排泄援助技術更新・文献確認:2026年8月29日

導尿・残尿測定

測るために、すぐ挿入しない。排尿の時刻と量を押さえ、膀胱スキャンで確かめ、必要なときだけ安全に尿を排出する学習ノート。

学習用。導尿の適応、残尿量の判断基準、カテーテルの種類・径、消毒、潤滑、挿入方法は、患者の状態、医師の指示、採用製品の電子添文・説明書、院内手順を優先する。

注意事項

盲目的に挿入しない
  • 骨盤外傷、尿道損傷の疑い、尿道出血、最近の尿道・前立腺手術
  • 既知の尿道狭窄、偽尿道、挿入困難歴
  • 強い抵抗、激しい痛み、出血が出現した
  • 急性尿閉に加えて発熱、側腹部痛、血尿、全身状態悪化がある
残尿量だけで判断しない
  • 排尿から測定までの時間と排尿量
  • 尿意、下腹部膨満・疼痛、排尿困難、尿勢低下
  • 水分摂取、輸液、薬剤、麻酔・手術、神経疾患
  • 腎機能、尿路感染、前回値と経時変化

膀胱スキャンと導尿を使い分ける

排尿状況を確認し、まず膀胱スキャンで残尿を測り、必要な場合だけ導尿する流れを示す図
膀胱スキャンは不要なカテーテル挿入を減らせる。測定不能・不確実な場合や治療として排出が必要な場合に導尿を検討する。
  • 膀胱スキャン:非侵襲的に膀胱内尿量を推定する。残尿測定では排尿後に行う
  • 一時的導尿:カテーテルを一時挿入し、尿を排出・測定・採取して抜去する
  • 留置カテーテル:継続排尿が必要な別の管理。必要性を毎日見直す

超音波による測定値は推定値。腹水、妊娠、骨盤内腫瘤、肥満、手術後の解剖変化、創・ドレッシングなどで精度が変わることがある。

残尿測定の考え方

排尿前の尿量、排尿量、排尿後残尿量を時間軸で示す図
「いつ排尿し、どれだけ出て、直後にどれだけ残ったか」を一組で記録する。
  • 排尿後残尿量(PVR)は、排尿後に膀胱内へ残った尿量
  • できるだけ排尿後すみやかに測定し、遅れた場合は時刻を記録する
  • 一回の値には測定誤差と日内変動がある。症状や目的に応じて再測定する
  • 治療判断に使える普遍的な単一カットオフ値はない
  • 院内プロトコルの値を使う場合も、症状、排尿量、前回値、患者背景を合わせる

膀胱スキャンの手順

  1. 目的と測定条件を確認する

    残尿測定か膀胱容量確認かを分け、最終排尿時刻と排尿量、症状を確認する。

  2. 機器と患者情報を確認する

    機種、プローブ、バッテリー、モード、患者区分を説明書どおり設定する。性別選択がない機種もある。

  3. 仰臥位を基本に下腹部を露出する

    プライバシーを守り、恥骨上部の創、ドレッシング、膨満、圧痛を確認する。

  4. 超音波用ゲルを塗布する

    機種が指定する位置へ十分なゲルを置き、プローブを下腹部正中から膀胱へ向ける。

  5. 照準を合わせて測定する

    画面の膀胱位置・方向表示を確認し、必要に応じて角度を調整して再測定する。

  6. 値の妥当性を確かめる

    症状や触診所見と合わない、連続値が大きく違う、照準が不十分なら再測定し、必要時は別方法で確認する。

  7. 清拭・消毒して記録する

    患者のゲルを拭き、プローブを製品・施設手順で清掃消毒する。測定時刻、排尿量、PVR、体位、機種、症状を残す。

一時的導尿の必要物品

滅菌野、清潔区域、使用後区域を分け、カテーテル先端と接続部へ触れないことを示す図
カテーテル先端と尿道へ入る部分を汚染しない。清潔物と使用後物品の動線を交差させない。
  • 指示された種類・長さ・最小限の適切な径の単回使用カテーテル
  • 滅菌手袋、滅菌ドレープ、清拭用綿球・ガーゼと鑷子
  • 施設で承認された尿道周囲清拭用の滅菌液または消毒薬
  • 単回使用の滅菌潤滑剤。必要時は指示された局所麻酔薬
  • 尿受け・計量容器、検体容器、処置シーツ、廃棄容器
  • 照明、追加手袋、清拭用品、患者を覆う物品

尿道周囲に用いる液を一律に決めない。粘膜への使用可否、アレルギー、採用製品と院内手順を確認する。

一時的導尿の手順

  1. 適応・既往・指示を確認する

    目的、尿道損傷リスク、手術歴、狭窄・挿入困難歴、アレルギー、検体採取の有無を確認する。

  2. 説明し、体位と環境を整える

    羞恥心と疼痛へ配慮し、必要な介助者と照明を確保する。無理な開脚や肢位を避ける。

  3. 手指衛生後、無菌野を準備する

    物品を使用順に置き、尿受けと廃棄物の位置を先に決める。カテーテル先端へ触れない。

  4. 尿道口を確認して清拭する

    周囲組織を分けた手は不潔側として固定し、決められた方向・回数で清拭する。

  5. 十分に潤滑し、優しく挿入する

    患者へ呼吸を促し、尿の流出を確認するまでゆっくり進める。必要な挿入長と陰茎の保持は患者・製品・手順に従う。

  6. 尿を排出・測定・採取する

    カテーテルを安定させ、容器へ自然排出する。量、色、混濁、血液、沈渣、においを観察する。

  7. 流出停止を確認して抜去する

    無理な膀胱圧迫はせず、指示どおり排出後にゆっくり抜く。包皮を翻転した場合は必ず元へ戻す。

  8. 患者を整え、再評価・記録する

    疼痛、出血、腹部膨満、尿意、排尿状態、バイタルを確認し、物品を廃棄する。

挿入を止めるサイン
  • 強い抵抗があり、体位や緊張を整えても進まない
  • 強い痛み、尿道出血、新しい血尿がある
  • カテーテルが折れる・たわむ、誤った位置へ入った可能性がある
  • 尿が出ないまま十分に進み、位置を確認できない

性別・解剖で変わる点

女性の短い尿道と男性の長く屈曲する尿道を比較し、固定角度や挿入長を一律にしないことを示す図
尿道の長さと走行は異なり、前立腺、手術歴、狭窄、体位でも難易度が変わる。固定した角度や長さで押し込まない。
  • 女性:尿道口を視認して挿入する。腟へ入った場合は抜いたカテーテルを再使用せず、新しい物品でやり直す
  • 男性:尿道の走行を整えるよう陰茎を保持する。抵抗部を力で越えない
  • 包皮:処置後に必ず元の位置へ戻し、嵌頓包茎を防ぐ
  • 共通:尿の流出で膀胱内への到達を確認し、必要以上に挿入・操作しない

実施後の観察

導尿後に尿量、尿性状、痛み、出血、下腹部、排尿経過を確認する図

排出量だけで終わらない

  • 導尿量と、直前の排尿量・膀胱スキャン値との差
  • 色、混濁、血液、沈渣、におい
  • 尿道痛、下腹部痛、出血、発熱、悪寒
  • 下腹部膨満・尿意の改善、血圧・気分不良
  • 次回排尿時刻、排尿量、再度の残尿、再尿閉

測定値・排尿の異常時

  • スキャン値と症状が合わない:体位、照準、モード、ゲルを確認して再測定。腹水や骨盤内病変なども考える
  • 導尿しても尿が出ない:位置、屈曲、閉塞を確認し、無理な再挿入を繰り返さず報告する
  • 多量の尿が排出された:循環変化、血尿、尿量の推移を観察し、指示どおり報告する
  • 強い痛み・出血:直ちに中止し、尿道損傷や偽尿道を疑って評価を依頼する
  • 繰り返す残尿・尿閉:単回値ではなく、排尿日誌、薬剤、便秘、神経・泌尿器疾患を含めて共有する

報告・記録

  • 適応、最終排尿時刻、排尿量、症状、下腹部所見
  • 膀胱スキャンの時刻、体位、機種・モード、測定値、再測定値
  • 導尿の時刻、カテーテル種類・径、挿入の難易度、尿流出までの状況
  • 導尿量、尿性状、検体採取、実施前後の疼痛・出血・全身状態
  • 異常、報告先、対応、再評価、次回の排尿・測定計画

出典