検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
糸球体の障害:蛋白が尿へ漏れる
- 糸球体の蛋白を保持する仕組みが障害
- 尿への蛋白喪失が増える
- 低Alb・浮腫、感染や血栓のリスク
観察へ:泡立ちの強さだけで尿蛋白量を判断しない。採尿条件をそろえ、蛋白定量と血中Albを比較する。
浮腫:血管と組織の水分を分けて考える
- 低Albと腎のNa保持
- 水分が組織へたまる
- 体重増加・浮腫、胸腹水による息苦しさ
観察へ:浮腫が強くても血圧低下や低灌流を伴う場合がある。利尿前後の循環と腎機能を併せる。
蛋白の漏出と浮腫の仕組みを分けた模式図。浮腫には低Albと腎でのNa・水分保持が関与し、血管内の体液量は患者ごとに異なる。
症状から観察・再確認へ
むくみ・体重増加
- 見る・聞く
- 同条件の体重、下腿・仙骨・まぶたの浮腫、腹部の張り、尿量・摂取量、皮膚の傷を確認。
- 何を反映するか
- 組織の体液貯留を反映する。血管内の充足を浮腫だけで決めない。
- 普段と比較
- 体重・腹囲・尿量の連続推移と利尿薬前後を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な増加、尿量低下、息苦しさ、血圧低下や冷感を伴う。
- 再確認
- 利尿後の血圧・立ちくらみ・Cr・電解質と皮膚状態を確認。
息切れ
- 見る・聞く
- 発症の急さ、呼吸数・努力、会話、体位、SpO₂と酸素条件、胸痛、血圧を確認。
- 何を反映するか
- 体液貯留のほか肺血栓塞栓症なども考える。むくみのためと即断しない。
- 普段と比較
- 安静・活動時の負担と前回の酸素条件を比較。
- 悪化を疑う変化
- 突然の胸痛・呼吸苦、失神、低酸素や循環不良。
- 再確認
- 安全確保と応援要請後、呼吸・意識・循環を継続評価。改善しても原因評価を共有。
片脚の腫れ・痛み
- 見る・聞く
- 左右差、発症時刻、痛み・熱感、色、呼吸症状を確認。強く揉まない。
- 何を反映するか
- 全身浮腫とは異なる静脈血栓を疑う変化。所見だけで確定できない。
- 普段と比較
- 普段の両側浮腫から新しい左右差が出たかを見る。
- 悪化を疑う変化
- 呼吸苦・胸痛・失神が加わる。
- 再確認
- 評価・処置後の呼吸循環と、抗凝固時の出血徴候を確認。
発熱・倦怠感
- 見る・聞く
- 体温、悪寒、咳、腹痛、排尿症状、皮膚、意識・血圧を確認。免疫抑制薬の種類と投与時期を記録。
- 何を反映するか
- 蛋白喪失や免疫抑制治療に伴う感染リスク。発熱が弱くても否定できない。
- 普段と比較
- 普段の活動・食欲、治療開始前後、白血球推移と比較。
- 悪化を疑う変化
- 反応低下、呼吸促迫、血圧低下・冷感、強い腹痛。
- 再確認
- 感染評価後も全身状態を追い、解熱だけで改善としない。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
治療計画があり体重・浮腫・尿蛋白が改善傾向で、循環・腎機能が安定し新しい感染・血栓徴候がない。
次の行動:指定された採尿・採血と生活記録を続け、副作用も確認。
早めに共有
浮腫や蛋白尿の再増悪、尿量低下、発熱・腹痛、片脚の腫れ、薬剤後のふらつき。
次の行動:再燃、感染、血栓、体液不足・腎障害の評価を相談。新しい片脚症状は速やかに評価。
直ちに応援要請
突然の呼吸困難・胸痛、意識障害、循環不良、新しい麻痺など。
次の行動:急変対応を起動。呼吸循環を評価し、肺塞栓・重症感染などの緊急評価を準備。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
急変徴候を先に見る
呼吸・循環・意識を評価。胸痛や片脚の腫れを全身浮腫と同じ扱いにせず共有する。
体液と蛋白尿を記録
体重、尿量、摂取、浮腫、血圧を同条件で追う。蓄尿は開始・終了と採り漏れを記録する。
皮膚と活動を支える
浮腫のある皮膚を清潔に保ち圧迫・摩擦を避ける。安静度を確認し、安全な活動と体位調整で廃用を防ぐ。
治療と感染予防を確認
手指衛生と口腔ケアを支援。免疫抑制薬、予防薬、予防接種の種類・時期を医療者と確認。自己判断で生ワクチンを受けない。
利尿・免疫治療後を再評価
尿蛋白・Albの反応と、血圧・Cr・K・血糖・感染徴候を併せる。見た目の浮腫だけで寛解と判断しない。
治療前・中・後の看護
原因・病理に応じた免疫治療
- 目的
- 適応のある病型で糸球体障害の原因となる免疫反応を抑える。
- 前に確認
- 病理、原疾患、感染リスク、血糖・血圧・骨のリスク、併用薬を確認。
- 中に観察
- 感染、高血糖、不眠・気分の変化、胃腸症状、薬ごとの腎障害・血球減少などを追う。
- 反応・再評価
- 尿蛋白とAlbの回復、再燃と副作用を評価。減量計画と服用継続を確認する。
- 適応・注意
- 微小変化型、膜性腎症、一次性・二次性FSGS(糸球体の一部が硬くなる病変)、糖尿病などで治療が異なる。ステロイドを全例に使わず、自己中断もしない。
利尿薬・塩分調整
- 目的
- 過剰なNa・水分を減らし浮腫と呼吸の負担を軽減。
- 前に確認
- 血圧、循環、出納、体重、Cr・Na・K、前回の反応を確認。
- 中に観察
- 尿量と呼吸の変化、立ちくらみ・口渇・低血圧、筋力低下や動悸を確認。
- 反応・再評価
- 浮腫の軽減と腎機能・電解質の安定を併せて見る。
- 適応・注意
- 水分・塩分は個別計画に合わせる。低灌流を伴う状態で利尿だけを増やさない。アルブミン補充も低値だけで一律に行わない。
フロセミドの詳細を開く蛋白尿・血圧への治療
- 目的
- 適応のある患者で血圧と糸球体への負荷を調整する。
- 前に確認
- 血圧、Cr・K、脱水や妊娠の可能性、併用薬と適応を確認。
- 中に観察
- 降圧後のふらつき・低灌流、Cr・Kの変化を追う。
- 反応・再評価
- 血圧だけでなく蛋白尿の推移、忍容性と腎機能を比較。
- 適応・注意
- ACE阻害薬・ARBなどは病態に応じて選ぶ。急性腎障害や脱水時は投与条件を処方者へ確認。
血栓リスクの評価・抗凝固
- 目的
- 必要な患者で血栓を予防・治療する。
- 前に確認
- 血栓症状・既往、Albと病型、出血リスク、腎生検や処置予定を確認。
- 中に観察
- 出血、血尿・黒色便、頭痛・神経症状と、血栓症状の変化を観察。
- 反応・再評価
- 薬剤に応じた検査と出血・塞栓の有無を継続確認。
- 適応・注意
- 予防的抗凝固は全例一律ではない。血栓と出血のリスクを比較して適応を決める。
検査の意味と読み方
尿蛋白
糸球体からの蛋白喪失を定量する。
組み合わせ・推移:随時尿の蛋白/Cr比と蓄尿など測定法を区別。採尿条件と推移で治療反応を見て、泡立ちだけで代用しない。
Alb
蛋白喪失と全身状態の評価。
組み合わせ・推移:低値は炎症・肝疾患・栄養にも左右される。尿蛋白と体重・浮腫を併せ、値だけで補充を決めない。
Albの検査詳細
Cr
腎機能の変化を評価。
組み合わせ・推移:上昇時は原疾患、感染、循環不足や薬剤影響を尿量・血圧と合わせる。
Crの検査詳細
K
利尿薬や腎機能による電解質変化を見る。
組み合わせ・推移:低下・上昇とも不整脈に関わる。薬剤変更前後と心電図・筋力を比較。
Kの検査詳細
脂質
ネフローゼに伴う脂質異常を評価。
組み合わせ・推移:上昇の程度は病勢・代謝・治療で変わる。寛解後も持続するかを確認し管理を相談。
TCの検査詳細
LDL-Cの検査詳細
TGの検査詳細
腎生検
病型と治療方針の判断材料を得る。
組み合わせ・推移:適応は個別判断。前に凝固・抗血栓薬・血圧、後に血尿・腰痛・循環を確認し、安静手順を守る。
報告:SBARで情報をそろえる
S:変化
- 体重・浮腫・尿量の変化と、新しい呼吸苦・片脚症状・発熱。
- 現在の意識・呼吸・循環。
B:病型と治療
- 原疾患・病理、免疫抑制薬と減量時期、利尿薬・抗凝固、直近の感染・処置。
- 使用中の酸素・輸液と実投与量。
A:組み合わせ
- 尿蛋白・Alb・Cr・Kの推移、出納、介入後の呼吸・血圧・尿量。
R:必要な評価
- 血栓・感染・急性腎障害の評価、体液と薬剤調整、採血・再評価時点。
患者・家族への説明
再燃を捉える
体重・むくみ・尿の変化を記録し、急な増加や尿量低下を相談。突然の胸痛・息苦しさは直ちに助けを求める。
薬を自己中断しない
免疫治療は減量計画を確認。発熱や食事が取れないときは連絡し、自己判断で中断・増減しない。
食事・生活を個別に調整
尿に蛋白が出るからと高蛋白食にしない。必要量を栄養士と相談し、塩分・水分・活動は病勢と腎機能に合わせる。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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