脳神経

脳出血

脳出血は脳の組織内に血液が漏れ、組織の損傷と圧迫を起こす状態。血腫拡大・脳浮腫・水頭症によって発症後も変化する。発症時刻、出血部位、抗血栓薬、神経所見を確認し、呼吸・循環と合わせて悪化を早く共有する。

主な症状
麻痺 言語障害 頭痛 嘔吐 増悪
代表的な薬
降圧薬 抗凝固薬の拮抗薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

深部:被殻・視床など

深部:被殻・視床などの位置関係深部の血腫 → 近くの神経経路へ影響赤紫:出血部位の一例/診断画像ではない水色:脳室/紫の線:神経の経路運動・感覚の左右差と意識を比較
  1. 深部の血管から脳実質へ出血
  2. 運動・感覚の経路や周囲組織が障害
  3. 片麻痺・感覚や意識の変化が出る

観察へ:顔・手足・感覚の左右差を記録。血腫量だけでなく進展と意識の推移を見る。

皮質下・脳葉:表面に近い出血

皮質下・脳葉:表面に近い出血の位置関係脳葉の血腫 → 場所ごとの機能へ影響赤紫:出血部位の一例/診断画像ではない水色:脳室/薄紫:脳の組織言語・視野・注意と発作を確認
  1. 脳葉内で出血が起こる
  2. 言葉・視野・注意などの機能へ影響
  3. 局所症状や発作が現れることがある

観察へ:麻痺の有無だけで判断せず、言葉・視野・注意と発作を確認。原因検索と再発予防につなぐ。

小脳・脳幹:限られた空間の出血

小脳・脳幹:限られた空間の出血の位置関係小脳脳幹2つの部位の例(同時出血とは限らない)赤紫:出血部位の一例/診断画像ではない小脳と脳幹の位置関係を横から示す覚醒・呼吸/姿勢と運動調節に影響
  1. 小脳または脳幹内で出血
  2. 運動調節・覚醒・呼吸や髄液の流れへ影響
  3. ふらつき・嘔吐や急な意識・呼吸変化

観察へ:小脳出血は脳幹圧迫や水頭症にも注意。歩かせて確認せず、安全を確保して緊急評価。脳幹出血と手術方針は同一ではない。

脳室への進展:水頭症を伴う場合

脳室への進展:水頭症を伴う場合の位置関係脳室内の血液 → 髄液の流れを妨げる赤紫:出血部位の一例/診断画像ではない水色:脳室/赤紫の横線:流れの障害水頭症 → 反応低下・頭痛・嘔吐
  1. 血液が脳室内へ広がる
  2. 髄液の流れが障害され圧が上がる
  3. 反応低下や頭痛・嘔吐などが悪化

観察へ:局所の麻痺が変わらなくても意識悪化を見逃さない。画像と排液の適応を専門チームへ確認。

脳内の位置関係を簡略化した模式図で、CTやMRIの再現ではない。小血管病、脳アミロイド血管症、血管奇形、薬剤など原因は多様。部位だけで原因や予後を断定せず、画像と専門評価を合わせる。

症状から観察・再確認へ

麻痺言葉視野の変化

見る・聞く
顔、左右の上肢・下肢、発語と理解、視野や注意を可能な範囲で確認。
何を反映するか
出血による局所の機能障害や拡大の手掛かり。
普段と比較
発症時と直前の左右差、普段の障害、鎮静の影響と比較。
悪化を疑う変化
新しい麻痺、言葉が出ない・理解できない、症状が短時間で拡大。
再確認
意識・瞳孔・呼吸循環を確認し直ちに報告。血糖など別要因も並行評価。

意識瞳孔の変化

見る・聞く
呼名・開眼・会話・指示動作、瞳孔径・左右差・対光反射を確認。GCSは内訳も記録。
何を反映するか
血腫拡大、浮腫、水頭症、脳幹への影響などを疑う。
普段と比較
直前の評価、鎮静・鎮痛薬、挿管や失語による制約と比較。
悪化を疑う変化
呼びかけで起きにくい、新しい瞳孔不同、異常肢位、反応の急速な低下。
再確認
ABCとモニターを確認し応援要請。画像再評価・脳外科対応を準備。

頭痛嘔吐ふらつき

見る・聞く
発症の急さ、増悪、嘔吐回数、眼の動きや座位保持を安全な範囲で観察。
何を反映するか
圧変化や小脳・脳幹などの病変の手掛かり。頭痛がない場合もある。
普段と比較
発症からの経過、鎮痛・制吐と意識の変化を比較。
悪化を疑う変化
反復嘔吐、強まる頭痛、座位を保てない、意識や呼吸の変化。
再確認
気道・誤嚥を確認し、歩行させず報告。症状緩和後も神経所見を追う。

血圧呼吸の変化

見る・聞く
血圧と測定条件、脈・呼吸数、SpO₂・酸素条件、努力呼吸・意識を確認。
何を反映するか
高血圧と変動は血腫拡大に関係し、過降圧・低酸素も脳への血流や酸素供給を損なう。
普段と比較
降圧薬の流量変更、体位・痛み・処置、変更前後の神経所見を比較。
悪化を疑う変化
急な血圧低下、目標からの持続逸脱、呼吸不規則、酸素化低下を伴う反応悪化。
再確認
測定・投与ラインを照合し相談。血圧の数値だけで増量を決めない。

けいれん反応の揺れ

見る・聞く
開始・持続、左右の動き、眼の偏り、呼吸と発作後の反応を記録。
何を反映するか
皮質刺激や発作を疑う。外見上のけいれんがなくても発作が続く場合がある。
普段と比較
直前の神経所見、発作歴、薬・血糖・電解質と照合。
悪化を疑う変化
発作の持続・反復、呼吸障害、発作後も意識が戻らない。
再確認
安全と気道を確保して応援。持続する意識異常では脳波等を相談。

嚥下発熱活動の変化

見る・聞く
覚醒、唾液処理、声・咳、体温、呼吸、皮膚と手足の腫れを確認。
何を反映するか
誤嚥、感染、血栓や廃用など二次障害の手掛かり。
普段と比較
嚥下評価・食形態、離床指示、摂取・出納と普段の活動を比較。
悪化を疑う変化
むせや湿った声、食後の呼吸変化、発熱、片脚の新しい腫れ。
再確認
摂取の安全性と気道を再評価。急な胸痛・呼吸困難は緊急対応。

看護判断:変化の緊急度

計画に沿って継続観察

診断・治療方針があり、神経所見と呼吸循環が個別目標内で安定。

次の行動:指示された頻度で比較し、投薬・離床後も再確認。発症直後の未評価例を経過観察だけにしない。

早めに共有・報告

血圧目標からの持続逸脱、発熱、摂取不良・出納変化、皮膚・嚥下の問題。

次の行動:治療と測定条件、変化速度を整理して速やかに相談。神経悪化があれば緊急に切り替える。

直ちに応援・緊急対応

新しい局所症状・意識低下・瞳孔変化、呼吸障害、持続発作、循環不安定。

次の行動:応援要請とABC確認。処置・画像・脳外科評価を準備し、全項目を測り終えるまで連絡を待たない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|発症情報と安全を確保

発症・最終健常時刻、症状の順序、抗血栓薬と最終服用を確認。独歩させず、未評価の経口摂取を避ける。

2|気道・呼吸・循環を優先

意識低下・嘔吐では吸引・酸素・気道処置を準備。循環と誤嚥リスクに合わせて体位を調整。

3|同じ方法で神経所見を比較

GCS内訳、瞳孔、左右の運動と言語を時系列で記録。鎮静・失語など評価できない理由も共有。

4|血圧と点滴を照合

指示目標と変更条件、濃度・流量、カフや動脈圧の基準を確認。変更後は過降圧と神経所見を再評価。

5|画像・採血・中和を準備

CT等の搬送準備、血算・凝固・腎機能等の検体、血管路を確認。処置を待つ間も観察を継続。

6|嚥下・出納・二次障害を管理

嚥下評価前の飲食・内服を避ける。水分・栄養と尿量、口腔ケア、皮膚・血栓予防を個別計画に合わせる。

7|治療後の反応を記録

降圧・中和・手術・排液後に神経所見、呼吸循環、採血・創部を比較。離床は安定性と許可範囲を確認。

治療前・中・後の看護

降圧薬:Ca拮抗薬など

目的
過度な変動を抑え、血腫拡大のリスクを減らすことを目指す。
前に確認
個別目標・調整条件、測定精度、神経所見、投与濃度と速度を照合。
中に観察
血圧・脈と意識、尿量・末梢循環、酸素化と注射部位を確認。
反応・再評価
目標への推移と低灌流の有無を比較。終了・経口移行後の再上昇も追う。
適応・注意
脳出血急性期は緊急対応施設で指針に沿って監視。重症度・頭蓋内圧・手術で目標が変わるため数値を一律にしない。
ペルジピン注射液10mgの詳細を開く

抗凝固作用の中和:ビタミンK拮抗薬

目的
ワルファリン等による凝固能低下を是正。
前に確認
薬と最終服用、PT-INR、体重、DIC・HIT・過敏症歴を確認。
中に観察
神経所見と出血、呼吸・循環、血栓症や過敏反応を観察。
反応・再評価
凝固能と画像・神経所見を再評価。ビタミンK併用指示も確認。
適応・注意
PCCの対象と処方を確認。DOACや抗血小板薬の中和として同じ手順を流用しない。
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DOACの中和:薬剤別に選択

目的
適応となる重篤出血で残存する抗凝固作用へ対応。
前に確認
一般名・最終投与・腎機能、他の抗血栓薬、検査と製剤適応を確認。
中に観察
出血・神経所見、血栓・塞栓、過敏反応と循環を監視。
反応・再評価
画像・臨床所見と薬剤に適した検査を比較し再評価。
適応・注意
PT-INRが正常でもDOACの残存を否定しない。薬・状況で対応が異なり、抗血小板薬服用だけで血小板輸血を一律実施しない。

手術による血腫除去・減圧

目的
選択した症例で圧迫を軽減し、生命・機能の保護を図る。
前に確認
部位・量・進展、悪化速度、凝固と手術方針を確認。
中に観察
創部・排液、意識・瞳孔・運動、呼吸循環と出血を観察。
反応・再評価
画像・神経所見と合併症を評価し、活動計画へつなぐ。
適応・注意
小脳出血の脳幹圧迫・水頭症や悪化は迅速な外科評価。深部・脳葉・脳幹で適応は異なり全例手術ではない。

水頭症への髄液ドレナージ

目的
適応例で髄液の流れと圧を改善。
前に確認
方式・基準点・高さ、開閉、搬送時の指示を確認。
中に観察
排液量・色、挿入部、閉鎖系と神経所見を確認。
反応・再評価
意識・圧・画像の変化、感染・過剰排液・閉塞を評価。
適応・注意
停止時も独断で洗浄・吸引・高さ変更を行わず相談。

脳浮腫・発作への治療

目的
合併する圧上昇や発作による二次損傷を抑える。
前に確認
画像・神経所見、血糖・Na・腎機能、発作の有無を確認。
中に観察
指示治療の呼吸循環、鎮静、尿量と電解質への影響を確認。
反応・再評価
意識と圧・脳波・採血を比較。見かけの静穏だけで改善としない。
適応・注意
ステロイドや発作予防薬を脳出血全例に使わない。浸透圧治療は血腫と製剤の禁忌条件を照合。

二次障害予防とリハビリ

目的
誤嚥・感染・血栓・廃用を減らし生活機能の回復を支える。
前に確認
覚醒・嚥下、呼吸循環、血腫の安定、皮膚と運動能力を確認。
中に観察
食形態・姿勢、離床時の神経・血圧変化、圧迫装置の皮膚障害等を観察。
反応・再評価
摂取・活動・会話など本人の機能と負担を再評価。
適応・注意
血栓予防の方法・薬剤開始は出血の安定性で判断。弾性ストッキングだけで十分としない。

検査の意味と読み方

CTMRI

出血部位・量・進展、浮腫や水頭症を評価。

組み合わせ・推移:症状の変化と撮影時刻を照合。以前の画像だけで悪化を否定しない。

血管画像

血管奇形など原因や出血リスクを評価。

組み合わせ・推移:実施法は病型・腎機能等で選ぶ。部位や血圧だけで原因を決めない。

PT-INR

ワルファリン作用と中和反応を評価。

組み合わせ・推移:薬歴と採血時刻を照合。値の改善だけで止血・神経機能の改善を保証しない。

PT-INRの検査詳細

APTT

凝固の変化や一部抗凝固薬の影響を評価。

組み合わせ・推移:正常でも薬剤の残存を除外できない場合があり、薬・投与時刻と検査特性を確認。

APTTの検査詳細

血小板

止血と処置の安全性を評価。

組み合わせ・推移:数と薬剤による機能低下は別。画像・出血・薬を合わせる。

血小板の検査詳細

Hgb

貧血や他部位の出血、処置の影響を評価。

組み合わせ・推移:頭蓋内血腫の拡大をHgbだけで判断しない。画像と神経所見を優先して比較。

Hgbの検査詳細

血糖

神経症状に影響する低血糖・高血糖を評価。

組み合わせ・推移:発症時と栄養・投薬後を比較。低血糖の是正後も局所症状を再評価。

血糖の検査詳細

Na

体液・浸透圧と治療による変化を評価。

組み合わせ・推移:低下・上昇と変化速度を出納・神経所見と比較し、独断で補正しない。

Naの検査詳細

クレアチニン

薬剤の残存や治療中の腎機能を評価。

組み合わせ・推移:尿量・出納・血圧と経時変化を確認。

クレアチニンの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|発症と現在の変化

  • 発症・最終健常時刻、いつから何が悪化したか。
  • 現在の意識・呼吸・循環。

B|出血と薬

  • 出血部位・画像時刻、抗血栓薬の一般名と最終服用、降圧・中和・手術・排液条件。

A|直前との比較

  • GCS内訳、瞳孔・運動・言語、血圧と流量、尿量・採血。
  • 実施した看護と反応。

R|優先して確認

  • 再画像・気道管理・中和・脳外科評価、血圧目標と調整、搬送・観察頻度の方針。

患者・家族への説明

再発を疑う変化

突然の手足・言葉・視覚の変化、反応低下、強い頭痛や嘔吐はすぐに救急相談。改善を待って自分で運転しない。

血圧と服薬

家庭血圧と服薬状況を共有。退院後の目標は個別に確認し、自己判断で中止・増量しない。

抗血栓薬の再開

出血再発と血栓の両方を考えて決める。再開日・薬を処方元と確認し、手元の薬を独断で再開しない。

生活と回復を支える

飲み込み・移動・注意力の変化に合わせて環境を調整。節酒・禁煙・食事、介護や仕事の困りごとを相談する。

参考文献

  1. 日本脳卒中協会:脳卒中の主な症状

    突然の局所症状と頭痛、症状の見方。

  2. AHA/ASA:脳出血ガイドライン2022の要点

    血腫拡大、血圧変動、中和、予防治療と手術の条件。

  3. ESO/EANS:脳出血ガイドライン2025

    更新された治療選択とエビデンスの限界。

  4. PMDA:ペルジピン注射液

    脳出血急性期の監視、過降圧、終了後の再上昇。

  5. PMDA:ケイセントラ静注用

    対象となる抗凝固薬と中和の条件・観察。

資料確認:2026年9月16日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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