呼吸器

気胸

突然の胸痛・息切れでは呼吸と循環を同時に見る。胸膜腔の空気で肺が縮み、圧が上がり続けると心臓への血液の戻りも障害される。

主な症状
突然の胸痛 呼吸困難 循環悪化
代表的な薬
鎮痛薬
検査値UP
検査値DOWN
PaO₂

検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。

病型と病態のつながり

原発性自然気胸

胸膜腔に空気 → 肺が広がりにくくなる縮んだ肺換気が低下黄色:胸膜腔の空気心臓肺の表面から胸膜腔へ空気が漏れる胸膜腔に空気 → 肺が広がりにくくなる
  1. 明らかな基礎肺疾患がない背景でブラなどが破れる
  2. 胸膜腔に空気が入り、肺が縮む
  3. 胸痛・息切れ/症状と安定性で治療を選ぶ

観察へ:見た目の元気さや画像の大きさだけで観察方針を決めない。発症時刻、呼吸数、酸素化と再検査の計画を確認する。

続発性自然気胸

もとの肺機能低下に、肺の縮みが重なる縮んだ肺基礎疾患あり黄色:胸膜腔の空気心臓肺の表面から胸膜腔へ空気が漏れるもとの肺機能低下に、肺の縮みが重なる
  1. COPD・間質性肺疾患などを背景に空気が漏れる
  2. もとの呼吸予備力低下に肺の縮みが重なる
  3. 小さな気胸でも呼吸状態が悪化しうる

観察へ:普段の酸素条件、呼吸の負担と活動量を比較。空気漏れの持続や治療への反応を注意して追う。

緊張性気胸

圧が上がり続ける → 心臓への戻りも減る縮んだ肺換気が低下黄色:胸膜腔の空気心臓空気の出口がなく、圧迫が進む圧が上がり続ける → 心臓への戻りも減る
  1. 胸膜腔へ空気が入り続け、十分に逃げない
  2. 圧迫で換気と静脈の戻りが障害される
  3. 呼吸悪化に血圧低下・意識変化が加わる

観察へ:不安定な患者では画像待ちで緊急評価・減圧を遅らせない。気管偏位など特定の所見がそろうまで待たない。

肺の縮みと胸腔内圧の関係を示す模式図。黄色の矢印は肺から胸膜腔への空気漏れ、赤い矢印は緊張性気胸での圧迫を示す。原発性・続発性は背景の分類、緊張性は循環に影響する状態で、互いに排他的な分類ではない。外傷・医療処置・陽圧換気に伴う気胸も評価する。

症状から観察・再確認へ

突然の胸痛

見る・聞く
時刻、左右、呼吸・体動との関係、強さ、外傷や穿刺・処置の直後かを確認。呼吸数・血圧も測る。
何を反映するか
胸膜刺激の手がかり。心血管疾患などでも起こり、胸痛だけで気胸と決められない。
普段と比較
発症前の状態、処置前後、鎮痛後の変化、深呼吸や咳ができるかを比較する。
悪化を疑う変化
急な息切れ、冷汗、血圧低下、意識変化を伴う痛み。
再確認
鎮痛後も呼吸・循環を再評価し、痛みが減ったことだけで改善としない。

息切れ呼吸音低下

見る・聞く
呼吸数、努力呼吸、会話、胸郭運動の左右差、呼吸音、SpO₂と酸素条件、意識を確認。
何を反映するか
換気低下の可能性。片側の呼吸音低下は手がかりだが、騒音や体格などで評価が難しいこともある。
普段と比較
普段の呼吸・在宅酸素、処置前、脱気前後の酸素条件と呼吸の負担を比較。
悪化を疑う変化
急速な酸素必要量増加、疲弊、チアノーゼ、会話困難、循環悪化。
再確認
装置・ドレーンと患者を一緒に確認。挿入後の悪化では閉塞・逸脱・再膨張性肺水腫なども評価する。

血圧低下意識変化

見る・聞く
脈拍・血圧の推移、意識、皮膚冷感・冷汗、尿量を確認。人工呼吸中なら換気量や気道内圧の急変も共有。
何を反映するか
胸腔内圧上昇による循環障害の可能性。外傷では出血など別の原因も同時に評価する。
普段と比較
直前の循環、陽圧換気やドレーン操作との時間関係を比較。
悪化を疑う変化
低血圧の進行、反応低下、呼吸の急変、心停止。
再確認
応援要請とABC評価を優先し、減圧処置後も呼吸・血圧・意識が戻るかを続けて確認。

皮下気腫ドレーンの変化

見る・聞く
皮膚の腫れ・握雪感の範囲、固定と挿入長、接続、屈曲、気泡の出る室とタイミングを確認。
何を反映するか
空気漏れ・逸脱・閉塞などの手がかり。水封室の気泡と吸引室の作動表示は意味が異なる。
普段と比較
範囲の拡大、気泡・呼吸性移動の変化、咳や体位との関係を記録。
悪化を疑う変化
急に広がる皮下気腫、気泡の増加または停止に伴う呼吸悪化、管の抜け・接続外れ。
再確認
患者の呼吸を先に評価し装置全体を点検。気泡停止を治癒と決めず、自己判断のクランプや押し戻しをしない。

看護判断:変化の緊急度

計画に沿った経過観察

診断と経過観察・処置後の計画があり、痛みと呼吸循環が安定。悪化時の連絡と再検査が確保されている。

次の行動:症状・酸素条件・画像や空気漏れの推移を予定どおり確認する。

早めの報告・再評価

痛み・息切れの増加、新しい皮下気腫、気泡や呼吸性移動の変化、酸素必要量が増える。

次の行動:患者と装置を確認し、閉塞・空気漏れ・再膨張の評価を求める。

直ちに応援・緊急対応

急な呼吸悪化と血圧低下・意識変化、抜去や接続外れ後の悪化、急速な皮下気腫拡大。

次の行動:応援を求めABC評価。酸素・モニター・緊急減圧物品を準備し、処置を行う医療者につなぐ。正常な呼吸と反応がなければ蘇生手順へ。

緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。

看護行動:優先順位

1.安全と呼吸循環の評価

活動を止め、呼吸が楽な体位を支援。血圧低下時は転倒を防ぎ、体位の反応を確認。重症例を歩かせない。

2.脱気・挿入の準備

挿入側、指示、画像、抗凝固薬・出血リスク、アレルギー、鎮痛計画、救急物品を確認。処置は権限と施設手順に従う医療者が実施する。

3.患者から装置まで点検

挿入部→管→接続→水封・吸引の順に確認。装置は立てて挿入部より低く保ち、管を圧迫・屈曲させない。設定吸引圧を自己変更しない。

4.処置後の再評価

呼吸・血圧・痛み、皮下気腫、排液・出血、画像確認を追う。空気漏れのあるドレーンを移動目的でルーチンにクランプしない。抜去後も再発症状を確認する。

治療前・中・後の看護

経過観察・酸素療法

目的
適応を満たす安定例で再吸収を待ち、必要時に酸素化を支える。
前に確認
症状、循環、基礎肺疾患、低酸素、再診可能性と悪化時対応を確認。
中に観察
痛み・呼吸数・SpO₂と酸素条件、活動時の変化を追う。
反応・再評価
症状と画像の改善、酸素必要量を確認。悪化すれば観察方針を再評価する。
適応・注意
全例が観察だけでよいわけではない。酸素は個別目標に沿い、高CO₂リスクも確認。緊張性を疑う不安定例では脱気の代わりにならない。

脱気・胸腔ドレナージ

目的
胸膜腔の空気を逃がし、肺が広がる条件を回復する。
前に確認
左右確認、器材、止血・鎮痛、固定、吸引と水封の指示、処置後画像を確認。
中に観察
呼吸・血圧、疼痛、空気漏れ、固定・接続、出血を観察。
反応・再評価
呼吸苦の改善と肺の再膨張を確認。急な咳・低酸素・胸痛は再膨張性肺水腫や他の合併症を疑い再評価。
適応・注意
緊張性が疑われ不安定なら緊急減圧を優先。胸水排液時のクランプ指示を気胸の気漏へそのまま適用しない。

外科治療・胸膜癒着療法

目的
持続する空気漏れを抑え、適応例で再発を減らす。
前に確認
気漏の持続、再発、基礎疾患、麻酔・手術の忍容性、薬剤・自己血による癒着の計画を確認。
中に観察
術後・注入後の痛み、発熱、呼吸循環、排液・気漏、皮膚と挿入部を観察。
反応・再評価
気漏と肺の再膨張、痛みの軽減、活動・排痰の回復を追う。
適応・注意
方法と適応は個別に決める。注入後の管の扱い・体位・クランプは専用指示を照合し、一律の手順にしない。

鎮痛療法

目的
痛みを和らげ、呼吸・咳・体動を支える。
前に確認
痛み、意識・呼吸、肝腎機能、アレルギー、併用薬と投与経路を確認。
中に観察
痛みの変化、眠気・呼吸抑制、血圧、悪心などを使用薬に応じて確認。
反応・再評価
痛みの点数だけでなく深呼吸・咳・離床ができるかを再評価。
適応・注意
薬剤は処置内容と患者条件で選ぶ。強い鎮静で悪化徴候を見落とさず、新しい胸痛の原因評価を続ける。

検査の意味と読み方

胸部X線

胸膜腔の空気、肺の縮み、処置後の肺とドレーン位置を確認する。

組み合わせ・推移:仰臥位など撮影条件で分かりにくいことがある。画像上の大きさと呼吸循環を合わせ、緊急対応を画像待ちで遅らせない。

胸部CT

気胸やブラ、基礎肺疾患、合併病変を詳しく評価する。

組み合わせ・推移:必要性と移動の安全を確認。全例に必須ではなく、状態と診断・治療上の疑問に応じて選ぶ。

PaO₂

動脈血の酸素化をみる。

組み合わせ・推移:酸素条件と採血時刻、呼吸努力を記録。低下は気胸に特有ではなく、正常でも否定できない。

PaO₂の検査詳細

PaCO₂

換気が十分かを評価する。

組み合わせ・推移:高値は基礎疾患や疲弊などと合わせる。pH、意識、呼吸数と比較し、治療後も追う。

PaCO₂の検査詳細

Hb

外傷や処置に伴う出血の評価を補助する。

組み合わせ・推移:排液の色と量、血圧・脈拍、前回との差を確認。急性出血初期は低下が目立たない場合もある。

Hbの検査詳細

報告:SBARで情報をそろえる

S:何が変わったか

  • 胸痛・息切れの発症、現在の意識・呼吸・血圧と悪化速度。

B:背景と処置

  • 気胸の側、基礎肺疾患、外傷・処置、陽圧換気、酸素、ドレーンの設定と直近操作。

A:前後比較

  • 呼吸数・SpO₂・血圧、気泡・呼吸性移動・皮下気腫、排液と固定の変化。
  • 安全確保と点検後の反応。

R:求める対応

  • 緊張性・閉塞・逸脱等の緊急評価、脱気・画像・ドレーン指示、再評価時点。

患者・家族への説明

再発のサインを伝える

退院後に急な胸痛・息切れが出たら早めに受診し、強い息苦しさ・失神なら直ちに助けを求める。

管と活動の注意

管を引っ張らず、折れや接続外れを見つけたら知らせる。装置を持つ位置・移動方法は看護師と確認する。

禁煙と生活への復帰

禁煙を支援し、運動・仕事は回復に合わせる。飛行機や潜水は自己判断で再開せず、肺の回復と再発リスクを主治医に確認する。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会:気胸(2025年9月)

    病態、背景疾患、緊張性と治療の概要。

  2. BTS:胸膜処置Clinical Statement 2023

    胸腔ドレーン管理、合併症、気漏とクランプの注意。

資料確認:2026年9月15日。看護観察・報告は資料の病態とリスクを基に学習用へ整理したもの。施設の手順・個別指示に合わせて使う。

看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。

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