hb・腎機能、以前の出血、薬の追加・飲み間違い。
悪化を疑う変化
止まらない出血、黒色便と循環変化、頭部打撲後の頭痛・嘔吐・意識変化。
再確認
重い変化は応援要請。頭部打撲は症状が軽くても早く相談し、採血・画像・止血対応を準備。

治療後の徐脈めまい

見る・聞く
脈・心電図、血圧・意識、薬の投与時点、頻脈が止まった時点を照合。
何を反映するか
心拍数調節薬の影響や洞機能障害などを考える。
普段と比較
治療前の脈と症状、起立前後、発作終了前後。
悪化を疑う変化
失神、長い停止を疑う波形、低灌流、呼吸苦。
再確認
安全確保して速やかに報告。追加投与前に指示を確認し、症状と波形を同時に記録。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察

診断と治療計画があり、症状・血圧・意識・呼吸が普段の範囲で安定している。

次の行動:症状と心拍数、服薬・出血、生活機能を追う。脈が整っても抗凝固の変更は治療計画で確認。

早めに共有・報告

新しい不整、発作増加、活動時症状、浮腫、軽い出血、飲み忘れ、治療後のめまい。

次の行動:心電図・発症時点・薬歴をそろえて相談。脱水・感染・甲状腺や心不全などの誘因評価へ。

直ちに応援要請

循環不良、強い胸痛、重い呼吸困難、失神、新しい神経症状、重い出血。

次の行動:呼吸循環と安全を確保し急変対応。心房細動に伴う不安定化なら緊急の同期下カルディオバージョン等の準備を指示に沿って進める。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|全身状態で優先順位を決める

意識・呼吸・循環と胸痛・神経症状を先に確認。数字だけで重症度を決めない。転倒を防ぎ、症状に合わせ体位を整える。

2|発症と波形を残す

症状の開始・最終健常時点、12誘導とモニターを確保。脈や症状が波形と合うか確認し、記録時刻をそろえる。

3|薬と誘因を確認

抗凝固薬・心拍数調節薬の名前、最終服薬、飲み忘れ、最近の追加薬、発熱・脱水・飲酒等を確認。

4|処置前の安全を確認

静脈路・採血・除細動器等を準備。予定のリズム治療では発症持続時間、抗凝固の継続状況、血栓評価の計画を照合。

5|治療後の再評価

心電図だけでなく血圧・意識・呼吸・尿量、徐脈・再発、鎮静後の回復と出血を追う。

6|生活と服薬を支える

自己中断や重複服用を防ぐ仕組み、出血・脳卒中症状の連絡方法、血圧・体重・睡眠等の継続支援を調整。

治療前・中・後の看護

β遮断薬などによる心拍数調節

目的
心室の拍動を抑え、症状と循環への負担を軽くする。
前に確認
血圧・心拍数・伝導、心機能、喘息等、併用薬を確認。
中に観察
徐脈・低血圧、意識、呼吸・うっ血の悪化を観察。
反応・再評価
目標心拍数と症状・活動の改善を併せて評価。脈が遅くなりすぎていないか確認。
適応・注意
薬剤・経口/静注は全身状態で選択。非代償性心不全等にメインテートは禁忌。0.625mg錠は心房細動の承認適応なし。
メインテート錠0.625mg・2.5mg・5mgの詳細を開く

直接経口抗凝固薬:DOAC

目的
心房細動に伴う脳卒中・全身性塞栓を予防する。
前に確認
適応、腎・肝機能、年齢・体重、出血、飲み忘れと相互作用を確認。
中に観察
出血・貧血、腎機能変化、処置前後の休薬・再開指示を確認。
反応・再評価
塞栓・出血の両方を追う。凝固検査の値だけで薬効や安全を判断しない。
適応・注意
薬ごとの適応・減量条件を照合。機械弁や中等度以上の僧帽弁狭窄を伴う場合などは別の抗凝固方針が必要。
エリキュース錠2.5mg・5mgの詳細を開く

ビタミンK拮抗薬:ワルファリン

目的
適応に応じて血栓形成を抑える。
前に確認
弁疾患・人工弁、PT-INRの目標、出血、併用薬・食事、肝腎機能を確認。
中に観察
出血・血栓徴候とPT-INR、薬・食事の変更を観察。
反応・再評価
目標内の維持と症状を再評価。採血結果による処方変更を確実に引き継ぐ。
適応・注意
DOACと同じ検査・管理ではない。目標値は背景で異なり、一律値を示さない。
ワーファリン錠0.5mg・1mg・5mgの詳細を開く

リズム調節:薬剤・電気的治療

目的
洞調律への回復・維持を目指し、症状を改善する。
前に確認
発症時間・抗凝固状況・血栓評価、心機能・電解質、鎮静計画を確認。
中に観察
心電図、呼吸・循環、鎮静、徐脈や新しい不整脈を観察。
反応・再評価
洞調律化と全身状態を確認し、再発・塞栓・投薬有害事象を追う。
適応・注意
抗不整脈薬は構造的心疾患等で選択が変わる。緊急治療と予定治療の準備条件を混同しない。

カテーテルアブレーション

目的
主に肺静脈からの異常な電気信号を遮断し、心房細動を抑える。
前に確認
方法、抗凝固・画像・麻酔、穿刺部と術後安静の指示を確認。
中に観察
穿刺部出血、血圧・胸痛・呼吸・神経症状を観察。
反応・再評価
再発、出血、心タンポナーデ等を評価。退院後の発熱・胸痛・嚥下症状等の連絡方法を確認。
適応・注意
高周波・バルーン・パルスフィールド等でリスクが異なる。治療後の抗凝固を自己判断で中止しない。

検査の意味と読み方

心電図長時間心電図

心房細動の確認と、症状・心拍数・治療反応の関係を評価する。

組み合わせ・推移:症状が出た時刻と活動・服薬条件を記録に添える。短時間に発作が捉えられなくても除外せず、記録方法・期間を相談。動悸がなくても再発することがあり、症状だけで治療効果を決めない。

K

不整脈に関わる電解質変化を評価。

組み合わせ・推移:低値・高値とも影響しうる。腎機能、利尿薬、補正前後と心電図を合わせる。

Kの検査詳細

クレアチニン

薬剤選択・用量と腎機能変化を確認。

組み合わせ・推移:抗凝固薬では製剤ごとに定める腎機能指標を使用。脱水・急性変化と前回値を確認。

クレアチニンの検査詳細

Hb

抗凝固中の出血・貧血を確認。

組み合わせ・推移:低下は出血以外でも起こる。便・尿・外傷・循環と推移を合わせる。

Hbの検査詳細

PT-INR

ワルファリンの作用を評価。

組み合わせ・推移:目標と推移を照合。DOACの用量をPT-INRで調整しない。

PT-INRの検査詳細

経胸壁心エコー

胸の外から心臓の動きや弁を調べ、心房細動に併存する心疾患と心機能を評価する。

組み合わせ・推移:息切れ・浮腫・血圧、心拍数と前回の所見を比較し、治療方針の確認につなげる。心臓の動きの評価と左心耳の血栓評価を同一視せず、検査の目的を照合する。

経食道心エコー

食道から心臓を近くで観察し、左心耳などの血栓や弁を評価する。

組み合わせ・推移:除細動前の血栓評価など、必要な場面で選択される。発症時刻が不明な場合や抗凝固薬の飲み忘れも共有。結果だけで抗凝固薬の中止を決めず、処置前後の指示を確認する。

甲状腺機能

心房細動の背景にある甲状腺機能の異常を評価する。

組み合わせ・推移:甲状腺ホルモンの値とTSH、症状、既往や治療薬を合わせる。異常値だけで今回の動悸の原因を決めず、心電図と経過を照合。原因治療後も心拍・症状の変化を追う。

報告:SBARで情報をそろえる

S|何が変化したか

  • 動悸・胸痛・息切れ・神経症状の開始と現在の意識・呼吸・循環。

B|治療と背景

  • 発作歴・弁疾患・心不全、抗凝固・心拍数調節薬と最終投与、飲み忘れ、最近の処置。

A|比較と反応

  • 症状時の心電図、脈・血圧・酸素条件、出血・出納、直近の検査。
  • 実施した対応への反応。

R|次の判断

  • 緊急診察、心拍数・リズム治療、脳卒中・出血評価、薬の追加可否と再評価時点。

患者・家族への説明

症状がなくても服薬を確認

抗凝固薬と脈を整える薬は目的が違う。脈が落ち着いても自己中止せず、飲み忘れ時は薬ごとの指示を確認する。

急な症状は待たない

顔や手足・言葉の異常、強い胸痛、失神、重い息苦しさ、止まらない出血は救急対応につなぐ。

再発の背景を整える

飲酒、睡眠、血圧、体重、活動をチームと見直す。受診時に症状の時刻と服薬記録を持参する。

参考文献

  1. 日本循環器学会・日本不整脈心電学会:不整脈の診断とリスク評価2022(公式英語版)

    II.2.1、表15、2.1.7の本文を確認。心電図による確認、症状と記録、血液検査、経胸壁・経食道心エコーの目的に参照。抗凝固の適応・中止をこの検査説明だけで決めない。

  2. 国立循環器病研究センター:AF外来

    無症状時の塞栓予防、症状・心不全・リズム治療の目的を確認。

  3. 国循掲載:知っておきたい循環器病164

    心房細動の電気活動・血栓と肺静脈隔離の節を確認。疫学値や旧来の機器数は転記しない。

  4. NHLBI:心房細動の治療(2022更新)

    治療目的の整理を補助。薬剤の禁忌・適応は国内電子添文を優先。

  5. PMDA:メインテート電子添文(2026年9月)

    規格別の適応と徐脈・心不全等の禁忌を確認。

  6. PMDA:エリキュース電子添文(2026年3月)

    出血監視、適応による腎機能条件を確認。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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