検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
髄液循環と生活機能の変化
- 髄液の循環・吸収に問題が生じる
- 脳室が拡大し、周囲の脳機能に影響する
- 歩行・認知・排尿に変化が現れる
観察へ:脳室の大きさだけで診断しない。歩行障害、生活上の認知変化、尿意・失禁の経過と合わせて専門評価へつなぐ。
特発性と、くも膜下出血・髄膜炎などに続く二次性がある。ここでは主に特発性の評価と看護を扱う。三徴候が全部そろうとは限らず、頭痛・嘔吐を典型症状として診断しない。
症状から観察・再確認へ
歩行障害・転倒
- 見る・聞く
- 歩き始め、足の上がり方、歩幅、方向転換、立ち上がりを見守り下で観察。補助具と介助量を記録。
- 何を反映するか
- 歩行の制御への影響の可能性。関節・脊椎・パーキンソン病などの併存も考慮する。
- 普段と比較
- 普段と現在、タップテスト・シャント前後を同じ条件で比較。
- 悪化を疑う変化
- 転倒増加、急に立てない、片側の麻痺や言語障害を伴う。
- 再確認
- 急変は脳卒中等の評価へ。改善後も方向転換・排泄時の安全と必要介助を再確認。
認知・意欲の変化
- 見る・聞く
- 反応の速さ、注意、動作開始、食事・更衣の段取りを確認。聴力、痛み、眠気も確認。
- 何を反映するか
- 認知機能の影響の可能性。アルツハイマー病などとの併存がありうる。
- 普段と比較
- 家族から病前の生活を聞き、検査前後の具体的な動作を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な意識低下、日内変動の増大、発熱や新たな神経症状。
- 再確認
- せん妄、感染、薬などを評価。歩行が良くなっても認知や安全判断が同じように改善したと決めない。
尿意切迫・失禁
- 見る・聞く
- 尿意、排尿頻度、漏れる時点、トイレまでの移動と介助、排尿痛を確認。
- 何を反映するか
- 排尿制御の変化と移動困難が関わりうる。尿路疾患も鑑別する。
- 普段と比較
- 失禁回数だけでなく尿意と移動時間、介助条件を前後比較。
- 悪化を疑う変化
- 新しい尿閉、排尿痛・発熱、急な排泄変化と神経症状。
- 再確認
- 原因を共有し、排泄誘導・動線調整後の漏れと皮膚状態を確認。
処置後の頭痛・嘔吐
- 見る・聞く
- タップテスト・シャント後は発症時点、体位との関係、意識・神経所見、発熱・創部を確認。
- 何を反映するか
- 髄液の排出に伴う変化や合併症の可能性。通常のNPH症状として見過ごさない。
- 普段と比較
- 処置前の状態、バルブ設定の変更、転倒や頭部打撲との関係を確認。
- 悪化を疑う変化
- 強い頭痛、反復する嘔吐、意識低下、新しい麻痺、発熱と創部異常。
- 再確認
- 活動を止めて診察を依頼。排出過多・閉塞・感染・出血等を評価し、体位や設定を自己判断で変更しない。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察
呼吸循環と意識が安定し、歩行・認知・排泄が基準から急変していない。
次の行動:生活動作の記録を続け、予定された診療・検査前後の評価を行う。
早めに共有・報告
転倒や失禁が増える、介助量が増す、術後改善した機能が再び低下する。
次の行動:経過、評価条件、薬・シャント情報を添えて専門医へ共有。再評価と安全策を調整。
直ちに応援要請
急な意識障害・麻痺、強い頭痛と嘔吐、呼吸循環異常、術後の重症感染を疑う変化。
次の行動:応援要請と呼吸循環・神経所見の確認を優先。NPHの進行と決めず、緊急診察と画像等の準備を行う。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|転倒しやすい場面を支える
歩き始め・方向転換・トイレを重点に見守る。通路、履物、補助具、呼出手段を整える。
2|検査前の基準をそろえる
歩行と認知・排尿の記録を残す。歩行距離、介助・補助具、検査時刻など比較条件を統一。
3|タップテストを安全に支える
抗血栓薬、凝固異常、穿刺部位、説明・同意と処置指示を確認。穿刺後の出血・漏れ・頭痛・神経所見を観察。
4|処置後の評価時期を共有
直後の一回だけで決めず、指示された時期に機能を再評価。疼痛や疲労で歩行結果が変わることも記録。
5|退院後まで比較を続ける
本人・家族と歩行、生活動作、失禁の目安を共有。症状再燃、発熱・創部変化時の連絡先を確認。
治療前・中・後の看護
タップテスト(髄液排除試験)
- 目的
- 髄液を一時的に排除した際の機能変化を調べ、診断・治療選択を助ける。
- 前に確認
- 禁忌・抗血栓薬、画像評価、歩行・認知・排尿の基準を確認。
- 中に観察
- 医師の腰椎穿刺を介助し、痛み・気分不良、処置後の漏れ・出血・頭痛を観察。
- 反応・再評価
- 決めた時期に同条件で再評価し、改善の有無と評価を妨げた要因を報告。
- 適応・注意
- 陰性だけでiNPHを除外しない。画像・臨床経過と合わせ、再検や治療の適応を専門医が判断する。
シャント手術
- 目的
- 髄液を別の部位へ流す経路を作り、症状改善を目指す。
- 前に確認
- 術式、神経・生活機能、併存疾患、抗血栓薬、感染リスクを確認。
- 中に観察
- 術後の意識・瞳孔・運動、頭痛・嘔吐、創部・発熱、術式に応じた腹部症状を観察。
- 反応・再評価
- 歩行・認知・排尿をそれぞれ比較し、改善と合併症を分けて評価。
- 適応・注意
- VP・LP等の術式は個別。閉塞・感染・排出過多などに注意し、全症状の回復を保証しない。
リハビリ・排泄と認知の支援
- 目的
- 安全な生活動作を保ち、治療後の機能を生活へつなぐ。
- 前に確認
- 転倒歴、介助量、注意・理解、尿意、家で必要な動作を確認。
- 中に観察
- 短い声かけと動作の区切りを用い、急がせず移乗・排泄を支える。
- 反応・再評価
- 介助量と本人の負担、転倒・失禁の変化を再評価。
- 適応・注意
- 併存する認知症等の薬は別の適応評価が必要。NPHの代わりの標準薬物治療とは扱わない。
検査の意味と読み方
CT・MRI
脳室拡大や髄液腔の分布、他疾患を評価する。
組み合わせ・推移:脳室拡大だけで診断しない。症候とタップテスト等を合わせる。
歩行・認知・排尿の機能評価
検査・治療前後の変化を客観的に比べる。
組み合わせ・推移:時間や点数だけでなく介助量・痛み・疲労を記録。三領域の反応は一致しない場合がある。
髄液検査
圧や性状などを医師が診断評価に用いる。
組み合わせ・推移:正常という病名だけで単回の圧から判断せず、臨床と画像を統合する。
報告:SBARで情報をそろえる
S|何が変化したか
- 歩行・意識・認知・排尿の変化と時点。
- 頭痛・嘔吐・発熱、呼吸循環の現在値。
B|治療と基準
- 検査・手術の時期、術式・バルブ設定情報、処置前の機能、薬と転倒・打撲歴。
- 使用中の酸素・点滴、直前の設定変更や処置。
A|比較と反応
- 同条件の歩行・介助量、生活動作、排泄記録、創部。
- 安全確保など実施した看護と反応。
R|確認事項
- 急変診察、シャント機能・画像評価、再検時期、活動・介助条件の確認。
患者・家族への説明
変化を具体的に伝える
歩き始めや方向転換、着替えの段取り、尿意など、以前との違いを伝えてもらう。
改善の幅には違いがある
検査や手術で全てが同時に改善するとは限らない。歩けるようになっても転倒対策と見守りを確認する。
術後も相談を続ける
新しい頭痛・嘔吐、意識の変化、発熱や創部異常、症状の再燃は連絡。シャント情報を受診先に伝える。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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