呼吸・循環を整える技術内容・リンク確認:2026年8月29日

心嚢穿刺・心嚢ドレナージ

心臓を圧迫する心嚢液を排出し、循環を回復させる処置。排液量だけでなく、血行動態と心エコーの変化を続けてみる。

学習用。心嚢穿刺は致死的合併症を伴い得る侵襲的処置であり、熟練した医師が画像ガイド下で行う。穿刺経路、排液量・速度、吸引、洗浄、クランプ、抜去は医師の指示・使用製品・院内手順を優先する。血圧低下、意識変化、重篤な不整脈、呼吸悪化があれば直ちに応援を要請する。

心タンポナーデのしくみ

心嚢液が心臓を圧迫し、拡張と静脈還流を妨げて心拍出量が低下する流れ
心嚢液の「量」だけでなく、たまる速さ、心膜の伸びやすさ、循環への影響が重症度を決める。
量が少なくても急速にたまれば危険
  • 心嚢内圧が上がると心室が拡張しにくくなり、一回拍出量と心拍出量が低下する。
  • 頻脈、血圧低下、脈圧狭小、頸静脈怒張、呼吸困難、意識変化などが現れる。
  • 低血圧・頸静脈怒張・心音減弱の三徴がそろうのを待たない。
  • 心エコー所見と患者の血行動態を合わせて緊急度を判断する。

目的と適応

救命、症状改善、原因診断を示す図

救命・症状緩和・診断のために排液する

  • 心タンポナーデ:圧迫を解除して循環を回復させる
  • 症候性の中等量~大量心嚢液:薬物治療で改善しない症状を軽減する
  • 細菌性・腫瘍性などが疑われる場合:心嚢液を検査し、治療方針につなげる
  • 再貯留への対応:カテーテルを留置し、持続的に排液する

循環が不安定な心タンポナーデでは緊急ドレナージが必要になる。経皮的穿刺が困難、膿性、外傷性・術後出血、心筋破裂や大動脈解離が疑われる場合などは、外科的ドレナージが選択されることがある。

心タンポナーデを疑う観察

循環、呼吸、頸静脈、心音、心電図、心エコーを統合して評価する図
典型所見がすべてそろうとは限らない。時間経過と組み合わせる。
  • 循環:頻脈、血圧低下、脈圧狭小、四肢冷感、毛細血管再充満遅延、尿量低下
  • 呼吸:呼吸困難、頻呼吸、SpO₂低下、起坐呼吸
  • 静脈うっ血:頸静脈怒張、中心静脈圧上昇。ただし低容量では目立たないことがある
  • 心音・脈:心音減弱、吸気時の収縮期血圧低下が大きい奇脈
  • 意識:不穏、反応低下、失神など低灌流の徴候
  • 心電図:洞性頻脈、低電位、電気的交互脈、不整脈
  • 心エコー:心嚢液、右房・右室の虚脱、下大静脈拡張と呼吸性変動低下など

処置前の確認と準備

患者、画像、出血リスク、監視、救急物品を確認する図

急変と合併症にすぐ対応できる状態をつくる

  • 患者、目的、同意、アレルギー、感染症、絶食・鎮静の指示
  • 心エコー・CTなどで液体の位置と穿刺経路を確認
  • 血算、凝固、血液型、抗凝固薬・抗血小板薬
  • 心電図、SpO₂、頻回血圧、必要時は観血的血圧
  • 酸素、吸引、静脈路、救急カート、除細動器
  • 無菌物品、局所麻酔、穿刺セット、排液容器、検体容器

心嚢穿刺・ドレーン留置の介助

確認、監視、無菌介助、排液、留置後評価の流れ
排液開始後も処置は終わりではない。循環の改善と新たな悪化を同時にみる。
  1. タイムアウトを行う

    患者、処置、画像、穿刺部位、出血リスク、検体、緊急時の役割をチームで確認する。

  2. 体位と監視を整える

    呼吸・循環に無理のない体位を保ち、心電図、SpO₂、血圧を連続または頻回に観察する。

  3. 無菌操作を介助する

    画像ガイド、局所麻酔、穿刺、ガイドワイヤー、カテーテル留置を介助し、患者へ短く声をかける。

  4. 排液中の変化を伝える

    排液量・色、血圧、脈拍、心電図、疼痛、意識、呼吸の変化を読み上げ、異常時は直ちに止めて報告する。

  5. 接続・固定・再評価を行う

    閉鎖式排液系へ接続し、挿入長、固定、屈曲、排液経路を確認する。心エコーと血行動態の改善を確認する。

処置中・直後の合併症

心臓、血管、肺、肝臓、不整脈の合併症を示す図

小さな変化を処置チームへ即時共有する

  • 心筋・心腔・冠動脈損傷、心嚢内出血
  • 心室頻拍・心室細動、徐脈などの不整脈
  • 血管迷走神経反射、低血圧、心停止
  • 気胸、血胸、肺損傷
  • 肝臓・腹腔内臓器・内胸動脈などの損傷
  • 感染、空気混入、カテーテル逸脱・閉塞

ドレーン留置中の管理

患者、挿入部、チューブ、排液、心エコーを順に確認する図

患者から排液系まで順にたどる

  • 患者:血圧、脈拍、意識、末梢循環、尿量、呼吸、疼痛
  • 心電図:頻脈、不整脈、ST変化
  • 挿入部:出血、血腫、発赤、浸出液、固定、挿入長
  • チューブ:屈曲、圧迫、凝血塊、接続外れ、牽引
  • 排液:時間量、累積量、色、混濁、凝血塊、急増・急減
  • 画像:残存・再貯留と心臓の動きを指示された心エコーで確認
独断で操作しない
  • 吸引、フラッシュ、ミルキング、クランプ、採取を自己判断で行わない。
  • 閉鎖式の接続を保ち、無菌的に取り扱う。
  • 排液バッグの位置と扱いは使用製品・院内手順に従い、逆流や牽引を防ぐ。
  • 突然排液が止まっても改善と決めず、循環悪化、屈曲、凝血塊、位置異常、再貯留を確認する。
  • 新しい鮮血や急増は出血、突然の血性排液停止と循環悪化は閉塞・再タンポナーデを疑う。

心膜減圧症候群

排液後に一度改善しても、肺水腫や左右心不全、ショックが起こり得ることを示す図
排液後の再悪化を「処置が済んだから」と見逃さない。

心嚢液を排出したあと、いったん循環が改善したように見えても、数時間から数日以内に肺水腫、右心不全・左心不全、低血圧、ショックが起こることがある。心膜減圧症候群はまれだが重篤になり得る。

  • 呼吸困難、湿性ラ音、SpO₂低下、酸素需要増加
  • 血圧低下、頻脈、四肢冷感、尿量低下、意識変化
  • 頸静脈怒張、浮腫、肺うっ血
  • 処置後も連続監視を続け、変化時は心エコーなどの再評価へつなぐ

心嚢液検体

検体は病因診断につながる。細胞数・分画、生化学、細菌・抗酸菌培養、細胞診、病理など、指示された検査に合う容器・量・保存条件を検査部へ確認する。患者情報、採取部位、採取時刻、検体をその場で照合し、速やかに提出する。添加剤や培養ボトルを一律に決めない。

抜去の介助

  1. 抜去条件を確認する

    排液量と性状の推移、循環状態、再貯留の有無、心エコー、凝固状態、抜去後の観察指示を確認する。

  2. 患者へ説明し監視を続ける

    体位と処置内容を説明し、心電図、SpO₂、血圧を観察する。

  3. 無菌的に抜去を介助する

    固定を解除し、実施者の抜去後に創部を圧迫・被覆する。抵抗がある場合は無理に引かない。

  4. 再貯留と出血を観察する

    血圧低下、頻脈、呼吸困難、胸痛、頸静脈怒張、創部出血を確認し、指示された心エコーを行う。

抜去時期は単一の排液量だけで決めず、原因、排液の傾向、循環状態、画像所見、再貯留リスクを合わせて医師が判断する。

すぐに応援を呼ぶ変化

血圧低下、不整脈、呼吸悪化、鮮血、排液停止の緊急徴候

患者を離れずABCDEで再評価する

  • 急な血圧低下、脈圧狭小、頻脈・徐脈、意識変化
  • 心室頻拍・心室細動、新しいST変化
  • 呼吸困難、SpO₂低下、湿性ラ音
  • 急な鮮血排液・排液増加、創部出血
  • 循環悪化を伴う排液停止、カテーテル逸脱・接続外れ

記録と申し送り

  • 適応、穿刺経路、カテーテル種類・挿入長、固定、処置時刻
  • 処置前後と経時的な血圧・脈拍・心電図・SpO₂・意識・尿量
  • 排液の時間量・累積量・色・性状・凝血塊、検体提出
  • 心エコー所見、症状と循環の改善、合併症の有無
  • ドレーン操作、医師への報告、指示、対応後の変化

出典