呼吸・循環を整える技術内容・リンク確認:2026年8月29日

胸腔ドレーン

患者の呼吸と装置をひとつの系として捉え、排液・水封・エアリークの「変化」から異常を見つけるための学習ノート。

学習用。適応、ドレーン径、吸引圧、排液量・速度、クランプ、離床、抜去は患者の病態・医師の指示・使用製品の添付文書・院内手順を優先する。呼吸困難、SpO₂低下、ショック徴候、急な鮮血排液、ドレーン逸脱があれば直ちに応援を要請する。

胸腔ドレーンの安全原則

胸腔内の空気や液体が排出され、排液槽、水封室、必要時の吸引へ進むしくみ
排液槽は量を測り、水封室は空気の逆流を防ぐ。吸引の要否と設定は指示・製品ごとに異なる。
自分の判断で変えない・止めない
  • 装置は立てたまま、挿入部より低い位置に保つ。
  • 接続の緩み、屈曲、圧迫、ベッド柵への挟み込み、深い垂れ下がりをなくす。
  • 吸引圧を自己判断で変更せず、水封水や吸引室は製品の目盛・添付文書で確認する。
  • ルーチンのクランプや強いミルキング・ストリッピングは行わない。
  • 排液だけで判断せず、呼吸・循環・疼痛と装置全体を同時にみる。

目的と主な適応

胸腔内の空気、血液、胸水、膿、術後の排液を示す図

胸腔内から空気・液体を排出する

  • 気胸:空気を排出し、肺の再膨張を助ける
  • 血胸:血液を排出し、量と性状を観察する
  • 胸水・乳び胸:貯留液を排出し、呼吸を助ける
  • 膿胸:感染した胸水・膿を排出する
  • 胸部手術後:空気、血液、リンパ液などを排出する

大量の胸水を急速に排出すると、低血圧、呼吸状態悪化、再膨張性肺水腫につながることがある。排液量・速度・中止条件を指示で確認する。

管理を始める前の確認

患者、接続、チューブ、装置、指示を順に確認する図

患者・指示・装置を一致させる

  • 目的、挿入側、挿入部位、挿入長の目印
  • 水封のみか持続吸引か、設定圧はいくつか
  • 排液量・速度の上限、中止・報告基準
  • クランプ、移動、離床、検査時の扱い
  • 挿入後・抜去後の画像確認と採血
  • 使用製品の水封水、吸引表示、アラームの見方

観察は「患者→挿入部→管→装置」の順

患者、挿入部、チューブ、排液、水封、吸引を順に観察する図
前回値と比べ、どこで何が変わったかを探す。
  1. 患者

    呼吸数・呼吸様式、左右の胸郭運動、呼吸音、SpO₂、脈拍、血圧、意識、疼痛、苦しさを確認する。

  2. 挿入部

    固定、挿入長、出血、浸出液、発赤、熱感、疼痛、ドレッシング、皮下気腫を確認する。

  3. チューブと接続

    抜け、緩み、亀裂、屈曲、圧迫、凝血塊、深い垂れ下がりがないかたどる。

  4. 排液

    量、色、性状、凝血塊、増減の傾向を確認し、装置の目盛へ時刻と量を記す。

  5. 水封・吸引

    呼吸性移動、気泡、吸引表示、装置の傾き、水位、アラームを製品の方法で確認する。

呼吸性移動とエアリークの読み方

水封室の呼吸性移動と気泡を別々に示す図

単独の所見では決めつけない

  • 呼吸性移動あり:胸腔内圧の変化が水封室へ伝わっている
  • 呼吸性移動なし:肺の再膨張後だけでなく、屈曲・閉塞・クランプでも起こる
  • 咳で一時的な気泡:患者側のエアリークでみられることがある
  • 新しい持続性気泡:患者側または接続・装置側の漏れを疑う

排液と皮下気腫

  • 量:一定時間ごとの差と累積量を記録する。急増・急減・突然の停止を患者状態と合わせて評価する。
  • 色:淡血性から漿液性への変化、鮮血化、混濁、膿性、乳白色などを観察する。
  • 突然の鮮血・増加:出血を疑い、バイタルサインと排液速度を確認して直ちに報告する。
  • 突然の停止:改善とは限らない。屈曲、圧迫、凝血塊、位置異常と呼吸悪化を確認する。
  • 皮下気腫:挿入部周囲、胸部、頸部を視診・触診し、範囲の拡大、声の変化、呼吸困難を確認する。

皮下気腫の範囲を皮膚へ記す運用がある場合は、日時を添え、院内手順に従う。頸部へ広がる、急速に増える、呼吸や発声に影響する場合は緊急報告する。

体位・移動・日常生活

装置を倒さず、胸より低く保つ
  • 呼吸しやすい体位を整え、挿入側を下にするなど一律の体位に固定しない。
  • 体位変換ごとに、チューブの牽引・屈曲・身体の下への巻き込みを確認する。
  • 歩行時も装置を立てて胸より低く持ち、床へ直置きしない。
  • 移動前に接続、固定、電源・吸引、クランプの要否を確認し、移動後に再確認する。
  • 咳嗽・深呼吸・離床は、疼痛を調整しながら患者の状態と指示に合わせる。

挿入介助

挿入前確認、無菌介助、接続、挿入後観察、抜去介助の流れ
処置前の左右確認から処置後の画像・装置確認までを一続きに行う。
  1. 適応・同意・左右を確認する

    患者、目的、画像、処置部位、抗凝固薬、アレルギー、検査値、同意を確認し、タイムアウトを行う。

  2. 監視と物品を準備する

    酸素、吸引、モニター、救急物品、局所麻酔、無菌物品、ドレーン、使用する排液装置を準備する。

  3. 体位を整え無菌操作を介助する

    呼吸状態を連続観察し、疼痛と不安へ声をかける。胸水などでは超音波による部位確認を介助する。

  4. 接続・固定・作動を確認する

    無菌的に装置へ接続し、挿入長、縫合・固定、ドレッシング、水封、吸引設定を確認する。

  5. 処置後を観察し記録する

    呼吸、循環、疼痛、出血、排液、エアリーク、皮下気腫を確認し、指示された胸部画像で位置を確認する。

抜去介助

  1. 抜去条件と指示を確認する

    呼吸状態、画像、排液量、エアリーク、抗凝固薬、抜去後の画像・観察指示を確認する。

  2. 患者へ説明し物品を準備する

    体位、痛み、呼吸の合図を説明し、モニター、被覆材、抜糸・縫合物品を準備する。

  3. 呼吸の合図を介助する

    息止めやバルサルバ法など、実施者が選んだ方法を患者と合わせる。吸気・呼気のどちらかを一律に覚えない。

  4. 抜去直後に密閉する

    実施者の抜去と同時に創部を速やかに閉鎖・被覆し、空気の流入と漏れを防ぐ。

  5. 呼吸状態と創部を再評価する

    呼吸困難、SpO₂、左右の呼吸音、疼痛、出血、皮下気腫を確認し、指示された画像と記録を行う。

胸腔穿刺と検体

患者確認、無菌採取、容器選択、ラベル、速やかな提出を示す図

検査目的と提出方法を先に確認する

  • 診断目的か治療目的か、採取する検査項目を確認
  • 患者と穿刺側を照合し、超音波による部位確認を介助
  • 治療的排液では上限量・速度・中止症状を確認
  • 培養、細胞診、生化学などに合う容器を検査部へ確認
  • 採取後すぐに患者情報、検体、時刻を照合して提出

胸水へ一律にヘパリンを加えない。添加剤、採取量、嫌気培養・血液培養ボトルの使用は検査項目と施設の検査手順に従う。

すぐに応援を呼ぶ変化

呼吸悪化、急な鮮血、逸脱、閉塞、皮下気腫拡大の緊急徴候

患者を離れず、ABCDEで評価する

  • 突然の強い呼吸困難、SpO₂低下、胸痛、チアノーゼ
  • 血圧低下、頻脈、冷汗、意識変化
  • 急な鮮血排液・排液増加、または症状を伴う排液停止
  • ドレーンの抜去、接続外れ、破損、装置の転倒
  • 皮下気腫の急速な拡大、新しい持続性エアリーク

記録と申し送り

  • 挿入側・部位、挿入長、固定・ドレッシング、処置後画像
  • 呼吸・循環、疼痛、呼吸音、SpO₂、皮下気腫
  • 水封・吸引の別、設定値、呼吸性移動、エアリーク
  • 排液の時刻、時間量、累積量、色、性状、凝血塊
  • 体位・離床、患者への説明、報告内容、指示と対応後の変化

出典