検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
急性:出血と脳損傷が重なる
- 外傷などで硬膜内側に出血
- 血腫と併存する脳損傷・腫脹が頭蓋内の余裕を減らす
- 意識・瞳孔・運動・呼吸が短時間に悪化しうる
観察へ:受傷前、受傷直後、現在の反応を比較。頸椎損傷や全身の出血も並行して評価する。
慢性:膜からの漏出・再出血で増大
- 軽い外傷などの後、硬膜内側に血腫と膜が形成される
- 膜の炎症や脆い血管からの漏出・再出血が続くことがある
- 脳の圧迫が増し、頭痛・歩行・認知・運動が変化する
観察へ:打撲を覚えていない場合もある。数週からの生活変化を聞き、認知症や加齢だけで説明しない。
術後:圧迫の軽減と再貯留の監視
- 血腫を除去し、必要に応じ閉鎖式ドレーンを留置
- 圧迫の軽減を図る一方、再出血・再貯留や感染に注意
- 神経所見と排液・創部・画像を組み合わせて再評価
観察へ:排液が減ったことだけで改善としない。意識や麻痺の変化、排液の急変は速やかに共有する。
頭蓋骨・硬膜・脳・血腫の位置と圧迫を簡略化した模式図。実際のCTや血腫量を示す図ではない。慢性でも急に悪化することがあり、片側の麻痺がないだけでは否定できない。
症状から観察・再確認へ
傾眠・反応や言動の変化
- 見る・聞く
- 開眼、会話、指示への運動反応を同じ方法で確認。GCSはE・V・Mの内訳も記録。
- 何を反映するか
- 脳の圧迫・損傷の変化に加え、低酸素、薬、代謝異常なども反映する。
- 普段と比較
- 普段、直前、手術前後の反応。鎮静・挿管・難聴など評価条件。
- 悪化を疑う変化
- 呼びかけへの反応が低下、急な不穏、指示に従えなくなる。
- 再確認
- 呼吸・循環・血糖と瞳孔・四肢を確認し報告。薬の影響だけと決めない。
瞳孔・麻痺・言葉の変化
- 見る・聞く
- 左右の瞳孔径と対光反射、顔と四肢の動き、発語を比較する。
- 何を反映するか
- 圧迫や脳損傷を捉える神経所見。単独で病変側や予後を断定しない。
- 普段と比較
- 受傷前の左右差、眼疾患・点眼、鎮静、直前の所見。
- 悪化を疑う変化
- 新しい瞳孔不同、反応の鈍化、麻痺の出現・増悪、発語困難。
- 再確認
- 意識・呼吸も直ちに確認し緊急報告。再評価や画像・処置の準備へ。
頭痛・嘔吐
- 見る・聞く
- 発症、強さ、増悪速度、体位との関係、嘔吐回数と意識を確認。
- 何を反映するか
- 頭蓋内の圧迫のほか、術後変化などの評価材料。
- 普段と比較
- 以前の頭痛、鎮痛前後、手術・体位変更・排液前後。
- 悪化を疑う変化
- 増悪する頭痛、反復嘔吐、傾眠や神経所見の変化を伴う。
- 再確認
- 誤嚥を防ぎ、呼吸・瞳孔・運動を再確認。鎮痛だけで経過を見ない。
歩行・生活機能の低下
- 見る・聞く
- 安全な範囲で立位・歩行、食事、着替え、反応の遅さを確認する。
- 何を反映するか
- 慢性の圧迫による変化の可能性。両側病変などでは明瞭な左右差がないこともある。
- 普段と比較
- 数週前の生活、転倒・頭部打撲、普段の介助量。
- 悪化を疑う変化
- 歩けなくなる、介助量が急増、眠気・新しい麻痺を伴う。
- 再確認
- 無理に歩かせず転倒予防と神経評価。新しい変化を認知症に含めない。
けいれん・呼吸の異常
- 見る・聞く
- 発症と持続、眼や四肢の動き、左右差、反応、呼吸数・SpO₂・酸素条件を確認。
- 何を反映するか
- 発作や脳損傷、低酸素などを疑う。動きが止まっても発作が続く場合がある。
- 普段と比較
- 発作前後の意識、既往、薬の投与と呼吸循環。
- 悪化を疑う変化
- 発作の持続・反復、意識が戻らない、気道保護が難しい。
- 再確認
- 応援要請し安全確保。口に物を入れず、気道管理・薬・脳波などの準備へ。
術後の排液・創部の変化
- 見る・聞く
- 留置位置・排液方式の指示、固定・屈曲、量・色・時間、創部と体温を確認。
- 何を反映するか
- 出血・再貯留・閉塞・感染などの評価材料。排液量だけでは脳の状態は分からない。
- 普段と比較
- 直前の排液、体位変更、術後の神経所見と出納。
- 悪化を疑う変化
- 急な血性排液の増加、停止と症状悪化、抜去・接続外れ、創部漏れや発熱。
- 再確認
- 神経・循環を確認し即時共有。自己判断で吸引・洗浄・高さ変更をしない。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
診察・画像で方針が決まり、神経所見と身体状態が安定し、定めた観察・再診計画がある。
次の行動:同じ方法で反応・瞳孔・運動と症状を追う。未評価の頭痛や受傷を自己判断で経過観察にしない。
早めの共有・報告
徐々に増える頭痛や歩きにくさ、生活機能低下、服薬情報の不足、術後の創部・排液の変化。
次の行動:経過と薬、直近の所見を整理して診察や画像の必要性を相談。新しい神経症状は緊急側へ判断する。
直ちに応援・緊急対応
反応低下、新しい瞳孔不同・麻痺、急激な頭痛と反復嘔吐、発作の持続・反復、呼吸循環の異常。
次の行動:応援要請しABCと神経所見を確認。緊急画像・脳神経外科評価・手術や気道管理の準備を進める。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|安全・呼吸循環を先に確認
応援要請、モニター、気道・呼吸・血圧を確認。外傷時は頸椎保護と全身の出血評価を並行し、意識変化時に経口摂取させない。
2|比較できる神経所見を残す
GCS内訳、左右の瞳孔・運動、発語と評価条件を記録。急変の報告を詳しい採点のために遅らせない。
3|薬と出血条件を確認
抗凝固薬・抗血小板薬の名前、最終服用、適応、腎機能を確認。処方情報と照合し、採血・中和治療の指示を確認する。
4|体位と刺激を調整
頸部のねじれや圧迫を避け、挙上・安静度は循環、脊椎損傷、術式、ドレーンの指示と合わせる。変更後に神経・循環・排液を再評価。
5|画像・手術・搬送を準備
指示された採血とルート、酸素・吸引・気道物品を準備。搬送時は直前所見、薬、排液方式と移動時の取り扱いを引き継ぐ。
6|閉鎖式ドレーンを保つ
指定された位置・方式・固定を維持し、接続と排液を確認。回路を不用意に開放せず、閉塞を疑っても独断で洗浄しない。
7|二次障害と再発を追う
嚥下・移動介助、皮膚、出納を確認。安静度の見直しと離床を相談し、退院後の再診・服薬再開・転倒予防を具体化する。
治療前・中・後の看護
急性の開頭血腫除去・必要時の減圧
- 目的
- 血腫の圧迫を解除し、出血源を処理する。
- 前に確認
- 神経所見、画像、凝固・薬、全身損傷、気道と循環を確認。
- 中に観察
- 術後は意識・瞳孔・運動、呼吸循環、創部・排液を追う。
- 反応・再評価
- 神経所見・画像・必要時の脳圧で評価。再出血や腫脹を疑う変化を報告。
- 適応・注意
- 血腫量だけでなく悪化速度と脳損傷を合わせて専門判断。減圧後の頭部保護・体位は術式別の指示を確認。
慢性の穿頭血腫除去・ドレナージ
- 目的
- 頭蓋骨の小孔から血腫を排出し脳への圧迫を軽減する。
- 前に確認
- 神経・生活機能、抗血栓薬、凝固、留置するドレーンの方式を確認。
- 中に観察
- 神経所見、排液の量・色・推移、固定、創部、発熱を観察。
- 反応・再評価
- 頭痛・麻痺・歩行と画像を比較。再貯留・感染・けいれんに注意。
- 適応・注意
- 症状・増大傾向などで選択。排液位置、体位、抜去時期を一律にしない。
抗凝固作用の中和・止血管理
- 目的
- 薬の作用が関与する血腫拡大を抑え、必要な手術を支える。
- 前に確認
- 薬名・最終服用、PT-INR等、腎機能、血栓症の既往と適応を確認。
- 中に観察
- 指示された中和薬の適合性と投与条件、過敏反応、新しい血栓徴候を確認。
- 反応・再評価
- 神経所見、画像、薬に対応する検査を再評価。数値改善だけで止血完了としない。
- 適応・注意
- ワルファリンとDOACでは選ぶ薬・評価が異なる。抗血小板薬服用だけで血小板輸血を一律に行わない。
凝固因子補充:プロトロンビン複合体製剤
- 目的
- ワルファリンなどビタミンK拮抗薬による凝固因子不足を迅速に補う。
- 前に確認
- 適応、PT-INR・体重、DIC・HIT歴、過敏症、ビタミンK併用の指示を確認。
- 中に観察
- 指定の溶剤・投与速度と静脈路を確認し、呼吸循環・過敏反応・新しい神経や四肢の変化を観察。
- 反応・再評価
- 凝固能、出血・神経所見、血小板を追う。血栓塞栓症やDICの徴候も確認。
- 適応・注意
- 国内の当該製剤の適応はビタミンK拮抗薬投与中の条件に限られる。DOACの中和と同一視せず、追加投与は独断で行わない。
ケイセントラ静注用500・1000の詳細を開く浸透圧療法:マンニトール等
- 目的
- 適応のある頭蓋内圧亢進で脳容積・圧を低下させる。
- 前に確認
- 出血源処理と再出血リスク、腎機能、尿量、脱水、Na・K、製剤・指示を確認。
- 中に観察
- 神経所見、血圧、呼吸、尿量、出納と電解質、結晶析出の有無を確認。
- 反応・再評価
- 神経所見・必要時の脳圧と、脱水・急性腎障害・電解質異常を再評価。
- 適応・注意
- マンニトールは急性頭蓋内血腫で出血源処理と再出血のおそれがない確認なしに投与しない。血腫除去の代用ではなく専門チームが適否を判断。
20%マンニットール注射液「YD」の詳細を開く抗発作薬と脳波による評価
- 目的
- 起きた発作を治療し、適応例では早期発作の予防を検討する。
- 前に確認
- 発作の経過、既往薬、意識・呼吸、腎肝機能、予防か治療かを確認。
- 中に観察
- 発作、鎮静・呼吸抑制、ふらつきや行動変化を薬ごとに確認。
- 反応・再評価
- 発作消失と意識回復を比較。覚醒が戻らなければ非けいれん性発作などを相談。
- 適応・注意
- 予防投与を全例・長期に固定しない。病型、損傷、発作・脳波に応じて期間を見直す。
保存的管理と再発例の専門評価
- 目的
- 安定例では経過を追い、再発や増大に応じ治療方針を変更する。
- 前に確認
- 画像・症状、通院と観察を支える体制、抗血栓薬の必要性を確認。
- 中に観察
- 頭痛・認知・歩行・麻痺を追い、再診予定と急変時の連絡先を共有。
- 反応・再評価
- 再画像と機能で比較。再発例では追加手術や中硬膜動脈塞栓術などを専門評価。
- 適応・注意
- 慢性の安定例でも急変時は待たない。薬物療法や血管内治療の適応・利益は個別に判断する。
検査の意味と読み方
頭部CT・MRI
血腫の位置・量、圧迫、併存損傷と再貯留を評価。
組み合わせ・推移:神経所見と時系列で比較。以前の画像が安定でも、新しい悪化には再評価が必要。
PT-INR
ワルファリン作用や凝固異常を確認。
組み合わせ・推移:延長を服薬・肝機能と照合。DOAC作用をこの値だけで判定せず、薬名・服用時刻と専門評価を合わせる。
PT-INRの検査詳細
APTT
内因系の凝固異常やヘパリン作用などを評価。
組み合わせ・推移:延長の原因は複数。正常値だけで抗凝固薬の影響を否定せず、投薬・採血条件を確認。
APTTの検査詳細
血小板
止血に関わる血小板数を評価。
組み合わせ・推移:低下は出血リスクの材料。数が正常でも抗血小板薬などによる機能の変化は否定できない。
血小板の検査詳細
Hgb
貧血と全身出血・治療の影響を評価。
組み合わせ・推移:急性出血直後は低下が目立たない場合がある。頭蓋内血腫の量をHgbだけで推定しない。
Hgbの検査詳細
Na
水分・電解質異常と治療による変化を評価。
組み合わせ・推移:高値・低値とも意識変化の原因になりうる。出納と変化速度を合わせ、急な補正を独断で行わない。
Naの検査詳細
K
浸透圧療法・腎機能などに伴う電解質異常を評価。
組み合わせ・推移:上昇・低下を心電図、尿量、薬と照合。単回値だけで補正を決めず投薬前後を追う。
Kの検査詳細
クレアチニン
腎機能と薬の排泄・浸透圧療法の負担を評価。
組み合わせ・推移:上昇は尿量・脱水・循環と照合する。普段の値、治療前後の推移を確認。
クレアチニンの検査詳細
脳波
発作や意識回復不良の原因を評価。
組み合わせ・推移:目に見えるけいれんがなくても発作を検討する場面がある。画像・薬・神経所見と組み合わせる。
報告:SBARで情報をそろえる
S|いつから何が変わったか
- 意識・瞳孔・麻痺・発作の変化と発見時点、現在の呼吸・循環。
B|受傷・治療の条件
- 受傷経過、病型と画像、術式、抗血栓薬の最終服用、酸素・鎮静・点滴、ドレーンの条件。
A|前後の比較
- GCS内訳・瞳孔・四肢、バイタルと検査の直近/現在、排液・出納、実施した看護と反応。
R|急いで確認してほしいこと
- 再画像・脳神経外科評価、気道・発作・止血対応、ドレーン異常と体位・搬送の指示。
患者・家族への説明
遅れて出る変化を伝える
頭を打った後、時間がたってから頭痛・歩行・もの忘れが変わる場合もある。新しい変化は受傷歴と一緒に相談する。
急な症状は待たない
呼びかけへの反応低下、新しい麻痺、けいれん、強まる頭痛と繰り返す嘔吐は緊急に連絡する。
薬の中止・再開を確認
抗血栓薬は出血と血栓の両方を考えて調整する。自己判断で再開・長期中止せず、処方元と再開計画を確認。
再診と安全な活動
症状が軽くなっても予定された再診を受ける。歩行補助、履物、照明、飲酒・眠気を来す薬を見直し、活動範囲を確認する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
疾患・病態の一覧に戻る