腎・泌尿器

ネフローゼ症候群

尿への蛋白喪失、体液の分布、感染・血栓のリスクを一緒に追う。むくみの軽減だけでなく、尿蛋白とAlb、循環・腎機能、治療の有害反応を合わせて評価する。

主な症状
むくみ 泡立つ尿 血栓 感染徴候
代表的な薬
利尿薬 ステロイド 免疫抑制薬
検査値UP
尿蛋白 LDL
検査値DOWN
Alb

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

糸球体の障害:蛋白が尿へ漏れる

糸球体の障害によって血液の蛋白が尿へ漏れる血液側尿側糸球体の濾過障壁に障害蛋白が尿へ漏れる → 尿蛋白で捉えるeGFRが保たれている場合もある
  1. 糸球体の蛋白を保持する仕組みが障害
  2. 尿への蛋白喪失が増える
  3. 低Alb・浮腫、感染や血栓のリスク

観察へ:泡立ちの強さだけで尿蛋白量を判断しない。採尿条件をそろえ、蛋白定量と血中Albを比較する。

浮腫:血管と組織の水分を分けて考える

蛋白喪失と腎臓の塩分保持が浮腫へつながる尿へ蛋白喪失 → 血中Alb低下血管内に水分を保つ力が低下組織に水分がたまる → 浮腫腎でのNa・水分保持も関与する
  1. 低Albと腎のNa保持
  2. 水分が組織へたまる
  3. 体重増加・浮腫、胸腹水による息苦しさ

観察へ:浮腫が強くても血圧低下や低灌流を伴う場合がある。利尿前後の循環と腎機能を併せる。

蛋白の漏出と浮腫の仕組みを分けた模式図。浮腫には低Albと腎でのNa・水分保持が関与し、血管内の体液量は患者ごとに異なる。

症状から観察・再確認へ

むくみ体重増加

見る・聞く
同条件の体重、下腿・仙骨・まぶたの浮腫、腹部の張り、尿量・摂取量、皮膚の傷を確認。
何を反映するか
組織の体液貯留を反映する。血管内の充足を浮腫だけで決めない。
普段と比較
体重・腹囲・尿量の連続推移と利尿薬前後を比較。
悪化を疑う変化
急な増加、尿量低下、息苦しさ、血圧低下や冷感を伴う。
再確認
利尿後の血圧・立ちくらみ・Cr・電解質と皮膚状態を確認。

息切れ

見る・聞く
発症の急さ、呼吸数・努力、会話、体位、SpO₂と酸素条件、胸痛、血圧を確認。
何を反映するか
体液貯留のほか肺血栓塞栓症なども考える。むくみのためと即断しない。
普段と比較
安静・活動時の負担と前回の酸素条件を比較。
悪化を疑う変化
突然の胸痛・呼吸苦、失神、低酸素や循環不良。
再確認
安全確保と応援要請後、呼吸・意識・循環を継続評価。改善しても原因評価を共有。

片脚の腫れ痛み

見る・聞く
左右差、発症時刻、痛み・熱感、色、呼吸症状を確認。強く揉まない。
何を反映するか
全身浮腫とは異なる静脈血栓を疑う変化。所見だけで確定できない。
普段と比較
普段の両側浮腫から新しい左右差が出たかを見る。
悪化を疑う変化
呼吸苦・胸痛・失神が加わる。
再確認
評価・処置後の呼吸循環と、抗凝固時の出血徴候を確認。

発熱倦怠感

見る・聞く
体温、悪寒、咳、腹痛、排尿症状、皮膚、意識・血圧を確認。免疫抑制薬の種類と投与時期を記録。
何を反映するか
蛋白喪失や免疫抑制治療に伴う感染リスク。発熱が弱くても否定できない。
普段と比較
普段の活動・食欲、治療開始前後、白血球推移と比較。
悪化を疑う変化
反応低下、呼吸促迫、血圧低下・冷感、強い腹痛。
再確認
感染評価後も全身状態を追い、解熱だけで改善としない。

看護判断:変化の緊急度

継続観察

治療計画があり体重・浮腫・尿蛋白が改善傾向で、循環・腎機能が安定し新しい感染・血栓徴候がない。

次の行動:指定された採尿・採血と生活記録を続け、副作用も確認。

早めに共有

浮腫や蛋白尿の再増悪、尿量低下、発熱・腹痛、片脚の腫れ、薬剤後のふらつき。

次の行動:再燃、感染、血栓、体液不足・腎障害の評価を相談。新しい片脚症状は速やかに評価。

直ちに応援要請

突然の呼吸困難・胸痛、意識障害、循環不良、新しい麻痺など。

次の行動:急変対応を起動。呼吸循環を評価し、肺塞栓・重症感染などの緊急評価を準備。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

急変徴候を先に見る

呼吸・循環・意識を評価。胸痛や片脚の腫れを全身浮腫と同じ扱いにせず共有する。

体液と蛋白尿を記録

体重、尿量、摂取、浮腫、血圧を同条件で追う。蓄尿は開始・終了と採り漏れを記録する。

皮膚と活動を支える

浮腫のある皮膚を清潔に保ち圧迫・摩擦を避ける。安静度を確認し、安全な活動と体位調整で廃用を防ぐ。

治療と感染予防を確認

手指衛生と口腔ケアを支援。免疫抑制薬、予防薬、予防接種の種類・時期を医療者と確認。自己判断で生ワクチンを受けない。

利尿・免疫治療後を再評価

尿蛋白・Albの反応と、血圧・Cr・K・血糖・感染徴候を併せる。見た目の浮腫だけで寛解と判断しない。

治療前・中・後の看護

原因・病理に応じた免疫治療

目的
適応のある病型で糸球体障害の原因となる免疫反応を抑える。
前に確認
病理、原疾患、感染リスク、血糖・血圧・骨のリスク、併用薬を確認。
中に観察
感染、高血糖、不眠・気分の変化、胃腸症状、薬ごとの腎障害・血球減少などを追う。
反応・再評価
尿蛋白とAlbの回復、再燃と副作用を評価。減量計画と服用継続を確認する。
適応・注意
微小変化型、膜性腎症、一次性・二次性FSGS(糸球体の一部が硬くなる病変)、糖尿病などで治療が異なる。ステロイドを全例に使わず、自己中断もしない。

利尿薬・塩分調整

目的
過剰なNa・水分を減らし浮腫と呼吸の負担を軽減。
前に確認
血圧、循環、出納、体重、Cr・Na・K、前回の反応を確認。
中に観察
尿量と呼吸の変化、立ちくらみ・口渇・低血圧、筋力低下や動悸を確認。
反応・再評価
浮腫の軽減と腎機能・電解質の安定を併せて見る。
適応・注意
水分・塩分は個別計画に合わせる。低灌流を伴う状態で利尿だけを増やさない。アルブミン補充も低値だけで一律に行わない。
フロセミドの詳細を開く

蛋白尿・血圧への治療

目的
適応のある患者で血圧と糸球体への負荷を調整する。
前に確認
血圧、Cr・K、脱水や妊娠の可能性、併用薬と適応を確認。
中に観察
降圧後のふらつき・低灌流、Cr・Kの変化を追う。
反応・再評価
血圧だけでなく蛋白尿の推移、忍容性と腎機能を比較。
適応・注意
ACE阻害薬・ARBなどは病態に応じて選ぶ。急性腎障害や脱水時は投与条件を処方者へ確認。

血栓リスクの評価・抗凝固

目的
必要な患者で血栓を予防・治療する。
前に確認
血栓症状・既往、Albと病型、出血リスク、腎生検や処置予定を確認。
中に観察
出血、血尿・黒色便、頭痛・神経症状と、血栓症状の変化を観察。
反応・再評価
薬剤に応じた検査と出血・塞栓の有無を継続確認。
適応・注意
予防的抗凝固は全例一律ではない。血栓と出血のリスクを比較して適応を決める。

検査の意味と読み方

尿蛋白

糸球体からの蛋白喪失を定量する。

組み合わせ・推移:随時尿の蛋白/Cr比と蓄尿など測定法を区別。採尿条件と推移で治療反応を見て、泡立ちだけで代用しない。

Alb

蛋白喪失と全身状態の評価。

組み合わせ・推移:低値は炎症・肝疾患・栄養にも左右される。尿蛋白と体重・浮腫を併せ、値だけで補充を決めない。

Albの検査詳細

Cr

腎機能の変化を評価。

組み合わせ・推移:上昇時は原疾患、感染、循環不足や薬剤影響を尿量・血圧と合わせる。

Crの検査詳細

K

利尿薬や腎機能による電解質変化を見る。

組み合わせ・推移:低下・上昇とも不整脈に関わる。薬剤変更前後と心電図・筋力を比較。

Kの検査詳細

腎生検

病型と治療方針の判断材料を得る。

組み合わせ・推移:適応は個別判断。前に凝固・抗血栓薬・血圧、後に血尿・腰痛・循環を確認し、安静手順を守る。

報告:SBARで情報をそろえる

S:変化

  • 体重・浮腫・尿量の変化と、新しい呼吸苦・片脚症状・発熱。
  • 現在の意識・呼吸・循環。

B:病型と治療

  • 原疾患・病理、免疫抑制薬と減量時期、利尿薬・抗凝固、直近の感染・処置。
  • 使用中の酸素・輸液と実投与量。

A:組み合わせ

  • 尿蛋白・Alb・Cr・Kの推移、出納、介入後の呼吸・血圧・尿量。

R:必要な評価

  • 血栓・感染・急性腎障害の評価、体液と薬剤調整、採血・再評価時点。

患者・家族への説明

再燃を捉える

体重・むくみ・尿の変化を記録し、急な増加や尿量低下を相談。突然の胸痛・息苦しさは直ちに助けを求める。

薬を自己中断しない

免疫治療は減量計画を確認。発熱や食事が取れないときは連絡し、自己判断で中断・増減しない。

食事・生活を個別に調整

尿に蛋白が出るからと高蛋白食にしない。必要量を栄養士と相談し、塩分・水分・活動は病勢と腎機能に合わせる。

参考文献

  1. 日本腎臓学会:糸球体腎炎

    病型と免疫治療の違い。

  2. 日本腎臓学会:ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020

    病態・症候と補助療法。各免疫治療の現行適応は個別に確認。

  3. NIDDK:成人ネフローゼ症候群

    蛋白喪失、合併症、原因別の治療と生活支援。

  4. PMDA:ラシックス錠

    利尿薬の有害反応と投与条件。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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