検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
原発性自然気胸
- 明らかな基礎肺疾患がない背景でブラなどが破れる
- 胸膜腔に空気が入り、肺が縮む
- 胸痛・息切れ/症状と安定性で治療を選ぶ
観察へ:見た目の元気さや画像の大きさだけで観察方針を決めない。発症時刻、呼吸数、酸素化と再検査の計画を確認する。
続発性自然気胸
- COPD・間質性肺疾患などを背景に空気が漏れる
- もとの呼吸予備力低下に肺の縮みが重なる
- 小さな気胸でも呼吸状態が悪化しうる
観察へ:普段の酸素条件、呼吸の負担と活動量を比較。空気漏れの持続や治療への反応を注意して追う。
緊張性気胸
- 胸膜腔へ空気が入り続け、十分に逃げない
- 圧迫で換気と静脈の戻りが障害される
- 呼吸悪化に血圧低下・意識変化が加わる
観察へ:不安定な患者では画像待ちで緊急評価・減圧を遅らせない。気管偏位など特定の所見がそろうまで待たない。
肺の縮みと胸腔内圧の関係を示す模式図。黄色の矢印は肺から胸膜腔への空気漏れ、赤い矢印は緊張性気胸での圧迫を示す。原発性・続発性は背景の分類、緊張性は循環に影響する状態で、互いに排他的な分類ではない。外傷・医療処置・陽圧換気に伴う気胸も評価する。
症状から観察・再確認へ
突然の胸痛
- 見る・聞く
- 時刻、左右、呼吸・体動との関係、強さ、外傷や穿刺・処置の直後かを確認。呼吸数・血圧も測る。
- 何を反映するか
- 胸膜刺激の手がかり。心血管疾患などでも起こり、胸痛だけで気胸と決められない。
- 普段と比較
- 発症前の状態、処置前後、鎮痛後の変化、深呼吸や咳ができるかを比較する。
- 悪化を疑う変化
- 急な息切れ、冷汗、血圧低下、意識変化を伴う痛み。
- 再確認
- 鎮痛後も呼吸・循環を再評価し、痛みが減ったことだけで改善としない。
息切れ・呼吸音低下
- 見る・聞く
- 呼吸数、努力呼吸、会話、胸郭運動の左右差、呼吸音、SpO₂と酸素条件、意識を確認。
- 何を反映するか
- 換気低下の可能性。片側の呼吸音低下は手がかりだが、騒音や体格などで評価が難しいこともある。
- 普段と比較
- 普段の呼吸・在宅酸素、処置前、脱気前後の酸素条件と呼吸の負担を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急速な酸素必要量増加、疲弊、チアノーゼ、会話困難、循環悪化。
- 再確認
- 装置・ドレーンと患者を一緒に確認。挿入後の悪化では閉塞・逸脱・再膨張性肺水腫なども評価する。
血圧低下・意識変化
- 見る・聞く
- 脈拍・血圧の推移、意識、皮膚冷感・冷汗、尿量を確認。人工呼吸中なら換気量や気道内圧の急変も共有。
- 何を反映するか
- 胸腔内圧上昇による循環障害の可能性。外傷では出血など別の原因も同時に評価する。
- 普段と比較
- 直前の循環、陽圧換気やドレーン操作との時間関係を比較。
- 悪化を疑う変化
- 低血圧の進行、反応低下、呼吸の急変、心停止。
- 再確認
- 応援要請とABC評価を優先し、減圧処置後も呼吸・血圧・意識が戻るかを続けて確認。
皮下気腫・ドレーンの変化
- 見る・聞く
- 皮膚の腫れ・握雪感の範囲、固定と挿入長、接続、屈曲、気泡の出る室とタイミングを確認。
- 何を反映するか
- 空気漏れ・逸脱・閉塞などの手がかり。水封室の気泡と吸引室の作動表示は意味が異なる。
- 普段と比較
- 範囲の拡大、気泡・呼吸性移動の変化、咳や体位との関係を記録。
- 悪化を疑う変化
- 急に広がる皮下気腫、気泡の増加または停止に伴う呼吸悪化、管の抜け・接続外れ。
- 再確認
- 患者の呼吸を先に評価し装置全体を点検。気泡停止を治癒と決めず、自己判断のクランプや押し戻しをしない。
看護判断:変化の緊急度
計画に沿った経過観察
診断と経過観察・処置後の計画があり、痛みと呼吸循環が安定。悪化時の連絡と再検査が確保されている。
次の行動:症状・酸素条件・画像や空気漏れの推移を予定どおり確認する。
早めの報告・再評価
痛み・息切れの増加、新しい皮下気腫、気泡や呼吸性移動の変化、酸素必要量が増える。
次の行動:患者と装置を確認し、閉塞・空気漏れ・再膨張の評価を求める。
直ちに応援・緊急対応
急な呼吸悪化と血圧低下・意識変化、抜去や接続外れ後の悪化、急速な皮下気腫拡大。
次の行動:応援を求めABC評価。酸素・モニター・緊急減圧物品を準備し、処置を行う医療者につなぐ。正常な呼吸と反応がなければ蘇生手順へ。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1.安全と呼吸循環の評価
活動を止め、呼吸が楽な体位を支援。血圧低下時は転倒を防ぎ、体位の反応を確認。重症例を歩かせない。
2.脱気・挿入の準備
挿入側、指示、画像、抗凝固薬・出血リスク、アレルギー、鎮痛計画、救急物品を確認。処置は権限と施設手順に従う医療者が実施する。
3.患者から装置まで点検
挿入部→管→接続→水封・吸引の順に確認。装置は立てて挿入部より低く保ち、管を圧迫・屈曲させない。設定吸引圧を自己変更しない。
4.処置後の再評価
呼吸・血圧・痛み、皮下気腫、排液・出血、画像確認を追う。空気漏れのあるドレーンを移動目的でルーチンにクランプしない。抜去後も再発症状を確認する。
治療前・中・後の看護
経過観察・酸素療法
- 目的
- 適応を満たす安定例で再吸収を待ち、必要時に酸素化を支える。
- 前に確認
- 症状、循環、基礎肺疾患、低酸素、再診可能性と悪化時対応を確認。
- 中に観察
- 痛み・呼吸数・SpO₂と酸素条件、活動時の変化を追う。
- 反応・再評価
- 症状と画像の改善、酸素必要量を確認。悪化すれば観察方針を再評価する。
- 適応・注意
- 全例が観察だけでよいわけではない。酸素は個別目標に沿い、高CO₂リスクも確認。緊張性を疑う不安定例では脱気の代わりにならない。
脱気・胸腔ドレナージ
- 目的
- 胸膜腔の空気を逃がし、肺が広がる条件を回復する。
- 前に確認
- 左右確認、器材、止血・鎮痛、固定、吸引と水封の指示、処置後画像を確認。
- 中に観察
- 呼吸・血圧、疼痛、空気漏れ、固定・接続、出血を観察。
- 反応・再評価
- 呼吸苦の改善と肺の再膨張を確認。急な咳・低酸素・胸痛は再膨張性肺水腫や他の合併症を疑い再評価。
- 適応・注意
- 緊張性が疑われ不安定なら緊急減圧を優先。胸水排液時のクランプ指示を気胸の気漏へそのまま適用しない。
外科治療・胸膜癒着療法
- 目的
- 持続する空気漏れを抑え、適応例で再発を減らす。
- 前に確認
- 気漏の持続、再発、基礎疾患、麻酔・手術の忍容性、薬剤・自己血による癒着の計画を確認。
- 中に観察
- 術後・注入後の痛み、発熱、呼吸循環、排液・気漏、皮膚と挿入部を観察。
- 反応・再評価
- 気漏と肺の再膨張、痛みの軽減、活動・排痰の回復を追う。
- 適応・注意
- 方法と適応は個別に決める。注入後の管の扱い・体位・クランプは専用指示を照合し、一律の手順にしない。
鎮痛療法
- 目的
- 痛みを和らげ、呼吸・咳・体動を支える。
- 前に確認
- 痛み、意識・呼吸、肝腎機能、アレルギー、併用薬と投与経路を確認。
- 中に観察
- 痛みの変化、眠気・呼吸抑制、血圧、悪心などを使用薬に応じて確認。
- 反応・再評価
- 痛みの点数だけでなく深呼吸・咳・離床ができるかを再評価。
- 適応・注意
- 薬剤は処置内容と患者条件で選ぶ。強い鎮静で悪化徴候を見落とさず、新しい胸痛の原因評価を続ける。
検査の意味と読み方
胸部X線
胸膜腔の空気、肺の縮み、処置後の肺とドレーン位置を確認する。
組み合わせ・推移:仰臥位など撮影条件で分かりにくいことがある。画像上の大きさと呼吸循環を合わせ、緊急対応を画像待ちで遅らせない。
胸部CT
気胸やブラ、基礎肺疾患、合併病変を詳しく評価する。
組み合わせ・推移:必要性と移動の安全を確認。全例に必須ではなく、状態と診断・治療上の疑問に応じて選ぶ。
PaO₂
動脈血の酸素化をみる。
組み合わせ・推移:酸素条件と採血時刻、呼吸努力を記録。低下は気胸に特有ではなく、正常でも否定できない。
PaO₂の検査詳細
PaCO₂
換気が十分かを評価する。
組み合わせ・推移:高値は基礎疾患や疲弊などと合わせる。pH、意識、呼吸数と比較し、治療後も追う。
PaCO₂の検査詳細
Hb
外傷や処置に伴う出血の評価を補助する。
組み合わせ・推移:排液の色と量、血圧・脈拍、前回との差を確認。急性出血初期は低下が目立たない場合もある。
Hbの検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S:何が変わったか
- 胸痛・息切れの発症、現在の意識・呼吸・血圧と悪化速度。
B:背景と処置
- 気胸の側、基礎肺疾患、外傷・処置、陽圧換気、酸素、ドレーンの設定と直近操作。
A:前後比較
- 呼吸数・SpO₂・血圧、気泡・呼吸性移動・皮下気腫、排液と固定の変化。
- 安全確保と点検後の反応。
R:求める対応
- 緊張性・閉塞・逸脱等の緊急評価、脱気・画像・ドレーン指示、再評価時点。
患者・家族への説明
再発のサインを伝える
退院後に急な胸痛・息切れが出たら早めに受診し、強い息苦しさ・失神なら直ちに助けを求める。
管と活動の注意
管を引っ張らず、折れや接続外れを見つけたら知らせる。装置を持つ位置・移動方法は看護師と確認する。
禁煙と生活への復帰
禁煙を支援し、運動・仕事は回復に合わせる。飛行機や潜水は自己判断で再開せず、肺の回復と再発リスクを主治医に確認する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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