食事援助技術更新・文献確認:2026年8月29日

KT介入・嚥下評価
KTバランスチャート(KTBC)

「むせない」だけで食べられると決めない。食べる意欲、全身・呼吸、口腔、嚥下、姿勢、食形態、栄養をつなぎ、その人の強みから支援を組み立てる学習ノート。

学習用。成人の一般的な摂食嚥下評価を扱う。飲食物を用いる評価と食事開始は、適応、実施資格、医師・歯科医師・言語聴覚士などの指示、院内手順を確認する。評価中は誤嚥・窒息へ対応できる環境を整える。

口から食べることを支える

安全と本人の希望を同時に考える

食事は栄養と水分をとるだけでなく、楽しみ、生活のリズム、人とのつながりにもなる。

「食べたい」「この味が好き」という思いを確認し、安全性、負担、得られる喜びを多職種で検討する。

摂食嚥下の5期

食べる前から食道通過まで続く

先行期で食物を認識し、準備期で取り込み・咀嚼して食塊をつくる。

口腔期で舌が送り、咽頭期で気道を守りながら通過し、食道期で胃へ運ぶ。

むせは主に咽頭期の手がかりだが、食物認知、口唇閉鎖、咀嚼、舌の送り込み、食道通過など、ほかの段階にも問題は起こる。

KTBCで全体像を見る

13項目を支援につなげる

食べる意欲、全身・呼吸、口腔、食事中の認知、咀嚼・送り込み、嚥下、姿勢・耐久性、食事動作、活動、摂食状況、食物形態、栄養を包括的に評価する。

一つの合計点だけで決めず、項目ごとの強みと課題、介入前後の変化を見る。

評価から支援へ
  • 低い項目を「食べられない理由」と決めつけない
  • 食べる力を妨げている、変えられる要因を探す
  • 介入後に同じ視点で再評価し、効果と負担を比較する
  • 正式な評価には最新版のKTBCと評価基準を用い、基準の文言を変えない

飲食物を使う前の確認

まず全身と口腔をみる

意識・覚醒、指示理解、呼吸状態、分泌物、咳、声、座位保持、口腔内、義歯、現在の食事指示を確認。

必要時は吸引、酸素、緊急連絡がすぐ使える環境を整える。

  • 発熱、肺炎徴候、呼吸数・呼吸努力、SpO2と酸素需要の変化
  • 湿性嗄声、弱い咳、頻回な咳払い、唾液の貯留、痰の増加
  • 開口、口唇閉鎖、舌運動、口腔乾燥、汚染、痛み、義歯の適合
  • 頸部・体幹の安定、疲労、食事中に保てる姿勢
  • 絶飲食を含む指示、アレルギー、食形態、とろみ、薬剤、既往

評価の進め方

観察から始め、必要な評価へ進む

①情報収集と全身・口腔観察、②飲食物を使わない評価、③条件を満たす場合の直接評価、④必要時の専門的評価へ進む。

一つのスクリーニング結果だけで、経口摂取の可否や食形態を確定しない。

嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)は、咽頭残留、喉頭侵入、誤嚥、代償手段の効果などを詳しく評価する。必要性は医師・歯科医師・言語聴覚士・看護師などで検討する。

反復唾液嚥下テスト(RSST)

30秒間の空嚥下を数える

示指で舌骨、中指で甲状軟骨付近を触知し、できるだけ繰り返し唾液を飲み込んでもらう。

喉頭が十分に挙上し、指を越えた動きを1回として数える。

  1. 説明して姿勢を整える

    覚醒と指示理解を確認し、頸部を触れることを説明。安全に座位または安定した体位をとる。

  2. 舌骨と甲状軟骨を触知

    強く押さえず、嚥下時の上前方への動きを感じ取る。

  3. 30秒間測定

    「できるだけ何度も唾を飲み込んで」と伝え、確実な嚥下回数を数える。

  4. 結果を解釈

    3回未満は嚥下障害を疑う所見。口腔乾燥、理解力、疲労などの影響も記録し、ほかの評価と合わせる。

改訂水飲みテスト(MWST)

3mLの冷水で嚥下反応をみる

施設で訓練された実施者が、冷水3mLを舌背ではなく口腔底へ入れ、嚥下を指示する。

嚥下、むせ、呼吸、湿性嗄声を観察する。

  1. 実施条件を再確認

    直接評価が可能か、姿勢、吸引・緊急対応、口腔内を確認。

  2. 冷水3mLを口腔底へ

    シリンジを深く入れず、舌背へ注がない。注入後に嚥下を促す。

  3. 嚥下後の声と呼吸を確認

    発声してもらい、むせ、咳、湿性嗄声、呼吸変化、追加嚥下を観察。

  4. 標準の評価法で判定

    4点以上なら最大2回追加し、最も低い点を結果とする。異常時は反復しない。

フードテスト(FT)

嚥下と口腔内残留をみる

施設の標準物性を満たすプリンなどを茶さじ1杯、約4g用い、舌背に置いて嚥下してもらう。

むせ・呼吸・声に加え、口腔内残留の位置と量を確認する。

  1. 食品と適応を照合

    アレルギー、食事指示、食形態、温度、量、姿勢を確認。

  2. 少量を舌背へ

    本人の反応を見ながら置き、口唇閉鎖、保持、送り込みを観察。

  3. 嚥下後を観察

    むせ、湿性嗄声、呼吸、複数回嚥下、口腔内残留を確認。

  4. 標準の評価法で判定

    結果が良好な場合のみ最大3回まで行い、最も低い点を結果とする。

中止サインと評価の限界

呼吸・声・意識の変化で止める

強いむせ、持続する咳、湿性嗄声、呼吸苦、SpO2低下、チアノーゼ、覚醒低下、食物保持、著しい疲労では中止。

口腔内を確認し、安全な体位、排出・吸引、応援要請へ。

むせがなくても誤嚥は否定できない
  • 不顕性誤嚥では咳が出ないことがある
  • 小量の水では問題が見えず、食事量や疲労で変化することがある
  • SpO2だけで誤嚥の有無を判定しない
  • 肺炎の反復、湿性嗄声、原因不明の発熱、食後の呼吸変化があれば専門評価を検討

KT介入を組み立てる

評価・介入・再評価をつなぐ

課題を一度に全部変えず、目的を決めて一つずつ調整する。安全性、摂取量、疲労、本人の満足を再評価する。

効果がなければ元に戻し、別の要因を検討する。

  • 覚醒しやすく、疲労が少ない時間を選ぶ
  • 口腔ケア、義歯、口腔乾燥、痛みを整える
  • 体幹・骨盤・足底・頭頸部を個別に安定させる
  • 一口量、速度、間隔、食具、介助位置を調整する
  • 食形態・とろみは専門評価と指示に基づき統一する
  • 静かな環境、見やすい配置、本人が選べる声かけを整える
  • 食後の口腔内残留、呼吸、声、姿勢、疲労を確認する

記録と共有

条件と反応をセットで残す

覚醒、体位、食品・物性・量、介助方法、各テスト結果、むせ・声・呼吸・残留、摂取量、疲労、中止理由を記録。

うまくいった条件も共有し、次の食事で再現できるようにする。

出典