循環器

高血圧症

まず正しく測り、普段からの変化と臓器障害を疑う症状を確認する。長期管理の目標と、急変時に必要な降圧の速度・方法は分けて考える。

主な症状
多くは無症状 立ちくらみ(治療時) 胸痛 神経症状(合併時)
代表的な薬
Ca拮抗薬 ARB ACE阻害薬 利尿薬
検査値UP
検査値DOWN

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

慢性の高血圧:自覚症状がなくても管理

血管抵抗・体液量などが血圧に影響血管抵抗・体液量などが血圧に影響動脈血流壁への圧心臓腎臓脳卒中リスク心負荷・肥大蛋白尿・機能低下負担が続く → 心臓・脳・腎臓の障害リスク
  1. 遺伝・食塩・生活要因や二次性の原因
  2. 血管抵抗・体液量などが増え血圧が持続して高い
  3. 長期の血管・心臓・腎臓への負担 → 合併症リスク

観察へ:症状の有無より、測定条件をそろえた血圧推移、服薬、腎機能と生活状況を確認する。

高血圧緊急症:急性臓器障害を伴う

急な血圧上昇と臓器障害を一緒に評価急な血圧上昇と臓器障害を一緒に評価動脈血流壁への圧心臓腎臓意識・麻痺胸痛・呼吸苦尿量・腎機能急性障害あり → 監視下で原因別の治療
  1. 著しい血圧上昇に新たな臓器障害が重なる
  2. 脳・心臓・腎臓・大血管などの緊急評価
  3. 原因に合わせた監視下の降圧と臓器障害の治療

観察へ:急な胸背部痛、呼吸苦、意識や神経症状などを確認。血圧の測り直しだけで緊急対応を遅らせない。

血管への負荷と臓器への影響を示す模式図。高い血圧値だけで急性臓器障害の有無は決まらない。本態性のほか、腎・内分泌疾患、睡眠時無呼吸、薬剤などによる二次性高血圧も評価する。

症状から観察・再確認へ

症状のない血圧高値

見る・聞く
上腕に合うカフ、安静・姿勢、腕の高さ、会話や運動直後でないかを確認して再測定。値と脈拍、条件を記録。
何を反映するか
持続的な高血圧のほか痛み・不安、測定誤差などでも高くなる。無症状だけで臓器障害なしとは決めない。
普段と比較
普段の家庭血圧・診察室血圧、左右差、服薬時刻、直近の推移を比較。
悪化を疑う変化
正しい再測定でも著しく高い、新たな胸痛・呼吸苦・神経症状、尿量低下。
再確認
症状と既往を確認して報告。指示された再評価時点を守り、独自に薬を追加して急速に下げない。

頭痛視覚変化神経症状

見る・聞く
発症時刻、意識、瞳孔、顔や手足の左右差、発語、視覚、嘔吐・痙攣を確認。
何を反映するか
脳卒中や高血圧性脳症などの可能性。頭痛だけで原因を高血圧と断定しない。
普段と比較
普段の神経所見、症状が出る前の状態と血圧を比較する。
悪化を疑う変化
新しい麻痺・言語障害、急な激しい頭痛、意識低下、痙攣。
再確認
直ちに応援要請。気道・誤嚥・転倒を防ぎ神経所見を継続評価。脳卒中では病型により降圧方針が異なる。

胸背部痛呼吸苦

見る・聞く
発症と痛みの部位・広がり、呼吸数、会話・体位、SpO₂と酸素条件、脈拍・冷汗・意識を確認。
何を反映するか
急性冠症候群、大動脈解離、急性心不全などの緊急評価が必要な場合がある。
普段と比較
普段の呼吸と活動、痛みの始まり方、血圧・脈拍の推移を比較。
悪化を疑う変化
突然の強い胸背部痛、安静時呼吸困難、冷汗、意識変化、循環不良。
再確認
緊急対応につなぎ、安静・モニター・処置準備を行う。血圧が下がっても原因評価を終えない。

降圧後のふらつき立ちくらみ

見る・聞く
投薬・食事・排泄との時間関係、体位変換前後の血圧・脈拍、意識、摂取量・尿量を確認。
何を反映するか
起立性低血圧や脱水、薬の影響などが考えられる。高血圧と低血圧が同じ人に併存しうる。
普段と比較
開始・増量前の値と普段の動作、利尿薬や他の併用薬を比較。
悪化を疑う変化
失神、転倒、持続する低血圧、胸痛・神経症状・尿量減少。
再確認
座位・臥位で安全を確保し再評価。歩行を介助し、追加投与・次回薬の扱いを指示確認。

看護判断:変化の緊急度

計画に沿った経過観察

個別の管理計画があり、普段の推移から大きな変化や新しい症状がない。

次の行動:血圧記録・服薬・生活面を継続確認。目標値は個別計画と照合する。

早めの共有・診療評価

再測定でも高値が続く、服薬中断、薬の副作用、治療後のふらつき。

次の行動:測定条件・推移・症状・服薬を報告し再評価計画を確認。著しい高値は無症状でも放置しない。

直ちに応援・緊急評価

新しい神経症状、意識低下、痙攣、急な胸背部痛、重い呼吸苦・循環不良。

次の行動:ABCと安全を確保し応援要請。臓器障害の評価、心電図・採血・画像・静脈路の準備を指示と並行。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1.症状と測定の信頼性を確認

急変症状を先に確認し、安定していればカフ・姿勢・安静を整えて測り直す。動脈圧の場合は高さ・ゼロ点と波形も確認。

2.原因と薬の条件をそろえる

疼痛・不安・尿閉、飲み忘れ、処方変更、NSAIDs・ステロイド・市販薬・甘草製品などの使用を共有する。

3.急性臓器障害の評価を支える

意識・呼吸循環、尿量、神経所見を継続評価。呼吸苦は楽な体位、意識低下は気道と誤嚥予防を優先。

4.降圧後も臓器灌流を追う

血圧だけでなく意識・胸痛・呼吸・尿量・末梢冷感を再確認。下げすぎや急な低下を報告し、転倒を防ぐ。

治療前・中・後の看護

生活習慣と家庭血圧の管理

目的
持続的な血圧負荷と将来の合併症リスクを減らす。
前に確認
食事、活動、体重、飲酒・喫煙、睡眠、家庭血圧と生活上の困難を確認。
中に観察
減塩など実行できる行動を一つずつ相談。運動は症状・合併症と医療者の計画に合わせる。
反応・再評価
家庭血圧の推移と継続しやすさを評価。体重減少・食事制限で脱水や低栄養を起こしていないか確認。
適応・注意
腎機能低下や高Kでは、Kを増やす食品・代替塩を一律に勧めない。

経口Ca拮抗薬

目的
血管を広げて血圧を下げる。
前に確認
血圧・脈拍、併用薬、足のむくみ、服薬状況を確認。
中に観察
ふらつき、頭痛、ほてり、浮腫、動悸などを確認。
反応・再評価
家庭血圧・立位症状と副作用を追う。浮腫をすべて心不全と決めない。
適応・注意
薬剤によって心拍数への作用や禁忌が異なる。製剤を独自に置き換えない。

ARB・ACE阻害薬

目的
血管収縮や体液保持に関わる系を抑えて降圧する。
前に確認
腎機能・K、脱水、妊娠の可能性、併用薬を確認。
中に観察
血圧低下、腎機能・Kの変化、ACE阻害薬では空咳、顔や喉の腫れを確認。
反応・再評価
開始・変更後の腎機能・Kと血圧を再評価。呼吸を妨げる腫れは緊急対応。
適応・注意
妊婦への使用や腎動脈狭窄などの条件を薬剤ごとに確認。ARBとACE阻害薬を安易に併用しない。

利尿薬

目的
塩分・水分の排泄を促し血圧や体液量を調整する。
前に確認
体重・浮腫・摂取量・尿量、Na・K・腎機能、立位症状を確認。
中に観察
尿量、口渇、脱水、ふらつき、電解質異常を追う。
反応・再評価
血圧・体液量と腎機能の両方を再評価。排尿に伴う夜間転倒にも配慮。
適応・注意
サイアザイド系、ループ、K保持性で適応・Kへの影響が異なる。すべての高血圧に同じ利尿薬を用いない。

緊急症の静注降圧薬

目的
臓器障害に応じて制御可能な方法で血圧を下げる。
前に確認
原因疾患、目標と速度、薬剤・濃度・ポンプ、連続血圧監視、静脈路を確認。
中に観察
血圧・脈拍、意識・神経症状、胸痛、呼吸・酸素化、尿量、注射部位を確認。
反応・再評価
目標への変化と臓器灌流を評価。急な低下・症状悪化は報告。漸減・経口薬への移行を指示に沿って行い、終了後の再上昇も追う。
適応・注意
ニカルジピンは代表例。脳卒中・大動脈解離・心不全などで目標と薬剤選択が異なる。無症状の高値へ一律に使わない。
ペルジピン注射液の詳細を開く

検査の意味と読み方

CreGFR

腎機能と降圧薬の安全性を評価。

組み合わせ・推移:単回値より基準値からの変化・尿量を見る。脱水や薬剤による変化も評価する。

Cr・eGFRの検査詳細

K

原因と治療の安全性の手がかり。

組み合わせ・推移:低Kでは内分泌原因や利尿薬、高Kでは腎機能・ARB等を考慮。正常Kでも二次性高血圧を除外しない。

Kの検査詳細

Na

体液と利尿薬の影響を評価。

組み合わせ・推移:血清Naだけで食塩摂取量は決まらない。低値は症状・摂取量・薬と合わせて確認。

Naの検査詳細

尿蛋白尿アルブミン

腎臓への影響を評価。

組み合わせ・推移:血圧・eGFR・経時変化と合わせる。一過性上昇や別の腎疾患も考慮。

心電図心エコー症状に応じた画像

心負荷や急性臓器障害を調べる。

組み合わせ・推移:症状と発症時刻に応じて検査を選ぶ。血圧値だけでは脳卒中・心筋虚血・解離を区別できない。

報告:SBARで情報をそろえる

S:何が変わったか

  • 発症時刻、急な症状、意識・呼吸・循環と現在の血圧。

B:背景と条件

  • 普段の血圧、脳心腎疾患、薬剤・服用時刻・中断、点滴と酸素条件。

A:測り直しと反応

  • カフ・姿勢・再測定値、前回値、症状・尿量、安静や投薬後の反応。

R:確認してほしいこと

  • 急性臓器障害の評価、降圧目標・速度、次の測定と薬の指示。

患者・家族への説明

家庭血圧を比較できる記録に

上腕式の血圧計で安静・姿勢をそろえる。朝夕など決めた時間に測り、値を選ばず記録して相談する。

症状がなくても続ける

自己判断で薬を中断・追加しない。ふらつき、足のむくみ、飲み忘れや費用の困りごとは相談して調整する。

急な症状は待たない

胸や背中の痛み、息苦しさ、顔や手足の麻痺、話しにくさ、意識の変化は測定を繰り返すより救急相談・要請を優先する。

参考文献

  1. 日本高血圧学会:高血圧の10のファクト

    JSH2025に基づく長期管理と家庭血圧。

  2. 国立循環器病研究センター:高血圧

    血管・臓器への負担と生活・測定条件。

  3. AHA 2024:急性期の血圧上昇の管理

    無症候の高値と急性臓器障害、再測定・原因評価の区別。

  4. PMDA:ペルジピン注射液

    静注薬の適応と連続観察。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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