検査値は代表的な変化。全例に共通する診断基準ではなく、病期・治療・併存症で変わる。
病型と病態のつながり
冠動脈のプラークと血栓
- プラークの破綻などに血栓が形成
- 冠血流が急に減る
- 心筋が虚血・壊死へ進む
- 胸部不快・心電図変化・トロポニン上昇
観察へ:ST上昇型では迅速な再灌流評価へ。非ST上昇型でも症状持続・不整脈・循環不良を伴えば緊急性が高い。採血結果待ちで対応を遅らせない。
冠動脈解離など別の冠動脈病変
- 冠動脈壁の解離・壁内血腫
- 本来の血液の通り道が圧迫
- 心筋への血流が低下
- 胸部症状・虚血所見
観察へ:SCADでは安定性と血流で保存的治療を選ぶ場合がある。血栓性病変と同じ処置を全例に当てはめず、治療方針と再発症状を確認。
酸素の供給と需要の不均衡
- 低酸素・貧血・低血圧、頻脈など
- 心筋の必要量に供給が追いつかない
- 虚血と心筋障害を評価
- 原因への治療と冠疾患の評価
観察へ:トロポニン上昇だけで梗塞としない。虚血を示す症状・心電図・画像と背景を合わせ、単なる心筋障害と区別する。
心筋障害からポンプ不全へ
- 心筋の収縮が低下
- 全身へ送り出す血液が減る
- 臓器灌流低下と肺うっ血
- 冷感・乏尿・意識変化・呼吸苦
観察へ:低血圧だけでなく呼吸・末梢循環・尿量を合わせる。急な悪化では再虚血、不整脈、機械的合併症、出血も考える。
血流と心筋障害の模式図。実際の心電図や冠動脈造影ではない。STEMI/NSTEMIは心電図等に基づく臨床分類で、完全閉塞・不完全閉塞と一対一には対応しない。図の機序と分けて考える。
症状から観察・再確認へ
胸部不快・冷汗・嘔気
- 見る・聞く
- 発症時刻、締め付け・圧迫感、部位と放散、持続・反復、活動との関係を聞く。冷汗・顔色・嘔気も確認。
- 何を反映するか
- 心筋虚血の手がかり。胸痛が目立たず呼吸苦や倦怠感で現れる場合もある。
- 普段と比較
- 普段の発作との違い、安静・薬の前後、PCI前後の症状を比較。
- 悪化を疑う変化
- 持続・再燃、息苦しさ、失神、血圧低下や冷感を伴う。
- 再確認
- 12誘導と呼吸循環を再評価し共有。痛みの軽減だけで梗塞を否定せず、追加薬の指示を確認。
呼吸困難
- 見る・聞く
- 呼吸数、努力、会話、体位、呼吸音、SpO₂と酸素条件を確認。
- 何を反映するか
- 左心不全・肺うっ血、循環不良や別の胸部疾患の手がかり。
- 普段と比較
- 酸素必要量、横になれるか、輸液・尿量と治療前後を比較。
- 悪化を疑う変化
- 急な努力呼吸、会話困難、酸素条件の増加、血圧・意識の悪化。
- 再確認
- 応援と呼吸補助の準備。体位変更で循環が悪化しないかも見る。
動悸・徐脈・失神
- 見る・聞く
- モニターと本人の反応、呼吸、触れる脈、血圧を確認。症状時の波形を保存。
- 何を反映するか
- 虚血や再灌流、伝導障害で不整脈が出現し、拍出量が低下する場合がある。
- 普段と比較
- 基準波形、発症と再灌流・投薬の時点、K・Mgの推移を比較。
- 悪化を疑う変化
- 反応がない、正常な呼吸がない、持続する頻拍・徐脈に循環不良。
- 再確認
- 蘇生・急変手順に移り除細動器等を準備。波形を詳しく読むために対応を遅らせない。
冷感・乏尿・反応低下
- 見る・聞く
- 血圧・脈圧、皮膚・四肢、毛細血管再充満、意識と時間尿量を確認。
- 何を反映するか
- 心拍出量不足の手がかり。出血や体液不足なども鑑別が必要。
- 普段と比較
- 前回の血圧・尿量と投薬、PCI・穿刺部、出納を合わせる。
- 悪化を疑う変化
- 急速な血圧低下、冷汗・乏尿・意識変化、呼吸悪化。
- 再確認
- 直ちに共有し心エコー等を準備。肺音が目立たない低血圧でも右室障害などを考慮し、独断で大量輸液しない。
PCI後の出血・四肢の変化
- 見る・聞く
- アクセス部位、腫脹・疼痛、末梢の色・温度・感覚・脈を確認。尿便、背部・腹部痛、血圧も見る。
- 何を反映するか
- 穿刺部血腫・血管障害や見えない出血の手がかり。
- 普段と比較
- 術前の末梢所見、止血装置設定と解除時点、抗血栓薬・採血推移を比較。
- 悪化を疑う変化
- 拡大する腫脹、止まらない出血、冷たい手足・強い痛み、血圧低下。
- 再確認
- 直ちに報告し指示された止血対応へ。止血装置を独断で緩めたり外したりしない。
看護判断:変化の緊急度
経過を観察できる状態
治療計画の下で症状・呼吸循環が安定し、新しい心電図変化や出血がない。
次の行動:再発症状・不整脈・心不全・穿刺部を継続評価。未評価の胸部症状をここに分類しない。
早めの共有・報告が必要
急性虚血を疑う症状はないが、軽い出血が続く、腎機能・出納の変化、薬の副作用や活動耐容能低下がある。
次の行動:前後の値と治療条件を伝え、薬・採血・活動計画を相談。胸部症状の再燃は緊急評価へ。
直ちに応援・緊急対応
新規・持続・再燃する胸部症状、急な呼吸不全、失神、重い不整脈、循環不良、大きな出血。
次の行動:急変・ACS対応を開始。12誘導と再灌流評価を並行し、必要時は蘇生へ。正常に見える単回心電図や初回トロポニンだけで終了しない。
緊急度の目安。施設の急変対応基準・個別指示を優先し、数値だけで経過観察を決めない。
看護行動:優先順位
1|活動を止め応援要請
患者を一人にせず、発症経過と現在の意識・呼吸・循環を共有。歩行での移動や症状の再現をさせない。
2|呼吸と循環を支える
呼吸が楽な体位を探しつつ低血圧に注意。酸素は低酸素・呼吸状態と指示に応じて使用し、一律の高流量投与にしない。
3|12誘導とモニター
12誘導を速やかに記録・共有し、必要な再記録を準備。右室・後壁評価の追加誘導は診療チームと確認。除細動器を使える状態にする。
4|採血・治療情報を集める
静脈路と検体採取を準備。抗血栓薬・PDE5阻害薬等の服用、出血・アレルギー歴、腎機能、最終飲食を確認。結果がそろうまで再灌流準備を待たない。
5|カテーテル治療へ引き継ぐ
症状・心電図の時刻、投与薬と反応、アクセス予定と末梢所見を共有。説明を補助し不安を短く確認。
6|治療後の出納と合併症
心電図、胸部症状・呼吸循環、穿刺部・尿量を比較。造影・輸液・薬剤の条件と採血を引き継ぐ。
7|離床と服薬を確認
循環安定性と止血後の安静度を確認し段階的に離床。ふらつき・転倒を防ぎ、負荷後の症状・脈・血圧を再評価。
治療前・中・後の看護
PCI:冠動脈の血流を再開
- 目的
- 適応病変の血流を改善し心筋障害を減らす。
- 前に確認
- 症状・心電図、出血と腎機能、抗血栓薬、アレルギー、末梢循環を確認。
- 中に観察
- 呼吸循環と心電図、疼痛・過敏反応を観察。
- 反応・再評価
- 胸部症状と循環・心電図、出血、再虚血、尿量を比較。
- 適応・注意
- 再開通しても合併症監視を続ける。SCAD等は病変に応じ方針が異なる。
CABG・機械的合併症への外科治療
- 目的
- 選択例で血行を再建し、破裂・弁支持組織の障害等へ対応する。
- 前に確認
- 冠病変と心エコー、循環支持、抗血栓薬と手術方針を確認。
- 中に観察
- 循環・呼吸、出血と排液、尿量を追う。
- 反応・再評価
- 灌流・呼吸の改善と創部、神経所見、腎機能を比較。
- 適応・注意
- 急なショックや肺水腫では心室中隔穿孔・乳頭筋断裂などの専門評価を急ぐ。
抗血小板薬:アスピリン
- 目的
- 血小板による血栓形成を抑える。
- 前に確認
- 過敏症・アスピリン喘息、潰瘍・出血、併用薬と投与方法を確認。
- 中に観察
- 消化管・穿刺部などの出血、過敏反応、神経症状を観察。
- 反応・再評価
- 出血と服薬可能性を確認。治療継続の計画を共有。
- 適応・注意
- 自己中断でステント血栓の危険がある。休薬・再開は処方元と確認。
アスピリンの詳細を開く抗血小板薬:P2Y12受容体阻害薬
- 目的
- アスピリン等と組み合わせ、血栓性事象を抑制する。
- 前に確認
- PCIの方針、出血リスク、服薬歴と選択薬・規格を照合。
- 中に観察
- 出血・血算、肝機能と薬剤別副作用を観察。
- 反応・再評価
- 服用漏れ・出血の有無と継続期間を確認。
- 適応・注意
- 2剤併用の期間は虚血と出血の両リスクで個別化。海外用量を流用しない。 リンクはプラスグレルの代表例。薬剤間で適応・規格・注意事項を置き換えない。
エフィエント錠2.5mg・3.75mg・5mg・OD錠20mgの詳細を開く抗凝固薬:未分画ヘパリン
- 目的
- 適応に応じ血液凝固を抑え治療中の血栓形成を防ぐ。
- 前に確認
- 出血・HIT歴、血小板と凝固検査、投与単位・濃度を確認。
- 中に観察
- 穿刺部・尿便・神経所見、血小板と指示された凝固指標を監視。
- 反応・再評価
- 抗凝固の程度と出血・新規血栓を評価。
- 適応・注意
- HITはヘパリンに関連する血小板減少と血栓。疑う変化は直ちに共有。ロック用製剤と区別。
ヘパリンナトリウム注5千単位/5mL「YD」の詳細を開く硝酸薬などの症状・負荷調整
- 目的
- 適応例の虚血症状や心負荷を軽減。
- 前に確認
- 血圧、右室障害の可能性、PDE5阻害薬・リオシグアト等と禁忌を照合。 静注では製剤と輸液セットへの吸着、ポンプ設定も確認。
- 中に観察
- 血圧・脈・胸部症状、頭痛・めまい・意識を観察。
- 反応・再評価
- 症状と循環を前後比較。効いたことを診断根拠にしない。
- 適応・注意
- 低血圧などでは不適切な場合がある。再灌流の代わりとして投与し続けない。 静注薬の詳細は急性心不全・不安定狭心症等の適応を確認して読む。
ニトログリセリン注の詳細を開く脂質低下療法:スタチン等
- 目的
- 脂質を管理し動脈硬化性イベントの再発予防を図る。
- 前に確認
- 脂質・肝腎機能、筋症状、併用薬と国内の製剤適応を確認。
- 中に観察
- 筋痛・脱力・褐色尿、肝障害の所見を確認。
- 反応・再評価
- 脂質の推移と忍容性、飲み続けられるかを評価。
- 適応・注意
- 目標・強度・追加薬は個別化。SCADなどの病因も踏まえ選択する。 リンクはロスバスタチンの代表例。高コレステロール血症等の適応と肝機能・腎機能・併用禁忌を確認。
クレストール錠・OD錠2.5mg・5mgの詳細を開く心不全・ショックへの循環補助
- 目的
- 再灌流と並行して臓器への血流を保つ。
- 前に確認
- 心エコー、呼吸循環、体液量、補助装置の適応を確認。
- 中に観察
- 尿量・末梢循環・意識、出血・下肢虚血など装置関連合併症を観察。
- 反応・再評価
- 灌流と呼吸、乳酸の推移、支持量の変化を合わせる。
- 適応・注意
- 昇圧薬・補助循環を全例に同じように使わない。左室・右室機能と原因で方針が変わる。
心臓リハビリテーション
- 目的
- 生活機能と再発予防を支える。
- 前に確認
- 虚血・不整脈・心不全の安定性、活動許可と本人の目標を確認。
- 中に観察
- 負荷前後の症状、脈・血圧・呼吸、疲労を確認。
- 反応・再評価
- 活動量と回復、服薬・食事・禁煙への困りごとを再評価。
- 適応・注意
- 一律の日数の安静や運動を指示せず、リハビリ計画に合わせる。
検査の意味と読み方
12誘導心電図
虚血性変化と不整脈を評価。
組み合わせ・推移:症状時刻と前回波形を比較。単回正常やST上昇なしだけでは除外できない。
心エコー
壁運動・心機能・機械的合併症を評価。
組み合わせ・推移:急な循環悪化では前の結果で安心せず再評価を相談。
心筋トロポニンT
心筋障害の指標。
組み合わせ・推移:上昇・下降と症状・心電図・画像を合わせる。初期陰性や腎機能の影響、測定法の基準を確認。
心筋トロポニンTの検査詳細
心筋トロポニンI
心筋障害の指標。
組み合わせ・推移:施設で採用する測定法と採血間隔を確認。TとIを数値で直接比較しない。
心筋トロポニンIの検査詳細
Hgb
貧血と出血の影響を評価。
組み合わせ・推移:出納による希釈と採血時点を合わせる。初期値だけで出血を否定しない。
Hgbの検査詳細
血小板
抗血栓療法の安全性とHIT等の評価。
組み合わせ・推移:絶対値だけでなく低下率・経過と新しい血栓を確認。
血小板の検査詳細
APTT
未分画ヘパリン等の作用を評価。
組み合わせ・推移:採血時点・混入、投与条件と個別目標を照合。PCI中のACTとは別の検査。
APTTの検査詳細
K
電気的安定性と薬・腎機能の影響を評価。
組み合わせ・推移:心電図・尿量、補充や利尿の前後と比較。
Kの検査詳細
Mg
不整脈と電解質補正の評価。
組み合わせ・推移:K・腎機能と合わせる。独断で補充量を増やさない。
Mgの検査詳細
クレアチニン
造影・循環不良や薬剤に関わる腎機能の評価。
組み合わせ・推移:尿量と前回値、出納・血圧を追う。
クレアチニンの検査詳細
乳酸
循環不良時の組織灌流評価の補助。
組み合わせ・推移:推移と末梢循環・尿量・治療条件を比較し、値だけでショックを決めない。
乳酸の検査詳細
報告:SBARで情報をそろえる
S|症状と現在
- 発症・再燃からの経過、胸部症状、意識・呼吸・循環。
B|治療と背景
- 冠疾患・PCI歴、抗血栓薬等の服用、出血・腎機能、再灌流・酸素・点滴条件。
A|比較と反応
- 心電図・採血の時点、血圧・尿量・穿刺部の前後差。
- 実施した看護・薬への反応。
R|緊急の確認
- 再灌流・再造影、心エコー、蘇生や循環支持、薬・出血対応の要否。
患者・家族への説明
症状の再燃は早く伝える
胸の圧迫感、息苦しさ、冷汗・失神などは我慢しない。退院後の急な症状では救急要請し自分で運転しない。
抗血栓薬を自己中断しない
出血や処置予定があれば処方元へ相談。中止・再開と飲み忘れ時の対応を確認する。
生活と活動を調整
心臓リハビリで活動を段階的に戻す。禁煙・食事・血圧・脂質と仕事の負担を相談する。
不安も回復の課題
再発への不安、睡眠や気分、費用・通院・服薬の困りごとを共有し支援につなぐ。
看護学習用の概念図。実際の形・大きさ・診断所見を再現した図ではない。
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