検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
1型:インスリン分泌の不足が中心
- 膵臓のβ細胞が障害される
- インスリンが著しく不足し、糖利用や代謝調節が障害される
- 高血糖に加え、補充不足ではケトン産生が進みうる
観察へ:基礎インスリンの中断、ポンプの停止・閉塞、嘔吐や腹痛を確認。発症・進行速度は一様ではない。
2型:効きにくさと分泌低下が重なる
- 筋・脂肪・肝などでインスリン作用が不足
- 糖の取り込み低下や肝からの糖放出が重なる
- 高血糖が持続し、脱水や長期の臓器障害につながる
観察へ:体格だけで病態を決めない。食事・活動・感染・薬の変更と血糖の時間的関係を追う。
治療中の低血糖:供給と薬の作用のずれ
- 食事の遅れ・摂取減少、運動、薬の作用が重なる
- 血中の糖が必要量を下回る
- 冷汗や振戦、脳の糖不足による反応低下が起こりうる
観察へ:自覚症状が乏しい場合もある。意識と嚥下の安全を確認し、処置後の再測定まで続ける。
成人の学習用。1型・2型は原因の分類で、インスリン治療の有無だけでは区別しない。膵疾患・薬剤などによる糖尿病や妊娠中の糖代謝異常は、背景に応じた別の評価が必要。
症状から観察・再確認へ
冷汗・振戦・動悸
- 見る・聞く
- 直ちに血糖、意識、会話、嚥下の可否を確認。直前の食事・薬・活動を聞く。
- 何を反映するか
- 低血糖への自律神経反応の可能性。症状だけで原因を決めない。
- 普段と比較
- 普段の低血糖症状、前回値、最終投薬・摂取からの時間。
- 悪化を疑う変化
- 反応低下、けいれん、自分で補食できない。
- 再確認
- 施設の低血糖手順で対応後、血糖と症状を再確認。再低下の危険と原因を共有。
眠気・混乱・普段と違う行動
- 見る・聞く
- 呼びかけへの反応、左右差、呼吸・循環、血糖と測定条件を確認。
- 何を反映するか
- 低血糖・高浸透圧などのほか、脳卒中や感染も考える。
- 普段と比較
- 普段の認知・意識と発症時点。
- 悪化を疑う変化
- 気道を保てない、新しい麻痺、けいれん。
- 再確認
- 応援要請とABC。血糖が改善しても意識が戻らなければ追加評価を急ぐ。
口渇・多尿・体重減少
- 見る・聞く
- 飲水・排尿・摂取、体重、口腔乾燥、血圧・脈拍を確認。
- 何を反映するか
- 高血糖による浸透圧利尿やエネルギー利用不足の手がかり。
- 普段と比較
- 普段の体重・飲水・尿量、SGLT2阻害薬などの開始前後。
- 悪化を疑う変化
- 飲めない、乏尿、ふらつき、反応低下。
- 再確認
- 補給や治療後の尿量・循環と呼吸、血糖を確認。
嘔吐・腹痛・深い呼吸
- 見る・聞く
- 摂取、血糖、呼吸数・深さ、意識、ケトン、インスリン中断を確認。
- 何を反映するか
- ケトアシドーシスなどの代謝失調を疑う材料。
- 普段と比較
- 感染・絶食・SGLT2阻害薬、ポンプトラブルの有無。
- 悪化を疑う変化
- 反応低下、循環不良、嘔吐持続や呼吸負担の増大。
- 再確認
- 緊急評価へつなぐ。SGLT2阻害薬使用中は血糖が高くなくても除外しない。
足のしびれ・傷・色の変化
- 見る・聞く
- 靴下を外し、足底・趾間・踵、傷、熱感、色、左右差、履物を確認。
- 何を反映するか
- 神経障害による気づきにくさや血流低下が傷の悪化に関わる。
- 普段と比較
- 普段の感覚と皮膚、歩行時痛や傷の範囲。
- 悪化を疑う変化
- 急な冷感・色の変化、壊死、広がる発赤や排膿。
- 再確認
- 圧迫や荷重の調整を相談し、血流・感染評価へ。痛くないことを安全の根拠にしない。
自己管理が続けにくい
- 見る・聞く
- 見え方、手の動き、理解、生活時間、費用、食事確保、支援者を具体的に確認。
- 何を反映するか
- 測定・注射・服薬の困難は治療の安全性に直結する。
- 普段と比較
- 退院前後や薬の変更前後に、実際の手順ができるか。
- 悪化を疑う変化
- 重複投与、取り違え、食事を確保できない、低血糖を繰り返す。
- 再確認
- 責めずに手順を一緒に確認し、薬剤師・療養指導・地域支援へつなぐ。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
個別の治療目標と測定計画があり、摂取・投薬が対応し、急な症状がない。
次の行動:日内変動と生活条件を記録し、計画した時点で再評価する。症状がない高血糖も継続評価する。
早めの共有・報告
摂取低下、血糖の上昇・低下が続く、注射手技の問題、新しい足の傷。
次の行動:次の投薬・食事前に、薬の調整と測定間隔を相談。低血糖を認めたら報告待ちにせず施設手順で対応する。
直ちに応援・緊急対応
意識障害、嚥下不能、けいれん、循環不良、代謝失調を疑う嘔吐・呼吸変化。
次の行動:ABC確認と応援要請。口から無理に与えず緊急治療を準備。血糖の数値だけで待機しない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|急な症状では血糖とABC
転倒・誤嚥を防ぎ、意識・呼吸・循環と血糖を確認。局在症状や改善しない意識障害も報告する。
2|低血糖は嚥下で対応を分ける
意識清明で安全に飲み込める場合は、施設手順のブドウ糖補給と再測定。飲み込めない場合は経口摂取を避け、指示・手順に基づく静注ブドウ糖やグルカゴンを準備する。
3|食事と投薬を同じ時系列にする
実際の摂取量、配膳の遅れ、検査絶食、最終投薬、運動を照合。食事用インスリンの投与後に食べられなければ速やかに共有する。
4|基礎インスリンを区別
基礎分泌を補う薬と食事に対応する薬を照合。1型などでは絶食中も基礎インスリンが必要で、一律中止しない。投与調整は指示を確認する。
5|注射の取り違えを防ぐ
製剤名・濃度・単位・経路・時刻を照合し、外観や色だけで選ばない。注射部位の硬結と実際の操作を確認する。
6|体調不良時の変化を集める
発熱・嘔吐・下痢、出納、血糖・必要時ケトンを確認。休薬が必要な薬を照合し、連絡先と再開条件を明確にする。
7|処置後に再評価する
低血糖処置後は血糖と意識、再発を確認。高血糖治療後は循環・尿量・電解質も追う。足の傷は保護と感染・血流評価につなぐ。
治療前・中・後の看護
基礎インスリンの補充
- 目的
- 食間・夜間にも必要なインスリンを補う。
- 前に確認
- 病型、製剤と投与間隔、前回投与、空腹時・夜間の血糖を確認。
- 中に観察
- 夜間を含む低血糖、摂取低下、腎機能と注射部位を観察。
- 反応・再評価
- 空腹時の血糖が安定し、低血糖を増やしていないか。
- 適応・注意
- 食事用インスリンとは役割が異なる。絶食を理由に自己判断で中断せず調整指示を確認。
超速効型インスリン:食事に対応
- 目的
- 食後の血糖上昇に対応する。
- 前に確認
- 血糖、実際に食べられるか、製剤名・単位・投与時刻を確認。
- 中に観察
- 食事の遅れ、摂取不足、低血糖と注射部位を確認。
- 反応・再評価
- 食後の血糖と次の食前までの低血糖を評価。
- 適応・注意
- 代表例のノボラピッドは食直前の皮下注射。全製剤を同じ時刻・方法で扱わず、基礎補充の代用にしない。
ノボラピッド注 フレックスタッチの詳細を開くSGLT2阻害薬
- 目的
- 尿への糖排泄を増やす。製剤・適応により心腎疾患の治療にも使う。
- 前に確認
- 病型、腎機能、体液量、併用薬、食事と手術予定を確認。
- 中に観察
- 脱水、尿路・性器感染、悪心・腹痛・呼吸変化を観察。
- 反応・再評価
- 血糖だけでなく体重・血圧・腎機能と有害事象を再評価。
- 適応・注意
- シックデイには休薬が必要。血糖が正常に近くてもケトアシドーシスを疑う症状を評価し、再開は指示を確認する。
フォシーガ錠5mg・10mgの詳細を開くSU薬・グリニド薬:インスリン分泌促進
- 目的
- 膵臓からのインスリン分泌を促し血糖を下げる。
- 前に確認
- 食事、腎機能、低血糖歴、併用薬を確認。
- 中に観察
- 食事の遅れや欠食、活動増加と低血糖を観察。
- 反応・再評価
- 食事との対応と血糖推移を評価し、反復する低血糖を共有。
- 適応・注意
- 製剤ごとに服用時刻・禁忌が異なる。低血糖は再発・遷延しうるため一度改善しても観察を終えない。
ビグアナイド薬
- 目的
- 主に肝からの糖放出を抑え、インスリン作用を改善する。
- 前に確認
- 腎機能、脱水、低酸素状態、造影検査予定を確認。
- 中に観察
- 消化器症状、摂取・脱水、強い倦怠感や呼吸の変化を確認。
- 反応・再評価
- 血糖と消化器症状・腎機能を評価。
- 適応・注意
- シックデイや検査・臓器障害では休薬判断が必要。乳酸アシドーシスの危険を個別評価し、再開条件を確認。
食事・活動・療養支援
- 目的
- 栄養と生活の質を保ちながら血糖変動や合併症のリスクを減らす。
- 前に確認
- 生活時間、摂取、低血糖、足の傷、心腎疾患、支援の必要性を評価。
- 中に観察
- 活動と薬・食事の関係、足の負担、実行しにくい点を確認。
- 反応・再評価
- 続けられる方法になったか、血糖と体調を本人と振り返る。
- 適応・注意
- 一律の食事制限や運動量にしない。急性代謝失調や傷の状態では活動を調整する。
検査の意味と読み方
血糖
現在の高血糖・低血糖と治療反応。
組み合わせ・推移:食前後、投薬、症状と測定時刻を併記。一般に70mg/dL未満は低血糖対応の目安だが、症状・変化速度も評価し施設手順を優先する。
血糖の検査詳細
HbA1c
過去およそ1〜2か月を中心とした血糖状態を反映。
組み合わせ・推移:急な低血糖は分からない。貧血・出血・輸血などで血糖とずれることがあり、測定値や生活条件と併せる。
HbA1cの検査詳細
ケトン・pH
ケトン増加とアシドーシスを評価。
組み合わせ・推移:血糖だけでDKAを除外しない。症状、薬、血中ケトンや血液ガスを組み合わせる。
pHの検査詳細
クレアチニン・eGFR・尿アルブミン
腎機能と腎障害を異なる側面から評価。
組み合わせ・推移:単回の尿異常だけで決めず推移を追う。腎機能低下では薬の選択・量と低血糖リスクも再確認。
CREの検査詳細
eGFRの検査詳細
K
インスリン治療や体液喪失に伴う変動を評価。
組み合わせ・推移:急性代謝失調では治療中に低下しうる。心電図・尿量・腎機能と合わせる。
Kの検査詳細
眼底・足の評価
自覚しにくい網膜症・神経障害・血流障害を調べる。
組み合わせ・推移:血糖が良好でも定期評価が必要。急な視力変化や足の傷は予定の受診まで待たず相談。
報告:SBARで情報をそろえる
S|今の変化
- 低血糖症状、意識・呼吸・循環、血糖、発症からの経過。
B|摂取と薬
- 病型、最終の食事量・投薬名と時刻、絶食・感染、腎機能。
- ポンプ・注射、糖含有輸液の条件、使用中の酸素。
A|比較と反応
- 前回値と現在値、実施した補給・処置、再測定値、意識の回復や再低下。
R|確認依頼
- 緊急評価、次の投薬と食事、再測定間隔、ケトン・採血、休薬・再開条件の指示。
患者・家族への説明
低血糖に備える
自分に出やすい症状と対処を確認し、ブドウ糖などを準備。意識が悪いときは周囲が無理に飲ませず救急要請する。
体調不良時の計画
薬ごとの中止・継続・調整と連絡条件を事前に書面で決める。嘔吐、飲めない、意識や呼吸の変化は早く相談する。
毎日の足と定期受診
足裏や足の指の間も確認し、傷や色の変化を相談。見えにくければ鏡や支援を利用し、眼・腎・足の定期評価を続ける。
続けられる治療を相談
食事、仕事、費用、測定や注射の負担を伝えてよい。糖尿病を本人の努力不足と決めつけず、生活に合う支援を考える。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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