呼吸器

肺気腫

肺胞の変化だけでなく、息切れが生活のどの動作で起こるかを確認する。普段からの変化と治療後の回復を追い、急な悪化を「いつもの肺気腫」で済ませない。主に成人の学習用。

主な症状
労作時息切れ 体重減少 増悪
代表的な薬
吸入気管支拡張薬
検査値UP
PaCO₂
検査値DOWN
PaO₂

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

肺胞壁の破壊:ガス交換の場が減る

肺胞壁が失われるとガス交換の面積が減る長期の曝露・素因 → 肺胞の障害比較:多くの隔壁壁が減り空間が拡大ガス交換の場が減る動作時の息切れ・酸素化を確認
  1. 煙などの長期曝露や素因による肺の障害
  2. 肺胞の壁が壊れ、ガス交換の面積が減る
  3. 労作時の酸素化低下など → 動作と酸素条件を合わせて確認

観察へ:画像の広がりだけで生活への影響を決めない。歩行・着替え・食事の息切れと、同じ条件での回復を追う。

弾性の低下:吐き切れず空気が残る

弾性と気道支持の低下で吐き切れず、肺内に空気が残る縮む力・気道を支える力が低下肺内に空気が残る呼気で狭くなりやすい過膨張 → 次の呼吸にも負担呼吸数・呼気・会話・回復を追う
  1. 肺の縮む力と末梢気道を支える力が弱まる
  2. 呼気時に空気が出にくく、肺内に残る
  3. 呼吸が速いと吐く時間も不足 → 息切れ・呼吸負担の増加

観察へ:呼吸数、呼気の長さ、肩や首を使う呼吸、会話を確認。SpO₂が保たれていても呼吸疲労を見逃さない。

肺気腫は肺胞壁の破壊と空気の入る空間の拡大という形態的な変化。COPDの診断には呼吸機能などの評価が必要で、CT所見だけと同一視しない。二つの図は重なりうる病態の関係で、診断画像や病理分類の再現ではない。

症状から観察・再確認へ

労作時の息切れ

見る・聞く
発症時刻、動作、呼吸数、呼気延長、努力呼吸、会話、体位、SpO₂・酸素器具と流量を確認。
何を反映するか
呼気の流れやガス交換の障害、過膨張による負担の可能性。心疾患や貧血も考慮する。
普段と比較
普段できる動作、休憩回数、回復までの時間を同じ酸素条件で比べる。
悪化を疑う変化
安静でも苦しい、話が続かない、いつもの休息や処方吸入で戻らない。
再確認
活動を止めて安全な楽な姿勢を支え、呼吸数・会話・酸素化・脈拍を再確認。改善しなければ速やかに報告。

痰の増加

見る・聞く
量・粘り・色、出せるか、発熱、胸痛、呼吸苦、食事時のむせを確認。
何を反映するか
気道炎症、感染、誤嚥などの手がかり。肺気腫自体だけでは説明できず、色だけで細菌感染と決めない。
普段と比較
普段の痰と咳、呼吸状態、救済吸入の使用回数を比べる。
悪化を疑う変化
痰が出せない、息切れも増える、発熱・血痰、必要な酸素条件の変化。
再確認
排痰の可否と呼吸を再確認し、診察・検体採取の必要性を共有する。

傾眠反応の低下

見る・聞く
普段の覚醒、受け答え、呼吸の深さ・回数、薬剤、酸素条件の変更を確認。
何を反映するか
換気低下や低酸素などの可能性。SpO₂はCO₂排出を示さない。
普段と比較
直前の意識、呼吸努力、過去の血液ガスと治療条件。
悪化を疑う変化
起こしにくい、呼吸が浅く弱い、チアノーゼや循環不良。
再確認
直ちに応援要請し気道・呼吸循環を継続評価。血液ガス・換気補助の準備を指示に沿って行う。

体重減少食事での疲れ

見る・聞く
摂取量、食べる所要時間、息切れ・むせ、体重推移、筋力と活動量を確認。
何を反映するか
呼吸の負担と摂取不足が重なりうる。浮腫や別疾患による体重変化も分ける。
普段と比較
普段の食事量、歩行・起立の介助量、同条件の体重。
悪化を疑う変化
食べられない状態が続く、急な体重変化、活動低下、食事中の呼吸悪化。
再確認
食前の休息・少量に分ける方法を相談し、摂取と呼吸の反応を確認。栄養・リハビリ担当へつなぐ。

看護判断:変化の緊急度

経過を観察

息切れと活動量が普段の範囲で、休息や処方治療後に戻り、意識・呼吸循環が安定。

次の行動:生活動作と回復の記録を続け、吸入手技・栄養・活動計画を確認する。

早めに共有・報告

いつもより息切れや痰が増える、吸入が増える、食事・歩行が落ちる、酸素化が普段から変化。

次の行動:発症時点・基準値・現在値・治療条件を整理し診察につなぐ。肺炎・心不全など別原因も評価を依頼。

直ちに応援要請

会話困難、意識低下、著しい呼吸疲労、チアノーゼ、循環不良、突然の強い胸痛と息苦しさ。

次の行動:気道・呼吸循環を確認し緊急対応。気胸なども想定し必要な準備をする。測定や画像を待って要請を遅らせない。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1|呼吸を支え、安全を確保

活動を中止し転倒を防ぎ、本人が楽に呼吸できる姿勢を支える。呼吸・意識・循環をまとめて確認する。

2|酸素と吸入の条件を確認

指示された目標・器具・流量・吸入薬と直近使用を確認。低酸素時にCO₂貯留を恐れて必要な酸素を一律に控えず、施設手順・個別指示に沿い調整と再評価を行う。

3|増悪の原因を調べる準備

モニター、血液ガス・採血、喀痰採取、胸部画像などを指示に沿って準備。突然の左右差・胸痛、浮腫、出納も共有する。

4|負担の少ない生活動作

清潔・食事・排泄を休憩と組み合わせる。回復後は安静の固定化を避け、活動範囲をチームで調整。介助量と呼吸の回復を記録する。

治療前・中・後の看護

長時間作用性吸入抗コリン薬(LAMA):維持治療

目的
気流閉塞を伴う場合に気道を広げ、息切れと活動への負担を減らす。
前に確認
処方・器具・操作能力・残量を確認。閉塞隅角緑内障、排尿障害、過敏症の既往、腎機能、併用吸入薬を照合。
中に観察
吸入手技と呼吸を確認。口渇・便秘・排尿困難、動悸を観察。眼痛・充血・霧視や吸入直後の呼吸悪化は速やかに共有。
反応・再評価
生活動作・息切れ・救済薬の使用を再評価。肺胞壁が元に戻ったと説明しない。
適応・注意
チオトロピウムは維持療法の例。閉塞隅角緑内障や前立腺肥大等による排尿障害では禁忌。腎機能低下にも注意。急性症状時に自己追加せず、指示された救済薬と対応計画を確認。
スピリーバ2.5μgレスピマット60吸入の詳細を開く

短時間作用型β₂刺激薬:症状時

目的
処方された症状時吸入で気管支を拡張する。
前に確認
前回使用、指示回数、脈拍・呼吸、併用薬を確認。
中に観察
呼吸改善と動悸・振戦・不整脈を観察。使用量増加や効きにくさを共有する。
反応・再評価
会話・呼吸数・息切れと脈拍を再確認し、改善不足なら診察につなぐ。
適応・注意
指示を超えて反復しない。維持吸入との役割を区別。低Kなどの評価は状態と指示に応じる。
メプチンエアー10μg吸入100回の詳細を開く

酸素療法・換気補助

目的
適応のある低酸素や換気不全を改善する。
前に確認
普段の酸素、目標範囲、血液ガス、意識・呼吸仕事量を確認。
中に観察
器具・流量、SpO₂に加え意識・呼吸を観察。換気補助ではマスク、漏れ、皮膚、痰や嘔吐への対応を確認。
反応・再評価
酸素化だけでなく会話・覚醒・呼吸負担、必要時の血液ガスを再評価する。
適応・注意
在宅酸素は息切れだけで決めない。換気補助は適応判断と監視体制が必要。火気・喫煙を避ける。

呼吸リハビリ・栄養支援

目的
活動と筋力を保ち、日常動作の息切れを軽くする。
前に確認
安定性、運動の指示、酸素条件、体重と摂取量を確認。
中に観察
休憩・動作に合わせた呼吸法を支援し、胸痛・めまい・呼吸悪化時は中止して評価。
反応・再評価
同じ動作の息切れ、回復時間、食事量・活動量を比較する。
適応・注意
増悪時に無理な運動をしない。栄養は併存症・嚥下状態を含め個別化する。

肺容量を減らす治療:選択された重症例

目的
大きな嚢胞や過膨張した部分による負担を減らす。
前に確認
対象となる肺の分布、呼吸機能、併存症、手術・気管支鏡治療の計画を確認。
中に観察
処置後の急な胸痛・息切れ、酸素化、呼吸音、発熱・喀血を確認し直ちに共有。
反応・再評価
急性合併症と、その後の活動・息切れの改善を分けて評価する。
適応・注意
全例に行う治療ではない。術式・機器ごとの適応と術後手順は専門チームで確認する。

検査の意味と読み方

呼吸機能検査

気流閉塞や肺気量を評価する。

組み合わせ・推移:一秒量などは検査の実施状態も確認。CTの気腫所見や症状と合わせ、安定期の経時変化を見る。

胸部CT胸部X線

気腫の分布、嚢胞、別の肺病変を評価する。

組み合わせ・推移:画像だけで息切れの重症度を決めない。急変時は気胸・肺炎などを臨床所見と合わせて調べる。

PaO₂

血液の酸素化を評価する。

組み合わせ・推移:低値は酸素化障害を示唆。採血時の酸素器具・流量と症状を併記し、治療前後を比較。

PaO₂の検査詳細

PaCO₂

肺からのCO₂排出を評価する。

組み合わせ・推移:高値は換気不足などを示唆。普段の値とpHを合わせ、急な変化かを確認する。SpO₂では代用できない。

PaCO₂の検査詳細

pH

酸塩基の状態を評価する。

組み合わせ・推移:PaCO₂上昇とpH低下は呼吸性アシドーシスを示唆するが、代謝性の要因もありうる。意識・呼吸と推移で判断。

pHの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S|変化

  • いつから、どの動作で苦しくなったか。
  • 現在の意識・呼吸・循環、胸痛。

B|普段と治療

  • 普段の活動・酸素条件、既往の換気不全、吸入の種類と使用、処置歴。

A|比較と反応

  • 直近と現在の呼吸数・SpO₂・脈拍、痰・体温・血液ガス。
  • 休息や処方治療後の反応。

R|依頼

  • 診察、原因評価、酸素・吸入・換気補助の指示、再評価時期を確認したい。

患者・家族への説明

悪化の連絡を決めておく

普段より苦しい、痰が増える、吸入が効きにくいときの連絡先を確認。会話困難や意識の変化では救急要請。

吸入は実際にやって確認

維持薬と症状時の薬を区別し、手技・残量・使用回数を一緒に確かめる。

生活を保つ工夫

禁煙や曝露回避を支援し、予防接種を相談。休憩を入れて活動し、食べにくさや体重変化を伝える。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会:COPD

    診断、気管支拡張薬、併存症、活動と栄養の概要。

  2. NHLBI:COPDの原因

    肺胞壁・弾性と気道の変化。

  3. NHLBI:COPDの症状

    増悪、生活機能、緊急症状。

  4. NHLBI:COPDの治療

    吸入・リハビリ・酸素・選択された例の外科的治療。海外の承認を国内適応として扱わない。

  5. PMDA:メプチンエアー電子添文

    適応、使用過多、動悸・振戦・低Kなどの注意。

  6. PMDA:スピリーバ電子添文

    維持療法の適応、禁忌、腎機能・眼症状・排尿症状、急性症状時の薬との区別。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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