検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
深部:被殻・視床など
- 深部の血管から脳実質へ出血
- 運動・感覚の経路や周囲組織が障害
- 片麻痺・感覚や意識の変化が出る
観察へ:顔・手足・感覚の左右差を記録。血腫量だけでなく進展と意識の推移を見る。
皮質下・脳葉:表面に近い出血
- 脳葉内で出血が起こる
- 言葉・視野・注意などの機能へ影響
- 局所症状や発作が現れることがある
観察へ:麻痺の有無だけで判断せず、言葉・視野・注意と発作を確認。原因検索と再発予防につなぐ。
小脳・脳幹:限られた空間の出血
- 小脳または脳幹内で出血
- 運動調節・覚醒・呼吸や髄液の流れへ影響
- ふらつき・嘔吐や急な意識・呼吸変化
観察へ:小脳出血は脳幹圧迫や水頭症にも注意。歩かせて確認せず、安全を確保して緊急評価。脳幹出血と手術方針は同一ではない。
脳室への進展:水頭症を伴う場合
- 血液が脳室内へ広がる
- 髄液の流れが障害され圧が上がる
- 反応低下や頭痛・嘔吐などが悪化
観察へ:局所の麻痺が変わらなくても意識悪化を見逃さない。画像と排液の適応を専門チームへ確認。
脳内の位置関係を簡略化した模式図で、CTやMRIの再現ではない。小血管病、脳アミロイド血管症、血管奇形、薬剤など原因は多様。部位だけで原因や予後を断定せず、画像と専門評価を合わせる。
症状から観察・再確認へ
麻痺・言葉・視野の変化
- 見る・聞く
- 顔、左右の上肢・下肢、発語と理解、視野や注意を可能な範囲で確認。
- 何を反映するか
- 出血による局所の機能障害や拡大の手掛かり。
- 普段と比較
- 発症時と直前の左右差、普段の障害、鎮静の影響と比較。
- 悪化を疑う変化
- 新しい麻痺、言葉が出ない・理解できない、症状が短時間で拡大。
- 再確認
- 意識・瞳孔・呼吸循環を確認し直ちに報告。血糖など別要因も並行評価。
意識・瞳孔の変化
- 見る・聞く
- 呼名・開眼・会話・指示動作、瞳孔径・左右差・対光反射を確認。GCSは内訳も記録。
- 何を反映するか
- 血腫拡大、浮腫、水頭症、脳幹への影響などを疑う。
- 普段と比較
- 直前の評価、鎮静・鎮痛薬、挿管や失語による制約と比較。
- 悪化を疑う変化
- 呼びかけで起きにくい、新しい瞳孔不同、異常肢位、反応の急速な低下。
- 再確認
- ABCとモニターを確認し応援要請。画像再評価・脳外科対応を準備。
頭痛・嘔吐・ふらつき
- 見る・聞く
- 発症の急さ、増悪、嘔吐回数、眼の動きや座位保持を安全な範囲で観察。
- 何を反映するか
- 圧変化や小脳・脳幹などの病変の手掛かり。頭痛がない場合もある。
- 普段と比較
- 発症からの経過、鎮痛・制吐と意識の変化を比較。
- 悪化を疑う変化
- 反復嘔吐、強まる頭痛、座位を保てない、意識や呼吸の変化。
- 再確認
- 気道・誤嚥を確認し、歩行させず報告。症状緩和後も神経所見を追う。
血圧・呼吸の変化
- 見る・聞く
- 血圧と測定条件、脈・呼吸数、SpO₂・酸素条件、努力呼吸・意識を確認。
- 何を反映するか
- 高血圧と変動は血腫拡大に関係し、過降圧・低酸素も脳への血流や酸素供給を損なう。
- 普段と比較
- 降圧薬の流量変更、体位・痛み・処置、変更前後の神経所見を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な血圧低下、目標からの持続逸脱、呼吸不規則、酸素化低下を伴う反応悪化。
- 再確認
- 測定・投与ラインを照合し相談。血圧の数値だけで増量を決めない。
けいれん・反応の揺れ
- 見る・聞く
- 開始・持続、左右の動き、眼の偏り、呼吸と発作後の反応を記録。
- 何を反映するか
- 皮質刺激や発作を疑う。外見上のけいれんがなくても発作が続く場合がある。
- 普段と比較
- 直前の神経所見、発作歴、薬・血糖・電解質と照合。
- 悪化を疑う変化
- 発作の持続・反復、呼吸障害、発作後も意識が戻らない。
- 再確認
- 安全と気道を確保して応援。持続する意識異常では脳波等を相談。
嚥下・発熱・活動の変化
- 見る・聞く
- 覚醒、唾液処理、声・咳、体温、呼吸、皮膚と手足の腫れを確認。
- 何を反映するか
- 誤嚥、感染、血栓や廃用など二次障害の手掛かり。
- 普段と比較
- 嚥下評価・食形態、離床指示、摂取・出納と普段の活動を比較。
- 悪化を疑う変化
- むせや湿った声、食後の呼吸変化、発熱、片脚の新しい腫れ。
- 再確認
- 摂取の安全性と気道を再評価。急な胸痛・呼吸困難は緊急対応。
看護判断:変化の緊急度
計画に沿って継続観察
診断・治療方針があり、神経所見と呼吸循環が個別目標内で安定。
次の行動:指示された頻度で比較し、投薬・離床後も再確認。発症直後の未評価例を経過観察だけにしない。
早めに共有・報告
血圧目標からの持続逸脱、発熱、摂取不良・出納変化、皮膚・嚥下の問題。
次の行動:治療と測定条件、変化速度を整理して速やかに相談。神経悪化があれば緊急に切り替える。
直ちに応援・緊急対応
新しい局所症状・意識低下・瞳孔変化、呼吸障害、持続発作、循環不安定。
次の行動:応援要請とABC確認。処置・画像・脳外科評価を準備し、全項目を測り終えるまで連絡を待たない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|発症情報と安全を確保
発症・最終健常時刻、症状の順序、抗血栓薬と最終服用を確認。独歩させず、未評価の経口摂取を避ける。
2|気道・呼吸・循環を優先
意識低下・嘔吐では吸引・酸素・気道処置を準備。循環と誤嚥リスクに合わせて体位を調整。
3|同じ方法で神経所見を比較
GCS内訳、瞳孔、左右の運動と言語を時系列で記録。鎮静・失語など評価できない理由も共有。
4|血圧と点滴を照合
指示目標と変更条件、濃度・流量、カフや動脈圧の基準を確認。変更後は過降圧と神経所見を再評価。
5|画像・採血・中和を準備
CT等の搬送準備、血算・凝固・腎機能等の検体、血管路を確認。処置を待つ間も観察を継続。
6|嚥下・出納・二次障害を管理
嚥下評価前の飲食・内服を避ける。水分・栄養と尿量、口腔ケア、皮膚・血栓予防を個別計画に合わせる。
7|治療後の反応を記録
降圧・中和・手術・排液後に神経所見、呼吸循環、採血・創部を比較。離床は安定性と許可範囲を確認。
治療前・中・後の看護
降圧薬:Ca拮抗薬など
- 目的
- 過度な変動を抑え、血腫拡大のリスクを減らすことを目指す。
- 前に確認
- 個別目標・調整条件、測定精度、神経所見、投与濃度と速度を照合。
- 中に観察
- 血圧・脈と意識、尿量・末梢循環、酸素化と注射部位を確認。
- 反応・再評価
- 目標への推移と低灌流の有無を比較。終了・経口移行後の再上昇も追う。
- 適応・注意
- 脳出血急性期は緊急対応施設で指針に沿って監視。重症度・頭蓋内圧・手術で目標が変わるため数値を一律にしない。
ペルジピン注射液10mgの詳細を開く抗凝固作用の中和:ビタミンK拮抗薬
- 目的
- ワルファリン等による凝固能低下を是正。
- 前に確認
- 薬と最終服用、PT-INR、体重、DIC・HIT・過敏症歴を確認。
- 中に観察
- 神経所見と出血、呼吸・循環、血栓症や過敏反応を観察。
- 反応・再評価
- 凝固能と画像・神経所見を再評価。ビタミンK併用指示も確認。
- 適応・注意
- PCCの対象と処方を確認。DOACや抗血小板薬の中和として同じ手順を流用しない。
ケイセントラ静注用500・1000の詳細を開くDOACの中和:薬剤別に選択
- 目的
- 適応となる重篤出血で残存する抗凝固作用へ対応。
- 前に確認
- 一般名・最終投与・腎機能、他の抗血栓薬、検査と製剤適応を確認。
- 中に観察
- 出血・神経所見、血栓・塞栓、過敏反応と循環を監視。
- 反応・再評価
- 画像・臨床所見と薬剤に適した検査を比較し再評価。
- 適応・注意
- PT-INRが正常でもDOACの残存を否定しない。薬・状況で対応が異なり、抗血小板薬服用だけで血小板輸血を一律実施しない。
手術による血腫除去・減圧
- 目的
- 選択した症例で圧迫を軽減し、生命・機能の保護を図る。
- 前に確認
- 部位・量・進展、悪化速度、凝固と手術方針を確認。
- 中に観察
- 創部・排液、意識・瞳孔・運動、呼吸循環と出血を観察。
- 反応・再評価
- 画像・神経所見と合併症を評価し、活動計画へつなぐ。
- 適応・注意
- 小脳出血の脳幹圧迫・水頭症や悪化は迅速な外科評価。深部・脳葉・脳幹で適応は異なり全例手術ではない。
水頭症への髄液ドレナージ
- 目的
- 適応例で髄液の流れと圧を改善。
- 前に確認
- 方式・基準点・高さ、開閉、搬送時の指示を確認。
- 中に観察
- 排液量・色、挿入部、閉鎖系と神経所見を確認。
- 反応・再評価
- 意識・圧・画像の変化、感染・過剰排液・閉塞を評価。
- 適応・注意
- 停止時も独断で洗浄・吸引・高さ変更を行わず相談。
脳浮腫・発作への治療
- 目的
- 合併する圧上昇や発作による二次損傷を抑える。
- 前に確認
- 画像・神経所見、血糖・Na・腎機能、発作の有無を確認。
- 中に観察
- 指示治療の呼吸循環、鎮静、尿量と電解質への影響を確認。
- 反応・再評価
- 意識と圧・脳波・採血を比較。見かけの静穏だけで改善としない。
- 適応・注意
- ステロイドや発作予防薬を脳出血全例に使わない。浸透圧治療は血腫と製剤の禁忌条件を照合。
二次障害予防とリハビリ
- 目的
- 誤嚥・感染・血栓・廃用を減らし生活機能の回復を支える。
- 前に確認
- 覚醒・嚥下、呼吸循環、血腫の安定、皮膚と運動能力を確認。
- 中に観察
- 食形態・姿勢、離床時の神経・血圧変化、圧迫装置の皮膚障害等を観察。
- 反応・再評価
- 摂取・活動・会話など本人の機能と負担を再評価。
- 適応・注意
- 血栓予防の方法・薬剤開始は出血の安定性で判断。弾性ストッキングだけで十分としない。
検査の意味と読み方
CT・MRI
出血部位・量・進展、浮腫や水頭症を評価。
組み合わせ・推移:症状の変化と撮影時刻を照合。以前の画像だけで悪化を否定しない。
血管画像
血管奇形など原因や出血リスクを評価。
組み合わせ・推移:実施法は病型・腎機能等で選ぶ。部位や血圧だけで原因を決めない。
PT-INR
ワルファリン作用と中和反応を評価。
組み合わせ・推移:薬歴と採血時刻を照合。値の改善だけで止血・神経機能の改善を保証しない。
PT-INRの検査詳細
APTT
凝固の変化や一部抗凝固薬の影響を評価。
組み合わせ・推移:正常でも薬剤の残存を除外できない場合があり、薬・投与時刻と検査特性を確認。
APTTの検査詳細
血小板
止血と処置の安全性を評価。
組み合わせ・推移:数と薬剤による機能低下は別。画像・出血・薬を合わせる。
血小板の検査詳細
Hgb
貧血や他部位の出血、処置の影響を評価。
組み合わせ・推移:頭蓋内血腫の拡大をHgbだけで判断しない。画像と神経所見を優先して比較。
Hgbの検査詳細
血糖
神経症状に影響する低血糖・高血糖を評価。
組み合わせ・推移:発症時と栄養・投薬後を比較。低血糖の是正後も局所症状を再評価。
血糖の検査詳細
Na
体液・浸透圧と治療による変化を評価。
組み合わせ・推移:低下・上昇と変化速度を出納・神経所見と比較し、独断で補正しない。
Naの検査詳細
クレアチニン
薬剤の残存や治療中の腎機能を評価。
組み合わせ・推移:尿量・出納・血圧と経時変化を確認。
クレアチニンの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S|発症と現在の変化
- 発症・最終健常時刻、いつから何が悪化したか。
- 現在の意識・呼吸・循環。
B|出血と薬
- 出血部位・画像時刻、抗血栓薬の一般名と最終服用、降圧・中和・手術・排液条件。
A|直前との比較
- GCS内訳、瞳孔・運動・言語、血圧と流量、尿量・採血。
- 実施した看護と反応。
R|優先して確認
- 再画像・気道管理・中和・脳外科評価、血圧目標と調整、搬送・観察頻度の方針。
患者・家族への説明
再発を疑う変化
突然の手足・言葉・視覚の変化、反応低下、強い頭痛や嘔吐はすぐに救急相談。改善を待って自分で運転しない。
血圧と服薬
家庭血圧と服薬状況を共有。退院後の目標は個別に確認し、自己判断で中止・増量しない。
抗血栓薬の再開
出血再発と血栓の両方を考えて決める。再開日・薬を処方元と確認し、手元の薬を独断で再開しない。
生活と回復を支える
飲み込み・移動・注意力の変化に合わせて環境を調整。節酒・禁煙・食事、介護や仕事の困りごとを相談する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
疾患・病態の一覧に戻る