検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
転位が少ない頚部骨折
- 転倒・ひねりなどで頚部に骨折が生じる
- 骨片の位置が保たれていても、荷重でずれが進む可能性
- 鼠径部痛・動作の変化 → 無理な歩行確認を避ける
観察へ:骨接合術などが検討される。手術前後とも荷重条件を確認し、痛みだけで安定性を判断しない。
転位を伴う頚部骨折
- 骨折部がずれ、支持性が損なわれる
- 骨頭へ向かう血流も障害され、骨癒合や骨頭の生存に影響
- 強い痛み・荷重困難。後にも骨癒合不全・骨頭壊死へ注意
観察へ:人工骨頭・人工股関節が検討される一方、若年者などでは骨頭温存を目指すこともある。年齢だけで決めず骨折型・活動性・全身状態を確認。
ここでは関節包内の頚部骨折を扱う。転子部骨折はより下方の別の骨折で、術式も異なる。転位は骨片のずれ。図は位置と血流の関係を示す模式図で、画像診断や骨折分類の代用ではない。
症状から観察・再確認へ
鼠径部痛・動作困難
- 見る・聞く
- 受傷機転、痛む部位、安静時と介助時の痛み、脚の見た目を確認。歩行や股関節の回旋を無理に試さない。
- 何を反映するか
- 骨折部への負荷や術後の創痛を反映。新たな痛みは再骨折・脱臼なども評価する。
- 普段と比較
- 受傷前の歩行、鎮痛前後、同じ介助条件での表情・痛みを比較。言葉で伝えにくい場合は防御動作も見る。
- 悪化を疑う変化
- 突然の痛み増強、変形、できていた移乗ができない。
- 再確認
- 動作を中止し支持して報告。鎮痛後も新しい変形や痛みが残らないか再確認。
下肢の冷感・しびれ
- 見る・聞く
- 足の色・温かさ、触れる脈、足趾の動きと感覚を左右で比較。麻酔・ブロックの範囲と時間を確認。
- 何を反映するか
- 末梢の循環・神経状態。股関節の骨頭血流は足の脈だけでは判断できない。
- 普段と比較
- 受傷時・術前・術後の記録と、麻酔からの回復経過。
- 悪化を疑う変化
- 新しい冷感・蒼白、脈の変化、増えるしびれや運動低下。
- 再確認
- 圧迫や肢位を確認し速やかに診察を依頼。無理な整復は行わず、変化時刻を記録。
顔色不良・立ちくらみ
- 見る・聞く
- 意識、呼吸数、脈・血圧、皮膚、創部・ドレーン、尿量を確認。離床時は姿勢との関係を見る。
- 何を反映するか
- 出血・貧血、脱水、薬剤、起立性低血圧などの可能性。出血量の外見だけで決めない。
- 普段と比較
- 術前後のHb、出納、安静時と座位、輸液・鎮痛薬の変更。
- 悪化を疑う変化
- 冷汗・意識低下、血圧低下が続く、出血増加、息苦しさ。
- 再確認
- 離床を中止し安全な体位と呼吸循環を確保。重い変化は応援要請し、採血・輸液等を指示に沿って準備。
注意力・反応の変化
- 見る・聞く
- 普段の会話・注意力と、今の受け答え、眠気、落ち着かなさを比較。痛み、酸素化、排泄、睡眠、薬を確認。
- 何を反映するか
- せん妄や薬剤の影響、低酸素などの可能性。静かに反応が乏しくなる変化も見逃さない。
- 普段と比較
- 家族等から受傷前の状態を確認し、時間帯による変動と鎮痛前後を記録。
- 悪化を疑う変化
- 急な意識低下、呼吸の異常、自己抜去や転倒につながる行動。
- 再確認
- 安全確保と原因評価を依頼。眼鏡・補聴器、見通しのある説明、睡眠環境を整え反応を追う。
下肢腫脹・息切れ
- 見る・聞く
- 左右差のある腫れ・痛みと、突然の呼吸困難、胸痛、呼吸数、酸素条件、意識を確認。
- 何を反映するか
- 術後浮腫だけでなくDVT・肺塞栓などの可能性。症状だけで確定できない。
- 普段と比較
- 腫れの範囲、普段の呼吸、離床状況、血栓予防と出血リスク。
- 悪化を疑う変化
- 急な呼吸困難・胸痛・失神、循環不良、急速な酸素化の悪化。
- 再確認
- 急変時は直ちに応援要請。片側の腫れも速やかに報告し、揉まずに評価を待つ。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察
骨折・術式の評価と指示があり、痛みと全身状態が安定し、介助下で予定の動作ができる。
次の行動:同じ動作条件で痛み・介助量を比較し、創部・排泄・摂取・認知状態を継続確認。
早めに共有・報告
鎮痛不足、介助量の増加、軽い意識・注意の変化、創部の発赤・排液増加、片側下肢の腫れ。
次の行動:発症時点と薬・離床との関係を整理し、感染・血栓・せん妄などの評価と計画修正を依頼。
直ちに応援要請
呼吸困難・胸痛・失神、進む循環不良、急な意識低下、患肢の急な冷感・運動低下。
次の行動:呼吸循環と安全を確保し緊急評価へ。突然の股関節痛・変形・動作不能も動かさず速やかに診察を求める。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|受傷後の安全を確保
無理に立たせず患肢を支える。頭部など他部位の外傷と転倒前の失神・体調変化も確認し、呼吸循環を先に評価。
2|手術前の条件をそろえる
患側、術式予定、最終飲食、抗凝固薬等の最終使用、アレルギー、普段の認知・歩行を確認。採血・輸液・疼痛管理は指示に沿う。
3|術後の引継ぎを具体化
術式・麻酔、出血と補液、創部・ドレーン、下肢神経所見、荷重・関節運動の条件を確認。決まっていない条件を推測で補わない。
4|鎮痛と離床を組み合わせる
動作前の鎮痛計画を確認し、呼吸・意識・循環と下肢機能を評価して介助。めまいや痛み増悪で中止し、次回の方法を調整。
5|臥床中の二次障害を減らす
許可された体位変換と除圧、皮膚確認、口腔ケア、摂取・排泄支援を行う。血栓予防具の適合・皮膚と実施状況を確認。
6|退院後の動作へつなぐ
移乗・トイレ・着替えを実際の生活条件に合わせて練習。補助具、段差、支援者、骨粗鬆症評価と再診をチームで調整。
治療前・中・後の看護
骨接合術:骨頭を温存する
- 目的
- 骨片を固定し、骨癒合と動作の回復を目指す。
- 前に確認
- 転位、固定方法、全身状態と受傷前機能、手術・麻酔の計画を確認。
- 中に観察
- 術後の創部・出血、疼痛、末梢循環・神経、感染兆候を観察。
- 反応・再評価
- 指示範囲での動作改善と画像での癒合を評価。遅れて増す痛みは固定不全・骨頭壊死等の評価へ。
- 適応・注意
- 転位が少ない場合や骨頭温存を選ぶ場合など。荷重開始・程度は固定性と個別指示による。
人工骨頭・人工股関節置換術
- 目的
- 損傷した骨頭等を置換し、疼痛軽減と支持性を得る。
- 前に確認
- 置換範囲、進入法、受傷前機能、術後の荷重と動作条件を確認。
- 中に観察
- 創部、循環、神経所見を観察。急な痛み・肢位の変化では脱臼等を疑い動作を中止。
- 反応・再評価
- 安全な移乗・歩行へ進めるか、痛み・介助量を比較。感染・脱臼・血栓を継続評価。
- 適応・注意
- 転位例などで検討。禁止肢位や外転枕を全患者に一律適用せず、術式・指示に合わせる。
非オピオイド鎮痛薬:アセトアミノフェン
- 目的
- 安静・ケア・離床を妨げる痛みを和らげる。
- 前に確認
- 肝・腎機能、低栄養・絶食・脱水、重複薬、最終投与、内服可否を確認。
- 中に観察
- 痛みと動作、発疹・呼吸変化、悪心・肝機能などを観察。
- 反応・再評価
- 痛みだけでなく介助で動けるかを再評価。効かない場合は追加・変更を相談し自己判断で増量しない。
- 適応・注意
- 重篤な肝障害・成分過敏症は禁忌。市販感冒薬等との重複を避ける。絶食時などは投与経路も相談。
カロナール錠200・300・500の詳細を開く追加鎮痛・神経ブロック
- 目的
- 基本の鎮痛で不十分な痛みを抑え、必要なケアを可能にする。
- 前に確認
- 処方薬・方法、意識と呼吸、腎機能、神経所見、施行者と監視計画を確認。
- 中に観察
- オピオイドでは鎮静・呼吸抑制・悪心・便秘、ブロックでは感覚・筋力変化を観察。
- 反応・再評価
- 疼痛緩和と副作用を同時に評価。筋力や感覚が十分でない間は独歩させない。
- 適応・注意
- 薬の追加とブロックは指示・専門職による。鎮痛で骨折評価や手術調整を遅らせない。
血栓予防・早期リハビリ
- 目的
- 血栓と不活動による機能低下を減らす。
- 前に確認
- 出血、腎機能、血小板、麻酔・処置、荷重条件を確認。薬剤・機械的方法を個別に選ぶ。
- 中に観察
- 出血・創部、予防具の圧迫と皮膚、離床時の呼吸循環・痛みを観察。
- 反応・再評価
- 離床範囲・介助量と予防の継続状況を再評価。出血や新しい腫れ・息切れは報告。
- 適応・注意
- 骨折手術後の予防と、既に生じたDVTの治療を混同しない。開始・休薬・再開は出血と麻酔条件に合わせる。
検査の意味と読み方
Hb
受傷・手術に伴う貧血や出血の影響を評価。
組み合わせ・推移:早期の単回値だけで出血量は分からない。脈・血圧・皮膚・出納と術前後の推移を合わせる。
Hbの検査詳細
血小板
出血リスクや抗凝固薬使用中の変化を評価。
組み合わせ・推移:術前値・薬の開始時点と比較。低下原因は一つではなく、出血や血栓の兆候と合わせ報告。
血小板の検査詳細
クレアチニン
脱水や腎機能、薬剤使用の安全性を評価。
組み合わせ・推移:筋肉量の少ない人は低い値でも腎機能を過大評価しうる。尿量・出納と前回値を見る。
クレアチニンの検査詳細
CRP
炎症反応の推移を確認。
組み合わせ・推移:骨折・手術でも上がる。発熱、創部、呼吸や尿の症状と合わせ、単独で感染と断定しない。
CRPの検査詳細
X線・CT・MRI
骨折位置・転位・固定や治癒の状態を確認。
組み合わせ・推移:X線で明らかでなくても痛みや荷重困難が続けば追加評価へ。看護師の歩行テストで除外しない。
報告:SBARで情報をそろえる
S|変化と緊急度
- いつから痛み・脚の状態・意識・呼吸循環が変わったか。
- 現在の患側と安全確保の状態。
B|受傷・手術の条件
- 骨折型、術式・麻酔、荷重指示、抗凝固薬・鎮痛薬と最終投与、受傷前の認知・歩行。
A|前後の比較
- 痛みと介助量、脈・血圧・酸素条件、創部・排液、下肢所見、Hb・出納。
- 介助・鎮痛後の反応。
R|確認したいこと
- 急変原因や患肢の診察、追加鎮痛、採血・画像、離床条件の変更と次の再評価時点。
患者・家族への説明
動く前に条件を確かめる
痛みを我慢して一人で立たず、呼び出しと補助具を使う。許可された動作は介助者と繰り返し練習する。
変化を早く伝える
新しい強い股関節痛、脚の腫れ、息苦しさ、創部の変化を伝える。退院後の連絡先を確認しておく。
再骨折を防ぐ生活へ
骨の評価・治療と、段差・照明・履物・服薬の見直しを続ける。退院後の生活動作と必要な支援を一緒に考える。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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