検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
局所の感染:侵入と組織の炎症
- 皮膚・粘膜などの防御を越えて病原体が侵入
- 組織内で増殖し、炎症と傷害が起こる
- 部位に応じた痛み・分泌物・機能低下が現れる
観察へ:局所の変化と普段の状態を比較。保菌は菌が存在する状態で、症状を伴う感染とは区別して評価する。
伝播:病原体が別の人へ届く経路
- 分泌物・排泄物などに病原体が含まれる
- 手・物品や呼吸器からの粒子を介して移動する
- 粘膜・気道・傷などへ届き、感染につながりうる
観察へ:標準予防策に、疑う感染経路に合う対策を追加。検査結果待ちの間も、症状と処置の曝露リスクを共有する。
感染の成立と、周囲へ広がる経路を分けた模式図。感染部位別の詳しい看護は関連疾患へつなぐ。接触・飛沫・空気予防策は病原体や処置によって組み合わせる。
症状から観察・再確認へ
発熱・悪寒
- 見る・聞く
- 体温と悪寒の経過、解熱薬の時刻、脈拍・呼吸数・意識を確認。
- 何を反映するか
- 感染への反応の手がかり。発熱は感染以外でも起こり、感染でも高熱がない場合がある。
- 普段と比較
- 普段の体温、免疫抑制治療、処置や投薬の前後。
- 悪化を疑う変化
- 低体温を含む体温変化に、反応低下・頻呼吸・循環不良が重なる。
- 再確認
- 解熱だけで改善とせず、会話・呼吸・尿量と感染部位を再確認。
咳・痰・息苦しさ
- 見る・聞く
- 痰の量・性状、呼吸数・努力、会話、SpO₂と酸素条件、嚥下状況を見る。
- 何を反映するか
- 呼吸器感染の候補。痰の色だけで細菌性かどうかは決められない。
- 普段と比較
- 普段の痰と酸素需要、食事や嘔吐との時間関係。
- 悪化を疑う変化
- 呼吸負担や酸素需要が増す、会話が続かない。
- 再確認
- 呼吸の安楽と気道を確認し、採取した痰が唾液主体でないかも確認。
排尿時痛・尿路の違和感
- 見る・聞く
- 排尿症状、下腹部・側腹部痛、尿量、カテーテルの屈曲・閉塞を確認。
- 何を反映するか
- 尿路感染や閉塞の手がかり。尿の混濁・臭い・培養陽性だけでは感染としない。
- 普段と比較
- 普段の排尿、留置の有無、直近の泌尿器処置。
- 悪化を疑う変化
- 側腹部痛や悪寒、尿量低下、全身状態悪化が加わる。
- 再確認
- 尿の流出と全身状態、採取部位・方法を共有。
創部の発赤・腫脹・排液
- 見る・聞く
- 範囲、熱感、痛み、排液、周囲皮膚とデバイス刺入部を観察。
- 何を反映するか
- 局所炎症の手がかり。表面培養には常在菌が混じることがある。
- 普段と比較
- 前回の範囲・痛み・排液と処置後の変化。
- 悪化を疑う変化
- 急速な拡大、強い痛み、皮膚色の変化や全身悪化。
- 再確認
- 創の深さや感染源処置の必要性を報告。刺入部が正常でも血流感染を除外しない。
下痢・嘔吐
- 見る・聞く
- 回数・量・血液混入、腹痛、飲水、尿量、抗菌薬歴と周囲の同様症状を確認。
- 何を反映するか
- 消化管感染や薬剤性などを区別する材料。体液喪失と伝播にも注意する。
- 普段と比較
- 普段の便、下剤・経腸栄養の変更、抗菌薬開始前後。
- 悪化を疑う変化
- 飲めない、強い腹痛、血便、尿量低下や反応低下。
- 再確認
- 脱水・誤嚥リスクを評価し、検査の種類と排泄介助時の対策を確認。
普段と違う意識・呼吸・循環
- 見る・聞く
- 反応、呼吸数、血圧の推移、皮膚色・冷感、尿量を同時に確認。
- 何を反映するか
- 感染に新しい臓器障害が重なると敗血症を疑う。
- 普段と比較
- 普段と直前の状態、酸素・輸液・薬の条件。
- 悪化を疑う変化
- 急な意識変化、強い呼吸困難、循環不良が進む。
- 再確認
- 直ちに応援要請。検査結果を待たずABCと治療反応を追う。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
評価・治療方針が共有され、意識・呼吸・循環が安定し、局所症状が改善傾向。
次の行動:計画した間隔で局所と全身を再評価。改善の目安と次の報告条件を確認する。
早めの共有・報告
新しい感染部位の症状、局所の拡大、治療後も改善しない経過、新しい下痢・発疹。
次の行動:経過、薬剤歴、検体・結果をまとめ、診察と治療・感染対策の見直しを相談する。
直ちに応援・緊急対応
急な反応低下、強い呼吸困難、循環不良や急速な局所悪化。
次の行動:応援要請とABC確認を優先し、敗血症などの緊急評価につなぐ。施設基準・個別指示に沿い、数値だけで待機しない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|急変を先に拾う
意識・呼吸・循環を確認。感染源探しや採取に集中して応援要請を遅らせない。
2|曝露を減らす
手指衛生と作業に合う防護具を使用。呼吸器症状・下痢・発疹などから追加予防策を確認し、移動先にも伝える。
3|部位と背景を整理
局所症状、留置デバイス、手術・抗菌薬歴、アレルギーと免疫抑制の有無を集める。
4|適切な検体を準備
指示された部位・容器・量・搬送条件を確認。可能なら抗菌薬前に採取し、困難な場合は直ちに共有して緊急治療の遅延を避ける。
5|治療を安全に実施
指示された薬・投与経路・速度と腎機能を照合。初回や変更後の過敏反応、点滴部位を確認する。
6|体液と生活を支える
飲水・摂取・排泄を把握。嘔吐時の誤嚥やふらつき時の転倒を予防し、補液・活動は呼吸循環と個別指示に合わせる。
7|結果を行動へ戻す
培養速報・感受性と臨床経過を共有し、薬の変更・継続期間、感染源処置、対策の継続条件を確認する。
治療前・中・後の看護
抗菌薬:細菌感染が疑われる場合
- 目的
- 想定・同定された細菌に対する原因治療。
- 前に確認
- 感染部位、アレルギーの反応内容、培養採取、腎機能、直近の抗菌薬を確認。
- 中に観察
- 過敏反応、下痢、発疹、点滴部位と臓器機能を薬剤別に観察。
- 反応・再評価
- 局所症状と全身状態の改善を追い、培養・感受性に応じた変更後も評価。
- 適応・注意
- 薬効群は感染部位・重症度・耐性リスクで選ぶ。ウイルス感染への一律投与はしない。具体薬は関連疾患の治療へ。
抗ウイルス薬・抗真菌薬など
- 目的
- 病原体に合った治療で増殖を抑える。
- 前に確認
- 対象病原体、発症経過、免疫状態、臓器機能、併用薬を確認。
- 中に観察
- 薬剤に応じた臓器障害・相互作用と投与継続の可否を確認。
- 反応・再評価
- 症状、摂取、呼吸・循環と必要な検査の推移で評価。
- 適応・注意
- 全ての感染で必要ではない。診断・背景に応じて選択され、細菌用の抗菌薬とは対象が異なる。
感染源への処置
- 目的
- 膿瘍、閉塞、感染したデバイスなど、薬だけでは残りうる原因へ対処。
- 前に確認
- 部位・画像・出血リスクと処置方針を確認。
- 中に観察
- 処置の準備と検体提出を支援。出血、痛み、循環変化を観察。
- 反応・再評価
- 排液や局所症状、発熱と臓器機能を再評価。
- 適応・注意
- 抜去・交換・ドレナージの適応はチームで判断し、看護師が一律に実施しない。
支持療法と苦痛の軽減
- 目的
- 原因治療と並行して呼吸・循環・摂取を支える。
- 前に確認
- 酸素化、体液喪失とうっ血、嚥下・意識、痛みを評価。
- 中に観察
- 指示された酸素・補液等の条件と呼吸負担、尿量を確認。
- 反応・再評価
- 安楽と臓器機能の回復を評価。解熱のみを治癒の指標にしない。
- 適応・注意
- 一律の飲水量・輸液量にしない。重症化時は敗血症の評価へ。
検査の意味と読み方
培養・薬剤感受性
病原体と有効な薬の候補を評価。
組み合わせ・推移:陽性でも保菌・採取時の汚染を区別。部位と症状、採取条件、抗菌薬前後を合わせる。再培養は感染の種類と目的に応じる。
抗原・核酸検査
対象病原体の成分を検出。
組み合わせ・推移:採取部位・時期・検査性能に左右される。陰性だけで除外せず、陽性だけで感染性や重症度を決めない。
CRP
炎症反応の程度と推移をみる。
組み合わせ・推移:感染以外でも上昇し、経過と時間差がある。症状改善や臓器機能と合わせて判断。
CRPの検査詳細
WBC
白血球の反応を確認。
組み合わせ・推移:増加だけでなく低下も背景により重要。薬や免疫状態と分画、過去値を合わせる。
WBCの検査詳細
クレアチニン
腎機能と薬の調整に関わる情報。
組み合わせ・推移:脱水や臓器障害、薬の影響を考え、尿量・普段の値・治療後の推移を併せる。
クレアチニンの検査詳細
画像検査
感染部位、膿瘍や閉塞などを評価。
組み合わせ・推移:画像のみで原因微生物は決まらない。局所症状と検体、処置の必要性をつなぐ。
報告:SBARで情報をそろえる
S|何が変わった
- 発症からの経過と、今もっとも問題となる局所症状・全身変化。
B|背景と治療条件
- 感染源候補、留置デバイス、免疫抑制・アレルギー、抗菌薬、酸素・点滴、採取済み検体。
A|現在と比較
- 意識・呼吸・循環・尿量の直近値と現在、局所の拡大、実施した看護と反応。
R|依頼
- 診察の緊急度、追加検体、薬と感染源処置の見直し、必要な感染対策を確認してほしい。
患者・家族への説明
悪化を早く伝える
息苦しさ、ぼんやりする、飲めない、尿が減る、痛みや赤みが急に広がるときは早く知らせる。
薬を自己判断で調整しない
処方と変更指示に従い、残った抗菌薬の再使用や他人との共有をしない。発疹や強い下痢などは相談する。
感染対策の理由を共有
手指衛生や咳への配慮、面会・移動の条件を具体的に説明する。必要な対策は病原体・症状で変わり、患者を責めるものではない。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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