脳神経

脳浮腫/脳ヘルニア

脳浮腫は脳の細胞内や細胞の間に水分が増える状態。虚血・外傷・腫瘍・感染・代謝異常など原因はさまざま。神経所見の変化を呼吸・循環・治療条件と合わせ、二次的な脳損傷を防ぐ行動につなげる。

主な症状
意識低下 瞳孔変化 呼吸の変化
代表的な薬
浸透圧療法薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

細胞傷害性:細胞内に水が増える

細胞傷害性:細胞内に水が増えると観察細胞細胞内の水が増える虚血・低酸素 → 調整する力が低下局所症状・意識+酸素化と循環を確認
  1. 虚血・低酸素などで細胞のエネルギーが不足
  2. イオンと水の調整が障害され細胞が膨らむ
  3. 局所神経症状や意識変化を来す

観察へ:発症経過、麻痺・言語、酸素化・血圧・血糖を確認。細胞傷害の原因への対応が必要。

血管原性:血管の外へ漏れ出る

血管原性:血管の外へ漏れ出ると観察血管細胞の間に水が増える血液脳関門の障害 → 水分が漏出原因・画像と局所症状を合わせる
  1. 血液脳関門(血管と脳を隔てる機構)が障害
  2. 水分などが脳の細胞間へ漏れ出る
  3. 腫瘍・炎症などの周囲が腫れて機能や圧に影響

観察へ:原因疾患と画像を照合。腫瘍周囲の浮腫と脳出血・外傷では薬の適応が異なる。

間質性:髄液が脳室周囲へ移る

間質性:髄液が脳室周囲へ移ると観察脳室髄液の流れが妨げられる脳室から周囲の組織へ水が移動意識・画像と髄液排出の適応を確認
  1. 髄液の流れが妨げられ脳室側の圧が上がる
  2. 脳室周囲の組織へ水分が移動
  3. 水頭症とともに意識や神経機能が変化

観察へ:急な意識低下を共有し、画像と髄液排出の適応を専門評価につなぐ。

圧迫と灌流:頭蓋内の余裕が減る

圧迫と灌流:頭蓋内の余裕が減ると観察腫れた脳圧上昇・偏位 → 灌流や脳幹へ影響意識・瞳孔・呼吸の急変を捉える
  1. 硬い頭蓋骨の中で脳の容積が増える
  2. 代償できなくなると圧が上がり血流を妨げる
  3. 偏位・脳幹圧迫などで意識・瞳孔・呼吸が急変

観察へ:低血圧と頭蓋内圧上昇の双方が脳灌流を損なう。血圧だけを下げればよいわけではない。

細胞・血管・髄液と頭蓋内の関係を簡略化した模式図。画像診断の再現ではない。機序は重なることがあり、低Naなど浸透圧の低下でも水が脳へ移動する。浮腫と頭蓋内圧亢進は同義ではない。

症状から観察・再確認へ

意識反応の変化

見る・聞く
呼名、開眼、会話、指示への動作を確認。GCSならE・V・Mの内訳を記録。
何を反映するか
脳機能の悪化のほか、鎮静・低血糖・低酸素なども関わる。
普段と比較
直前の反応、鎮静薬の時刻、挿管・言語障害による評価制約と比較。
悪化を疑う変化
起きにくい、新しい混乱、指示が通らない、短時間の反応低下。
再確認
ABC・血糖・薬を並行確認。原因を薬だけと決めず、報告後も反応を追う。

瞳孔麻痺言葉の変化

見る・聞く
瞳孔径・左右差・対光反射、左右の手足、顔・言葉を同じ方法で確認。
何を反映するか
局所障害や脳幹への影響を疑う手掛かり。単独で診断しない。
普段と比較
もともとの左右差、眼の病気・点眼、鎮静と直近の所見を比較。
悪化を疑う変化
新しい瞳孔不同、反応消失、片麻痺や異常肢位。
再確認
意識・呼吸・循環と合わせ直ちに共有し、処置後も左右差を記録。

頭痛嘔吐

見る・聞く
始まり方、増悪、反復する嘔吐、体位や処置との関係を確認。
何を反映するか
頭蓋内圧変化や原因疾患の可能性。頭痛がなくても安全とは言えない。
普段と比較
普段の症状、鎮痛・制吐後の反応と意識を比較。
悪化を疑う変化
急激な増悪、反復嘔吐と意識・神経所見の悪化。
再確認
誤嚥を防ぎ気道・酸素化を確認。投薬前後も神経所見を追う。

呼吸循環の変化

見る・聞く
呼吸数・深さ・リズム、SpO₂と酸素条件、血圧・脈、人工呼吸器との同調を確認。
何を反映するか
低酸素・低血圧は二次損傷を悪化させる。CO₂の変化も脳血流に影響。
普段と比較
換気設定・鎮静、吸引・体位変更前後と比較。
悪化を疑う変化
不規則呼吸、無呼吸、酸素化低下、低血圧、神経悪化を伴う循環変化。
再確認
気道・回路・測定を確認し緊急共有。徐脈・高血圧などがそろうまで待たない。

けいれん発作を疑う反応

見る・聞く
開始・持続、左右の動き、眼の偏り、呼吸と発作後の回復を確認。
何を反映するか
脳の代謝負担が増える。発作後の反応低下と病態悪化の区別が必要。
普段と比較
普段の反応、既往発作、薬の投与・中断と比較。
悪化を疑う変化
発作が続く・繰り返す、呼吸障害、反応が戻らない。
再確認
安全と気道を確保し応援。動きが止まっても意識低下が続けば脳波等を相談。

出納電解質の変化

見る・聞く
尿量・出納、輸液濃度と速度、Na・腎機能・血糖を確認。
何を反映するか
原因の浸透圧異常と治療に伴う脱水・腎障害を捉える。
普段と比較
採血時刻、投薬変更、前回値と変化速度を並べる。
悪化を疑う変化
急な多尿・乏尿、Naの急変、低血圧や神経所見の変化。
再確認
採血・尿量測定の条件を照合し相談。補液やNa補正速度を独断で変えない。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察できる状態

原因評価と治療計画があり、神経所見・呼吸循環が個別目標内で安定。

次の行動:指定された頻度で観察を継続。軽症という意味ではなく、変化時は再評価。

早めに共有・報告

頭痛・悪心の増加、発熱、出納・Naの変化、処置後に圧が戻りにくい。

次の行動:変化と治療条件を整理して相談。新しい神経所見や急速な悪化は緊急対応。

直ちに応援・緊急対応

急な意識低下、新しい瞳孔・運動異常、呼吸障害、持続・反復発作、循環不安定。

次の行動:応援とABC確認。救急処置・画像・脳外科評価を準備し、観察の完了を待たず連絡。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|気道と安全を先に確保

反応低下・嘔吐では経口摂取を止め、吸引・酸素・気道処置を準備。頸椎損傷の可能性と循環に配慮して体位を調整。

2|頭頸部と循環を整える

頸部の強い屈曲・回旋や圧迫を避ける。頭部挙上は血圧・脳灌流・脊椎の条件と指示に合わせ、変更後に再評価。

3|神経所見を繰り返す

意識の内訳、瞳孔・運動の左右差と呼吸循環を記録。鎮静下の評価制限を明記する。

4|処置による負担を評価

痛み・発熱・咳込み・不穏の原因を確認。必要な吸引やケアは反応を見て調整し、換気・鎮静変更は指示下で行う。

5|治療・検体と搬送を準備

血管路、採血、指示薬、気道器具と搬送中のモニターを準備。画像待ちも観察し、薬・酸素・排液条件を引き継ぐ。

6|出納とNaの推移を守る

輸液の濃度・速度、尿量と採血を照合。低Naの急速補正や過度の脱水を避ける計画を確認。

7|介入後も再評価

投薬・体位・排液・手術後に神経所見と呼吸循環を比較。転倒・誤嚥・圧迫傷害を防ぎ、離床は安定性と個別指示に合わせる。

治療前・中・後の看護

原因疾患の治療

目的
虚血・出血・腫瘍・感染・代謝異常などに対応。
前に確認
発症経過、画像、抗血栓薬、感染・代謝情報を確認。
中に観察
原因治療に固有の出血・循環・感染の合併症を観察。
反応・再評価
局所症状、意識、画像と全身状態を比較。
適応・注意
頭蓋内圧対策だけで原因が治ったとは判断しない。

浸透圧療法:マンニトール

目的
浸透圧差を利用して脳容積・頭蓋内圧の軽減を図る。
前に確認
血腫と止血、腎機能・尿量、脱水、Na・K・浸透圧、製剤の結晶を確認。
中に観察
神経所見・圧の反応、血圧、尿量、呼吸と体液変化を観察。
反応・再評価
圧と神経所見を比較し、腎障害・電解質異常・脱水も再評価。
適応・注意
急性頭蓋内血腫では出血源処理と再出血のおそれがないことの確認が必要。反復・用量は個別指示。
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高張食塩液による浸透圧治療

目的
適応例で血液と脳の浸透圧差を利用し圧を軽減。
前に確認
目的、施設の調製・投与手順、濃度・経路、Na・Clと腎機能を照合。
中に観察
Naの変化速度、出納、血圧・呼吸、血管外漏出を確認。
反応・再評価
神経所見・圧と腎機能、酸塩基平衡、体液過剰を再評価。
適応・注意
海外の濃度・用法を一律適用しない。低Naを伴う場合は補正速度も確認。

ステロイド:原因を限定して使用

目的
腫瘍周囲の症候性浮腫などで症状を軽減。
前に確認
原因と目的、感染、血糖、消化管出血リスク、期間を確認。
中に観察
血糖・感染徴候、精神症状、筋力、消化器症状を観察。
反応・再評価
頭痛・局所症状の改善と副作用を比較し、減量計画を確認。
適応・注意
脳浮腫すべてに有効ではない。脳出血・外傷の圧対策へ機械的に流用しない。

人工呼吸・鎮静鎮痛の調整

目的
酸素化・換気を保ち代謝や処置の負担を調整。
前に確認
気道、血圧、血液ガス、鎮静前の神経所見と個別目標を確認。
中に観察
換気・同調、血圧・脳灌流、鎮静深度・圧を観察。
反応・再評価
呼吸と圧の改善、低血圧や神経評価への影響を再評価。
適応・注意
過換気は脳血流を減らす。急変時に専門チームが一時使用する場合も、独断で予防的に続けない。

髄液ドレナージ

目的
適応のある水頭症等で髄液を排出して圧を軽減。
前に確認
排液方式・高さ・基準点、開閉条件、体位変更・搬送時の指示を照合。
中に観察
排液量・色、閉鎖系・挿入部、神経所見と圧測定条件を確認。
反応・再評価
症状・圧・画像と排液を比較。感染・過剰排液・閉塞を評価。
適応・注意
停止時も独断でフラッシュ・吸引・高さ変更をせず相談する。

減圧術・病変除去

目的
病変や圧迫を減らし脳の血流・機能を保つことを目指す。
前に確認
神経所見、画像、凝固・薬、手術と術後方針を確認。
中に観察
創部・排液、神経所見、呼吸循環・出血を観察。
反応・再評価
画像・神経機能と合併症を再評価し、リハビリへつなぐ。
適応・注意
原因・部位・時間と全身状態で適応が異なる。圧の低下が機能回復を保証するわけではない。

検査の意味と読み方

CTMRI

浮腫の分布、原因病変、偏位や水頭症を評価。

組み合わせ・推移:以前の画像が安定でも現在の悪化を否定しない。症状の変化時刻と比較。

頭蓋内圧脳灌流圧

圧と脳へ血液を送る条件を評価。

組み合わせ・推移:測定方式・基準点・体位と動脈圧を照合。単一値だけで機能を判断しない。

Na

浸透圧異常と治療中の変化を評価。

組み合わせ・推移:低下は浮腫を悪化させうる。高値や急変も投薬・補正速度と合わせる。

Naの検査詳細

血漿浸透圧

水分移動に関わる血液の条件を評価。

組み合わせ・推移:実測と計算の差や薬の影響も評価。単独の上限値で安全を保証しない。

血漿浸透圧の検査詳細

クレアチニン

浸透圧治療中の腎機能を評価。

組み合わせ・推移:上昇を尿量・出納・血圧と比較。尿量が多くても腎障害を否定しない。

クレアチニンの検査詳細

K

治療・腎障害による変化を評価。

組み合わせ・推移:上下の変化を心電図・腎機能・薬と合わせて追う。

Kの検査詳細

血液ガス

酸素化・換気・酸塩基の変化を評価。

組み合わせ・推移:PaCO₂を酸素化と区別。設定変更前後の条件、pH・PaO₂を照合。

血液ガスの検査詳細

血糖

反応低下の別原因と治療の影響を評価。

組み合わせ・推移:低血糖を見逃さず、高値も薬・栄養と照合。血糖だけで原因を決めない。

血糖の検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|変化と速度

  • いつからどの反応・瞳孔・動き・呼吸が変わったか。
  • 現在の意識・呼吸・循環。

B|原因と治療

  • 原因疾患、画像、鎮静・浸透圧治療、酸素・換気、排液と採血の条件。

A|直前との比較

  • GCS内訳、瞳孔・運動、血圧・脈、尿量・Naの推移。
  • 実施したケアと反応。

R|優先して確認

  • 気道管理、画像・脳外科評価、圧と脳灌流、投薬・排液・搬送の方針。

患者・家族への説明

変化を早く伝える

急な反応低下、手足・言葉の異常、繰り返す嘔吐、けいれんはすぐ連絡。眠っているだけと決めつけない。

観察を続ける理由

むくみは原因と時間経過で変わる。症状が軽くなっても、意識や手足の動きと採血・画像を合わせて確認する。

治療中の協力

飲水・活動・服薬は個別計画に合わせる。点滴やドレーンを自分で調節しない。

回復と生活の相談

経過は原因や部位で異なる。飲み込み・移動・理解や記憶の状態に合わせ、本人と家族の困りごとを共有する。

参考文献

  1. 国立がん研究センター:脳腫瘍の治療

    腫瘍周囲の浮腫とステロイド治療。

  2. 国立がん研究センター:脳腫瘍について

    浮腫・圧迫・水頭症の関係。

  3. NCS:急性脳浮腫治療ガイドライン(2020)

    浸透圧治療の安全性、体位・換気・髄液排出の限界。

  4. PMDA:マンニットール(2026年4月改訂)

    血腫の禁忌条件、腎機能・電解質・調製の注意。

資料確認:2026年9月16日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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