救急

感染

感染症は、病原体と体の反応によって組織や臓器に障害が起きる状態。感染部位、全身への影響、周囲への伝播を別々に評価する。菌の検出だけで感染や抗菌薬の必要性を決めない。

主な症状
局所症状 発熱 悪寒 全身悪化
代表的な薬
抗菌薬 抗ウイルス薬
検査値UP
CRP WBC
検査値DOWN
WBC

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

局所の感染:侵入と組織の炎症

局所の感染:侵入と組織の炎症皮膚・粘膜の防御を越える組織内の増殖 → 炎症・傷害痛み・分泌物・臓器の機能を観察
  1. 皮膚・粘膜などの防御を越えて病原体が侵入
  2. 組織内で増殖し、炎症と傷害が起こる
  3. 部位に応じた痛み・分泌物・機能低下が現れる

観察へ:局所の変化と普段の状態を比較。保菌は菌が存在する状態で、症状を伴う感染とは区別して評価する。

伝播:病原体が別の人へ届く経路

伝播:病原体が別の人へ届く経路分泌物・排泄物などから伝播病原体を含むもの手・物品呼吸器の粒子粘膜・気道傷など経路に合う対策で移動を遮る手指衛生・防護具・環境と換気
  1. 分泌物・排泄物などに病原体が含まれる
  2. 手・物品や呼吸器からの粒子を介して移動する
  3. 粘膜・気道・傷などへ届き、感染につながりうる

観察へ:標準予防策に、疑う感染経路に合う対策を追加。検査結果待ちの間も、症状と処置の曝露リスクを共有する。

感染の成立と、周囲へ広がる経路を分けた模式図。感染部位別の詳しい看護は関連疾患へつなぐ。接触・飛沫・空気予防策は病原体や処置によって組み合わせる。

症状から観察・再確認へ

発熱悪寒

見る・聞く
体温と悪寒の経過、解熱薬の時刻、脈拍・呼吸数・意識を確認。
何を反映するか
感染への反応の手がかり。発熱は感染以外でも起こり、感染でも高熱がない場合がある。
普段と比較
普段の体温、免疫抑制治療、処置や投薬の前後。
悪化を疑う変化
低体温を含む体温変化に、反応低下・頻呼吸・循環不良が重なる。
再確認
解熱だけで改善とせず、会話・呼吸・尿量と感染部位を再確認。

息苦しさ

見る・聞く
痰の量・性状、呼吸数・努力、会話、SpO₂と酸素条件、嚥下状況を見る。
何を反映するか
呼吸器感染の候補。痰の色だけで細菌性かどうかは決められない。
普段と比較
普段の痰と酸素需要、食事や嘔吐との時間関係。
悪化を疑う変化
呼吸負担や酸素需要が増す、会話が続かない。
再確認
呼吸の安楽と気道を確認し、採取した痰が唾液主体でないかも確認。

排尿時痛尿路の違和感

見る・聞く
排尿症状、下腹部・側腹部痛、尿量、カテーテルの屈曲・閉塞を確認。
何を反映するか
尿路感染や閉塞の手がかり。尿の混濁・臭い・培養陽性だけでは感染としない。
普段と比較
普段の排尿、留置の有無、直近の泌尿器処置。
悪化を疑う変化
側腹部痛や悪寒、尿量低下、全身状態悪化が加わる。
再確認
尿の流出と全身状態、採取部位・方法を共有。

創部の発赤腫脹排液

見る・聞く
範囲、熱感、痛み、排液、周囲皮膚とデバイス刺入部を観察。
何を反映するか
局所炎症の手がかり。表面培養には常在菌が混じることがある。
普段と比較
前回の範囲・痛み・排液と処置後の変化。
悪化を疑う変化
急速な拡大、強い痛み、皮膚色の変化や全身悪化。
再確認
創の深さや感染源処置の必要性を報告。刺入部が正常でも血流感染を除外しない。

下痢嘔吐

見る・聞く
回数・量・血液混入、腹痛、飲水、尿量、抗菌薬歴と周囲の同様症状を確認。
何を反映するか
消化管感染や薬剤性などを区別する材料。体液喪失と伝播にも注意する。
普段と比較
普段の便、下剤・経腸栄養の変更、抗菌薬開始前後。
悪化を疑う変化
飲めない、強い腹痛、血便、尿量低下や反応低下。
再確認
脱水・誤嚥リスクを評価し、検査の種類と排泄介助時の対策を確認。

普段と違う意識呼吸循環

見る・聞く
反応、呼吸数、血圧の推移、皮膚色・冷感、尿量を同時に確認。
何を反映するか
感染に新しい臓器障害が重なると敗血症を疑う。
普段と比較
普段と直前の状態、酸素・輸液・薬の条件。
悪化を疑う変化
急な意識変化、強い呼吸困難、循環不良が進む。
再確認
直ちに応援要請。検査結果を待たずABCと治療反応を追う。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察できる状態

評価・治療方針が共有され、意識・呼吸・循環が安定し、局所症状が改善傾向。

次の行動:計画した間隔で局所と全身を再評価。改善の目安と次の報告条件を確認する。

早めの共有・報告

新しい感染部位の症状、局所の拡大、治療後も改善しない経過、新しい下痢・発疹。

次の行動:経過、薬剤歴、検体・結果をまとめ、診察と治療・感染対策の見直しを相談する。

直ちに応援・緊急対応

急な反応低下、強い呼吸困難、循環不良や急速な局所悪化。

次の行動:応援要請とABC確認を優先し、敗血症などの緊急評価につなぐ。施設基準・個別指示に沿い、数値だけで待機しない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|急変を先に拾う

意識・呼吸・循環を確認。感染源探しや採取に集中して応援要請を遅らせない。

2|曝露を減らす

手指衛生と作業に合う防護具を使用。呼吸器症状・下痢・発疹などから追加予防策を確認し、移動先にも伝える。

3|部位と背景を整理

局所症状、留置デバイス、手術・抗菌薬歴、アレルギーと免疫抑制の有無を集める。

4|適切な検体を準備

指示された部位・容器・量・搬送条件を確認。可能なら抗菌薬前に採取し、困難な場合は直ちに共有して緊急治療の遅延を避ける。

5|治療を安全に実施

指示された薬・投与経路・速度と腎機能を照合。初回や変更後の過敏反応、点滴部位を確認する。

6|体液と生活を支える

飲水・摂取・排泄を把握。嘔吐時の誤嚥やふらつき時の転倒を予防し、補液・活動は呼吸循環と個別指示に合わせる。

7|結果を行動へ戻す

培養速報・感受性と臨床経過を共有し、薬の変更・継続期間、感染源処置、対策の継続条件を確認する。

治療前・中・後の看護

抗菌薬:細菌感染が疑われる場合

目的
想定・同定された細菌に対する原因治療。
前に確認
感染部位、アレルギーの反応内容、培養採取、腎機能、直近の抗菌薬を確認。
中に観察
過敏反応、下痢、発疹、点滴部位と臓器機能を薬剤別に観察。
反応・再評価
局所症状と全身状態の改善を追い、培養・感受性に応じた変更後も評価。
適応・注意
薬効群は感染部位・重症度・耐性リスクで選ぶ。ウイルス感染への一律投与はしない。具体薬は関連疾患の治療へ。

抗ウイルス薬・抗真菌薬など

目的
病原体に合った治療で増殖を抑える。
前に確認
対象病原体、発症経過、免疫状態、臓器機能、併用薬を確認。
中に観察
薬剤に応じた臓器障害・相互作用と投与継続の可否を確認。
反応・再評価
症状、摂取、呼吸・循環と必要な検査の推移で評価。
適応・注意
全ての感染で必要ではない。診断・背景に応じて選択され、細菌用の抗菌薬とは対象が異なる。

感染源への処置

目的
膿瘍、閉塞、感染したデバイスなど、薬だけでは残りうる原因へ対処。
前に確認
部位・画像・出血リスクと処置方針を確認。
中に観察
処置の準備と検体提出を支援。出血、痛み、循環変化を観察。
反応・再評価
排液や局所症状、発熱と臓器機能を再評価。
適応・注意
抜去・交換・ドレナージの適応はチームで判断し、看護師が一律に実施しない。

支持療法と苦痛の軽減

目的
原因治療と並行して呼吸・循環・摂取を支える。
前に確認
酸素化、体液喪失とうっ血、嚥下・意識、痛みを評価。
中に観察
指示された酸素・補液等の条件と呼吸負担、尿量を確認。
反応・再評価
安楽と臓器機能の回復を評価。解熱のみを治癒の指標にしない。
適応・注意
一律の飲水量・輸液量にしない。重症化時は敗血症の評価へ。

検査の意味と読み方

培養薬剤感受性

病原体と有効な薬の候補を評価。

組み合わせ・推移:陽性でも保菌・採取時の汚染を区別。部位と症状、採取条件、抗菌薬前後を合わせる。再培養は感染の種類と目的に応じる。

抗原核酸検査

対象病原体の成分を検出。

組み合わせ・推移:採取部位・時期・検査性能に左右される。陰性だけで除外せず、陽性だけで感染性や重症度を決めない。

CRP

炎症反応の程度と推移をみる。

組み合わせ・推移:感染以外でも上昇し、経過と時間差がある。症状改善や臓器機能と合わせて判断。

CRPの検査詳細

WBC

白血球の反応を確認。

組み合わせ・推移:増加だけでなく低下も背景により重要。薬や免疫状態と分画、過去値を合わせる。

WBCの検査詳細

クレアチニン

腎機能と薬の調整に関わる情報。

組み合わせ・推移:脱水や臓器障害、薬の影響を考え、尿量・普段の値・治療後の推移を併せる。

クレアチニンの検査詳細

画像検査

感染部位、膿瘍や閉塞などを評価。

組み合わせ・推移:画像のみで原因微生物は決まらない。局所症状と検体、処置の必要性をつなぐ。

報告:SBARで情報をそろえる

S|何が変わった

  • 発症からの経過と、今もっとも問題となる局所症状・全身変化。

B|背景と治療条件

  • 感染源候補、留置デバイス、免疫抑制・アレルギー、抗菌薬、酸素・点滴、採取済み検体。

A|現在と比較

  • 意識・呼吸・循環・尿量の直近値と現在、局所の拡大、実施した看護と反応。

R|依頼

  • 診察の緊急度、追加検体、薬と感染源処置の見直し、必要な感染対策を確認してほしい。

患者・家族への説明

悪化を早く伝える

息苦しさ、ぼんやりする、飲めない、尿が減る、痛みや赤みが急に広がるときは早く知らせる。

薬を自己判断で調整しない

処方と変更指示に従い、残った抗菌薬の再使用や他人との共有をしない。発疹や強い下痢などは相談する。

感染対策の理由を共有

手指衛生や咳への配慮、面会・移動の条件を具体的に説明する。必要な対策は病原体・症状で変わり、患者を責めるものではない。

参考文献

  1. JIHS:抗微生物薬適正使用の手引き 第三版

    総論、入院患者の培養採取と経験的治療。2026年9月16日確認。

  2. CDC:標準予防策

    全患者への標準予防策。2024年版、2026年9月16日確認。

  3. CDC:感染経路別予防策

    接触・飛沫・空気予防策。2024年版、2026年9月16日確認。

  4. CDC:感染対策の基本実践

    初期対応と曝露予防。2026年9月16日確認。

  5. CDC:敗血症の概要

    感染に伴う急変徴候。2026年9月16日確認。

資料確認:2026年9月16日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

疾患・病態の一覧に戻る