検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
排出の障害:出口の抵抗が増える
- 前立腺の肥大・平滑筋の緊張
- 尿道の抵抗が増える
- 尿勢低下・途切れ・残尿、進行すると尿閉
観察へ:膀胱が押し出す力の低下も関わる。尿が少し漏れていても、膀胱に大量の尿が残っていることがある。
蓄尿の障害:頻尿・尿意切迫
- 出口の抵抗や膀胱機能の変化
- 十分ためられない・残尿がある
- 頻尿・尿意切迫・夜間の覚醒
観察へ:夜間頻尿は夜間多尿や睡眠・心不全などの影響も受ける。一回量・昼夜の量・生活への支障を記録する。
前立腺と尿道・膀胱の関係を示す模式図。排尿症状と蓄尿症状は併存する。前立腺の大きさだけでは症状や治療の必要性は決まらない。
症状から観察・再確認へ
尿勢低下・残尿感
- 見る・聞く
- 出始めまでの時間、途切れ、いきみ、排尿量と残尿感を聞く。必要な残尿測定の条件をそろえる。
- 何を反映するか
- 出口の抵抗や膀胱収縮力の低下の手がかり。感覚だけで残尿量は分からない。
- 普段と比較
- 普段の尿勢、投薬前後、排尿直後の残尿を比較。
- 悪化を疑う変化
- 尿が出なくなる、下腹部膨満、少量ずつ漏れるのに張りが強い。
- 再確認
- 排尿支援後の量・苦痛と残尿。改善しなければ尿閉評価につなぐ。
頻尿・夜間頻尿
- 見る・聞く
- 時刻・一回量・昼夜の総量、尿意切迫と失禁、飲水・カフェイン・利尿薬、睡眠への影響を記録。
- 何を反映するか
- 蓄尿障害だけでなく多尿や睡眠障害などでも起こる。
- 普段と比較
- 回数だけでなく量と困り方を前回・普段と比較。
- 悪化を疑う変化
- 頻回でもほとんど出ない、痛み・発熱が加わる、夜間転倒が起きる。
- 再確認
- 生活調整後の睡眠と排尿。飲水を減らしすぎて脱水になっていないか確認。
下腹部痛・尿閉
- 見る・聞く
- 最終排尿、膨満、尿意、排出量、血尿、最近の感冒薬・抗コリン作用薬の使用を確認。
- 何を反映するか
- 尿を作れない乏尿と、膀胱から出せない尿閉を区別する。
- 普段と比較
- 発症前の排尿、術後・抜去後・薬剤変更との関係。
- 悪化を疑う変化
- 強い膨満と排尿不能、発熱・悪寒、腎機能悪化。
- 再確認
- 導尿後の尿量・血尿・痛みと血圧。閉塞解除後の多尿や再尿閉を追う。
立ちくらみ
- 見る・聞く
- 起き上がり・立位・排尿時との関係、血圧・脈拍、失神と転倒の有無を確認。
- 何を反映するか
- α1遮断薬などによる血圧低下や脱水を考える。
- 普段と比較
- 開始・増量時、併用降圧薬、摂取量と発症の関係を比較。
- 悪化を疑う変化
- 失神、転倒、胸痛・呼吸苦や循環不良の合併。
- 再確認
- 安全確保後の覚醒・循環を再評価し処方者へ共有。排尿改善だけで治療成功としない。
看護判断:変化の緊急度
継続観察
評価済みで排尿でき、症状と生活への支障が安定し、感染・腎障害・薬剤有害反応の新しい徴候がない。
次の行動:排尿日誌と個別の受診・残尿評価計画を続ける。
早めに共有
尿勢悪化、残尿増加、頻尿で睡眠や生活が障害される、薬剤開始後のふらつき。排尿不能と膨満があれば速やかな診察が必要。
次の行動:尿閉・薬剤・感染の評価と導尿の要否を相談する。翌日まで我慢させない。
直ちに応援要請
尿路症状に意識低下・呼吸促迫・循環不良を伴う。術後の出血増加と血圧低下、回復しない失神。
次の行動:急変対応を起動し、呼吸循環を評価。出血・感染・閉塞への緊急処置を準備。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
排尿できているかを最初に確認
排尿不能・膨満・苦痛は速やかに共有。安全とプライバシーを確保し、無理にいきませない。
排尿日誌と残尿をそろえる
時刻と量、尿意・失禁、飲水・薬を記録。残尿は排尿から測定までの間隔も記録し、測定だけで治療を決めない。
指示に沿って排出を確保
導尿・留置の指示と器具を確認。挿入抵抗や出血があれば無理に進めず応援を求める。
夜間移動と薬剤を見直す
照明・動線・介助方法を整え転倒を予防。市販薬を含む薬剤と服用時刻を薬剤師・処方者へ共有。
抜去・投薬・処置後を追う
初回排尿、量、残尿、痛み・血尿、血圧を確認。尿が出た一回だけで抜去後の排尿管理を終了しない。
治療前・中・後の看護
α1遮断薬
- 目的
- 前立腺・尿道の平滑筋を緩め、出口の抵抗を下げる。
- 前に確認
- 血圧・ふらつき、降圧薬やPDE5阻害薬、肝機能、白内障・緑内障手術の予定を確認。
- 中に観察
- 排尿の改善と立ちくらみ・失神、転倒、肝障害を疑う症状を追う。
- 反応・再評価
- 尿勢・残尿感と生活への支障が改善したか、副作用で活動が制限されていないか比較。
- 適応・注意
- タムスロシンを代表薬として接続。前立腺自体を縮小する薬ではない。眼科手術前は過去の服用も共有する。
タムスロシン塩酸塩の詳細を開く5α還元酵素阻害薬
- 目的
- ホルモンの作用を抑え、肥大した前立腺を徐々に縮小する。
- 前に確認
- 前立腺の大きさ、PSA評価、肝機能と薬剤の適応を確認。 重度肝障害の禁忌と、カプセルを開けず扱うことを確認。
- 中に観察
- 即効性を期待して中断しないよう支援し、性機能・乳房の変化など相談しづらい症状も確認。
- 反応・再評価
- 数か月単位の症状・前立腺体積・残尿の変化を評価する計画を確認。
- 適応・注意
- PSAを低下させるため、検査時に服用歴を共有。値の解釈は担当医が治療期間を含め判断する。
デュタステリドの詳細を開くPDE5阻害薬
- 目的
- 下部尿路の平滑筋などへ作用し排尿症状を改善する。
- 前に確認
- 硝酸薬・NO供与薬、リオシグアトの併用禁忌と循環器疾患を確認。重度の腎・肝障害では禁忌のため処方条件を照合。
- 中に観察
- 頭痛・ほてり・ふらつき、血圧低下や胸部症状を観察。
- 反応・再評価
- 排尿と生活の改善、循環への影響を確認。
- 適応・注意
- 前立腺肥大症用の適応・処方を確認し、勃起障害用製剤・用法と混同しない。胸痛時は服用情報を直ちに医療者へ伝える。
ザルティア錠2.5mg・5mgの詳細を開く導尿・カテーテル留置
- 目的
- 尿閉時に膀胱内の尿を排出する。
- 前に確認
- 膀胱の張り・残尿、尿道損傷リスク、指示された器具と手順を確認。
- 中に観察
- 抵抗・疼痛・出血、排出量、血圧を観察。閉鎖回路と固定を保つ。
- 反応・再評価
- 苦痛・膨満の軽減、血尿と排出量を追う。多尿が続く場合は出納・電解質を評価。
- 適応・注意
- 長期留置を自動的に継続せず、抜去試験・間欠導尿などの計画を確認。
経尿道的手術・低侵襲治療
- 目的
- 尿道を圧迫する組織を切除・核出・縮小するなどして通過を改善する。
- 前に確認
- TURP・HoLEPなど術式、抗血栓薬、感染所見、麻酔と術後カテーテル計画を確認。
- 中に観察
- 血尿・血塊、排液の途絶、下腹部痛、血圧・意識を観察。灌流中は注入量と排出量を分けて記録。
- 反応・再評価
- 抜去後の尿勢・残尿・失禁と疼痛を追い、活動再開と受診目安を確認。
- 適応・注意
- 出血・尿閉・感染などのリスクは術式で異なる。灌流量を引いた尿量を評価し、無指示の牽引・洗浄・抜去をしない。
検査の意味と読み方
残尿測定
排尿後に膀胱内へ残る尿を評価。
組み合わせ・推移:残尿感とは別。排尿からの時間、排尿量、測定条件で変わり、一回値だけで重症度を決めない。
尿流測定
尿の勢いと排出のパターンを評価。
組み合わせ・推移:排尿量や膀胱収縮力にも左右される。低流量だけで前立腺による閉塞と断定しない。
PSA
前立腺の疾患評価に使う血液検査。
組み合わせ・推移:肥大・炎症などでも上昇し、単独でがんと判定しない。5α還元酵素阻害薬の服用と処置歴を共有し推移を評価。
Cr
閉塞に伴う腎機能障害などを評価。
組み合わせ・推移:上昇時は残尿・水腎症、循環・出納と合わせる。解除後も元の腎機能と比較する。
Crの検査詳細
尿検査
血尿・炎症など他の原因を調べる。
組み合わせ・推移:血尿を肥大症のためと決めつけず、感染・結石・腫瘍などの評価につなぐ。
超音波
前立腺体積、膀胱、必要時は水腎症を評価。
組み合わせ・推移:大きさだけで症状は説明できない。残尿と尿流・症状の困り方を組み合わせる。
報告:SBARで情報をそろえる
S:いまの排尿状態
- 最終排尿、排尿不能・膨満・痛み、血尿、現在の意識・呼吸・循環。
B:治療と薬
- 肥大症の治療、カテーテル・手術歴、腎機能、市販感冒薬を含む薬剤変更。
- 使用中の酸素・点滴、尿路処置の内容と時刻。
A:量と反応
- 排尿日誌、残尿量と測定時刻、処置後の排液、血尿、血圧とふらつきの経過。
R:確認事項
- 導尿・留置・抜去の計画、薬剤調整、感染・腎障害の評価と再評価時点。
患者・家族への説明
尿が出ないとき
強い尿意や下腹部の張りがあるのに出ないときは、我慢せず速やかに相談する。少量漏れていても出し切れているとは限らない。
薬と転倒を確認
ゆっくり起き上がり、ふらつきは伝える。市販の風邪薬を購入するときも、前立腺肥大症と内服を薬剤師に伝える。
生活の困り方を共有
夜間の排尿回数だけでなく、睡眠・外出・失禁の困りごとを伝える。水分は一律に減らさず、飲む時刻と量を個別に相談する。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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