内分泌・代謝

糖尿病

糖尿病では、インスリンの不足や効きにくさによって高血糖が続く。血糖の数字だけでなく、食事・薬・活動・体調の変化を一緒に捉える。急な低血糖と高血糖クリーゼを見逃さず、普段の生活と合併症予防を支える。

主な症状
口渇 多尿 体重変化 足のしびれ
代表的な薬
インスリン 血糖降下薬
検査値UP
血糖 HbA1c
検査値DOWN
血糖

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

1型:インスリン分泌の不足が中心

1型:インスリン分泌の不足が中心β細胞の障害 → 分泌が不足膵臓インスリン標的組織糖利用・代謝調節が障害補充不足 → ケトン増加にも注意血糖・摂取・投薬の条件をつなげる
  1. 膵臓のβ細胞が障害される
  2. インスリンが著しく不足し、糖利用や代謝調節が障害される
  3. 高血糖に加え、補充不足ではケトン産生が進みうる

観察へ:基礎インスリンの中断、ポンプの停止・閉塞、嘔吐や腹痛を確認。発症・進行速度は一様ではない。

2型:効きにくさと分泌低下が重なる

2型糖尿病:肝の糖放出と筋の取り込み低下分泌低下+インスリン抵抗性肝臓糖放出が増える筋など取り込みが低下血液中に糖が多く残る血糖の推移・脱水・合併症を評価
  1. 筋・脂肪・肝などでインスリン作用が不足
  2. 糖の取り込み低下や肝からの糖放出が重なる
  3. 高血糖が持続し、脱水や長期の臓器障害につながる

観察へ:体格だけで病態を決めない。食事・活動・感染・薬の変更と血糖の時間的関係を追う。

治療中の低血糖:供給と薬の作用のずれ

治療中の低血糖:供給と薬の作用のずれ食事・活動と薬の作用がずれる血液:糖が不足糖の供給不足 → 反応・意識に影響血糖+嚥下を確認 → 処置後も再評価
  1. 食事の遅れ・摂取減少、運動、薬の作用が重なる
  2. 血中の糖が必要量を下回る
  3. 冷汗や振戦、脳の糖不足による反応低下が起こりうる

観察へ:自覚症状が乏しい場合もある。意識と嚥下の安全を確認し、処置後の再測定まで続ける。

成人の学習用。1型・2型は原因の分類で、インスリン治療の有無だけでは区別しない。膵疾患・薬剤などによる糖尿病や妊娠中の糖代謝異常は、背景に応じた別の評価が必要。

症状から観察・再確認へ

冷汗振戦動悸

見る・聞く
直ちに血糖、意識、会話、嚥下の可否を確認。直前の食事・薬・活動を聞く。
何を反映するか
低血糖への自律神経反応の可能性。症状だけで原因を決めない。
普段と比較
普段の低血糖症状、前回値、最終投薬・摂取からの時間。
悪化を疑う変化
反応低下、けいれん、自分で補食できない。
再確認
施設の低血糖手順で対応後、血糖と症状を再確認。再低下の危険と原因を共有。

眠気混乱普段と違う行動

見る・聞く
呼びかけへの反応、左右差、呼吸・循環、血糖と測定条件を確認。
何を反映するか
低血糖・高浸透圧などのほか、脳卒中や感染も考える。
普段と比較
普段の認知・意識と発症時点。
悪化を疑う変化
気道を保てない、新しい麻痺、けいれん。
再確認
応援要請とABC。血糖が改善しても意識が戻らなければ追加評価を急ぐ。

口渇多尿体重減少

見る・聞く
飲水・排尿・摂取、体重、口腔乾燥、血圧・脈拍を確認。
何を反映するか
高血糖による浸透圧利尿やエネルギー利用不足の手がかり。
普段と比較
普段の体重・飲水・尿量、SGLT2阻害薬などの開始前後。
悪化を疑う変化
飲めない、乏尿、ふらつき、反応低下。
再確認
補給や治療後の尿量・循環と呼吸、血糖を確認。

嘔吐腹痛深い呼吸

見る・聞く
摂取、血糖、呼吸数・深さ、意識、ケトン、インスリン中断を確認。
何を反映するか
ケトアシドーシスなどの代謝失調を疑う材料。
普段と比較
感染・絶食・SGLT2阻害薬、ポンプトラブルの有無。
悪化を疑う変化
反応低下、循環不良、嘔吐持続や呼吸負担の増大。
再確認
緊急評価へつなぐ。SGLT2阻害薬使用中は血糖が高くなくても除外しない。

足のしびれ色の変化

見る・聞く
靴下を外し、足底・趾間・踵、傷、熱感、色、左右差、履物を確認。
何を反映するか
神経障害による気づきにくさや血流低下が傷の悪化に関わる。
普段と比較
普段の感覚と皮膚、歩行時痛や傷の範囲。
悪化を疑う変化
急な冷感・色の変化、壊死、広がる発赤や排膿。
再確認
圧迫や荷重の調整を相談し、血流・感染評価へ。痛くないことを安全の根拠にしない。

自己管理が続けにくい

見る・聞く
見え方、手の動き、理解、生活時間、費用、食事確保、支援者を具体的に確認。
何を反映するか
測定・注射・服薬の困難は治療の安全性に直結する。
普段と比較
退院前後や薬の変更前後に、実際の手順ができるか。
悪化を疑う変化
重複投与、取り違え、食事を確保できない、低血糖を繰り返す。
再確認
責めずに手順を一緒に確認し、薬剤師・療養指導・地域支援へつなぐ。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察できる状態

個別の治療目標と測定計画があり、摂取・投薬が対応し、急な症状がない。

次の行動:日内変動と生活条件を記録し、計画した時点で再評価する。症状がない高血糖も継続評価する。

早めの共有・報告

摂取低下、血糖の上昇・低下が続く、注射手技の問題、新しい足の傷。

次の行動:次の投薬・食事前に、薬の調整と測定間隔を相談。低血糖を認めたら報告待ちにせず施設手順で対応する。

直ちに応援・緊急対応

意識障害、嚥下不能、けいれん、循環不良、代謝失調を疑う嘔吐・呼吸変化。

次の行動:ABC確認と応援要請。口から無理に与えず緊急治療を準備。血糖の数値だけで待機しない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|急な症状では血糖とABC

転倒・誤嚥を防ぎ、意識・呼吸・循環と血糖を確認。局在症状や改善しない意識障害も報告する。

2|低血糖は嚥下で対応を分ける

意識清明で安全に飲み込める場合は、施設手順のブドウ糖補給と再測定。飲み込めない場合は経口摂取を避け、指示・手順に基づく静注ブドウ糖やグルカゴンを準備する。

3|食事と投薬を同じ時系列にする

実際の摂取量、配膳の遅れ、検査絶食、最終投薬、運動を照合。食事用インスリンの投与後に食べられなければ速やかに共有する。

4|基礎インスリンを区別

基礎分泌を補う薬と食事に対応する薬を照合。1型などでは絶食中も基礎インスリンが必要で、一律中止しない。投与調整は指示を確認する。

5|注射の取り違えを防ぐ

製剤名・濃度・単位・経路・時刻を照合し、外観や色だけで選ばない。注射部位の硬結と実際の操作を確認する。

6|体調不良時の変化を集める

発熱・嘔吐・下痢、出納、血糖・必要時ケトンを確認。休薬が必要な薬を照合し、連絡先と再開条件を明確にする。

7|処置後に再評価する

低血糖処置後は血糖と意識、再発を確認。高血糖治療後は循環・尿量・電解質も追う。足の傷は保護と感染・血流評価につなぐ。

治療前・中・後の看護

基礎インスリンの補充

目的
食間・夜間にも必要なインスリンを補う。
前に確認
病型、製剤と投与間隔、前回投与、空腹時・夜間の血糖を確認。
中に観察
夜間を含む低血糖、摂取低下、腎機能と注射部位を観察。
反応・再評価
空腹時の血糖が安定し、低血糖を増やしていないか。
適応・注意
食事用インスリンとは役割が異なる。絶食を理由に自己判断で中断せず調整指示を確認。

超速効型インスリン:食事に対応

目的
食後の血糖上昇に対応する。
前に確認
血糖、実際に食べられるか、製剤名・単位・投与時刻を確認。
中に観察
食事の遅れ、摂取不足、低血糖と注射部位を確認。
反応・再評価
食後の血糖と次の食前までの低血糖を評価。
適応・注意
代表例のノボラピッドは食直前の皮下注射。全製剤を同じ時刻・方法で扱わず、基礎補充の代用にしない。
ノボラピッド注 フレックスタッチの詳細を開く

SGLT2阻害薬

目的
尿への糖排泄を増やす。製剤・適応により心腎疾患の治療にも使う。
前に確認
病型、腎機能、体液量、併用薬、食事と手術予定を確認。
中に観察
脱水、尿路・性器感染、悪心・腹痛・呼吸変化を観察。
反応・再評価
血糖だけでなく体重・血圧・腎機能と有害事象を再評価。
適応・注意
シックデイには休薬が必要。血糖が正常に近くてもケトアシドーシスを疑う症状を評価し、再開は指示を確認する。
フォシーガ錠5mg・10mgの詳細を開く

SU薬・グリニド薬:インスリン分泌促進

目的
膵臓からのインスリン分泌を促し血糖を下げる。
前に確認
食事、腎機能、低血糖歴、併用薬を確認。
中に観察
食事の遅れや欠食、活動増加と低血糖を観察。
反応・再評価
食事との対応と血糖推移を評価し、反復する低血糖を共有。
適応・注意
製剤ごとに服用時刻・禁忌が異なる。低血糖は再発・遷延しうるため一度改善しても観察を終えない。

ビグアナイド薬

目的
主に肝からの糖放出を抑え、インスリン作用を改善する。
前に確認
腎機能、脱水、低酸素状態、造影検査予定を確認。
中に観察
消化器症状、摂取・脱水、強い倦怠感や呼吸の変化を確認。
反応・再評価
血糖と消化器症状・腎機能を評価。
適応・注意
シックデイや検査・臓器障害では休薬判断が必要。乳酸アシドーシスの危険を個別評価し、再開条件を確認。

食事・活動・療養支援

目的
栄養と生活の質を保ちながら血糖変動や合併症のリスクを減らす。
前に確認
生活時間、摂取、低血糖、足の傷、心腎疾患、支援の必要性を評価。
中に観察
活動と薬・食事の関係、足の負担、実行しにくい点を確認。
反応・再評価
続けられる方法になったか、血糖と体調を本人と振り返る。
適応・注意
一律の食事制限や運動量にしない。急性代謝失調や傷の状態では活動を調整する。

検査の意味と読み方

血糖

現在の高血糖・低血糖と治療反応。

組み合わせ・推移:食前後、投薬、症状と測定時刻を併記。一般に70mg/dL未満は低血糖対応の目安だが、症状・変化速度も評価し施設手順を優先する。

血糖の検査詳細

HbA1c

過去およそ1〜2か月を中心とした血糖状態を反映。

組み合わせ・推移:急な低血糖は分からない。貧血・出血・輸血などで血糖とずれることがあり、測定値や生活条件と併せる。

HbA1cの検査詳細

ケトンpH

ケトン増加とアシドーシスを評価。

組み合わせ・推移:血糖だけでDKAを除外しない。症状、薬、血中ケトンや血液ガスを組み合わせる。

pHの検査詳細

クレアチニンeGFR尿アルブミン

腎機能と腎障害を異なる側面から評価。

組み合わせ・推移:単回の尿異常だけで決めず推移を追う。腎機能低下では薬の選択・量と低血糖リスクも再確認。

CREの検査詳細

eGFRの検査詳細

K

インスリン治療や体液喪失に伴う変動を評価。

組み合わせ・推移:急性代謝失調では治療中に低下しうる。心電図・尿量・腎機能と合わせる。

Kの検査詳細

眼底足の評価

自覚しにくい網膜症・神経障害・血流障害を調べる。

組み合わせ・推移:血糖が良好でも定期評価が必要。急な視力変化や足の傷は予定の受診まで待たず相談。

報告:SBARで情報をそろえる

S|今の変化

  • 低血糖症状、意識・呼吸・循環、血糖、発症からの経過。

B|摂取と薬

  • 病型、最終の食事量・投薬名と時刻、絶食・感染、腎機能。
  • ポンプ・注射、糖含有輸液の条件、使用中の酸素。

A|比較と反応

  • 前回値と現在値、実施した補給・処置、再測定値、意識の回復や再低下。

R|確認依頼

  • 緊急評価、次の投薬と食事、再測定間隔、ケトン・採血、休薬・再開条件の指示。

患者・家族への説明

低血糖に備える

自分に出やすい症状と対処を確認し、ブドウ糖などを準備。意識が悪いときは周囲が無理に飲ませず救急要請する。

体調不良時の計画

薬ごとの中止・継続・調整と連絡条件を事前に書面で決める。嘔吐、飲めない、意識や呼吸の変化は早く相談する。

毎日の足と定期受診

足裏や足の指の間も確認し、傷や色の変化を相談。見えにくければ鏡や支援を利用し、眼・腎・足の定期評価を続ける。

続けられる治療を相談

食事、仕事、費用、測定や注射の負担を伝えてよい。糖尿病を本人の努力不足と決めつけず、生活に合う支援を考える。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会:診療ガイドライン2024 第5章

    薬の選択、低血糖リスク、併存症。2026年9月16日確認。

  2. 日本糖尿病学会:診療ガイドライン2024 第6章

    基礎・追加インスリンの役割。2026年9月16日確認。

  3. 糖尿病情報センター:シックデイ

    体調不良時の相談と薬の調整。2026年9月16日確認。

  4. NIDDK:低血糖

    低血糖の症状と対応後の再確認。2026年9月16日確認。

  5. 日本糖尿病学会:SGLT2阻害薬の適正使用

    公開PDFの2022年7月改訂版。シックデイとケトアシドーシス。2026年9月16日確認。

  6. PMDA:ノボラピッド注

    2025年6月改訂版。製剤・投与時刻・低血糖・注射部位の注意。

  7. PMDA:フォシーガ錠

    2026年4月版。尿路・性器感染とケトアシドーシスの注意。

資料確認:2026年9月16日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

疾患・病態の一覧に戻る